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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

YouTuber・VTuber法務

ゲーム実況動画で気を付けるべきYouTube利用規約のポイントとは

YouTuber・VTuber法務

ゲーム実況動画

YouTubeやSNSの普及に伴ってゲームの楽しみ方も変わってきました。その一つが「ゲーム実況動画」の登場でしょう。自分自身がゲームをプレイするのではなく、他人がプレイしている様子を実況する「ゲーム実況動画」を楽しむ人が増えています。ゲーム実況動画はYouTubeでも人気ジャンルとして大きな人気を博しています。

こうした「ゲーム実況動画」を投稿するのにあたって、注意すべき法的問題はあるのでしょうか。本記事では、YouTubeでゲーム実況動画を制作し配信する場合に注意すべき点を解説します。

若年層に人気のゲーム実況動画

2020年の株式会社ジャストシステムの調査によれば、「ゲーム実況系動画を視聴したことがある」人は、調査対象とした17歳~69歳の男女1100名の25.9%で、年代別に見てみると、10代(55.9%)、20代(35.3%)、30代(32.5%)、40代(27.2%)、50代(8.9%)、60代(4.8%)でした。

また、ゲーム実況系動画を視聴し、自身もゲームをプレイする人のうち、「ゲーム実況系動画を配信したことがある」人は18.1%で、年代別で見てみると10代(30.4%)、20代(17.5%)、30代(17.3%)、40代(12.2%)、50代(0.0%)、60代(16.7%)でした。

(出典:株式会社ジャストシステム「動画&動画広告;月次定点調査(2020年8月度)」)

この調査結果からも、若年層を中心にゲーム実況動画の視聴・配信はメジャーなものになっています。

ゲーム実況動画で気を付けるべきYouTubeの利用規約

YouTubeには、大きくわけて3つの「規約」が存在します。

  • 利用規約
  • コミュニティガイドライン
  • 各種ポリシー等

これらのうち、利用規約は抽象的なものであり、それを具体的にしたのがコミュニティガイドラインと各種ポリシー等である、というのが基本的な構造です。「法律的には違法ではない」としても、規約に違反してしまうと動画を削除されてしまうこともあるので、投稿する際には、これらの「規約」に気を付ける必要があります。ここでは、ゲーム実況動画を投稿・配信する際に気を付けなければならないYouTubeの利用規約について解説します。

子どもの安全に関するポリシー

子どもの安全に関するポリシー

コミュニティガイドラインにおいて、子どもの安全に関するポリシーが定められています。未成年者(18歳未満)や家族を対象としたコンテンツに見せかけているのに、性的なテーマや暴力、わいせつなテーマなど、未成年者にふさわしくないテーマが含まれているゲームは、コミュニティガイドラインに反していることになります。

コンテンツが成人向けである場合は、アップロード時に年齢制限を設定できます。ゲーム実況動画の場合には、ゲームの内容によっては適切な年齢制限を設定する必要があるでしょう。

また、未成年者が関わるネットいじめや嫌がらせ、例えば、

  • 個人を嫌がらせや侮蔑の対象とするコンテンツ
  • 同意なく他人を録画したコンテンツ
  • 性的な嫌がらせを含むコンテンツ
  • 他人にいじめや嫌がらせをけしかけるコンテンツ

も同様にコミュニティガイドライン違反となります。

また、以下のいずれかを含むコンテンツには年齢制限が適用される場合があります。

  • 未成年者が真似をする可能性のある有害または危険な行為
  • 家族向けコンテンツの暴力、性行為、死など、成人向けテーマ
  • 若年層の視聴者向けとしては不適切な、露骨な性的表現や冒とく的な表現

関連記事:YouTubeの子どもに関するポリシーを解説 年齢制限を受けたコンテンツはどうなる?

ゲームには、「レーティング制度」があります。年齢別レーティング制度とは、ゲームソフトの表現内容にもとづき、対象年齢等を表示する制度です。年齢区分マークが付いているゲームを実況する場合には、動画にも適切な年齢制限を設定するとよいでしょう。レーティング制度の詳細については、以下をご参照ください。

参考:特定非営利活動法人コンピュータエンタテインメントレーティング機構|レーティング制度

ヌードや性的なコンテンツに関するポリシー

ヌードや性的なコンテンツに関するポリシーも定められています。性的なシーン、ビデオゲーム、音楽などの、現実世界のコンテンツまたはドラマ化されたコンテンツはガイドライン違反と判断されることがあります。暴力的、生々しい、あるいは侮辱的なフェティッシュを投稿すると、コンテンツが削除されたり、チャンネルが停止されたりすることがあります。

ゲームにそうした内容が含まれる場合には、年齢制限を設ける必要があります。コンテンツに年齢制限を設けるか、コンテンツを削除するかを決定する際には、以下の点が考慮されます。

  • 衣服で覆われた、または露出した乳房、臀部、性器が動画の中心であるかどうか
  • 動画の登場人物のポーズが、視聴者の性的興奮を引き起こすことを意図したものであるかどうか
  • 生々しい言葉やみだらな言葉が動画で使用されているかどうか
  • 衣服(ランジェリーなど)が公共の場で一般に受け入れられるものであるか
  • 性的な画像や音声が不鮮明、不明瞭になっているかどうか

これらはほんの一例であるので、このポリシーに違反する可能性があると思われる場合には年齢制限を設けるか、コンテンツの投稿をやめておきましょう。コンテンツにポルノが含まれる場合は、チャンネルが停止されることもあります。

参考:YouTubeのポリシー/ヌードや性的なコンテンツに関するポリシー

暴力的で刺激の強いコンテンツに関するポリシー

視聴者に衝撃や不快感を与えることを目的とする暴力的または残虐なコンテンツ、もしくは他のユーザーに暴力行為を促すコンテンツは、コミュニティガイド違反に該当します。したがって、以下のようなコンテンツは、ガイドライン違反となるため、投稿することはできません。

  • 個人または特定のグループの人々に対する暴力行為を扇動する
  • 交通事故、自然災害、戦争直後の状況、テロ攻撃直後の状況、路上でのけんか、暴行、性的暴行、侮辱、拷問、死体、抗議行動や暴動、強盗、医療行為などを含み、視聴者に衝撃や不快感を与えることを目的とする映像、音声、画像
  • 視聴者に衝撃や不快感を与える目的で、血液や嘔吐物などの体液を描写した映像または画像
  • 動物に不必要な苦痛や危害を故意に与えるコンテンツ
  • 手足の切断などの大怪我を負った死体の映像
  • 未成年者同士による学校での実際のけんか

参考:YouTubeのポリシー/暴力的で刺激の強いコンテンツに関するポリシー

ゲーム実況動画を投稿する際には、ゲームの中にこれらに該当する内容がないかを確認しておきましょう。

YouTubeにおいて注意すべき著作権とは

著作権

ゲーム実況動画においては、著作権が問題となります。この点では、YouTubeヘルプの「著作権について」では、「どのような種類の作品が著作権の対象となりますか?」に対し、

  • 音声と映像の作品(テレビ番組、映画、オンライン動画など)
  • サウンドレコーディングおよび楽曲
  • 執筆された作品(講義集、記事、書籍、楽譜など)
  • 視覚的作品(絵画、ポスター、広告など)
  • ビデオゲーム、コンピュータ ソフトウェア
  • 演劇作品(劇、ミュージカルなど)

が挙げられています。

「著作権の所有についてYouTube が判断を下すことはありますか?」という問いには、

いいえ、YouTube が権利の所有についての異議申し立て論争を仲裁することはできません。YouTube が正式かつ有効な削除通知を受け取ると、法律に従ってそのコンテンツを削除します。また、有効な異議申し立て通知を受け取ると、削除通知の申立人にそれを転送します。それ以後は、裁判を起こすなど、当事者同士で問題に対処することになります。

YouTubeヘルプ|著作権と著作権管理 著作権とは

とあります。ゲーム実況動画を投稿する際には、投稿者が各人で責任をもって著作権侵害を行わないように注意する必要があります。

関連記事:YouTube利用規約のポイントは?商品紹介・レビュー投稿動画の注意点を弁護士が解説

YouTubeのゲーム実況動画と著作権

著作権につき、ゲーム実況動画においては、特殊な側面があります。それは、YouTubeでゲーム実況動画を視聴した視聴者がそのゲームをおもしろいと感じれば、当該ゲームの購入につながる可能性がある点です。つまり、ゲーム実況動画は、ゲームの広告になるという側面があります。

先にご紹介したジャストシステムの調査によれば、ゲーム実況動画を視聴した後に「ゲームの攻略サイトを見た」人は26.3%で、「ゲームを購入した」人は24.2%でした(複数回答あり。株式会社ジャストシステム「動画&動画広告;月次定点調査(2020年8月度)」より)

特に、最近のゲームは、従来よりも展開の自由度が増しているものも多く、同じゲームをプレイしたとしても、必ずしも同じ展開となるとは限らず、ゲーム実況動画が、いわゆるネタバレにはならないケースもあり、ゲーム実況動画を視聴することによってゲームの購買意欲が増す可能性が高いのです。

そこで、権利者であるゲーム会社がゲーム実況動画の投稿を認めている場合があり、その場合、YouTubeにゲームの実況動画を投稿しても、著作権法に違反することとはなりません。

例えば、カプコンは、ネットゲームにも力を入れていますが、「サポート」には、「プレイ動画(実況含む)を動画サイト等に掲載したり、ライブ配信を行っても良いですか?」という質問に対し、「個人のお客様(動画配信に関して企業との契約・かかわりがない、芸能事務所・プロダクション等へ所属していない個人や団体)」に関しては、「弊社公式のガイドラインに沿った内容であれば可能です」とあり、動画配信の収益化も認めています。

スクウェア・エニックスでは、タイトルごとにガイドラインや著作物利用許諾条件が細かく定められています。『ドラゴンクエスト』シリーズでは、これまで動画配信は禁止されていましたが、2021年1月にガイドラインが改訂され、個人の動画収益化も認められるようになりました。任天堂もガイドラインに従っていれば、動画配信は原則的に許可しています。

多くのゲームメーカーが、動画配信を基本的に許可しています。許諾の範疇が異なったりするので、注意しておかなければなりませんが、ガイドラインを熟読し、これを遵守していれば、著作権侵害とはなりません。

まとめ:YouTubeへの動画投稿のリーガルチェックは専門家へ相談を

ここで解説したように、YouTubeでは、ゲーム実況動画にも厳しい基準が設けられています。

ゲーム実況動画の場合、著作権にも注意せねばなりませんが、著作権侵害ではないとしても、規約に違反してしまうと動画を削除されてしまいます。

ゲーム実況動画を投稿する場合には、YouTubeの利用規約等だけではなく、ゲームメーカーのガイドラインにも十分に気を付ける必要があります。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。昨今、YouTuberやVTuberの間でも、チャンネル運用にあたって、肖像権や著作権、広告規制などリーガルチェックの必要性が急増しております。下記記事にて詳細を記載しておりますのでご参照ください。

モノリス法律事務所の取扱分野:YouTuber・VTuber法務

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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