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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

アフィリエイトモデルのメディア運営者が気を付けるべき法律問題

企業の商品やサービスを効果的に宣伝する方法の一つとしてアフィリエイトがあります。消費者が商品やサービスを購入する際に口コミを重視する傾向にありますが、最近では特にインターネット検索で口コミやレビューを探すことが増えてきています。アフィリエイトサイトでは商品やサービスを使用した感想などを詳しく掲載しているため、参考にされることも多くあります。

アフィリエイトサイト経由で紹介した商品やサービスが購入されればASP等を通じてサイト運営者に成果報酬が入る仕組みとなっています。検索エンジンの検索結果上位に表示されるサイトでは、運営者が獲得する報酬も大きいため、今後も新規参入するメディアが増えると見込まれます。

他方で、アフィリエイトサイトは、商品やサービスの広告媒体という側面があります。このため、掲載する記事の内容について法律に抵触しないように注意する必要があります。

本記事では、アフィリエイトモデルのメディア運営をする際に確認すべき法律問題について解説します。

アフィリエイトサイトとは何か

アフィリエイトサイトとは、アフィリエイトの仕組みを取り入れたWEBメディアのことをいいます。アフィリエイトというのは、企業が自社の商品やサービスを第三者が運営するアフィリエイトサイトで紹介してもらうものです。アフィリエイトサイト経由で閲覧者が商品やサービスを購入したり資料請求したりといった一定の成果が発生した場合に、企業はサイト運営者に対して、一定の成果報酬を支払います。 

企業が直接アフィリエイトサイトの運営者と契約することもありますが、多くの場合にASPと呼ばれるアフィリエイトプログラムの仲介をする事業者を通して行われます。アフィリエイトサイトの運営者は、ASPに登録してASPが紹介するアフィリエイトプログラムの中から紹介する商品やサービスを選択してWEBサイトを運営します。アフィリエイトの成果が発生した場合には、ASPを通じて成果報酬が支払われる仕組みとなっています。

アフィリエイトサイトにおける法律問題

アフィリエイトサイトの運営においては、特にサイトに掲載する記事などのコンテンツに関する法律を理解しておく必要があります。以下では、問題となりやすい事項を解説します。

景品表示法に関する問題

景品表示法の規制内容

景品表示法は、景品類の提供・商品やサービスの内容等に関する表示に関する規制です。アフィリエイトサイトで問題になるのは、後者の表示に関する規制です。商品やサービスを実際よりも良く見せかける表示がされると消費者が誤って質の良くないものを購入して不利益をこうむるおそれがあります。

景品表示法は、このように商品やサービスの品質、内容、価格等を誤認させるような表示を規制しています。表示に関する規制は以下の3種類にわけることができます。

  • 優良誤認表示:商品又はサービスの品質、規格、その他の内容についての不当表示
  • 有利誤認表示:商品又はサービスの価格、その他の取引条件についての不当表示
  • その他誤認される恐れのある表示:一般消費者に誤認されるおそれがあると内閣総理大臣が指定する不当表示

アフィリエイトにおける注意点

結論から言うとアフィリエイトサイトに対して景品表示法が直接適用されるわけではありません。適用されるのは「自己の」供給する商品又はサービスに関する表示であり、他人が供給するものに関する表示には適用されないのです。アフィリエイトサイトに掲載されているのは、他社の商品やサービスに関するコンテンツです。したがって、現状では景品表示法の適用を受けないと考えられています。

ただし、直接適用されないからといって誇大表現や根拠のない虚偽の内容を掲載するのは当然に許されることではありません。景品表示法の優良誤認、有利誤認表示、誤認される恐れのある表示にあたらないように注意するべきです。具体的には、以下の3点に気を付ける必要があります。

  • 誇大表現になっていないか(裏付けのある表現か)
  • 客観的事実であることを証明することができない内容になっていないか
  • 事実や裏付けのない情報から他社と比べて有利と捉えられる表現になっていないか

例えば、「この商品は生活に不可欠だ」といった表現は誇大表現となる可能性があります。また、「A社よりB社の方が良いという意見が多いです」などという表現は、アンケート調査などの結果に基づく場合でない限り、事実や裏付けのない情報から他社と比べて有利と捉えられる表現にあたる可能性があるため注意が必要です。

著作権に関する問題

アフィリエイトサイトに限りませんが、WEBサイトの運営において著作権はしばしば問題となります。アフィリエイトサイトに関して特に注意すべき点を説明します。

テキストのコピペ・剽窃

WEBサイトコンテンツのうちテキスト部分に関しては、いわゆるコピペや剽窃が問題となります。他者のWEBサイトや本の文章を何の断りもなく転載するものは、その文章を作成した第三者の著作権を侵害することにもなりますので特に気を付けましょう。

他者の作成した文章を、アフィリエイトサイトで利用したい場合には著作権法上の引用に関するルールに従う必要があります。引用に関しては、引用が文脈上必要である限度にとどめることや引用元を明記することが重要です。

他者の文章を引用する際のポイントは以下のとおりです。 

  • その引用がテキストの文脈上必要である場合にのみ使用 (引用したほうが正確な情報を分かりやすく伝えられる場合など)
  • 引用する文脈を書き換えず 、引用していることが明らかに分かるような実装 (現状 blockquoteタグで実装 )をする
  • 引用元を明示し、WEBサイトである場合はリンクを設置
  • 記事の大部分(50%以上)が引用テキストにならないようにする

他者の画像や文章などの著作物の引用に関しては、下記記事でも詳細に解説しています。

画像

アフィリエイトサイトには、コンテンツ内容に合わせた画像を利用する機会が多くあります。画像をライターなど第三者から提供してもらう場合には、その画像がオリジナル画像であるかをGoogle画像検索などで調べる必要があります。

また、有料の画像提供サイトを利用する場合には利用規約をよく確認して規約に従った利用の範囲内かを確認します。特に、契約しているサイト外での使用をしないよう注意する必要があります。

このほか、画像を無料で利用できるフリー画像を利用することもあります。フリー画像に関しては利用条件が記載されている可能性もあるので十分な確認が必要です。フリー素材の利用に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

以上に加え、InstagramやYouTubeなどのAPI画像を利用する場合には、そのまま引用するのではなくアフィリエイトサイトの運営者側でも画像の内容をチェックすることが大切です。

Instagram画像では、キャラクターや有名人、他社の広告などが入っている画像は基本的に利用することができません。このような画像をアフィリエイトサイトに掲載すると、そのキャラクターなどの権利者からクレームが入ることがあります。

また、Instagramでは投稿者が自撮り画像を投稿していることもあります。このような個人を特定できる画像や個人の部屋が映っている画像については、その個人から許諾を得る必要があります。このため、どうしても記事に必要な場合をのぞいては利用しない方が無難です。なお、個人の自撮り写真であっても例えば顔の半分を隠しているなど個人を必ずしも特定できないような画像であれば利用することができます。

InstagramなどのSNSに掲載された画像の著作権に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

このほか、マイナス情報の記事に対してAPI画像を入れ込むことは基本的にしない方が良いでしょう。例えば、加齢をイメージさせるほうれい線の記事に個人のInstagram画像を利用するようなケースです。

また、YouTube動画に関しては、CM動画や放送番組の画像や音源を利用したものは著作権を侵害している可能性があるためアフィリエイトサイトには利用しないよう注意します。

また、他社のクレジット表示がある動画についても動画自体は違法ではないもののアフィリエイトサイトに転用した場合には訴えられるリスクがゼロではありません。このため、基本的に利用しない方がよいでしょう。

スクリーンショット

スクリーンショットに関しては、利用目的により扱いが異なります。私的使用目的のスクリーンショットは動画や音楽以外であれば現行法上は適法と考えられています。

ただし、アフィリエイトサイトの記事は、商業目的で公開するものであるため私的使用目的ということはできません。私的使用以外の目的でスクリーンショットを記事に貼り付けることは違法です。このため、アフィリエイトサイトでは商品などのスクリーンショットは利用できないと考えておく必要があります。

モラルに関する問題

以上のほか、かならずしも法律問題ではないものの、モラルに反する記事も掲載すべきではないでしょう。モラルに反する記事は、第三者からクレームを受けたり炎上するリスクがあるためです。

例えば、「歯の汚い人は不潔に見られます」など見た人が不快に感じる可能性がある表現などは避けるべきです。また、他社の扱う商品やサービスの品質を貶めるような表現は名誉毀損にあたる可能性もあります。また、閲覧者の誤ったクリックを意図的に狙うような広告表示の仕方も望ましくありません。

まとめ

アフィリエイトサイトに関しては、情報が不正確であったり他者サイトからコンテンツを盗用しているといったケースが残念ながら目立ちます。特に医療や法律などの一定の分野に関するコンテンツは閲覧者に健康被害や財産上の損害を与えるリスクを生じさせることもあり、Google検索結果からアフィリエイトサイトが排除される傾向にあります。

したがって、違法性のない質の高いコンテンツを提供することはアフィリエイトサイトの運営者にとっても今後より重要な課題となってきます。アフィリエイトについては、特有の法律問題もありますので、IT関連に詳しい弁護士事務所に相談することをおすすめします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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