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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

QLife(キューライフ)における風評被害対策とは?

風評被害対策

QLife(キューライフ)における風評被害対策とは?

自分自身や家族の体調で気になることがあるとき、どの病院に行ったら良いのか迷ったことはありませんか。風邪や発熱のときであれば、かかりつけ病院で済むことが多くても、いつもと違う症状があるときなど、どの病院に行ったらいいのか、あるいはどのお医者さんが評判がいいのか気になあると思います。

QLifeは、病院検索口コミサイトの1つであり、ここでは全国の病院について、病院の評判や口コミを読むことができます。QLifeでは、同じ症状で、実際にその病院を受診した人のリアルな口コミが見られるので、ユーザーにとってリアルな体験談を共有できるという点で役に立つサイトです。一方で、病院としては悪い口コミが書かれて広まってしまった場合には、病院経営に悪い影響を及ぼしかねません。ここでは、QLifeに誹謗中傷の口コミが投稿された場合の風評被害対策について説明します。

QLifeに関する解説

QLifeの検索画面より

QLifeとは、株式会社QLifeが運営する日本最大級の病院検索・薬検索・医療情報サイトです。QLifeでは、病院検索に当たって、地域検索や路線検索だけでなく、診療科や病名、症状、専門医、治療実績などから検索することができます。最大の特徴は、「患者口コミ」だけでなく「医師口コミ」「薬剤師口コミ」「看護師口コミ」とそれぞれの専門的見地から、病院ごとの特徴についてコメントを多く掲載していることです。医療は単純なものではなく、常に不完全な情報が多いことから、多くの情報を集めることで、様々な視点から判断ができるようになっています。

QLifeでは「良い体験談を教え合いましょう」という方針に基づき、基本的にマイナスな口コミを掲載することはなく、前向き・良心的なコメントを集めるように心がけているサイトです。そのためネガティブな口コミが書かれることは比較的少ないです。しかし、医療は専門性が高く難しいことから、医学的根拠のないものや間違ったコメントが書かれ、これらがネガティブな情報になりうることも想定されます。病院にとっては、誤った情報が書かれてしまうと、病院利用者(患者)に悪い印象を与えるなど大きな損害を与えかねません。本記事では、QLifeではどのようなネガティブな口コミが書き込まれうるのか、書き込まれてしまった時にどのように対処すべきなのかを解説していきます。

QLifeではどのような風評被害があるのか

QLifeにおける風評被害に繋がる口コミ例を挙げていきます。

QLifeの口コミポリシーは、ネガティブな口コミを掲載しないとしています。そして、口コミは多面的な審査により二重のチェックを通過したものだけが掲載されています。そのため、ネガティブな口コミを是認しているサイトのようにあからさまな風評被害が現れることは少ないと言えますが、中にはネガティブとも取れる口コミが掲載されることもあり得ます。ここでは想定される口コミ・風評被害の内容を紹介します。

QLife口コミポリシーより

虚偽の・事実と異なる口コミ

例えば産婦人科の口コミに「きさくな感じの女医さんで素晴らしい診療でした」と書かれていたとします。このコメントは一見して良いコメントですが、この病院に実は女性医師がおらず、男性医師だけで診察されていた場合、産婦人科には女医診療を求める方も多いので、コメントを信じて来院した方が混乱してしまう可能性があります。このように真実と異なるコメントは、悪影響を及ぼしかねませんから、このような書き込みが残り続けることは病院にとっては実態に即さず好ましくない口コミといえます。

プライバシーを侵害している口コミ

「先日、病院の近くに住む〇〇病の男の子Aくんがとても注射を嫌がっていたのですが…」など、のコメントは、病気の特殊性や、地域によっては個人を特定しかねません。Aくんやその保護者は、病名を公表していなかったかもしれないし、少なくとも他人にインターネットで公表されたくはないと思います。こういったものは第三者のプライバシーを侵害していると言えます。医師や患者など、このような投稿によって名誉毀損の被害などを受ける可能性がある人にとっては、できるだけ早い削除が望ましいでしょう。

利用規約違反で削除請求する方法

利用規約違反で削除請求するための手順とは?

QLifeサービス利用規約

QLifeの利用規約の禁止行為の章には、禁止事項が列挙されています。この各号に該当する事由が削除したい口コミにあれば、削除対象となりいえるしょう。

QLife利用規約第6条(コメント等)

削除依頼を行う方法

QLifeの口コミには、右下に「不適切なクチコミを報告」というボタンが設置されています。ここから削除依頼を行いましょう。

不適切な口コミ報告フォーム

利用規約違反として削除依頼を行う時の例

不適切な口コミ報告フォームに従って記入を進めます。まず、氏名とメールアドレスを入力してください。次に、医療機関名とクチコミのURLが正しいか確認してください。 違反内容はタブからふさわしいものを選び、詳細欄では、削除依頼である旨を示した上、その投稿のどの部分がなぜ問題なのかなどを具体的に示して、QLife側が特定しやすいように配慮しましょう。また、利用規約違反に当たることを示したほうが削除される可能性が高いので、当該投稿が利用規約違反にあたるのかを慎重に確認した上で、丁寧な説明を記入するように心がけましょう。

今回は、先ほどの例で紹介したような事実と異なる口コミ、例えば「きさくな感じの女医さんで素晴らしい診療でした」という書き込みを例にします。説明欄は以下のように書くとよいでしょう。

お世話になります。〇〇病院医事課広報担当△△と申します。
本口コミの削除をお願い致します。
この口コミの3行目から、「女医さん」という記述がされていますが、当病院は男性医師一人のみが勤務していて、女性医師が勤務した事実はございません。別の病院と間違えているものと思われます。これは利用規約6条5項「事実に反することが明らかな情報」にあたると考えています。
以上の理由から、一連の利用規約違反の投稿は、ユーザーに役立つような内容ではなく、当院の運営に悪影響ですので、削除をお願いしたいです。よろしくお願い致します。

もっとも、同利用規約には、

「当社は、コメント等の削除および情報内容の変更に関する要求、質問、苦情などを一切受け付けません。」

とあります。これは、削除をするかどうかはQLife側が自由に決定することができ、削除をするとは限らないということです。
このように削除依頼をしても投稿が削除されないときはQLifeに対して、送信防止措置請求を行う、または訴訟の提起を検討することになります。これらは、法律事務になりますので、自分自身で行うまたは弁護士に相談して行っていくことになります。弁護士以外の削除代行業者に依頼すると、法律違反になりうることに注意しましょう。

違法だとして削除請求する場合

法律上取りうる手段

権利侵害など、法律に抵触する内容であれば弁護士を通じて削除を裁判上で争うことができます。まず、インターネット上の風評被害対策に関連する法的にとりうる手段には、大きく分けて

  • 送信防止措置請求による自主的削除の依頼
  • 投稿記事削除請求・仮処分の申立て
  • 発信者情報開示請求(IPアドレスの開示請求、住所氏名の開示請求)
  • 損害賠償請求(投稿者を特定できた後の損害賠償請求)

などがあります。この中でも、削除に直結する請求は、送信防止措置請求または、投稿記事削除請求、及び仮処分の申立てになります。

法律上主張するべき内容

では、法律上で削除の請求をしていくには、まず考えられるのは「名誉毀損」の主張をすることです。名誉毀損は、

  • 「公然と」
  • 「事実を摘示し」
  • 「人の名誉を毀損する」

の全てに該当する事実があるときに成立します。例として、「この病院は掃除をあまりしておらず衛生状態が悪い」という真実でない内容に基づくクチコミが掲載されていた場合、1から3の要件をみたすのか、具体的に見ていきましょう。まず、今回のようにQLifeなどクチコミサイトにおける投稿は、インターネット上で不特定多数の人物が閲覧することが可能な状態に置かれているといえるので、「公然と」といえます。次に、「事実の摘示」とは、人の社会的評価を低下させるに足りる具体的事実を告げることをいい、真実か虚偽であるかを問いません。今回、病院が掃除をあまりしていておらず衛生状態が悪いという内容は、衛生状態が第一に求められる病院にとっては著しく社会的評価を低下させるものといえます。

最後に、「毀損した」というためには、実際に社会的評価が害されていなくても、その危険性が抽象的に存在すれば足り、名誉が現実に侵害されている必要はありません。実際に問題となっている投稿がネットニュースやSNSで不特定多数の人に閲覧され、病院に対し非難や抗議が殺到したことを証明する必要はありません。その危険性が客観的に存在することがいえればよいということになります。

名誉毀損の詳しい成立要件等は下記の記事にて詳細に説明していますので参考にしてください。

裁判所を通した手段(訴訟および仮処分)による削除

送信防止措置が認められなければ、裁判手続に移行することが効果的です。

名誉毀損など、上記のような法律違反の指摘をして削除を求めるには、まずは、送信防止措置請求の方法をとるのが通常です。しかし、送信防止措置請求は裁判所を通さない削除依頼の方法で、サイトの管理人や運営会社(プロパイダ)による自主的な削除を求めるものです。これは任意手段なので、判断によっては、削除は行われないこともありえます。これに対し裁判所を通した手続きでは、裁判で削除が認められれば判決による拘束力が生じるので、プロパイダは強制的に削除に応じることになります。

このため、送信防止措置が認められなければ、裁判手続に移行することが効果的です。なお仮処分とは、民事保全法に規定されている方法で、一刻も早い解決が求められる場合に、正式な訴訟によって確定判決を得る前に暫定的な処分を求めるものです。今回のような誹謗中傷の口コミなどは、一度拡散してしまうと回復困難な損害が生じるおそれが多分にあるので、仮処分の制度を利用して一刻も早い情報の削除を求めることが有効的です。仮処分命令が発令されると、裁判所が相手方に投稿を削除するように命令しますので、相手方は削除に応じなければなりません。仮処分の場合、風評被害対策にノウハウのある弁護士へ相談を行えば、依頼から削除まで、2-3ヶ月程度で実現できるケースが多く有効的な手段といえます。
誹謗中傷や風評被害を受けた場合の当該記事の削除、仮処分の手続きに関して下記の記事にて詳細に説明しています。

仮処分による投稿者特定

ところで、上記のような法的手段をとるためには、誰がその書き込みをしたのか、名前や住所などを特定する必要があります。しかし、インターネット上の誹謗中傷は匿名で行われるケースがほとんどであるため、書き込んだ人物(発信者)の特定は困難です。そこで、プロバイダに、書き込んだ人物の個人情報の開示を求め投稿者特定を行うことが必要となります。これが仮処分による投稿者特定というものです。発信者開示請求とは、『プロバイダ責任制限法第4条1項』によって規定されている、投稿者を特定するための情報開示請求の事です。弁護士に依頼を行えば、この発信者情報開示請求で投稿者のIPアドレスなどの情報を開示し、投稿者を特定することができる可能性があります。これにより投稿者が特定されれば、その人に対して、誹謗中傷投稿により被った損害について今後誹謗中傷を行わないと誓約させたり、損害賠償を請求する、あるいは刑事告訴をするなど法的手段の実現が可能になります。これらの手続の流れに関しては下記記事にて詳細に解説しています。

まとめ

QLifeは、実際にその病院を利用したユーザーの口コミにより、リアルな病院の情報を知ることできるサイトです。口コミはポジティブなものしか掲載せず、風評被害の起こりにくい安心して使えるサイトです。しかし、仮に悪質な口コミによる風評被害が発生してしまっても、法的な手段をとれば、投稿の削除などの解決をすることができるかもしれません。もっとも、どのような方法でどのような主張をしていけばいいのか、削除が認められるのかは個別のケースによって異なります。いずれにしても、違法性を主張する場合は専門的な内容や手段を含むので個人で行うのは難しく、また法律行為になりますので、弁護士の力が必要になります。まずは、弁護士に相談して、当該口コミが権利侵害にあたるのか、法律に抵触しているかどうかを判断してもらいましょう。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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