5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の過去ログと削除方法とは
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)には、「一つのスレッド内のレスは最大1000個まで」という制限があります。この上限に達すると、そのスレッドはそれ以上の書き込みができなくなり、下記のような表示が行われます。
1001 1001 Over 1000 Thread
このスレッドは1000を超えました。
新しいスレッドを立ててください。
そしてさらに時間が経つと、1000までレスが埋まったスレッドは、過去ログという扱いになり、「過去ログ倉庫」に格納されます。また、レスが1000に達しなかったスレッドも、一定期間新たな書き込みがないと、同様に過去ログ倉庫に格納されます。この現象は、後述するように、dat落ちとも呼ばれています。
こうした、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)における過去ログの扱いと、そうした過去ログを削除する方法について解説します。
この記事の目次
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の過去ログとは
実は、2013年頃まで、過去ログ倉庫に格納された過去スレッドは、通常の方法では閲覧することができませんでした。
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、過去ログ以外のスレッド、つまり、
- 現在も書き込み可能なスレッド
- 書き込みが1000に達して間もないスレッド
のみが、「スレッド全一覧」に表示されるという仕組みです。
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のトップページからリンクを辿って探せるのは、基本的には上記のようなスレッド、いわゆる現行スレッドのみです。
そして以前の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)では、過去ログ内のスレッドは、優良の専用ビューアを用いなければ閲覧不能であり、スレッド内の書き込みが検索エンジンでヒットすることもありませんでした。つまり、誹謗中傷投稿が含まれるスレッドがあっても、そのスレッドのレス数を1000にしてしまえば、そのスレッドは過去ログ倉庫に格納され、普通に5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のトップページから辿っても、書き込み内の文字列を検索エンジンで検索しても、辿り着くことができなかったのです。こうした現象より、
- そのスレッドがブラウザから閲覧可能なhtmlではなく
- 専用ビューアでのみ閲覧可能なdatファイルしか公開されていない状態になる
という意味で、「dat落ち」とも呼ばれていました。
なお、本記事は、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)に関するものです。5ちゃんねると2ちゃんねるの関係については下記記事にて詳細に解説しています。
現在は過去ログ倉庫内のスレッドも普通に閲覧可能
今でもネット上では、「5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)に誹謗中傷投稿をされた場合、書き込みを増やしてそのスレッドをdat落ちさせれば良い」といったコメントも見られますが、これは、上記のような現象を指しているものと思われます。
しかし、現在の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、レス数が1000を超えたスレッド、一定期間新たな書き込みがなかったスレッドも、普通に検索エンジン等で検索可能です。したがって、誹謗中傷対策として、「レス数を増やしてdat落ちさせる」という方法は、基本的にはもう無意味といえます。
逆に言えば、自身や自社に対する誹謗中傷投稿が含まれるスレッドが存在した場合、そのスレッドが過去ログになっているからといって、「対策が不要」とは言えない状況となっています。
過去ログ倉庫内のスレッドを探す方法とは
検索エンジンを用いた検索方法
過去ログに入っているスレッドを検索するのは、簡単です。
まず、普通に検索エンジン上で検索を行った際の検索結果には、現行スレッドも、過去ログも、双方とも含まれます。分かりやすい検索方法としては、Googleの検索式を用い、「キーワード site:5ch.net」を検索するのがオススメです。この「 site:5ch.net」とは、「キーワードが含まれる、5ch.netドメイン内のページを検索する」という意味です。上述のように、現在の5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、現行スレッドも過去ログ倉庫内のスレッドも、普通に検索エンジン上に表示されるという仕様なので、この方法で検索を行えば、「指定キーワードが含まれる、現行スレッドor過去ログ倉庫内のスレッド」が検索結果として表示されます。
専用サービスを用いた検索方法
また、過去ログの検索等に特化されたウェブサービス、アプリケーションなどを用いる手もあります。一番有名なのは、「5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)掲示板全文検索」というウェブサービスでしょう。使い方は非常に簡単で、検索ワードを入力し、「検索サイト」で「5ch.net(旧2ch.net)」を選択して「検索」をクリックすると、下記のように検索結果が表示されます。
「コピーサイト」を用いた検索方法
また、いわゆる「コピーサイト」を用いて検索を行う手もあります。例えば、「ログ速」というサイトは、キーワード検索で、そのキーワードが含まれる全てのスレッドが表示されます。このサイトは、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)のみならず、2ちゃんねる(2ch.sc)や、「おーぷん2ちゃんねる」という2ちゃんねる風掲示板にも対応しています。
なお、「ログ速」は、単に検索機能を持っているのみならず、自前で5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)や2ちゃんねる(2ch.sc)などのログデータをコピーする形で保持し、表示させているサイトです。その意味で、このサイト自体が5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)等の「コピーサイト」であると言えます。5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)や2ちゃんねる(2ch.sc)と「コピーサイト」の関係性については、下記記事で詳細に解説しています。
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)過去ログの削除方法
埋立という手段が有効でない以上、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)で誹謗中傷に該当するような書き込みを見つけた場合、それが現行スレッドであれ過去ログ倉庫内のスレッドであれ、削除を行う必要があります。
メールによる削除の形式要件
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の削除申請は、現行スレッドの場合も過去ログの場合も、メールとなります。削除依頼のメールを、[email protected]のアドレス宛に送信するという方法です。この際は、メールのタイトル(件名)や添付資料などが厳密に定められており、
異議申し立てに際しては、
5ちゃんねる削除体制(http://qb5.5ch.net/saku2ch/)
件名 削除異議申し立て
内容 URL
レス番号
異議申し立て理由
理由を根拠付ける資料があれば添付
本人確認のための資料
を添付するものとする
という形式通りのメールを送信しないと、形式要件で撥ねられてしまいます。また、「異議申し立て理由」は、単に「その投稿が自身や自社にとって不利益である」というだけではなく、「違法である」ということを、名誉権侵害、プライバシー侵害など、具体的な権利や法律上の利益との関係で主張しないと、なかなか相手にして貰えません。
削除の判断基準
削除判断基準には
削除は、リクエストのあった記事について、対応の可否を判断するものとする。
5ちゃんねる削除体制(http://qb5.5ch.net/saku2ch/)
1.名誉
個人ないし法人の社会的評価を低下させる事実を摘示するもの。
2.プライバシー
人の名前(イニシャル等であっても、個人の特定)、住所、家族の名前、電話番号等の組み合わせで、個人のプライバシーを侵害していると判断できるもの。
3.平穏に生活する利益
他人に危害を加えることを予告するもの。
悪質な殺害予告については、掲示板上で公開することがある。
4.社会に害悪が生じる現実的危険性がある情報例えば、爆弾を製造する方法、薬物の売買をうかがわせる情報
と記載されており、1が名誉権、2がプライバシー権の議論となります。これらは法律的な議論なので、何故その書き込みが名誉権侵害に該当するのか、といった点をきちんと記載する必要があります。これらに関しては下記記事にて詳細に解説しています。
削除はレス単位であることに注意
さらに、上記の形式からも明らかなように、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の削除は、基本的にレス単位です。つまり、スレッドが全体として違法であるという主張は基本的に認められず、特定のレスについて、上記のような主張を行う必要があります。もちろん、例えば「レス番号3,5,10,12が全て、こうした理由で違法である」というように、複数レスを対象とすることは可能です。
こうした、メールによる削除依頼の方法については、下記記事でも詳細に解説しています。
メールによる削除は難易度が高い
ただ、こうした形式要件を満たすメールを送っても、実際問題として、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の削除は、容易ではありません。あるレスが名誉権侵害に該当する理由、といった主張は、純粋な法律文書であり、専門家でないと、なかなか対応できないケースが多いと言えます。また、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)では、
- 犯罪に関する情報
- 法人に関する情報
- 前科・前歴の記載の削除
は、基本的にメールでは受け付けられません。
ただ、これらをメールでは削除しない、というのは、あくまで5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の運営方針の問題です。犯罪に関する情報であれ、法人に対する誹謗中傷であれ、前科や前歴の情報であれ、一定の条件を満たせば違法であり、削除されるべきものであることは当然です。弁護士を通じた裁判外交渉や、裁判所を用いた「仮処分」という手続を用いれば、削除できるケースはあります。
例えば、前科・前歴に関する削除に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
仮処分による過去ログの削除
現行スレッドの場合も過去ログの場合も、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の削除を裁判所を通じて求める場合は、「仮処分」という手続を用いることになります。
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、「弁護士に頼んでもなかなか消えない」というような印象もありますが、仮処分で勝ち、弁護士が適正な方法でその旨を運営者側に通知すれば、削除は行われます。したがって、違法な書き込みは、少なくとも最終的に仮処分手続を用いれば削除可能です。
仮処分の場合も対象はレス単位
注意点として、裁判所を通じた削除の場合も、対象はスレッドではなくレス単位です。法律の建付として、削除を請求できるのは「違法な投稿」であり、この「投稿」というのは、掲示板サイトの場合、スレッドではなくレスだからです。これは、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)でも2ちゃんねる(2ch.sc)でも、そして現行スレッドでも過去ログ倉庫内のスレッドでも同様です。
海外法人相手なのでノウハウは必要
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、運営法人がフィリピン法人であり、法人登記を取得する・国内裁判所に事件を扱わせる(専門用語で国際裁判管轄といいます)こと等に、一定の「癖」があります。ただ、これらは、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)相手の仮処分を多数手がけている弁護士であれば、ノウハウとして保有しているものです。「メールを送っても削除できなかったので諦めるしかない」と考えず、専門家に相談するべきでしょう。削除仮処分に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
過去ログ倉庫内の書き込みもIP開示請求が可能
また、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)は、過去ログ倉庫内のスレッドであっても、IP開示請求が可能です。詳細な仕様は不明ですが、単に過去ログに入った段階では投稿ログは消えておらず、しかし、極端に古い書き込みの場合、ログが存在しないケースもあるようです。
投稿者特定は、IPアドレスが開示されただけでは実現できず、開示されたIPアドレスを元に、プロバイダに対して住所氏名開示を求めないと実現できません。本記事では詳細は割愛しますが、大まかには、
- 投稿者のIPアドレスを保持しているサイト運営者(本件の場合は5ちゃんねる運営者)に対して、IPアドレスの開示を求める
- 開示されたIPアドレスを元にプロバイダを特定し、そのプロバイダに対して、当該IPアドレスを用いていた者の住所氏名の開示を求める
というフローとなるからです。そして2に関しては、
- 固定回線のプロバイダは12ヶ月程度しか接続ログを保持していない
- 携帯回線のキャリアは3ヶ月程度しか接続ログを保持していない
という、厳しいタイムリミットがあります。過去ログに入っている書き込みは、そもそもある程度期間が経過しているため、上記のタイムリミットに引っかかって投稿者特定をできないケースが多いとは言えます。ただ、上記のタイムリミット内であれば、過去ログ倉庫内であるからといって投稿者特定を諦める必要はありません。投稿者特定に関しては下記記事にて詳細に解説しています。
また、下記記事において5ちゃんねるの書き込みに関するIPアドレスの開示請求について説明がされています。