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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

システム保守の契約書に盛り込むべき条項は?注意点を解説

他社が開発したシステムを導入して企業活動を行うことは、当たり前になりつつあります。ただ、システムは導入されて終わりではありません。導入後に発生する不具合やバグ等へ対応するため、保守が必要です。こうした保守作業は外部に委託されるケースが一般的です。

そこで、本記事では、システム保守契約の締結を考えている企業の方やエンジニアの方を対象に、システム保守契約において盛り込んだほうがいい条項や注意すべき点を説明します。

システム保守契約とは

システム保守契約とは、システムの保守に関する契約のことをいいます。

システムの保守とは、システムが不具合やバグなどを起こした際に、不具合やバグなどを直し、正常な状態を回復させることをいいます。

システムの保守とセットで使われる用語で、システム運用という用語がありますが、システム運用は、システムの正常な状態を維持し、不具合やバグなどが起きないようにすることをいいます。

システムについては、その性質上、バグや不具合が生じるケースが多く、システムの保守は、システムを正常に稼働させる上で、重要な作業といえます。

システム保守の具体的な業務の例

システム保守の具体的な業務としては、システムのバックアップ作業やトラブル発生時の修復作業等があります。

システムのバックアップ作業とは、システムのバグや不具合等によるデータの破損に備えて、システム内のデータを複製し、他の記憶媒体等に保存しておく作業のことをいいます。

トラブル発生時の修復作業とは、システムにトラブルが発生した際に、トラブルを解消し、システムの正常な動作を回復させることをいいます。

システム保守契約作成・検討における留意点

システムの不具合やバグによりシステムが稼働しなくなってしまうと、会社の業務運営に大きな支障が生じる可能性があり、システムの保守は、非常に重要な作業といえます。

システムの保守作業が適切に行われるためには、しっかりとした内容のシステム保守契約が締結されることが重要となります。

そこで、以下では、システム保守契約における留意点を説明します。

対象範囲を明確にする

一概にシステムといっても、様々な種類のシステムが存在し、また、その範囲も様々です。

システムの対象範囲が明確になっていないと、委任者側と受任者側で、認識の齟齬が生じ、トラブルが発生する可能性があります。

そこで、システム保守契約において、保守の対象範囲を明確にしておくことが重要です。

対象範囲に関する条項については、例えば、以下のような条項を規定することが考えられます。

第●条(目的)
委託者は、受託者に対し、委託者の顧客向けに使用されるシステムである●●●●(以下「本件システム」という。)の保守業務(以下「本件業務」という。)を委託し、受託者はこれを受託する。

対象業務を明確にする

前述のように、一概に保守といっても、様々な業務内容が含まれます。

そこで、システム保守契約において、保守の対象業務を明確にしておくことが重要となります。

対象業務に関する条項については、例えば、以下のような条項を規定することが考えられます。

第●条(業務内容)
1. 受託者は委託者の指示に基づいて本件業務を行うものとし、本件業務の内容は、以下の各号に定められた内容とする。
(1) 本件システムの障害の原因調査及び分析
(2) 本件システムの障害によるトラブルの復旧作業
(3) 本件システムの操作方法や運用方法についての問い合わせに対する回答
(4) 前各号に付帯する関連業務支援
2. 受託者及び委託者は、前項各号に規定されない業務(以下の各号の業務を含むがこれに限られない。以下同じ。)は、本件業務には含まれないことを確認する。委託者は、受託者に対し、双方協議の上、前項各号に規定されない業務を、有償で依頼することができるものとする。
(1) 本件システムの仕様変更その他開発作業
(2) ●●作業

保守業務の対応時間帯・方法を明確にする

システムについては、思わぬタイミングで、バグや不具合等は生じることが考えられます。

ただ、保守作業を行う者が、人員確保の関係や他の業務との関係で、保守作業を行うことができない時間帯が発生することも想定されます。

また、システムの復旧は、なるべく早急に行う必要があるため、円滑に連絡ができるように、あらかじめ対応方法を明確にしておくことも重要となります。

保守業務の対応時間帯・方法に関する条項については、例えば、以下のような条項を規定することが有効でしょう。

第●条(対応方法及び時間)
1. 本件業務にかかる対応方法は、電話又はメールとする。
2. 本件業務の遂行のために受託者の従業員の派遣が不可欠な場合、委託者は、受託者が従業員の派遣に要した費用を負担するものとする。
3. 前項のほか、本件業務の実施のために受託者の従業員若しくは第三者の派遣を要する場合又は委託者が派遣を希望する場合、委託者は、受託者が従業員又は第三者の派遣に要した費用を負担するものとする。
4. 本件業務の対応時間は、平日午前●時から午後●時までとする。但し、時間外対応が必要な場合、委託者は、受託者に対し、受託者が別途定めた追加費用を支払うことにより、対応時間外の本件業務の遂行を依頼することができるものとする。

システム保守契約の主要条項とその解説

上記では、システム保守契約において、特に重要な条項について説明をしましたが、以下では、システム保守契約のその他の主要条項を説明します。

委託料に関する条項

金銭に関する条項は、トラブルとなる可能性が高い条項ですので、委託料に関する条項は、明確に規定しておくことが重要となります。

委託料に関する条項については、委託料の金額や委託料の具体的な算定方法を規定しておくことはもちろんですが、委託料の支払い時期についても、規定しておいた方がよいと考えられます。

秘密保持に関する条項

システムの保守作業を行う場合、作業の遂行の過程で、受託者が、委託者の秘密情報に触れることも想定されます。

そこで、委託者の秘密情報を保護するために、秘密保持に関する条項を規定することも考えられます。

個人情報の保護に関する条項

システムの保守作業を行う場合、システムが顧客管理に関するシステムであるような場合には、作業の遂行の過程で、受託者が、委託者が保有している顧客の個人情報に触れることも想定されます。

そこで、委託者が保有する顧客の個人情報を保護するために、個人情報の保護に関する条項を規定することも考えられます。

作業場所に関する条項

システムの保守作業の内容によっては、受任者が、委任者のオフィスで作業を行うようなケース想定されます。

そこで、受任者が、円滑に保守作業を行うことができるように、作業場所に関する条項を規定しておくことも必要でしょう。

損害賠償に関する条項

システムの保守作業については、受任者による保守作業がうまくいかないという不測の事態が生じ、委任者が損害を被ってしまうケースも想定されます。

システムが関係している場合には、損害が大きく拡大してしまうことも考えられるため、損害賠償に関する規定で、損害の範囲を明確にしておくことが考えられます。

また、損害賠償の金額の上限を、委託料の範囲に限定するなど、損害賠償の金額に限定を加えておくことも考えられます。

まとめ

以上、システム保守契約の締結を考えている企業の方やエンジニアの方を対象に、システム保守契約において留意すべき点を説明しました。

システム保守契約においては、システム保守の一般的な業務を理解したうえで、システム保守契約において確認すべきポイントを把握してから契約書を作成・締結することが重要となります。

システム保守契約の作成を考えている方や、システム保守契約を締結しようと考えている方は、一度、専門的な知識を有する弁護士に相談を行うことをおすすめします。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。補助金代行業の安全な活用にあたっては契約書の作成が必要です。当事務所では、東証プライム上場企業からベンチャー企業まで、様々な案件に対する契約書の作成・レビューを行っております。もし契約書についてお困りであれば、下記記事をご参照ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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