Twitterで起こりうる犯罪とは?過去の事件と罪を解説
Twitterは、気軽に情報を発信・収集でき、簡単に世界中の人々と繋がることができることから、現代における主要なSNSの一つになっています。
しかし、その「気軽さ」ゆえに、Twitterでは、誹謗中傷やその他の犯罪が数多く発生していることが深刻な問題となっており、気づかぬうちに自分が犯罪の加害者もしくは被害者になっている場合もあるでしょう。
そこで、本記事では、Twitterで起こりうる犯罪について、どのような行為が犯罪になってしまうのかを、過去の具体的な事例を挙げながら解説します。
この記事の目次
Twitterで誹謗中傷や犯罪が起こりやすい理由
Twitterで誹謗中傷や犯罪が起こりやすい理由としては、投稿の手軽さと拡散性の高さが挙げられます。
Twitterでは、自分の思ったことや言いたいことを投稿ボタン一つで、簡単に投稿できます。ストレスや鬱憤をすぐに吐き出せるため、誹謗中傷などに繋がりやすいのだと考えられます。また、匿名での投稿が可能な点も、そのような投稿を加速させる一つの要因でしょう。
拡散性の高さについては、Twitterの特徴の一つである「リツイート」や「いいね」が大きな要因となっています。他人のツイートを「リツイート」や「いいね」することで、自身のフォロワーにも当該投ツイートが拡散され、これが繰り返されることで無限に拡散されていきます。
この拡散性の高さは、情報流通の加速という積極的な意義が認められますが、他方で、より多くの人の目に触れやすくなることから、投稿の手軽さと相まって、誹謗中傷や犯罪の温床になっているというのも事実です。
では、Twitterにおいては、具体的にどのような犯罪が過去に問題とされてきたのでしょうか。
Twitterで起こった犯罪①:有名人への脅迫
Twitterで起こった犯罪として、有名人への脅迫について解説します。
脅迫罪とは
刑法第222条に定められている犯罪で、文字通り、相手を脅迫し畏怖させることにより成立する犯罪のことです。なお、金品を略取する目的で行う場合は恐喝罪、強盗罪が成立するため、脅迫罪とはなりません。
(脅迫) 第二百二十二条 生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。 2 親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
アイドルに殺人をほのめかし、脅迫容疑で逮捕
2014年2月、アイドルグループ「アリス十番」の立花あんなさん(当時21歳)に対して、Twitterで殺害をほのめかす文章を投稿するなどして、脅迫罪の疑いで会社員(当時33歳)が逮捕されました。
具体的には、公演で赤い衣装を着ている立花さんを「人参」と呼び「特注包丁でザクザク切り刻んであげるよ」、「あふれ出た赤い汁も全部飲み干してやる」などの文章がTwitterに投稿されました。立花さんの写真に日本刀のようなものを突き刺した写真を自身のブログに掲載するなどの行為を、ほぼ毎日、多いときには1日約10回行い、やがて日時指定の殺害予告を始めています。
アグネス・チャンさんを脅迫し、書類送検
2015年9月、歌手であるアグネス・チャンさん(当時60歳)の公式Twitterに、アグネスさんのTwitterで殺害を予告する投稿をし、当時中学3年生の男子が脅迫罪の疑いで書類送検されました。
具体的には、「ナイフでメッタ刺しにして殺しますよ」、「児童ポルノ認めないと君のアグネス御殿は血まみれになりますよ。今すぐ認めてくださいね」などの投稿をしたことが認められています。
Twitterで起こった犯罪②:ストーカー行為
Twitterで起こった犯罪の2つ目として、ストーカー行為があります。
ストーカー規制法とは
ストーカー規制法は、「ストーカー行為を処罰するなどストーカー行為について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等を定めることにより、個人の身体、自由及び名誉に対する危害の発生を防止し、あわせて国民の生活の安全と平穏に資することを目的として」、2000年11月24日に施行されました。
この法律で規制の対象となる「ストーカー行為」とは、同一の者に対し「つきまとい等」と「位置情報の無承諾取得等」を反復して行うことですが、Twitterで特に問題となるのは「つきまとい等」です。
ストーカー規制法第2条第1項において、「つきまとい等」とは、 特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、その特定の者又はその家族等に対して、以下の行為を行うことであると定められています。
- つきまとい、待ち伏せ、住居等周辺の見張り・うろつき、住居等への押しかけ
- 監視していると告げる行為
- 面会・交際等の要求
- 乱暴な言動
- 無言電話、拒否後の連続した電話・文書・ファクシミリ・電子メール・SNSのメッセージの送信等
- 汚物等の送付
- 名誉を傷つける
- 性的羞恥心の侵害
なお、ストーカー行為をした者には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金等の罰則が定められています。
ネットストーカーに関する詳細は下記にてご確認いただけます。
女子高生に付きまとい、ストーカー規制法違反で逮捕
2017年1月、女子高生に付きまとい、監視しているというツイートを繰り返し、「〇〇ちゃんのスカートの中は神秘的で毎晩お世話になってます。神風に感謝?」というツイートをするなどストーカー行為をした疑いで、大学病院医師(当時34歳)が逮捕されました。
Twitterで起こった犯罪③:業務妨害罪
Twitterで起こった犯罪として、業務妨害罪を解説します。
業務妨害罪とは
業務妨害罪とは、直接には、「虚偽の風説」または「偽計」により業務を妨害する罪(刑法第233条)を言いますが、その妨害手段によって罪名が変わってきます。例えば、「威力」を用いた場合には威力業務妨害罪(刑法第234条)、「電子計算機…を損壊」等した場合には電子計算機損壊等業務妨害(刑法第234条の2)がそれぞれ成立することになります。
(信用毀損及び業務妨害) 第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害) 第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
(電子計算機損壊等業務妨害) 第二百三十四条の二 人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
Twitterで問題になりうるとすれば、①虚偽の風説、②偽計、③威力による業務妨害ですが、①~③は、それぞれ以下のような行為であると考えられています。
なお、業務妨害罪については、下記記事でも解説していますので、是非ご覧ください。
災害発生時にデマを投稿し、偽計業務妨害罪で逮捕
2016年、熊本地震が発生した後、「地震のせいでうちの近くの動物園からライオンが放たれたんだが」というデマをTwitterに投稿した男性が、動物園に対する偽計業務妨害罪で逮捕されました。
殺人予告した中学生を、威力業務妨害罪で補導
2016年11月4~6日の間に「今から福岡に向かう。子どもたち、トラックに十分注意するように。殺人ゲームの始まりだ」「7日の下校時間を狙います」とTwitterに殺人予告した中学生(当時14歳)が同年11月12日、威力業務妨害罪で補導されました。
ツイッターで起こった犯罪④:児童買春・児童ポルノ禁止法違反
Twitterで起こりうる犯罪に、児童買春・児童ポルノ禁止法も問題となっています。
児童買春・児童ポルノ禁止法とは
「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律」(児童買春・児童ポルノ禁止法)は、1994年に批准した国際条約「児童の権利に関する条約」第34条に基づく、18歳未満の児童を売春などの性的搾取から保護するための措置として、1999年に成立・施行されました。
児童買春・児童ポルノ禁止法では、「児童買春」や「児童ポルノ頒布等」の行為を規制対象としていますが、Twitterで特に問題となりやすいのは「児童ポルノ頒布等」(第7条)です。
この児童ポルノ頒布等罪は、刑法上のわいせつ物頒布等罪(刑法第175条)の特別法として存在しており、特に児童を保護する目的から、処罰範囲がきわめて広く、また、刑罰も加重されています。
(わいせつ物頒布等) 第百七十五条 わいせつな文書、図画、電磁的記録に係る記録媒体その他の物を頒布し、又は公然と陳列した者は、二年以下の懲役若しくは二百五十万円以下の罰金若しくは科料に処し、又は懲役及び罰金を併科する。電気通信の送信によりわいせつな電磁的記録その他の記録を頒布した者も、同様とする。
(児童ポルノ頒布等)
第七条 児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
2 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。
3 第一項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。
女児のわいせつ画像をツイートし、書類送検
2014年11月、女児のわいせつ画像をツイートしたとして、男性(当時52歳)が児童買春・児童ポルノ禁止法違反(頒布)で書類送検されました。
また、この事案では、同じ画像をリツイートした男子中学生も、同法違反の非行内容で児童相談所に通告されています。
自分の裸をTwitterに投稿した女子中高生らを書類送検
2016年3月、自分の下半身などのわいせつ画像や動画をTwitterに投稿し、不特定多数が閲覧できるようにしたとして、当時14~17歳の中学高校の女子生徒4人とアルバイト少年が、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(公然陳列)で書類送検されました。
Twitterのリツイートも罪に問われることがある
Twitterでは自発的な投稿だけでなく、単なるリツイートやいいねも、罪に問われる可能性があります。
特に、わいせつ画像のリツイートやいいねには、細心の注意を払う必要があります。
わいせつ画像のリツイートやいいねは、結果的に、自身のフォロワーやその他不特定多数の人がわいせつ画像を閲覧できる状況を作り出していると言えるため、刑法第175条のわいせつ物頒布等罪や、児童買春・児童ポルノ禁止法違反に該当する可能性があります。
2014年には、女児のわいせつ画像をリツイートによりインターネット上に公開したとして、児童ポルノ法違反などの疑いで横浜市の男ら2人が書類送検され、当時14歳の少年が児童相談所に通告された事案も発生しています。
リツイートやいいねをする際も、本当にその行動が適切なものかどうか、一度立ち止まって考えてみてください。
まとめ:Twitterで犯罪のおそれがある場合は、弁護士に相談を
Twitterは現代の情報社会において非常に有用性のあるツールです。しかし、一歩使い方を誤れば、容易に、かつ、ひどく他者を傷つける凶器となり得ます。
そして、自分が投稿するツイートだけでなく、他者の不適切な画像等をリツイートやいいねしただけであっても犯罪に当たる可能性があるため、誰しもが容易に犯罪の加害者または被害者になりえます。
しかし、加害者または被害者のいずれの立場にせよ、事態が大きくなるにつれて、自分で解決することは非常に難しくなっていきます。したがって、自身がTwitterを含むSNSでの犯罪の当事者になってしまった際には、速やかに専門的な知識を持つ弁護士に相談されることをお勧めいたします。
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