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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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どのメディアの信頼度が高いのか?目的別、メディアの利用実態を解説

「テレビの視聴時間をインターネットの利用時間が初めて超過 メディアの利用実態を解説」では、総務省(情報通信政策研究所)が2021年8月25日に発表した「2020年版情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の第5章中の「主なソーシャルメディア系サービス/アプリ等の利用率」までの概要について解説しましたが、ここでは、同じ第5章の「動画共有・配信サービス等の利用率等」以降の概要について解説します。

動画共有・配信サービス等の利用率等

第5章の「動画共有・配信サービス等の利用率等」では、

  • 全年代では「オンデマンド型の動画共有サービス」の利用率が最も高い状況が続いており、今回の調査で初めて80%を超過し、年代別に見ると、10代から40代で「オンデマンド型の動画共有サービス」の利用率は90%を超過
  • 「オンデマンド型の動画配信サービス」の利用率は、全年代、各年代で増加し、10代から30代の利用率は50%を超過

となっています。

利用率を見ると、これまでの調査に引き続き、オンデマンド型の動画共有サービス(YouTube等)の高い状況が続いています。全年代の利用率は85.4%で、初めて8割を超えました。2番目に多いのはオンデマンド型の動画配信サービス(Netflix、Hulu等)で46.3%、3番目はオンデマンド型の放送番組配信サービス(NHKオンデマンド、TVer等)で22.2%となっています。有料多チャンネル放送サービス(WOWOW、スカパー!、ケーブルテレビ等)の利用率はまだ13.1%ですが、これは50代18.8%、60代22.0%に対し、10代5.8%、20代7.5%というように、若い世代が低いからです。WOWOWの月額視聴料2530円(税込)は、10代や20代が自分で負担するには高いのかもしれません。

全年代におけるサービス別の利用率は、YouTubeが全年代で85.2%と最多で、10代96.5%、20代97.2%で、50代でも81.2%です。2番目に多いのはAmazonプライム・ビデオで全年代29.7%、特に20代では41.8%、30代では41.6%となっています。

ABEMAが10代で25.4%とかなり増えていますが、GYAO!、U-NEXT、Huluも、今後どの程度まで増えるのか、興味がもたれます。

目的別の利用メディア

第6章は目的別の利用メディアですが、「いち早く世の中のできごとや動きを知る」、「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」、「趣味・娯楽に関する情報を得る」という3つの目的を考えています。そのためには、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、書籍、インターネット、その他のどれを利用しているかを調査しています。

  • 「いち早く世の中のできごとや動きを知る」ためには、10代から40代では「インターネット」、50代及び60代では「テレビ」を最も利用
  • 「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」ためには、20代を除く各年代で「テレビ」を最も利用し、「新聞」は、年代が上がるとともに利用する割合が高くなり、50代及び60代では「インターネット」を上回る水準
  • 「趣味・娯楽に関する情報を得る」ためには、各年代で「インターネット」を最も利用しており、10代から30代で80%を超過

となっています。

「いち早く世の中のできごとや動きを知る」ために利用するのは、10代のインターネット対テレビは73.9%対23.9%で、年齢が上がるとともにテレビの割合が増えます。

しかし、「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」ためとなると、20代を除く各年代でテレビが最も利用され、テレビ利用率が低い20代でも、テレビ対インターネットは42.3%対43.2%です。「信頼できる情報」は、いまだにテレビから得ていることがわかります。

「趣味・娯楽に関する情報を得る」ために利用するのは、全年代でインターネットであり、最も低い60代でも39.0%です。

新聞は、「いち早く世の中のできごとや動きを知る」ために利用はほぼ0%ですが、「世の中のできごとや動きについて信頼できる情報を得る」ために利用するのは全年代で15.5%であり、最も低い10代ですら7.7%です。「趣味・娯楽に関する情報を得る」ために利用も、全年代で6.1%なのに、10代は6.3%であり、新聞の利用率は低くなっているとはいえ、若い年代にも一定の役割を果たしているようです。

このことは、次の「メディアの重要度・メディアの信頼度」と関連します。

メディアの重要度・メディアの信頼度

第7章は「メディアの重要度・メディアの信頼度」ですが、

  • 「情報源としての重要度」は10代から30代では「インターネット」、40代から60代では「テレビ」が最も高い重要度
  • 「メディアとしての信頼度」は30代から60代では「新聞」が最も高く、10代では「テレビ」の信頼度が「新聞」よりも高い

となっています。

「重要度」は、それぞれのメディアが「情報を得るための手段(情報源)」として、あるいは「楽しみを得るための手段」としてどの程度重要と評価しているかにつき、回答を「非常に重要」、「ある程度重要」、「どちらともいえない」、「あまり重要ではない」「まったく重要ではない」の5件法で求め、集計に当たっては、「非常に重要」と「ある程度重要」と回答したものを合計し、「重要度」として表しています。

その結果、「情報源としての重要度」では、全年代でテレビが86.7%、新聞52.8%、インターネット77.3%ですが、どの年代でもテレビは高く、10代や20代でも、テレビ離れはそれほど明らかではありません。

大きな年代差があるのが新聞であり、新聞の「情報源としての重要度」は40代53.7%、50代69.7%、60代75.5%であるのに、10代28.2%、20代31.5%、30代38.8%となっています。新聞は今後どうなるのか、心配になります。

「信頼度」は、それぞれのメディアにどの程度信頼できる情報があると考えているか、回答を「全部信頼できる」、「大部分信頼できる」、「半々くらい」、「一部しか信頼できない」「まったく信頼できない」の5件法で求め、集計に当たっては、「全部信頼できる」と「大部分信頼できる」と回答したものを合計し、「信頼度」として表しています。

その結果、「メディアとしての信頼度」では、全年代で最も信頼度が高いのは新聞で、66.0%であり、インターネット29.9%はもちろん、テレビ61.6%よりも高くなっています。

この新聞の信頼度の高さは、30代以上ではどの年代でも見られますが、20代でもテレビと新聞はともに54.9%であり、10代ではテレビの信頼度が高いと言っても、テレビと新聞はそれぞれ65.5%と62.7%であり、「テレビの方が高い」と結論するほどではありません。

注目すべきはインターネットの信頼度の低さであり、最も高い20代でも36.2%ですが、全年代で30%前後です。情報源としてよく利用はするものの、あまり信頼はしてはいないという結果でした。

新型コロナウイルスに伴う在宅時間の変化

今回の調査では「参考」として、「新型コロナウイルス感染症感染拡大に伴う在宅時間の変化等」の調査も行われました。その結果、

  • 1年前(令和2年1月)と比較して、在宅時間については、全年代では60.8%が「増えた」と回答
  • 増えた時間の過ごし方は、全年代、各年代で「趣味・娯楽(テレビ視聴、ゲームなどを含む)」が最も多く、10代では80%を超過

当然ですが、どの年代でも「在宅時間が増えた」のですが、興味深いことに年代が上がるにつれ、その割合が減っています。コロナ以前から在宅時間が長かったとも考えられます。

増えた時間の過ごし方は、どの年代でも「趣味・娯楽(テレビ視聴、ゲームなどを含む)」が最も多く、10代が最大ではあるのですが、60代も10代とほぼ同じ程度です。

「趣味・娯楽(テレビ視聴、ゲームなどを含む)」の中身は、全年代で「テレビを見る」が半数程度を占め、10代と20代で特に多いのは、「ゲームをする」「動画投稿・共有サービスを見る」でした。

「ニュースサイトや配信ニュースを見る」は、全年代で28.3%、30代以上では30%程度であり、これもけして高いというほどではないのですが、10代では15.5%、20代では19.7%にすぎませんでした。「新聞を読む」に至っては、60代が33.3%なのに、10代は1.4%ですから、若い年代がテレビ以外でニュースを知ることはほとんどないと言っていいでしょう。

まとめ

総務省(情報通信政策研究所)が、情報通信メディアについて、利用時間の長さ・時間帯、利用率、信頼度等を継続的に把握し、メディア間の関係や利用実態の変化等を明らかにするために行った、「2020年版情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」の概要を解説しました。

新型コロナウイルス感染症の拡大により、インターネットショッピングや動画配信などが伸張しましたが、様々な面で世代間格差がより目立つようになってきたといえます。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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