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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

キャリコネにネガティブな口コミを書いた相手は特定できるのか

風評被害対策

キャリコネとは、企業の評判や口コミが載っている転職・就職情報サイトです。企業のリアルな評判を知ることができ、とても有益なサイトですが、口コミの中には、風評被害をもたらすようなネガティブなものもあります。

本記事では、ネガティブな口コミが投稿された場合に、その投稿者を特定するための方法と弁護士費用の相場について解説します。

「キャリコネ」とは

キャリコネは、企業の口コミを投稿したり、口コミを閲覧したりすることができる転職・就職情報サイトです。口コミの閲覧には、会員登録をしたうえで、キャリア情報の入力または口コミの投稿が必要です。キャリコネの運営会社は、株式会社グローバルウェイです。

キャリコネに書き込まれるネガティブな口コミの例

キャリコネでは、その企業に在職中の社員、退職済みの社員、就職活動中の学生などがその企業の口コミを書き込むことができます。中には、その企業の待遇や面接時の社員に対する印象など、名誉毀損やプライバシーの侵害にあたるような口コミが書き込まれるケースもあります。

たとえネガティブな口コミであっても、その口コミに違法性がなければ、投稿者を特定することはできません。そのため、まずは口コミに違法性があるかどうかを検討する必要があります。

ブラック企業と書かれたら名誉毀損で削除できるか

投稿者特定の手順1:IPアドレスの開示請求

IPアドレスとは

キャリコネの口コミ投稿者を特定するためにまず行うのは、IPアドレスの開示請求です。IPアドレスとは、インターネット上の機器に割り当てられているナンバーのことで、その名の通りインターネット上の住所のような役割を果たしています。

キャリコネで口コミを投稿するためには、会員登録が必要です。会員登録の際に、名前、生年月日や郵便番号などを入力しなければなりませんが、悪質な投稿者であれば偽の情報を入力している可能性もあります。(偽の情報を入力する行為は、キャリコネ「企業に関するアンケートの利用規約」違反です。)

【キャリコネ基本情報登録画面】

万が一、口コミの投稿者が偽の情報を入力していた場合、運営会社はその投稿者の個人情報を知らないことになります。そのため、投稿者を特定するためにはIPアドレスを開示してもらう必要があるのです。

仮処分手続によるIPアドレス開示請求

キャリコネの口コミの削除については、削除依頼フォームから削除を依頼して、利用規約に違反していれば削除してもらえる可能性もありますが、IPアドレスの開示請求は、原則的に裁判所を通して行う必要があります。なお、キャリコネの口コミ削除については下記記事にて詳細に解説しています。

IPアドレスの開示請求は、正式な裁判手続きをする必要はなく、仮処分により行うことができます。裁判となると、判決が出るまでに長期間かかるのですが、仮処分は、1-2ヶ月程度で結果が出ます。その場合の弁護士費用は、

着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度

https://monolith.law/reputation/reputation-lawyers-fee

が相場のようです。上記の費用は、IPアドレスの開示と口コミの削除を同時に請求した場合の費用です。ただ、この金額はあくまでも相場ですので、対象とする口コミの内容や量などにより、費用は上下するでしょう。

口コミの違法性を主張・立証する必要性

その口コミの投稿に違法性がなければ、裁判所はIPアドレスの開示を認めません。そのため、その口コミの違法性を主張し、立証しなければなりません。削除依頼フォームを通して運営会社へ削除を依頼する場合は、その口コミが利用規約に違反していればよく、違法性の有無は関係ありません。

たとえば、キャリコネの「企業に関するアンケートの利用規約」第3条には、

性的、猟奇的表現を含む情報を掲載する行為

https://id.careerconnection.jp/rules/survey/index.html#anchor_3

が禁止事項として規定されています。この禁止事項に該当すると判断されれば、その口コミは削除される可能性がありますが、こうした口コミに必ず違法性があるというわけではないでしょう。

IPアドレスを開示してもらうためには、

  • 口コミの違法性を法的に主張すること
  • その主張を裏付ける証拠を用意すること

が必要です。これらを単独で行うのは難しいため、インターネット上の誹謗中傷対策に詳しい弁護士へ相談しましょう。

投稿者特定の手順2:ログの削除禁止

IPアドレスの開示に成功すれば、口コミ投稿者が利用していたプロバイダを特定できます。プロバイダは、そのIPアドレスを使っていた者のログを保存しています。ただ、プロバイダは、いつまでもログを保存しているわけではなく、一定期間が過ぎればログは消えてしまいます。そのため、ログの削除禁止に関する裁判手続を起こす必要があります。

実務上は、「これから裁判所を通じて住所氏名開示請求をするので、しばらくログを消さないでほしい」という内容の通知を出せば、ログを削除しないでおいてくれることも多いです。そのため、裁判手続をしなくても、通知だけすればよい可能性が高いのです。この通知を出すだけだとしても、その口コミの違法性の主張と立証はしなくてはなりません。

この通知の作成を弁護士へ依頼した場合の費用相場は、10万円前後が相場とされています。

投稿者特定の手順3:住所氏名開示請求

次に、プロバイダに対して、投稿者の住所氏名開示請求を行います。

この手続は、仮処分で行うことはできませんので、正式な裁判手続を経る必要があります。住所氏名は、特に重要な個人情報ですので、簡単に開示させるわけにはいきません。たとえ、キャリコネに企業や個人の評判を落とすようなネガティブな口コミが投稿されたとしても、その口コミにきちんとした根拠があり、その事実を公開することが公益に合致すると考えられる場合には、その投稿に違法性があるとまではいえないでしょう。そうした場合にまで投稿者の住所氏名が開示されてしまうのは、適切ではありません。

そのため、裁判所は慎重に審議してその口コミの違法性を認めた場合にのみ、住所氏名の開示を認めることになります。

住所氏名開示請求を弁護士へ依頼した場合の弁護士費用の相場は、

着手金が30万円程度、成果報酬金が20万円程度

https://monolith.law/reputation/reputation-lawyers-fee

とされています。口コミの内容や量によっては、もっとかかることもあるでしょう。

投稿者特定の手順4:投稿者に対する損害賠償請求

手順3の手続が成功し、投稿者が使用していた回線の契約者の住所氏名が開示されれば、投稿者に対して、一連の手続に要した弁護士費用や、慰謝料などの損害賠償を請求できるようになります。

投稿者を特定することができ、損害賠償請求にも成功すれば、被害者側の金銭負担はなくなります。ただ、投稿者を特定に失敗するリスクや、たとえ特定できたとしても、損害を全て回収することができないかもしれないというリスクはあります。これらについては、下記記事にて詳細に解説しています。

https://monolith.law/reputation/disclosure-of-ipaddress

まとめ

上記でみてきたように、キャリコネの口コミ投稿者の特定手続は複雑な手続です。こうした手続を成功させるためには、インターネット上の誹謗中傷や法律に関する豊富な専門知識が必要になります。

キャリコネに書き込まれているネガティブな口コミでお困りの場合は、インターネット上の誹謗中傷対策に詳しい弁護士へ早めに相談しましょう。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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