Web3を活用したビジネスモデルとは?最新動向と活用事例を解説

世界中で、Web3のメリットを生かした革新的なビジネスモデルが次々と登場しています。ブロックチェーン技術を基盤とするこの新たなインターネットの波は、金融、アート、エンターテイメントなど、あらゆる産業のあり方を再定義しつつあります。
しかし、Web3の可能性を感じながらも、「具体的にどのようなビジネスモデルが考えられるのか」「最新の動向はどうなっているのか」といった疑問をお持ちの経営者の方も少なくないのではないでしょうか。
本記事では、Web3を活用したビジネスモデルの基本的な考え方から、注目すべき最新動向、そして具体的な活用事例までを、法律の専門家の視点から分かりやすく解説します。
この記事の目次
Web3を活用したビジネスモデルとは
米国のエマージェン・リサーチ(Emergen Research)社のレポートによると、世界のWeb3市場は、2021年に約32億ドルに達し、今後年平均成長率43.7%程度の伸びを見せ、2030年までには815億ドル規模にまで拡大すると予測されています。
Web3(Web3.0)とは、進化するワールド・ワイド・ウェブの歴史上の期間(世代)を指し、2014年にイーサリアムの共同設立者であるギャビン・ウッドが「ブロックチェーンに基づく分散型オンライン・エコシステム」を指して提唱されました。
プラットフォー マー等の仲介者を介さずにユーザー間の双方向でのデータ利用・分散管理を行うことが可能で、情報や権限が一部の大企業に集約されることなく分散される点が大きな特徴です。
Web3領域の主なトレンド技術は、NF(暗号資産・仮想通貨)・NFT・DeFi(分散型金融)・DAO(分散型自律組織)・メタバース・Social Tokenなどがあり、Web3は、Webの技術・法律・決済インフラの次世代型といわれています。これらの取り組みは始まったばかりであり、今後の展開が期待されています。
Web3におけるブロックチェーンの活用

ブロックチェーンは「分散型台帳」とも呼ばれ、暗号技術によってデータの消去・破壊・改ざん・複製が不能な特徴を持つ、新しいデータベースです。
ブロックチェーン上には、契約の記録・金融取引の記録・個人情報等(暗号アドレス・公開鍵)が格納され、高水準の信頼性をもってデータの記録・管理が可能です。
Web3は、ブロックチェーンによるセキュリティの高さから注目されており、Web3を活用することで、プライバシー侵害のリスクを回避する効果が見込めるでしょう。
ブロックチェーンの3つのタイプ
ブロックチェーンは、2008年頃にビットコインの中核技術として始まりましたが、現在は金融や医療、不動産といったさまざまな業界で活用されています。ブロックチェーンには、以下の3つの型があります。
パブリック型ブロックチェーン
仮想通貨交換業者(SBI VC トレード・ビットコイン・イーサリアムなど)が提供し、世界中から自由に参加できる分散型のブロックチェーン。
プライベート型ブロックチェーン
特定の組織やグループが管理する閉鎖的なネットワークで、参加者や権限が制限されているブロックチェーンのことです。情報の秘匿性やセキュリティが高く、取引の承認やルールの変更が容易な点がメリットです。
一方で、透明性や公共性が低く、システムの稼働や安全を一部の個人や組織に依存している点がデメリットです。
コンソーシアム型ブロックチェーン
複数の組織やグループが共同で管理する協調的なネットワークで、参加者や権限が協議によって決められているブロックチェーンのことです。
パブリック型とプライベート型の中間に位置しており、情報の秘匿性やセキュリティを保ちながら、改ざん耐性や透明性も確保できるメリットがあります。例えば、Hyperledgeは、オープンソースのブロックチェーンプラットフォームで、医療・外資系金融・外資系IT企業などがプロジェクトを組織しています。
Web3と従来のインターネットとの違い
Web3.0を知る上で、旧型のインターネット「Web1.0」「Web2.0」との違いについても知っておくと理解しやすいでしょう。
Web3.0と対比されるWeb1.0は、インターネット黎明期である1991年から2004年ころまでの期間に利用されていたインターネットのことです。HTMLで構築された静的コンテンツで構成されるWebサイトで、「一方通行型」が特徴です。現在のようにコンテンツを投稿したり、商品やサービスを購入することはできませんでした。
Web2.0は、2004年ごろから普及したインターネットで、GAFAM(Google・Apple・Facebook・Amazon・Microsoft)のビッグ・テックが台頭してきます。動的なコンテンツと「双方向型」が特徴で、ユーザーの取引もインターネット上で行われるようになりました。
「プラットフォームとしてのWeb」という構想に基づき、フォーラムやソーシャルメディアにアップロードするユーザー生成コンテンツを中心としたもので、現在まで続いていると考えられています。
しかしWeb2.0は、特定の大企業に情報が集約される中央集権型のインターネットであるため、データの取得を目的としたハッキングやサイバー攻撃などの不正アクセスや、情報漏洩のリスクを抱えています。
これに対し、Web3.0は、Web2.0と異なり分散型モデルであるため、そうしたリスクを回避しやすいといえます。
Web3の5つのテクノロジー
上述したとおりWeb3アプリケーションはブロックチェーン技術を基にした新しいインターネットで、ブロックチェーンの透明性とセキュリティを活用して、ユーザーが直接デジタル資産を取引・管理することを可能にします。
この章では、パブリック・アプリケーションの5つの技術と関連用語について解説します。それぞれのアプリケーションは、Web3の主要な特性である分散化・透明性・セキュリティを活用していますが、その利用範囲や目的が異なります。
暗号資産(仮想通貨)
暗号資産とは、Web3の投資に必要となる仮想通貨のことで、ブロックチェーン技術を使ったデジタル通貨の総称です。2020年5月1日資金決済法において、「仮想通貨」から「暗号資産」へ名称変更され、国際標準に統一されました。
FTとは、Fungible Token(代替可能トークン)の略で、代替可能な同じ価値や特徴を持つ、暗号資産(仮想通貨)やセキュリティトークン・ユーティリティトークンを指します。これらのトークンは、他のFTと交換したり、分割や結合も可能です。
世界には9000種以上の暗号資産が存在しますが、それぞれ異なる特性や目的を持っており、その選択は投資目的や個々のニーズによります。日本の金融庁・財務局へ適法に登録された取引所・販売所のある暗号資産が安全でしょう。
以下に、主要な暗号資産を紹介します。
- ビットコイン(BTC):最初に登場した仮想通貨で、最も高い知名度と時価総額を誇ります。
- イーサリアム(ETH):スマートコントラクト機能を搭載した仮想通貨で、ビットコインに次ぐ時価総額を有しています。
- リップル(XRP):国際送金を円滑かつローコストにすることを目指した仮想通貨です。
- ビットコインキャッシュ(BCH):ビットコインから派生した仮想通貨で、取引のスピードと効率性を向上させることを目指しています。
- ライトコイン(LTC):ビットコインと同じ技術を基に作られ、取引の確認速度が速いことで知られています。
暗号資産には、仮想通貨の他に、セキュリティトークン、ユーティリティトークンと呼ばれるものが存在します。
セキュリティ・トークンとは、ブロックチェーン技術を用いて発行され、株式や債券、不動産などの有価証券の権利をデジタル化したトークンのことです。
- 株式型トークン:暗号資産新規公開トークン(IDO・ICO・IEO)など
- 債券型トークン
- 不動産型トークン:不動産資産を表すトークンで、所有者は賃料収入や売却益などの権利を持つことができます。
- 投資ファンド型トークン
ユーティリティトークンとは、特定のコミュニティやサービスなどを利用する権利や機能を有する、実用性が認められているトークンのことを指します。ユーティリティトークンには、セキュリティトークンと異なり、金融商品としての性質はありません。そのため、発行に政府の許可を必要としません。ただし、特定のユーティリティトークン(ETH・NFT)は、セキュリティトークン的な性質を持つ場合もあります。
具体的な例を挙げると、以下のようなトークンがあります。
- サービス内で購入したり利用料を支払ったりする目的で使用されるトークン
- 利用者の行動に対してインセンティブを支払う目的で発行されるトークン
- 保有することでコミュニティ全体の意思決定に関われるトークン
- 保有している量や期間に応じて報酬が発生するトークン
NFT(Non Fungible Token)
NFT(Non Fungible Token)とは「非代替性トークン」のことで、ブロックチェーン技術を用いて発行されるデジタルアセット(資産)です。
デジタルのメタデータに識別情報(固有の認証コード)を持たせることで、そのデータの「保有」と「唯一性」を示すことができる代替不可能なトークン(証票)を指します。
具体的には、NFTには固有のアドレスが割り当てられ、保有者情報や取引履歴が全てブロックチェーン上に記録されるため、偽造・改ざん・複製不能のデジタルデータです。
真贋性を担保する機能や、トレーサビリティ(取引履歴を追跡できる機能)の特性を活かし、金融や不動産・現実のアイテム(NFC ICチップを搭載)・デジタルコンテンツなどの売買が進んでいます。
さらに、ブロックチェーン技術とAIを活用した新しい金融サービスやツールも開発されています。
「The Business Research Company」の世界市場レポートによると、世界のNFT市場は、2022年の214億8,000万ドルから2023年には328億9,000万ドルへと、CAGR53.1%で成長しました。NFT市場は、北米が最大、アジア太平洋は最も急速に成長する地域となる見込みです。
参考:The Business Research Company|「非代替性トークン(NFT)の世界市場レポート2023年 (gii.co.jp)」
以下に、具体的なNFTのユースケースを紹介します。
分野 | NFTに表章するコンテンツ | NFT発行の目的 | 事例 |
コレクティブル | デジタル画像・映像・音声 | デジタル鑑定書 | Jasrac |
メタバース | デジタル空間の不動産・利用券 | 独占的利用許諾権デジタルツイン | The Sandobox Decentraland |
現物資産と紐づけ | 有価証券・卒業証書・学位証明書・登記簿謄本・免許・資格証明書・不動産・動産 | 引渡し請求権・仲介手数料の削減 | マサチューセッツ工科大学(MIT)で世界初のNFT学修歴証明書・卒業証書を発行 |
地方創生 | 地域通貨トークン(デジタル住民権)・ふるさと納税返礼品 | SDGsモデル事業 | 新潟県山古志DAO岡山県美作町DAO岩手県紫波町DAO |
DeFi(Decentralized Finance)
DeFi(Decentralized Finance)は、「金融分散型システム」を意味し、暗号資産(仮想通貨)の取引を含むブロックチェーン上に構築された、銀行や政府などの運営者を介さない非中央集権型の新しい金融形態を指します。DeFiプラットフォームでは、ブロックチェーン上のスマートコントラクト(取引の記録や承認が自動的に実行されるプログラム)を利用して、自身の資産を管理し、取引を行うことができます。
DeFiには以下の特徴があり、既存の金融システムの代替手段として期待されています。
- 高度な透明性:ブロックチェーンにより、取引の改ざんが不可能
- 資産の管理権掌握:ユーザーが自身の資産の管理権を有する
- 地理的制限の排除:国を問わず、DeFiプロダクトにアクセスすることが可能
- 時間的制限の排除:年中無休で稼働しており、即時決済が可能
- 構成可能性(コンポーザビリティ):DeFiの各プロジェクトやアプリケーションを自分のニーズに合わせて選択し、金融商品やサービスを利用することが可能
DAO(Decentralized Autonomous Organization)

DAO(Decentralized Autonomous Organization)とは「分散型自律組織」を意味し、ブロックチェーン上の参加者による自律的な運営を目指す組織形態のことを指します。
プロジェクトの目標に応じて参加することが可能で、公開されているガイドラインやガバナンスを概説した憲章・ミッションステートメントを閲覧することができます。
ガバナンストークンの保有者は、DAOやDApps(分散型アプリ)などの開発・運営に関わる意思決定に関与し議決権が与えられます。
ブロックチェーンのデータ(トークンやNFTの暗号化された保有者・保有量・発行数・売買履歴など)は改ざん不能で、組織の参加者や不参加者も閲覧でき、匿名性が担保されるため、組織運営における透明性が高い点も特徴です。
NFTの一覧表にあるとおり、地方創生プロジェクトや、ウクライナ寄附プロジェクトなどで利用されています。
メタバース
メタバース ( metaverse)とは、インターネット上に構築された「3 次元(3DCG)の仮想現実空間」やそのサービスを指します。このバーチャルなデジタル空間で、リアル世界のように行動したり、リアル世界を超えて新たな体験をすることが可能で、ビジネスやユーザー間のコミュニケーション、宇宙飛行などさまざまな体験が可能です。
リアル世界を模倣したメタバース環境をデジタルツインといい、これらを組み合わせた「メタ産業革命」が起こっています。
メタバースは新型コロナ禍で需要が高まり、さまざまな分野での活用が考えられています。
例えば、ビジネス分野においては、バーチャルオフィスにアバター(ユーザーの分身であるキャラクター)で出勤し、リモートワークや社内でのコミュニケーションが行えます。
Meta社はVRヘッドセット装着やビデオ通話で参加できる、バーチャルオフィスとして「Meta Horizon Workrooms」を提供しており、ミーティングやプレゼンテーション、ブレインストーミングなどが実施可能です。
その他、バーチャルの展示会やイベント・社内教育やトレーニング・ショッピング体験などの用途で、利用が拡大しています。
総務省が発表した「令和5年版 情報通信白書」によると、世界のメタバース市場は2022年に655.1億ドルで、2030年には9,365.7億ドルまで伸びるすると予想されており、今後の成長を見込んだ参入が相次いでいます。
Web3を活用する4つのメリット
ブロックチェーンの Web3を活用したビジネスモデルの特徴ともいえるメリットを4つ紹介します。
取引記録の分散による高いセキュリティ
Web3では、ブロックチェーンによって、たとえサービス提供者であっても取引記録の消去や改ざんが不能であることにより、既存のシステムよりもセキュリティが高いというメリットがあります。
また特定企業のサーバーに情報を預けず、ユーザーが分散管理し、全員の取引履歴を閲覧できる点で、透明性が高いといえます。
サーバが管理する中央集権型のインターネットは、トラブルやデータ取得を目的としたハッキングやサイバー攻撃など、情報漏洩のリスクを抱えています。
分散型のWeb3は、これらのリスクを回避できることから、高い信用が求められる金融や医療、教育などの分野への活用が進められています。
直接取引により手数料が不要に
上述したとおりWeb3は、サーバーを経由せずに通信できるP2Pネットワークの「自立分散システム」であるため、ユーザー間で直接公正な取引が可能となり、ブロックチェーンによる直接送金やNFTによる販売・データの授受なども、セキュリティを確保した上で取引が可能です。
また暗号資産の取引は、SWIFT(国際決済システム)や中継銀行の決済システムを介して送金する場合に比べ、送金スピードが速く、サーバーコストが削減でき低コストというメリットがあります。
NFTの活用による所有証明
NFTは、鑑定書のように所有を証明するものです。NFTはブロックチェーン技術を活用しているため、取引データの消去や複製・偽造ができません。
真正性・唯一性を証明できるため、ブロックチェーン上で取引できるNFTの活用に注目が集まっています。
国内外を問わない取引
ブロックチェーンを使ったWeb3は、国内外を問わず取引可能で、匿名性・機密性が担保されています。
既存のWeb1.0やWeb2.0では、管理者によって閲覧やサービス利用が制限されるケースがありました。しかしWeb3.0であれば、そうした制限がなく、自由に利用できるメリットがあります。
Web3のビジネスへの活用事例

Web3のビジネスモデルについて、金融・教育・医療の3つの分野の活用事例を紹介します。
投資対象を柔軟にした取引
Web3では、暗号資産、NFTといったデジタルアセット、DeFiなどの取引が活発ですが、特に金融分野の市場は急速な成長が見込まれ、多様な投資機会が生まれています。
例えば、投資事業有限責任組合契約に関する法律(LPS法)では、投資事業有限責任組合が行える事業が定められていますが、2023年4月よりセキュリティトークン(有価証券をデジタル化したもの)の取得や保有もその対象として明確化されました。
こうした背景を踏まえ、金融機関におけるWeb3ビジネスモデルの主な事例として、2022年2月にはJPモルガン銀行がメタバースに初の銀行を開設し、銀行のデジタルツイン化が進んでいます。
また、2023年2月にはみずほフィナンシャルグループが10社と共同で、デジタル庁のWeb3.0アドバイザーが提唱する「リュウグウコク」というオープンメタバース基盤の構築に向けた基本合意を締結し、「ジャパン・メタバース経済圏」の実現を目指しています。
各金融機関のビジネスモデルの事例については、以下の一覧表をご覧ください。
企業名 | 分類 | 取組状況 |
JPモルガン銀行(米国) | 仮想店舗 | 2022年2月、Decentralandのメタバース上に世界初の仮想店舗を開設。金融サービスの実証実験が行われています。 |
「Revolut」(英国)デジタル銀行 | 法定通貨と仮想通貨の国際送金サービス | 日本では2020年10月から利用開始となった次世代型金融アプリで、世界のユーザー数3,000万人以上。ネットバンクのように法定通貨や暗号資産による金融取引が行えるのが特徴で、ユーザー同士なら送金手数料もかかりません。さらに、利用する機能の必要性に応じてプランを3種類から選べることなど、ビジネスモデルとしての収益構造が確立されています。 |
「Ziglu」(英国)デジタル銀行 | 法定通貨と仮想通貨の国際送金サービス | 2014年にリリースされた英国居住者向けの仮想通貨フィンテックアプリ。2020年からは法定通貨と仮想通貨を同一の預金口座で取り扱っています。複数の通貨を保持することが可能で、外貨の売買には銀行間レートが適用されます。仮想通貨の売買については、複数の仮想通貨取引所を比較した最適なレートで交換することができると説明されています。マスターカードのデビットカードを使用して、当該口座を利用することができます。 |
三井住友銀行 | NFT事業 | 2022年7月、Hash PortグループとNFTを始めとするブロックチェーンを使ったトークンの調査・研究組織である「トークンビジネスラボ」を設置し、実証実験やトークンビジネスのコンサルティングに取り組むとしています。 |
住信SBIネット銀行 | 暗号資産取引所との連携 | 2017年5月、暗号資産取引所と連携しました。国内の主要な暗号資産取引所の振込手数料は無料です。 |
SBI VCトレード | 暗号資産交換業者 | 2017年5月に設立され、国内最大級のインターネット総合金融グループとしての総合力を生かし、暗号資産におけるフルラインナップサービスを提供しています。 SBI VCトレードでは、現物取引 (販売所・取引所)に加えて、レバレッジ取引や積立暗号資産など様々な取引サービスを提供しており、全20銘柄の取引が可能です。 また、口座開設手数料・口座維持手数料・入金手数料・入出庫手数料については無料で利用できます。 |
みずほ銀行 | メタバースコインの決済サービス | 2022年、世界最大級のVR(仮想現実)イベント「バーチャルマーケット2022 Summer」で、メタバース上に出店し仮想店舗の実証実験を開始。2023年2月から、スマートフォン決済サービス「J-Coin Pay」の基盤を活用し、メタバースコインの決済サービスを開始 |
静岡銀行 | 仮想店舗 | 2023年6月、メタバースにインターネット支店「メタテラス」を開設し、金融商品の紹介やセミナー案内の実証実験を開始しました。 |
東京スター銀行 | 仮想店舗 | 2022年7月、(株)タッグが運営する都市型バーチャルモール「TUG MALL」に「東京スター銀行VRラウンジ」を出店。銀行店舗の体験ができるVRサイトで、24時間年中無休で利用できます。ATMは、入出金以外のネットバンキングと同様の操作が可能。相談・無料セミナーも画面に設定されているネット予約か動画を視聴できます。 |
三菱UFJ信託銀行 | 暗号資産 | 2024年にも仮想通貨交換業者向けの暗号資産を、円や米ドルの法定通貨に連動するように設計されたステーブルコインのデジタル通貨を発行し、国際決済が可能なシステムを構築するとしています。仮想通貨ウォレットの開発を手がけるGinco(東京)と共同で、安価で迅速な決済を目指す。 デジタル通貨は、三菱UFJ信託銀行が2023年10月に分社化したProgmatの開発するデジタルアセットプラットフォームで発行。プログマには3メガバンクグループなどが出資しています。 |
損保ジャパン | メタバース金融 | 2022年11月から、ANA NEO・三菱 UFJ 銀行と提携し、メタバース金融の実現に向けた新たなメタバース空間「SKY WHALE」上で、メタバースにおけるシームレスな金融サービスの在り方の検討および金融サービスの提供に向け、以下の項目を中心に 3 社で検証を実施することに合意しました。 ①メタバース空間における金融機能および金融サービスの提供に向けたニーズ調査・規制・制度などの検証 ②メタバース空間における各種データ分析・有用性などの検証 ③金融分野以外での新たな事業機会の創出の検討 |
東京海上日動火災保険 | 大災害の予測にデジタルツインを活用 災害体験ができるARアプリを開発 | 2021年8月、NTTコミュニケーションズらと共同で、デジタルツイン技術を活用した予測型マルチハザードソリューションの提供に向けた協業をスタートしました。 研究の目的は、シミュレーションに基づいた安全対策、災害発生時の補償などについて検討することです。 具体的には、デジタルツイン技術を活用した災害時の高度被害予測モデル構築・予測結果と連動した災害初期対応方針の策定・予測結果に基づく災害時の安全対策・防災ソリューションの保険の活用 |
メタバースを活用した教育

Web3の活用は教育分野でも関心が高まっており、新しい取り組みが始まっています。
例えば、教育機関では、XR(AR・VR・MR)による授業や研究・指導が行われています。
大学では2018年2月、東京大学バーチャルリアリティ教育センター(通称:VRセンター)が、東京大学内の複数部局の先端的VR研究を結集し、VR研究の世界的拠点を形成するとともに、VRを活用した先進的教育システムの導入を推進することを目的として設置されました。
また、2021年からスタンフォード大学では、Meta社のVRヘッドセット「Meta Quest 2」を活用した「Virtual People」というコースが開講されています。
事例としては、以下の活用例があります。
- オープンキャンパスや、海外の授業に参加したり、国際交流を図ったりといった活動
- 実験・実習の実施、医療系学生のための試験(OSCE:客観的臨床能力試験)対策等
- 語学の習得
- 海外含む自然体験学習、文化・芸術学習、職業体験学習
- 防災訓練・避難訓練
大学でのメタバース以外での活用方法としては、eラーニングサービスにブロックチェーンを活用して、個人の学習履歴の改ざんを防ぐ手法や、教材費や講師への暗号資産を活用した報酬支払いシステムがあります。
ブロックチェーンによって記録データの改ざんが行えないため、大学や研究機関における学生証・卒業証明書などの認証システムを構築したり、研究データの透明性・信頼性を確保できることもポイントといえます。
マサチューセッツ工科大学(MIT)では、2017年に世界で初めて学修歴証明書・卒業証書をNFT化し、「NFT for Education」 の先駆けとなりました。
また文部科学省は、2019年から「GIGAスクール構想」を掲げ、「Global and Innovation Gateway for All(全ての児童・生徒のための世界につながる革新的な扉)」を目標に、高等学校までを対象とした教育機関でのICT環境の取り組みをスタートしました。
広告報酬をNFTや暗号資産で配布
DAD(分散型広告)は、ブロックチェーンによる広告プラットフォームで、トークン・インセンティブ・スキームを導入しているため、ユーザーが閲覧すれば、広告主と閲覧ユーザーに暗号資産やNFTでエアドロップ(登録キャンペ―ントークン)やキャンディといわれる広告報酬が得られる仕組みになっています。
これはユーザーには広告を閲覧するメリットがあり、広告主には広告のマッチング率が向上するメリットがあり、プラットフォーマーには「トークングラフマーケティング」が可能となるため、購買行動の促進が期待できます。
「トークングラフマーケティング」とは、広告プラットフォーム上でユーザーが所有するトークングラフ(トークン保有情報)をもとに、ユーザーに対してより親和性の高いNFTの送付や企業の製品・サービスの訴求を行うマーケティング手法のことを指します。
これにより、ユーザーのプライバシーを尊重しつつ、効果的なマーケティングが可能となります。
メタバースによるオンライン診療
医療分野では、Web3により革新的な取り組みが行われており、その範囲は多岐にわたります。
例えば、医学教育(セミナー・実習)や手術支援、創薬・製薬の効率化、デジタル治療にWeb3が活用されています。
また現在メタバースを使用して、オンラインでの面会や相談が可能となる「バーチャルホスピタル」の実現に向けたプロジェクトが進められており、「病院DAO」の構想も視野にあります。
ブロックチェーンの活用が見込まれているのは、医療データの相互運用性の向上や臨床試験の効率化、医療保険詐欺の防止や医薬品サプライチェーン管理による偽造医薬品への対策などの分野で、新たな市場が期待されています。
医療・ヘルスケア領域における「メタ産業革命(メタバース×デジタルツイン)」の方向性として、以下の分野が挙げられます。
- CT・MRIなどのDICOM(医用画像標準規格)データを用いた身体のデジタルツイン化・シミュレーション
- 手術・医師熟練技能のVR化による技能継承・トレーニング
- VRを活用した遠隔ロボット治療の実現
- VRセラピー等デジタル空間におけるメンタルヘルス・コミュニケーション支援
- 飛沫・感染症シミュレーションを通じた行動変容
- デジタル・インタラクティブ・リハビリテーション・システム
Web3でビジネスモデルを考える際の注意点
Web3の分散型システムの進化に伴い、より公正で透明性の高いビジネスモデルの実現が期待されています。一方で、Web3の大きな課題として、関連する法整備がまだ十分に進んでいない点が挙げられます。各国で法整備の動きが見られる中、日本においてもWeb3推進に向けた取り組みが進んでいます。
特に暗号資産については、インサイダー取引に関する明確な法規制や、Web3に即した会計基準、税制の整備などが課題として存在します。そのため、Web3ビジネスを始める企業の中には、税制上の優遇措置や国家支援があるシンガポールやドバイなどで法人化する事例が見られます。
日本政府もWeb3の重要性を認識しており、2023年4月に最初の「Web3ホワイトペーパー」を公表しましたが、2024年にも最新の動向や政策の方向性を示した「Web3ホワイトペーパー2024」を発表しています。
参考:Web3 ホワイトペーパー 2024(自由民主党デジタルサカイ推進本部Web3プロジェクトチーム)
アメリカのベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツが2022年にWeb3の原則を提唱するなど、国際的な議論も活発です。これらの動きは、Web3における新たなビジネスチャンスを捉える上で、規制環境が整備されつつあることを示唆しています。
関連記事:Web3に関する法律とは?参入企業が押さえるポイントについても解説
まとめ:Web3ビジネスモデルの適法性は弁護士に相談を
以上、Web3を活用したビジネスモデルと、関連するテクノロジーや活用事例について解説しました。
Web3のビジネスモデルを考える際は、展開が可能な分野と特徴を理解した上で、適法な導入が重要となります。
上述したとおりWeb3については、日本においても法整備が進められています。関連する法律についても頻繁に改正が行われており、最新情報のキャッチアップは欠かせません。Web3ビジネスに関するご相談は、実績のある弁護士に相談することをおすすめします。
当事務所による対策のご案内
モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。当事務所は暗号資産やブロックチェーンに関わるビジネスの全面的なサポートを行います。下記記事にて詳細を記載しております。
モノリス法律事務所の取扱分野:暗号資産・ブロックチェーン
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務