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風評被害対策

好き嫌い.comでの誹謗中傷コメントの投稿者特定方法を解説

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好き嫌い.comでの誹謗中傷コメントの投稿者特定方法を解説

「好き嫌い.com(好き嫌いドットコム)」は芸能人や有名人の人気投票が行われ、芸能人や有名人の好き嫌いを共有できるサイトです。このサイトには悪質なコメントも多く投稿されており、誹謗中傷に苦しめられている方も多いと聞きます。

本記事では、好き嫌い.com上で誹謗中傷された場合に、投稿者を特定する方法を解説します。

好き嫌い.comとは

好き嫌い.comとは

好き嫌い.comは「好き嫌い.com運営事務局」が運営する、芸能人や有名人の「好き」「嫌い」のどちらかを投票し、コメントをすることによって、好き嫌いを共有できるサイトです。

サイトのトップページには

みんなのホンネが集まる場所。

あの有名人って本当に人気あるの?

みんなのホンネが集まる日本唯一のサイト。

好き嫌い.com

とあり、「好感度ランキング」「不人気ランキング」「トレンドランキング」というような3つのランキングがあり、それぞれ5位までの対象者がトップページに出ており、それぞれ99位までを見ることができます。

そして、画面下の「新着コメント」には、芸能人達の写真と、最新コメントが投稿された時間が「1分前」「2分前」と出ており、コメントを書き込まれた有名人が表示されています。

例えば、ある女優Aに対し「好き」をクリックすると、

「好き派53.85%(10736票)、嫌い派46.15%(9202票)」

といったように、その時点での投票数と割合が見れるようになっており、「嫌い派」が過半数を超える場合には「不人気ランキング」が表示されます。

好き嫌い.comのコメント欄と誹謗中傷の実態

好き嫌い.comのコメント欄と誹謗中傷の実態

好き嫌い.comでは、それぞれ対象者に投稿された最新コメント20本を見ることができ、各意見を「good」と「bad」で反応をすることも可能です。

このコメント欄は、

  • すべて表示
  • 好き派のみ
  • 嫌い派のみ

を選択できるので、好き派同士でだけ語っていればいいとも思えるのですが、デフォルトで表示されているのが「すべて表示」であるため、多くの人が、悪口や誹謗中傷、また人種差別や民族差別を伴うヘイト発言などを目にしてしまいます。

好き嫌い.comの投票は完全匿名なので、一人の投稿者が複数の人になりすますことも可能なことから、本人が知らない間に炎上騒ぎになる場合もあります。特にデビュー間もない新人や若手の芸能人の場合、放置しておくと致命的な痛手となる可能性があるため、コメントを「削除する」という手段もあります。

しかし、コメントを削除しただけでは問題が解決しない場合もあります。明らかな嫌がらせや明確な目的があるコメントの場合、当該コメントを削除することはできても、同一人物から悪意あるコメントを繰り返し投稿されたり、別のプラットフォームに記事を転載されたりする可能性があるからです。

上記のような事態を防いで、問題を解決するためには、投稿者を特定して法的な手段をとり、責任を追及する必要があると言えます。誹謗中傷コメントへの具体的な対応方法や好き嫌い.comでのコメント削除手順については、以下をご参照ください。

関連記事:好き嫌い.comのコメントは削除可能?削除方法についても解説

好き嫌い.comの誹謗中傷コメントで問われる罪

好き嫌い.comの誹謗中傷コメントで問われる罪

「好き嫌い.com」における誹謗中傷コメントは、以下の刑法上の罪に該当する可能性があります。

  • 名誉毀損罪
  • 侮辱罪
  • 脅迫罪
  • 信用毀損及び業務妨害罪

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、特定の人物や団体の社会的評価を下げた場合に成立します。好き嫌い.comにおいても、事実かどうかにかかわらず「〇〇は、強制わいせつ罪で有罪判決を受けた」などと書き込んだ場合には、名誉毀損と判断される可能性が高いでしょう。

名誉毀損罪は、3年以下の拘禁刑、または50万円以下の罰金に処されます(刑法第230条)。

具体的な事実を示さずに他人を公然と侮辱する行為は、侮辱罪に該当します。「バカ」などの表現が侮辱罪に該当する可能性があります。1年以下の拘禁刑、もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処されます(刑法第231条)。

相手に害を加える旨を告げて相手に恐怖を与える行為は、脅迫罪に該当します。「殺す」「家族に危害を加える」などの発言が脅迫罪に該当する可能性があります。2年以下の禁固刑または30万円以下の罰金に処されます(刑法第222条)。

虚偽の情報を流布し、他人の信用を傷つけたり業務を妨害したりした場合、信用毀損罪や業務妨害罪が成立します。「○○の店は不衛生だ」といった虚偽の投稿などがこれに該当する可能性があります。3年以下の禁固刑または50万円以下の罰金に処されます(刑法第233条)。

これらの行為は、匿名であっても、投稿者を特定することによって法的責任を問える可能性があります。被害を受けた場合は証拠を保存し、弁護士に相談するようにしましょう。

好き嫌い.comの誹謗中傷による投稿者の特定には発信者情報開示請求が必要

好き嫌い.comの誹謗中傷による投稿者の特定には発信者情報開示請求が必要

悪質なコメントや虚偽のコメントの投稿者に対して法的な手段をとり、責任を追及するためには対象者の氏名や住所を知る必要があります。

匿名投稿である好き嫌い.comの投稿者の氏名や住所を知るためには、管理人(運営会社)に対して発信者情報開示請求を行い、投稿者の情報を開示するよう求めます。

当サイトの別記事で詳しく解説していますが、発信者情報開示請求とは、ネット上で他者を誹謗中傷するなどした発信者、つまり犯人の情報(住所・氏名・登録された電話番号等)について、情報を保有しているプロバイダに対して開示するように求める制度です。

関連記事:書き込みした犯人を特定する「発信者情報開示請求」とは?

しかし、そもそも好き嫌い.comは運営者情報を会社名・個人名といった形で公表しておらず、運営者と連絡が取れるはお問い合わせフォームのみになります。

関連URL:好き嫌い.comとは

ここから発信者情報の開示を求める申請自体は可能ではありますが、運営者がこの開示申請に応じる義務はなく、発信者情報が開示されるとは限りません。

好き嫌い.comの誹謗中傷に対する開示請求の要件

好き嫌い.comの誹謗中傷に対する開示請求の要件

好き嫌い.comで投稿者の開示請求を行うには、誹謗中傷によって権利が明白に侵害されていることが必要です。名誉毀損やプライバシー侵害が認められ、証拠がそろっているのであれば請求が認められる可能性があります。

一方、投稿内容に公共・公益性や真実性があると判断された場合には、違法性が否定されるため開示は認められません。

また、「好き」「嫌い」といった単なる感想や意見のみでは権利侵害とは認められにくく、開示請求が認められない傾向にあります。

さらに、「いいね」などのリアクションについても、原則として開示請求の対象にはなりません。ただし、極めて例外的なケースとして「いいね」を押した人物が以下の場合には、開示が検討される余地があります。

  • 以前から誹謗中傷の投稿を繰り返している
  • 多数のフォロワーを持つなど、影響力のある人物である
  • 中傷コメントに対して、繰り返し「いいね」を押している

これは、あくまでも例外であり、「いいね」での開示請求が認められるハードルは極めて高いのが現状です。

開示請求の可否は投稿内容や状況によって異なるため、証拠を整理するとともに法的観点からの慎重な判断が求められます。

好き嫌い.comで誹謗中傷された場合の投稿者特定と法的対応の流れ

好き嫌い.comで誹謗中傷された場合の投稿者特定と法的対応の流れ

確実に好き嫌い.comの投稿者を特定するにはどのような手順を踏めば良いのでしょうか。

適切な手順は以下の通りです。

  1. 好き嫌い.com運営会社の特定
  2. 誹謗中傷を行った発信者の情報開示請求
  3. 損害賠償請求や刑事告訴
  4. 誹謗中傷を行った発信者特定後の損害賠償請求や刑事告訴

以下で、4つの手順について詳しく説明していきます。

手順1:弁護士会照会による好き嫌い.com運営会社の特定

先程記載した通り、投稿者を特定するためにはまず発信者情報開示請求を行いますが、好き嫌い.comの運営会社は不明で、住所も公表していないため、そのままでは請求することができません。

運営会社が不明な場合の特定方法はいくつかあるのですが、好き嫌い.comには複数の日本企業の広告が掲載されています。広告を配信している代理店は、サイトに広告を掲載する契約をしているのですから、運営会社の情報を持っています。

つまり、運営会社の情報を広告代理店に教えてもらう事により、管理者を特定できる可能性があります。しかし通常、広告代理店は個人情報を教えてくれません。

そこで有効なのが、「弁護士会照会」です。下記の記事で詳しく解説しています。

関連記事:弁護士会照会で得られる情報とは?開示請求の手順も解説

広告代理店が弁護士会からの照会を受けた場合には、回答してくれる可能性が高くなります。

そして、運営会社を特定することができれば、IPアドレスの開示請求を申請することが可能となります。

手順2:誹謗中傷を行った発信者の情報開示請求(任意に応じる/裁判手続き)

発信者情報開示請求が行われると、コンテンツ・サービス・プロバイダである好き嫌い.comの運営会社は、請求が法律上の要件を満たしているかどうかを判断し、開示するかどうかを決めることになります。

運営会社が任意で開示請求に応じる場合もありますが、「裁判所による公的判断が下されない限り開示請求には応じられない」という対応が多々あるため、好き嫌い.comを相手として発信者情報開示に係る裁判手続きを経ることとなります。プロバイダ側からすれば書き込みをした人物はお客様ですし、個人情報保護の観点からも任意の情報開示請求に応じるケースはほとんどないというのが実情です。

そのため、多くの場合、裁判所を介した法的手続きによって情報開示を求めていくことになります。

手順3:好き嫌い.comの運営会社に対する仮処分申立と非訟手続(裁判手続き)

令和4年より非訟手続が新たに創設されました。詳しくは当サイトの別記事で説明しておりますが、仮処分と非訟手続のどちらも正式な本訴訟という裁判手続ではなく、比較的迅速な手続きです。

仮処分申立の場合は、まず、好き嫌い.comの運営会社に対する仮処分申立を行います。そして情報開示が認められたら、好き嫌い.comより速やかにIPアドレスとタイムスタンプが開示され、その情報を頼りに誹謗中傷口コミの投稿をした人が契約しているアクセスプロバイダ(例:携帯の通信会社)へ本訴訟提起を行います。以前のこの手続きだと、口コミを書きこんだ投稿者の特定まで1年ほどかかるのが通例でした。

一方、非訟手続きは好き嫌い.comの審理で判明したアクセスプロバイダの申立も、同一手続き内で一括して行うことができるようになりました。これにより、アクセスプロバイダへの本訴訟提起が簡略化され、仮処分を用いた手続きよりも早く発信者情報が開示されます。また、消去禁止申立といった関連の手続も非訟手続で可能です。

関連記事:発信者情報開示請求とは?改正に伴う新たな手続きの創設とその流れを弁護士が解説

つまり、発信者情報開示においては、非訟手続を用いると以前よりも迅速かつ容易に、発信者の特定が可能になったと言えます

手順4:誹謗中傷を行った発信者特定後の損害賠償請求や刑事告訴

「投稿の記載内容により権利が侵害された」と認められ、「正当な理由がある」と判断されれば、裁判所はアクセスプロバイダに対して、投稿の際に利用された契約者の氏名・住所等の開示を命じてくれます。

発信者情報の開示により発信者が特定された場合、発信者に対して取りうる手段はいくつか考えられます。もちろん複数を選択することも可能です。

  • 今後は誹謗中傷をしないと誓約させる
  • 損害賠償の請求を行う
  • 開示手続にかかった経費を請求する
  • 刑事告訴をする

まとめ:好き嫌い.comの誹謗中傷にお困りなら弁護士にご相談ください

まとめ:好き嫌い.comの誹謗中傷にお困りなら弁護士にご相談ください

インターネット上で誹謗中傷された場合、ひどい内容の投稿を削除するだけでは、根本的な解決にならない場合があります。投稿者を特定し、責任を追及することが肝要です。

ただし、好き嫌い.comは運営会社が不明なので、手続きは大変複雑になります。問題の早期解決・再発防止のためにも、豊富な経験を持つ弁護士に相談することをお勧めします。

なお、コメントの削除の方法に関しては、下記記事にて解説しています。

関連記事:好き嫌い.comのコメントは削除可能?可能な法的措置についても解説

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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