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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

インスタ(Instagram)アカウントを特定したい!開示請求で嫌がらせを止める手順

風評被害対策

インスタアカウントを特定したい!開示請求で嫌がらせを止める手順

Instagram(インスタ)で誹謗中傷などの嫌がらせを受けて、トラブルになるケースが増えています。

この記事では、インスタで嫌がらせを受けた際の投稿者のアカウント特定方法と解決策について解説します。

インスタで起こりやすい嫌がらせ被害とは

インスタで起こりやすい嫌がらせ被害とは

インスタでは、誹謗中傷、なりすまし、無断転載、ネットストーカーや情報漏洩などの嫌がらせが発生することがあります。

誹謗中傷

インスタで多い嫌がらせが誹謗中傷です。たとえば、飲食店のアカウントに「 このお店で友達がバイトしてたんだけど、調理場は虫だらけだったらしいよ~」 などのコメントが書き込まれるケースです。

個人のアカウントに「死ね」「きもい」など罵詈雑言のコメントやメッセージが送られてくることもあります。

また、実際は違うにもかかわらず事件の犯人だと決めつけられ、事実無根のデマを拡散されたり、誹謗中傷を受けたりするケースもあります。

なりすまし

なりすましとは、アカウントのプロフィール写真やアカウント情報、投稿をコピーして他人になりすましたアカウントを作ることです。

ユーザーネームは同じものを二つ作ることができないため違うものになりますが、似たユーザーネームであればよく見ないとわからないため、なりすましアカウントと気付かれないこともあります。

インスタのなりすましへの対処方法については、以下の記事で詳しく解説しています。

無断転載

インスタに投稿した写真や動画を無断で他のアカウントに転載されることです。

インスタだけでなく、自分が著作権を持っていない写真や動画をインスタに無断で投稿することは無断転載にあたります。

インスタで無断転載されたときの対処法については、以下の記事をご参照ください。

ネットストーカー

ネットストーカーとは、ネット上のつきまとい行為です。

インスタにしつこくコメントやメッセージを送ってきたり、インスタに投稿した写真から所属先等を特定する等、さまざまな被害があります。

アカウントをブロックしても、別のアカウントを作り直してストーキングしてくるケースもあります。

インスタ上でのネットストーカーから、実際のつきまとい行為に発展するリスクも考えられるため、注意が必要です。

ネットストーカーへの対処方法については、以下の記事をご参照ください。

情報漏えい

インスタにアップした写真から所属する学校、職場や住所などを特定され、「○○大学の学生なんですね」などとコメントされてしまうと個人情報の漏えいにつながります。

自分の住所や学校等の所属先がわかる写真は投稿しないように気を付けていても、写真に写り込んだ窓ガラスや鏡などからエリアが絞り込まれ、さらに他の投稿内容から特定されてしまうこともあります。

投稿者のインスタアカウント特定の流れ

インスタアカウント特定の流れ

インスタの投稿者特定手続きの大まかな流れは、以下の通りです。

  1. IPアドレスの開示請求
  2. ログの削除禁止命令または通知
  3. 住所氏名の開示請求

それぞれの手順について、以下で詳しく説明していきます。

手順1.IPアドレスの開示請求

はじめに着手するのは、IPアドレスの開示請求です。

IPアドレスの開示請求は、正式な裁判を行う必要はなく、仮処分によって対応できます。

裁判は長期間に及ぶことが多く、1年以上にわたるケースもあるのですが、仮処分は、約1~2ヶ月と早めに決定が出ることが多いです。

IPアドレスとは

PC、スマホやタブレットなどネットワーク上にある機器が持つナンバーのことです。

IPアドレスという名前の通り、インターネット上の住所のような役割を果たしています。

インスタのアカウントを作成する際、携帯電話番号またはメールアドレス、フルネーム、ユーザーネームとパスワードを入力します。

このフルネームは、実名でなくてもかまいません。

このため、インスタの運営側は、ユーザーの個人情報を携帯電話番号やメールアドレスしか把握していない可能性が高いでしょう。

特にフリーのメールアドレスで登録している場合、個人を特定するのは難しいといえます。

投稿者の個人情報を特定するためには、まず最初にIPアドレス情報を開示してもらう必要があります。

IPアドレス開示には投稿の違法性を立証する必要がある

インスタのコミュニティガイドラインの「詳細」には、以下の記載があります。

(前略)
これらの規定範囲に従わない行為は、コンテンツの削除、アカウントの停止、またはその他の制限につながる可能性があります。
(後略)
※Instagramコミュニティガイドライン「詳細」

https://help.instagram.com/477434105621119?helpref=page_content

運営に規約やガイドライン違反として削除されたコメントは、必ずしも違法性があるものとは限りません。

IPアドレスの開示請求を行って、裁判所にIPアドレスの開示命令を発令してもらうためには、以下二つの対応が必要です。

  • コメントの違法性を示す法的な主張
  • 上記を裏付ける証拠の提出

裏付けとなる証拠について、どのような書面等が証拠になるかは状況により異なりますので、まずはITに強いモノリス法律事務所までお気軽にお問い合わせください。

手順2.プロパイダにログの削除禁止命令または通知

IPアドレスの開示請求に成功すると、コメント投稿者が使用していたプロバイダを特定することが可能です。

プロバイダは、IPアドレス使用者のログ(コンピュータの利用状況の記録)を一定期間保存しており、そのログを見れば送受信されたデータの内容や日時などがわかります。

しかし、ログは永遠に保存されているわけではありません。

特に携帯回線などはログの保存期限が短く、3ヶ月程度で削除されることもあります。

ログが削除されてしまうと、コメントの投稿者の記録が消えてしまうため、裁判所からプロバイダに対して、ログの削除禁止命令を出してもらわなければなりません。

この禁止命令は、IPアドレスの開示請求とは別の裁判手続が必要になります。

ただ、「コメント投稿者の住所氏名開示請求手続を行うので、開示請求命令が出るまではログを削除しないでほしい」という内容の通知を出せば、裁判まで起こさなくてもログを保存しておいてもらえるケースも多いようです。

そのため、まずは裁判ではなく、通知を検討したほうがよいでしょう。通知を出す場合にも、コメントの違法性を主張し違法性を示す証拠を用意する必要があります。

このような通知を作成するにあたっても法的な知識は必要ですので、弁護士へ依頼して作成してもらった方がよいでしょう。

手順3.インスタ投稿者の住所氏名開示請求の手続

手順3.インスタ投稿者の住所氏名開示請求の手続

次に、インスタ投稿者の住所氏名開示請求手続きを行います。

住所氏名開示請求は、仮処分ではなく、正式な裁判手続を通して行う必要があります。

例えば、インスタで芸能人がエステの投稿をしていた場合に

「施術で機械の強さを間違えられて、肌を傷めて病院に通うことになりましたが、エステ側からは謝罪も何もありませんでした。こんな悪質なエステを紹介するのはやめてください。」

というコメントが投稿されている場合、そのコメントが嫌がらせ目的ではなくちゃんとした根拠があり、また、その事実を公にすることが公共の利益に合致すると考えられるのであれば、その投稿者の住所や氏名が開示されるのは不適切であると考えられます。

裁判所は慎重な審議を重ね、その投稿に違法性があると認めた場合にのみ、住所氏名の開示命令を出すのです。

新制度「発信者情報開示命令事件」による迅速な特定方法について

2022年10月1日から、従来の開示請求よりも迅速に投稿者を特定できる新制度「発信者情報開示命令事件」が始まりました(改正プロバイダ責任制限法による)。

発信者情報開示命令事件では、従来のように「IPアドレスの開示請求」と「住所氏名の開示請求」を別々に行う必要がありません。一度の申立でSNS運営会社(コンテンツプロバイダ)と通信事業者(プロバイダ)の双方に対して開示命令を出してもらうことができます

手続きは裁判所が主導する「非訟事件」として扱われるため、仮処分や訴訟を分けて進める必要がなく、数か月程度で開示が得られるケースもあります。これにより、これまで半年〜1年以上かかっていた投稿者特定までの期間が大幅に短縮されました。

従来の手続き(仮処分・訴訟)は今も利用可能ですが、迅速に投稿者を特定したい場合は、この新制度を利用する方が効率的です。モノリス法律事務所では、発信者情報開示命令事件に基づく手続きにも対応していますので、インスタでの嫌がらせ被害にお悩みの方はご相談ください。

インスタアカウントの開示請求を行う際の注意点

インスタグラム上で誹謗中傷や嫌がらせをされた場合、投稿者の特定を目的として開示請求を行うことが可能です。ただし、感情的に対応し、証拠を失ってしまうような行動を取ると、開示請求が難しくなるおそれがあります。

ここでは、開示請求を進める際に特に注意しておきたいポイントを紹介します。

相手に直接返信しない

誹謗中傷の投稿を見つけたとき、つい言い返したくなります。しかし、相手に直接返信したり、挑発的なコメントを返すのは避けなければなりません。やり取りを重ねるとトラブルが拡大し、被害者側の発言が「報復」や「挑発」ととらえられてしまう場合もあります。

また、返信をきっかけに相手が投稿を削除してしまうと、証拠や発信者情報が失われ、特定が難しくなる場合もあります。

誹謗中傷に気づいた場合は、感情的に反応せず、投稿のスクリーンショットを撮って証拠を残すことが大切です。相手との直接的なやり取りは避け、弁護士など専門家に相談してください。

削除請求手続きは慎重に行う

被害を受けた投稿をすぐに削除してもらいたいと思うのは自然なことですが、削除請求は慎重に進める必要があります。なぜなら、投稿が削除されると、後から投稿者の特定を行うのが難しくなる可能性があります。

投稿の削除を求める前に、まずは投稿の内容をスクリーンショットで保存し、投稿URLや投稿日時、スクリーンショットを保存した日時なども控えておくことが重要です。

ストーリーズやDMの開示請求はできるのか?

ストーリーズやDMで誹謗中傷を受けた場合でも、内容によっては開示請求が可能です。投稿形態に関係なく、他人の権利を侵害する発言であれば、発信者情報開示の対象になります。

ただし、ストーリーズは24時間で自動的に消えてしまうため、できるだけ早く証拠を確保することが重要です。スクリーンショットや録画などで記録を残しておけば、後からでも開示請求の手続きを進められます。

また、DMのように非公開で送られたメッセージでも、受信者が被害を受けている場合には、証拠として開示請求の対象になる場合があります。

近年では「発信者情報開示命令事件」という新しい制度が導入されたことで、こうした一時的な投稿や非公開メッセージでも、より迅速に開示請求を行えるようになりました。ストーリーズやDMであっても泣き寝入りせず、証拠を保存したうえで専門家に相談してください。

インスタアカウントを特定した後の対応

インスタアカウントを特定した後の対応

損害賠償・慰謝料を請求

住所氏名開示命令が出されると、投稿者がコメントをした際に使用していたインターネット回線を契約している者の住所氏名が開示されます。

ここまで特定出来れば、一連の手続にかかった弁護士費用や被った損害に対する慰謝料などを請求することが可能になります。

投稿者が損害賠償金をきちんと支払って、弁護士費用に充当することができれば、被害者に金銭負担は発生しません。

ただ、投稿者の特定が失敗に終わる可能性や、投稿者の特定に成功して損害賠償を請求できたとしても、損害賠償金が弁護士費用に満たず、被害者に金銭負担が残ってしまうこともあります。

この点については、下記記事で詳しく解説しています。

刑事告訴を行う

インスタでの嫌がらせが名誉毀損や業務妨害に該当する場合は、刑事告訴を検討することもできます。

刑事告訴とは、「 告訴権者(犯罪の被害者等)が、捜査機関または検察官に対して、犯罪の事実を申告し、犯人の処罰を求める意思表示を行うこと」です。

どういった行為であれば刑事告訴をできるのかについては、ケースにより異なりますので、まずはお問い合わせください。

弁護士に開示請求を依頼した場合の費用相場

弁護士に開示請求を依頼した場合の費用相場

弁護士に開示請求と削除を依頼した場合の費用の相場は、インターネット上の情報では着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度とされています(対象とする投稿の内容や量によって費用は変わります)。

なお、インスタの運営法人は、Meta Platforms, Inc.という米国法人です。

悪質なコメント投稿者が日本在住であったとしても、手続きの相手方は海外法人となるため、必要書面や証拠等の英訳や米国法人の登記取得が必要となります。

日本法人を相手方とする手続に比べると、英訳等の実費として20万円程度が弁護士費用に上乗せされる場合が多いです。

まとめ:インスタアカウントを特定して嫌がらせを止めよう

まとめ:インスタアカウントを特定して嫌がらせを止めよう

インスタは、友人と写真を共有したり、興味のある有名人やお店の情報を気軽に得られる便利なサービスです。しかし、投稿に対して嫌がらせや誹謗中傷にあたるようなコメントがされてしまうケースもあります。

インスタに寄せられた悪質なコメントの投稿者を特定するためには、上記の通り複数の裁判手続が必要となります。

コメントの投稿者の特定に成功すれば、損害賠償を請求できるようになりますが、一連の手続きに要する弁護士費用もけっして安くはないため、損害賠償金が弁護士費用や損害額に満たないケースもあります。

投稿者特定手続きは、法律やインターネットに関する豊富な専門知識を要する複雑な手続きです。

インスタの悪質な嫌がらせにより被害を被った方は、ネット上の誹謗中傷にノウハウを持つモノリス法律相談所にご相談ください 。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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