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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

YouTuber・VTuber法務

YouTube動画への誹謗中傷コメントの削除申請方法とは?弁護士が解説

YouTuber・VTuber法務

他人のYouTube動画に付けられたコメントの削除申請方法

YouTubeの動画にはコメント欄があります。これは、動画の内容に対する感想などを書き込む場ですが、中には、投稿者や他者を誹謗中傷するものもあります。YouTubeのコメント欄は不特定多数の人に見られてしまうので、そのような誹謗中傷コメントを削除したいという方は多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では、YouTubeに投稿された誹謗中傷コメントの削除方法について解説をします。

YouTubeではどのようなコメントが削除申請の対象となるのか

どのようなコメントが削除申請の対象となるのか

YouTubeのコメント欄にはさまざまなコメントが投稿されますが、どのような種類のコメントが削除申請の対象になるのでしょうか。例えば、誹謗中傷などのような他者を攻撃するコメントは削除申請の対象となることは容易に判断できますが、個人的に気に食わないという理由で削除申請を行うことはできるのでしょうか。

YouTubeヘルプセンターでは、以下のように記載されています。

問題を報告しても、自動的にコンテンツが削除されるわけではありません。報告されたコンテンツは、次のガイドラインに沿って審査されます。
・コミュニティ ガイドラインに違反しているコンテンツは YouTube から削除されます。

YouTube ヘルプ|YouTube 上の不適切な動画、チャンネル、その他のコンテンツを報告する

上記のYouTubeヘルプセンターの記載から、コミュニティガイドラインに違反しているコンテンツが削除の対象となっているということがわかります。

YouTubeのコミュニティ ガイドラインの内容

YouTubeのコミュニティ ガイドラインで禁止されているコンテンツは、大きく分けて5つに分類されます。

  • スパムと欺瞞行為
  • デリケートなコンテンツ
  • 暴力的または危険なコンテンツ
  • 規制品
  • 誤った情報

上記対象コンテンツの中には、YouTubeに投稿された動画が念頭に置かれている事項も多いため、以下では、YouTube動画に付けられたコメントとの関係で重要な事項を紹介します。

嫌がらせやネットいじめ

嫌がらせやネットいじめ

YouTube動画に付けられたコメントとの関係で重要な事項としては、「嫌がらせやネットいじめ」があります。「嫌がらせやネットいじめ」に関するコンテンツについては、「ハラスメントやネットいじめに関するポリシー」にて、以下のような記載があります。

個人に対する脅迫を含むコンテンツは YouTube で許可されていません。また、本来備わっている属性に基づいて、個人を長期に及ぶまたは悪意のある侮辱の標的とするコンテンツも許可されていません。こうした属性には、保護グループへの所属や身体的特徴などが含まれます。

YouTube ヘルプ|ハラスメントやネットいじめに関するポリシー

例えば、以下のような表現は、嫌がらせやネットいじめに関するコンテンツとして、削除申請の対象となります。

  • 他者の写真を繰り返し提示して「あいつの歯を見てみろ。気持ち悪いな」といった発言をする
  • 「この不潔なやつを見てみろ(保護対象グループを対象とした誹謗中傷)。トラックにひかれたらいいのに」と発言する
  • 「この犬のような女を見てみろ。人間じゃなくてミュータントかけだものだ」と発言する

個人情報の保護

また、YouTube動画に付けられたコメントとの関係で重要な事項としては、「個人情報の保護」があります。「個人情報の保護」に関するコンテンツについては、以下のような記載があります。

【コンテンツを削除する基準】
コンテンツが削除の対象として考慮されるためには、問題のコンテンツにおいて個人がはっきり特定できることが必要です。プライバシー侵害の申し立て手続きを使用する場合は、お客様を特定できるような情報がコンテンツに含まれていることを事前にご確認ください。YouTube では、個人の特定が可能かどうかを判断する際に以下の点を検討します。
・画像や音声
・氏名
・財務情報
・連絡先情報
・その他の個人情報

YouTube ヘルプ|個人情報の保護

以上のような事項に関するコメントは、プライバシーに関するコメントとして、削除申請の対象となります。

YouTubeコメントが誹謗中傷とされる判断基準

YouTubeコメントはどこから誹謗中傷となるのか

では、YouTubeのコメントはどこからが誹謗中傷に当たるのでしょうか。ここでは、民事における「名誉毀損(名誉権侵害)」と「名誉感情侵害(侮辱)」について解説します。

名誉毀損(名誉権侵害)

まず、名誉について最高裁は、「人の品性、徳行、名声、信用等の人格的価値について社会から受ける客観的評価である名誉」と定義しています(最大判昭61・6・11民集40巻4号872頁)。名誉権侵害とは、名のとおり、この名誉を侵害されることを指します。この判断基準は大きく分けて3つあり、これらを満たした際には名誉権侵害にあたるということができます。

YouTubeのコメント欄での誹謗中傷のように、民事事件の場合には、①「社会的評価の低下」の有無、②「事実摘示」か「意見論評」か、③事実摘示なら「摘示事実は真実か」、意見論評なら「意見の前提事実は真実か、表現は適切か」という順番で判断をします。

まず、①社会的評価に関しては、書かれている内容と、具体的な状況も加味して判断されます。判例上では、「一般読者の普通の注意と読み方を基準」に読んだときに捉えられる印象で判断すると明示されました。

上記の社会的評価の低下が認められた際には、次に、書かれている内容は②「事実摘示」なのか、「意見論評」なのかを判断します。これらの違いは、「証拠によって証明できる」か否かです。証拠によって事実の存否が証明できる場合には「事実摘示」とし、そうではなく物事の価値などの批評や論議は「意見論評」に当たります。

最後に、「事実摘示」とされた場合には、当該事実が真実かについて判断します。これが、真実と異なる場合には、名誉毀損と認められます。しかし、真実であった場合には、違法性が阻却されるため、名誉毀損を成立させることはできません。

一方、「意見論評」の場合には、事実摘示の基準に加え、表現が適切であったかどうかも問題となります。そのため、事実の重要な部分が真実であったときにも、その表現が「意見論評としての域を逸脱した物」(最判平9・9・9判時1618号52頁)であれば、名誉毀損と認められるということです。

関連記事:名誉毀損で訴える条件とは?認められる要件と慰謝料の相場を解説

名誉感情侵害(侮辱)

対して侮辱とは、個人の名誉感情が保護に値するものになります。最高裁では、名誉感情について、「人が自己自身の人格的価値について有する主観的な評価」と定義しており(最二小判昭45・12・18民集24巻13号2151頁)、その基準は、「社会通念上許される限度を超える」か否かです。

侮辱の判断基準について、上記の最高裁判決では「書き込みの内容や経緯等を考慮しなければならない」と示されています。そのため、侮辱に当たるかもしれない表現の前後やどのような経緯でその書きこみがされたか、その経緯に書かれた内容に関するやむを得ない事情があったかについても、判断要素となります。

また、名誉感情の場合は、名誉権侵害の場合とは異なり、誰からの書き込みかわからなくても、対象者が侮辱されたと感じた場合には、成立する可能性があります。

関連記事:名誉感情の侵害(侮辱罪)とは?週刊誌報道の事例等を解説

YouTubeコメントで誹謗中傷されたときの相談窓口

誹謗中傷された状況が以上に当てはまると思われる場合に、相談することができる窓口等を紹介します。

法務省の人権相談窓口

法務省の人権相談窓口では、全国の法務局員や人権擁護委員(人権擁護委員法に基づいて、人権相談を受けたり、人権の考えを広める活動をしている民間の人々)が相談に乗ってくれます。また、助言に加え、違法性が認められれば、法務局からプロバイダ等に対する削除要請も行っています。

セクハラやパワハラ、家庭内暴力、体罰やいじめ、インターネットでの誹謗中傷、差別など、「自分の悩みは人権侵害かも?」と思ったら、一人で悩まず、気軽にご相談ください。秘密は守ります。相談は無料です。

法務省:人権相談

総務省の違法・有害情報相談センター

違法・有害情報相談センターには、相談員以外にも法務アドバイザーなどが揃っていますので、アドバイス等の情報提供に加えて、必要があれば関連団体の紹介も行ってくれます。しかし、プロバイダやサイト管理者等への削除依頼代行は行っていません。

ネット上の誹謗中傷(嫌がらせ)の書き込みについて削除するにはどうすれば良いのか、書き込んだ相手を特定するにはどうしたらよいのか、など、違法・有害情報相談センターでは、インターネット上のトラブルについて適切に対応するためのアドバイスや関連の情報提供を行っています。

違法・有害情報センター

弁護士

削除請求を迅速に行いたい、少しでも削除の確率を上げたい、さらには書込みをした相手が特定できれば損害賠償請求や刑事告訴もしたい、等とお考えの方は弁護士に相談するとよいでしょう。近年では、インターネット上の誹謗中傷の被害が多発していることから、これらの対策を強みとしている弁護士あるいは法律事務所があります。

YouTubeコメントの削除申請の方法

削除申請の方法

自分のチャンネルに書き込まれたコメントであれば、管理者として自分で削除することができます。では、他人のチャンネルに誹謗中傷コメントを書き込まれてしまい、チャンネルの管理者に削除してもらえなかった場合にはどうしたらよいのでしょうか。

YouTubeにおけるコメントの削除申請の方法としては、以下の3つが考えられます。

  • コメントの横にある「報告」という項目からの削除申請
  • プライバシー侵害があるコメントに対する「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請
  • 違法なコメントに対する「YouTubeからコンテンツを削除する」からの削除申請

コメントの横にある「報告」という項目からの削除申請

コメントの横にある「報告」という項目からの削除申請は、以下の手続きにより行います。

コメントの横にある「報告」という項目からの削除申請

①動画のコメント欄から削除したいコメントを選択し表示させます
②コメントの右端にある記号から「報告」をクリック・タップします
③コメントの報告の中から違反項目に近い項目を選択し報告をします

コメントの横にある「報告」という項目からの削除申請

以上の手続きにより削除申請が可能です。報告がされたコメントについて、YouTubeの側で審査が行われ、コミュニティガイドラインに違反しているコメントと判断されれば、当該コメントは削除されることになります。

「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請

「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請

プライバシー侵害があるコメントに対する「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請については、以下の手続きにより行います。

プライバシーの侵害申し立て手続きにアクセスし、「続行」をクリック・タップします。

「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請
YouTube|プライバシー侵害の申し立て手続き

②次の頁で「プライバシー侵害の申し立てを行いたい」をクリック・タップします

「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請
YouTube|プライバシー侵害の申し立て手続き

③次のページでアップロードしたユーザーへ連絡したかの確認が求められます。アップロードしたユーザーへ連絡したにもかかわらずコメントが削除されていない場合には、「次へ」をクリック・タップします。

「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請
YouTube|プライバシー侵害の申し立て手続き

④次のページでコミュニティガイドラインを確認したかの確認が求められます。コミュニティガイドラインを確認した場合には、「既にコミュニティガイドラインを確認した」をクリック・タップします。

「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請
YouTube|プライバシー侵害の申し立て手続き

⑤次のページで嫌がらせ目的の申し立てや虚偽の申し立てを行った場合には、YouTubeアカウントが停止される可能性があることを警告されます。嫌がらせ目的の申し立てや虚偽の申し立てではない場合には、「次へ」をクリック・タップします。

「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請
YouTube|プライバシー侵害の申し立て手続き

⑥次のページで公開されている個人情報の種類を選択します。

「プライバシー侵害の申し立て手続き」による削除申請
YouTube|プライバシー侵害の申し立て手続き

⑦次のページでは必要事項を記入するページに飛びますので、必要事項を記入し、「送信」します。

「法律に関するポリシー」からの削除申請

違法なコメントに対する「法律に関するポリシー」からの削除申請は、以下の手続きにより行います。

①「法律に関するポリシー」にアクセスし、該当項目を選択します。

YouTube|法律に関するポリシー

②選択した項目に対応した削除申請フォームが表示されるので、必要事項を記入し、削除申請を行います。

まとめ:ネットの誹謗中傷でお悩みなら弁護士へ相談を

まとめ

以上、他人のYouTube動画に投稿された誹謗中傷コメントの削除申請方法について説明をしました。近年のYouTubeの人気の高まりによって、必然的にYouTube動画のコメント欄が他人の目に触れる機会が増えています。自分が誹謗中傷されてしまったときに迅速に対応できるように、対処方法をしっかりと理解しておくことが重要です。

コメントが削除対象となるか否か、また削除申請の方法についてもさまざまな基準や方法がありますので、お困りの際は、風評対策に強い弁護士に相談をするようにしてください。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:デジタルタトゥー

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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