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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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他人のホームページに許可なくリンクを張るのはOK?リンクの著作権を解説

ネット上において公開された情報を第三者が利用することは原則として自由です。著作権については、他人のサイトにリンクを張っても、URL自体は著作物ではなく、公衆送信(著作権法23条1項)や複製(同21条)が行われるわけではありません。そうすると、リンクを張る行為自体は著作権法違反とはならないことのように思えます。 

では、どのような場合にも、他人のホームページにリンクを張る行為が、法的責任を問われることはないのでしょうか。 

リンクの態様 

今やPCだけでなく、スマートフォンによるネット閲覧も当たり前になったことから、リンクの態様は複雑化しており、様々な方式があります。 

  1. サーフェスリンク 
  2. ディープリンク 
  3. イメージリンク 
  4. インラインリンク 
  5. フレームリンク 

1のサーフェスリンクとは、他人のウェブサイトのトップページに通常の方式で設定されたリンクをいい、ユーザーがリンク元に表示された URL をクリックする等の行為を行うことによってリンク先と接続し、リンク先と接続することによってリンク元との接続が切断される場合のリンクをいいます。 

2のディープリンクとは、他人のウェブサイトのウェブページのトップページではなく、下の階層のウェブページに通常の方式で設定されたリンクをいいます。 

3のイメージリンクとは、他人のウェブサイト中の特定の画像についてのみ設定されたリンクをいいます。 

4のインラインリンクとは、リンク元のウェブページが立ち上がった時に、自動的にリンク先のウェブサイトの画面又はこれを構成するファイルがユーザーの端末に送信され、リンク先のウェブサイトがユーザーの端末上に自動表示されるように設定されたリンクをいいます。 

5のフレームリンクとは、ウェブブラウザの表示部を幾つかのフレームに区切って、フレームごとに対応付けられたリンク先のウェブページを表示させる態様のリンクをいいます。 

リンクを張る行為の法的責任 

他人のホームページにリンクを張った者は、どのような法的責任を負う可能性があるのでしょうか。 

リンクと不法行為 

インターネット上において公開された情報を第三者が利用することは、本来は自由ですが、リンク先の情報を、 

  1. 不正に自らの利益を図る目的により利用した場合 
  2. リンク先に損害を加える目的により利用した場合 

のように、不法行為によってリンク先のホームページ開設者の名誉や信用が毀損されたりする等、何らかの損害が発生した場合には、刑法上の名誉毀損罪、信用毀損罪が成立するだけでなく、民法上の不法行為責任が生じる可能性もあります。

リンクと不正競争防止法 

サーフェスリンクやディープリンクのような通常の方式のリンクを張る場合には、ユーザーの行為を介さないとリンク先の情報が表示されません。こうした行為が不正競争防止法に定める不正競争行為に該当する可能性は極めて低いと考えられます。 

一方、インラインリンクやフレームリンクの方式でリンクを張る行為については、リンク先の商品等の表示を、リンク元の営業とリンク先の営業とを誤認混同させるように使用した場合や、著名な商品等表示を自己の商品等表示として使用した場合には、不正競争行為に該当する可能性が高くなります。

また、リンクを張る際に、競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を表示した場合にも、不正競争行為に該当する可能性があります。 

リンクと商標法 

サーフェスリンクやディープリンクのような通常の方式のリンクを張る場合には、リンク先に他人の商標が表示されていたとしても、当該他人の商標を、出所表示として使用する行為には当たらない場合が多いので、リンクボタンなどにリンク先の企業の商標を無断で使用するような場合を除き、原則としては商標権侵害にならないと考えられます。 

一方、インラインリンクの方式やフレームリンクの方式でリンクを張る行為については、ユーザーから見れば、リンク元のウェブページの作成者があたかもリンク先の他人の商標を使用し、当該商標が出所表示機能を発揮しているような場合が想定され、そのようなやり方での使用は、商標法上の「使用」と評価される可能性があると考えられ、その「使用」が当該商標の指定商品又は指定役務に関してなされたものであると解される場合には、商標権侵害を構成する可能性があります。

リンクと著作権法 

リンクを張ること自体によっては、公衆送信も複製も行われるわけではないので、公衆送信権侵害、複製権侵害のいずれも問題にはなりません。サーフェスリンク、ディープリンク、イメージリンク、フレームリンク、インラインリンクの個別の態様でのリンクを張る行為自体においては、原則として著作権侵害の問題は生じないと考えられます。 

ただし、著作権侵害が行われている違法なウェブサイトにリンクを張った場合は、例外的に著作権法違反となる可能性があります。

「ロケットニュース24」というサイトがニコニコ動画に違法にアップされていた動画にリンクを張った事案がありました。この事案で、裁判所はリンクを張る行為は公衆送信権侵害とはならないと判断しました。さらに、著作権侵害コンテンツにリンクを張った場合でも、

  • 著作権者の許諾なしにアップされていることが明らかではない場合 
  • 違法なサイトであることを認識し得た時点で直ちにリンクを削除した場合 

には、著作権侵害とはならないとしました(大阪地方裁判所平成25年6月20日判決)。 

逆に言えば、 

  • 著作権者の許諾なしに違法アップロードされたものと知っていた場合 
  • 著作権者から指摘がきた後もリンクを削除せず張り続けた場合 

には、公衆送信権侵害の幇助としてリンクを張る行為が例外的に著作権法違反とみなされる可能性があるわけです。 

まとめ 

リンクの法的な問題については明確にされているわけではなく、無断リンクを巡っては、様々な紛争が生じています。 

「無断リンク厳禁」と明示されているウェブページにリンクを張る行為は、避けておく方が無難といえますし、どうしても行いたい場合には、十分に注意する必要があります。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。メディアを運営にあたって、リーガルチェックが必要な領域もあります。当事務所はITやインターネット関連のビジネス、音楽や映画等のエンターテイメント領域において、知財関連の戦略立案から契約関係、争訟までを手がけています。メディア等の運用に関わる、引用等の問題についても、企業内部向けガイドライン作成からM&Aにおけるデューデリジェンス(DD)の実施まで、各種業務に経験とノウハウを有しております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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