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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

爆サイ.comの書き込みを削除するには

風評被害対策

近年、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)等の匿名掲示板が増えています。その中でも、特に誹謗中傷が書き込まれやすいといわれるサイトとして爆サイ.com(以下、爆サイ)が挙げられます。

モノリス法律事務所では、爆サイに関して2016年以降1000件以上の削除実績があります。削除に要する期間はおよそ1~2週間と早く、受任した案件においては90%以上の確率で削除に成功しており、クライアントの風評被害の拡大を防いできました。

そこで、今回は弊所に蓄積された知見をもとに、爆サイ.com(以下、爆サイ)における風評被害対策について解説します。

爆サイに関する解説

爆サイは、「日本最大級のローカルコミュニティ掲示板」と称して運営されている電子掲示板です。2019年11月8日現在の月間PVは約9億となっており、電子掲示板としては5ちゃんねるに次ぐ規模を誇ります。他の掲示板と異なる爆サイ独自の特徴は、掲示板が地域ごとに設置されている点にあります。具体的には、東北版・関東版・関西版といったように地方ごとに大きくわかれ、その中でさらに市区町村ごとにわかれた掲示板が存在しており、全国レベルではあまり話題にならないような、地域密着型の企業や店舗などに関する書き込みも多く行われます。

引用:爆サイ.com

爆サイではどのような風評被害があるのか

爆サイは、掲示板が地域ごとに立てられるという特徴を有するが故に、特定の人や店についての誹謗中傷が、その地域と関連付けた形で投稿されることとなります。この結果、当該地域に居住する人が閲覧すればただちに誰に対する誹謗中傷であるかの特定が可能となってしまいます。

実際に爆サイの掲示板を見てみると、具体的な企業名や個人名が記載されたスレッドが相当数立ち上げられていることがわかります。誹謗中傷の内容としては多岐にわたるものの、「〇〇株式会社は粉飾をしている」「株式会社△△は▲▲という違法行為をしている」「××は不倫している」等の書き込みが比較的目立ちます。これらの誹謗中傷を受けた場合、周囲から誤解を受けて不必要な軋轢を生むおそれがあります。

また、採用活動や融資の判断を受ける際に、求職者や金融機関の担当者が誹謗中傷記事を目にするようなことも想定され、不当なマイナス評価を受ける可能性があります。このように店舗や会社に対する誹謗中傷であれば、事業そのものに対する風評被害は、はかり知れません。

爆サイでの風評被害対策における削除の手段

爆サイにおける書き込みを削除する方法は、大きく分けて裁判外での削除請求と裁判手続きによる削除請求に分かれます。

このうち、裁判外での削除請求は、書き込みがサイトの利用規約に違反することを理由とするものと、書き込みが違法であることを理由とするものに分類できます。

また、裁判手続きによる削除請求は、仮処分によるものと、本案訴訟によるものに分けられます。

書き込みの利用規約違反を理由として削除請求する方法

利用規約違反を理由として、爆サイに削除請求を行う場合には、各スレッド内にある削除依頼フォームから請求を行うことができます。

もっとも、爆サイでは削除請求を受けたすべての投稿を削除するのではなく、利用規約に違反するもののみを削除しています。爆サイの利用規約では、運営者は利用規約に定める禁止事項に反する投稿について削除の措置を講ずることとされています(利用規約3条2項)。このため、削除を請求する場合には、どの投稿が利用規約のどの条項に違反するのかを特定して行う必要があります。爆サイの利用規約3条1項には、サイト利用上の禁止事項として以下の行為が挙げられています。

第3条【禁止事項】

(1)当サイトにおいて以下の行為を禁止します。

1.bakusai.comドメイン以外のURLの記載
2.各掲示板に指定されたテーマや情報から逸脱した内容の投稿
3.同一内容の多数投稿や無意味な文字の羅列等の行為(マルチスパム投稿)
4.出会いを求める投稿及び援助交際目的の投稿
5.他人の名誉、社会的信用、プライバシー、肖像権、パブリシティ権、著作権その他の知的財産権、その他の権利を侵害する行為(法令で定めたもの及び判例上認められたもの全てを含む)
6.本名、住所、メールアドレス、電話番号の記載(一般に公開されている情報・公人に関してはこの限りではありません)
7.指定された掲示板以外での物品売買行為
8.指定された掲示板以外での求人関連投稿
9.有害なコンピュータプログラムなどにリンクするもの
10.当サイトまたは当サイトに接続しているサーバーもしくはネットワークを妨害したり、混乱させたりすること
11.犯罪予告、自殺への誘引その他他人を威迫・脅迫する旨が看取される内容を含むもの
12.当サイトを利用しての宗教の宣伝を含む宗教的行為、および宗教団体の設立・活動、宗教団体への加入等宗教上の結社に関する行為
13.詐欺、強迫、マルチ商法、ネズミ講もしくはその他の違法取引行為またはかかる取引への勧誘
14.「麻薬及び向精神薬取締法」「銃砲刀剣類所持等取締法」によって所持、取引または取扱が規制される引き及び物質等の所持及び使用への勧誘
15.その他、日本国の法令が禁止する事項
16.上記以外の、管理者が不適切であると判断する行為

bakusai.com 利用規約3条1項

書き込みの違法を理由として削除請求する方法

噂が書き込まれた場合

「粉飾をしているをしている」といった根拠のない誹謗中傷の書き込みについては、後で説明する名誉毀損の成立要件を満たす場合に利用規約の禁止事項5.に定める名誉権の侵害に該当するとして削除を請求することになります。

私生活上の情報が書き込まれた場合

仮に書き込まれた情報が真実であっても人の私生活にわたる事項であれば、利用規約における禁止事項5.に定めるプライバシー権の侵害にあたるとして削除請求することができます。例えば、不倫関係の書き込みにおいて「▽▽の店長Aが、ナンバー▼▼の車でB子と待ち合わせていた」といった情報は、真実であるか否かにかかわらず本来他人に知られたくない私生活上の情報であることから、プライバシー権により保護されているとの主張が可能です。プライバシー権の侵害に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:ネット上の誹謗中傷行為とプライバシーの侵害

本名が書き込まれている場合

爆サイでは、人の氏名が書き込まれた投稿がしばしばあります。これが本名であれば、利用規約における禁止事項6.に該当するものとして削除請求をすることになります。こうした事例は、個人対個人の場合に限らず、店員に対するカスタマーハラスメントとして書き込みが行われる場合もあるため、企業においても注意が必要です。

もっとも、爆サイ側が利用規約違反を認定することは少なく、違法を理由とする削除請求や裁判上の請求が主たる削除手段となります。

違法だとして削除請求する方法

誹謗中傷の書き込みは、利用規約違反であると同時に、多くの場合違法行為でもあります。違法行為として問題となることが多いのは名誉毀損です。では、どのような場合に名誉毀損が成立するのでしょうか。

名誉毀損は、原則として人の社会的評価を低下させる事実が書き込まれた場合に成立します。ただし、投稿された事実が真実である場合または真実であると信じるべき正当な理由・根拠がある場合には名誉毀損は成立しないことがあります。

以上から、誹謗中傷の書き込みが名誉毀損となるかについては主に、

1.当該事実が社会的評価を低下させるか

2.当該事実が真実であるかまたは真実であると信じるべき正当な理由・根拠があるか

を検討することになります。名誉毀損の成立要件に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:名誉毀損で訴える条件とは?認められる要件と慰謝料の相場を解説

前述のとおり、爆サイでは「違法行為を行っている」「不倫をしている」との書き込みが頻繁にあります。違法行為を行っていることや不倫をしていることは、一般的に人の社会的評価を低下させる事実といえます。そこで、違法行為や不倫を行っているということが全くの虚偽であり、真実であると信じるべき正当な理由や根拠も存在しない場合には、誹謗中傷の書き込みについて名誉毀損が成立することになります。

誹謗中傷が違法行為となる場合には、削除依頼フォームから削除請求する方法だけではなく、サイト管理者またはホスティングプロバイダに対し、送信防止措置依頼を行うことも可能です。

送信防止措置依頼は、依頼を受けたサイト管理者またはプロバイダが、依頼をした人の権利が侵害されていると信ずるに足る相当な理由があると判断した場合に情報の送信自体を阻止する手続であり、実質的に削除と同じ効果をもたらします。ただし、削除すべきかの判断は依頼を受けたサイト管理者等の裁量に任されているので、必ず削除されると言い切れないところがあります。

なお、送信防止措置依頼書を送付する際に必要となる爆サイの住所や宛先については、Whois検索を行うか、弁護士であれば弁護士用の申告フォームから開示を依頼することになります。

裁判を通じて削除請求する方法

以上のように裁判外でサイト管理者等と交渉する方法は、削除に応じてもらえる場合には迅速な解決が可能となります。

一方で削除に応じてもらえなかった場合には、それ以上交渉で解決することは困難となります。裁判外の交渉で解決できないような場合には、強制的に投稿を削除してもらう必要があるため裁判所を通じた削除請求を行います。

仮処分手続

裁判には、裁判と言った際に通常想定される本案訴訟の他に、仮処分という手続きが存在します。仮処分手続きの進行は本案訴訟より早く、遅くとも1~2か月程度で結論が出ます。仮処分で削除すべしとの結論が出た場合には、サイト管理者は投稿を削除する法的義務を負いますので通常は削除を行ってくれます。

投稿の削除を求める仮処分に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:誹謗中傷対策において重要な「削除仮処分」とは

本案訴訟

本来的には、仮処分が認められた場合にも、本案訴訟を行うのが原則となります。もっとも、削除の仮処分については、仮処分で目的が達成されること等の理由から、実務上本案訴訟を行わないのが通常です。

まとめ:爆サイの書き込み削除は弁護士に相談を

このように爆サイは地域ごとのローカル情報を気軽に書き込めるサイトであるが故に、誹謗中傷や風評被害の温床となりやすい面があります。

仮処分による投稿の削除請求をする場合や投稿者を特定するため発信者情報開示請求を行う場合には裁判所を通じた手続となることから、弁護士に依頼せずに対応することは困難です。

そして、ネット上の誹謗中傷や風評被害への対策は、ITに関する専門的な知識が必要となるため、この分野について経験豊富な弁護士に相談することが重要です。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:デジタルタトゥー

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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