Google(グーグル)の口コミで名指しは名誉毀損になる?削除方法についても解説
Google(グーグル)の口コミを見て、利用する店舗や企業を決めている人は少なくありません。Googleに悪質な口コミが投稿されてしまうと、企業や店舗の評判を大きく落としてしまい、損失につながる可能性があります。
どのような口コミが名誉毀損になるのか、いったん投稿された悪質な口コミを削除できるのか、気になる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、Googleの口コミの削除基準や名指しでの悪口が名誉毀損になるのか、口コミの削除方法、削除できない場合の対応策なども解説します。
この記事の目次
Google(グーグル)における口コミとは?
Googleにおける口コミとは、Googleマップで店舗を検索したときに表示される感想や評価のことです。企業や店舗の利用者が実際に利用したときの意見や感想をGoogleに投稿すれば、ほかの利用者と情報を共有できます。行ったことのない企業や店舗を検索するときに口コミを参考にできるので、自身にぴったりの場所を見つける手段として、多くの方に利用されています。
毎日、世界中の利用者から数百万件もの口コミが投稿されているGoogle。ここでは、Googleの口コミがどのように運営されているのかを解説します。
ポリシーが作成されている
Googleでは、口コミの内容が実際に体験したもの・来店に基づいているのかを確認し、不適切・不快な口コミを除外するため、厳格なコンテンツポリシーを定めています。実際に体験していない・来店していないのにもかかわらず、悪い口コミが投稿された場合、店舗や企業に訪れる利用客が減ってしまい、不利益を被る恐れがあります。
Googleでは、このような事態を防ぐため、コンテンツポリシーを定めるのはもちろん、定期的に内容を更新しています。
参考:Google|マップのユーザー作成コンテンツに関するポリシー
機械学習による口コミの管理
Googleでは、機械学習を活用し、口コミがポリシーに違反していないかを24時間体制で管理しています。投稿されたコンテンツは管理システムに送られ、正当性を判断したうえで、虚偽・不正コンテンツが削除されます。
日々投稿される大量の口コミを管理するために、機械による情報処理だけでなく、人間によるニュアンスの理解も同時に実施。不快な口コミがないか・関係のないコンテンツが含まれていないかといった内容を調べるのはもちろん、口コミを投稿したアカウントや場所自体に問題がないかなども調査しています。
同時に人間のオペレーターがバイアスを取り除くためのトレーニングを定期的に実施し、ポリシーに違反する口コミを捉える能力の向上・正当な口コミの公開を削除する可能性の低減に努めています。
信憑性と信頼性を維持するための仕組み
Googleでは、ポリシーに違反していると思われる口コミがあった場合、利用者や企業がGoogleチームに報告し、必要であれば削除やアカウント停止・法的措置などの対応を取れるような仕組みを整えています。
しかし、口コミがあってからでは対応が遅くなってしまうのではと考える方もいるでしょう。Googleでは、そのような事態のないよう、悪意を持ったユーザーに先手を打つための分析・監視を実施し、悪用リスクを減らすよう努めています。
例えば、多くの人の注目を集めるようなイベントが予定されている場合に、Googleマップで検索される可能性のある、周辺の店舗や場所に対して高度な保護を適用し、不正行為のリスクがなくなるまで監視を継続しています。
Google(グーグル)の口コミは名誉毀損になりうるか
Googleに店舗や企業のネガティブな口コミが投稿された場合、利用者が減ってしまい損害を被る恐れがあります。ここでは、Googleの口コミが名誉毀損に該当するのかを解説します。
刑法第230条を満たすと名誉毀損になる
名誉毀損に該当するのは、刑法第230条を満たす場合です。同条では、以下のように書かれています。
(名誉毀損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。
引用:e-GOV法令検索|刑法
インターネット上は公然の場に該当するため、Googleの口コミに悪質なコメントが投稿された場合、名誉毀損に当たりえます。名誉毀損が成立するのは、以下の条件すべてに該当する場合です。
- 社会的評価が低下する恐れがある
- 具体的な事実を示している
- 公然と行われている
名指しの口コミというだけでは名誉毀損にならない
名指しの口コミというだけでは、名誉毀損には該当しません。しかし、上記のように、名指し口コミが「社会的評価が低下する恐れがある」「具体的な事実である」条件を満たす場合は、名誉毀損に該当する可能性があります。
公益目的の口コミは名誉毀損になりづらい
公益目的、つまり、公共の利益につながるような口コミは名誉毀損に該当しない可能性があります。名誉毀損に当たらない要件は、以下の4つです。
- 口コミが公共の利害に関わるものである(公共性)
- 口コミが公共の利益になるものである(公益性)
- 摘示された事実が真実であると認められること・事実が真実であると証明できること(真実性・相当性)
- 口コミが人を攻撃する意見・評論としての域を脱していないこと(非逸脱性)
4つの要件を満たしていれば、名誉毀損は免責されます。
名誉毀損の成立や公益性について知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:名誉毀損の成立と公益性
Google(グーグル)口コミの削除基準
Googleに自社に批判的な口コミがあったらすぐに削除してほしいと思うのは当然です。しかし、ネガティブな口コミのすべてが削除されるわけではありません。
ここでは、Googleの口コミ削除基準について解説します。
Google(グーグル)によるコンテンツポリシーに該当するか
Googleが定めている禁止・制限されているコンテンツポリシーに該当するかどうかが、削除の判断基準となります。禁止および制限されているコンテンツは、「虚偽のコンテンツ・虚偽好意」「不適切なコンテンツまたは行為」の2つです。
詳細な内容は、以下の通りです。
- 実体験に基づかない口コミ
- 企業が割引やサービスなどと引き換えに投稿を促した口コミ
- 他人・グループなどになりすまして投稿された口コミ
- 虚偽の情報を含む口コミ
- ほかの個人・グループを攻撃する口コミ
- 他社の個人情報を含む口コミ
Googleのコンテンツポリシーに当てはまると判断されれば、口コミの削除が可能です。
参考:Google|禁止及び制限されているコンテンツ
投稿の内容が刑法に触れていないか
刑法第230条に触れていれば名誉毀損に当たるため、削除を求めることができます。他に、悪質な口コミが該当するような罪には、刑法第233条の「偽計業務妨害罪」「信用毀損罪」、第231条の「侮辱罪」などがあります。
(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(侮辱)
第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
引用:e-GOV法令検索|刑法
偽計とは、人を欺く計略やたくらみのことです。例えば、「商品に虫が混入していた」という根拠のない嘘を書き込んだ場合、店の信用を傷つけることになるため、信用毀損罪に該当します。
嘘の書き込みにより、店にクレームや問い合わせが殺到して対応に追われた場合、偽計業務妨害罪が成立する可能性があるでしょう。また、「バカ」「〇〇はブラック企業だ」などと投稿された場合、侮辱罪に該当する可能性があります。
星だけの評価は削除ができない
Googleマップには口コミを投稿せず、星だけで評価することもできます。いくら嫌がらせで星1つをつけられたとしても、口コミがなければ、コンテンツポリシーや刑法に該当するかの判断ができません。
そのため、星だけの評価では削除してもらうのは難しいといえます。
Google(グーグル)口コミの削除方法
Googleマップに誹謗中傷や虚偽の口コミを書かれたときは、Googleの申請フォームから申請しましょう。Googleでは、ビジネスプロフィールから報告する方法と、Google・Googleマップの検索結果から口コミを削除する方法の2つがあります。
Googleの削除申請方法は、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:Googleマップ(マイビジネス)の口コミを削除する方法
削除の申請後、Googleの審査により、申請の内容が正しいと判断されれば、口コミは削除されます。審査には2週間程度かかります。
削除されたとしても、Googleから報告があるわけではないため、自身で確認しましょう。
Google(グーグル)口コミが削除できない場合の対応策
Googleフォームから削除申請しても、口コミを削除できないこともあります。口コミが削除されないままだと、自社のネガティブなイメージを払拭できません。
この場合、どのような対策を取ればよいのかを解説します。
低評価の口コミにも丁寧に返信をする
悪い内容の口コミにも丁寧に返信しましょう。これにより、ほかの利用者に「誠実に対応している」と思ってもらえます。
結果的に、お店に対するネガティブな印象を払拭したり、悪い口コミの投稿を未然に防いだりできる可能性があります。Googleで削除されなかった口コミの中には、事実と異なる・利用者の認識が違っている・明らかに投稿者が悪いと考えられる口コミもあるでしょう。
Googleの返信機能を利用すれば、口コミに対して指摘や反論もできます。返信の内容によっては、企業のイメージを上げることも可能です。
例えば、明らかに投稿者が悪い場合、反論や指摘により店側の正当性・誠実性を示せます。口コミで返信する場合は、丁寧な言葉遣い・簡潔に伝えるなど、第三者が見たときにどう思うかを考えながら内容を考えましょう。
高評価の口コミ増やすよう努力をする
高評価の口コミが多ければ、低評価の口コミは目立ちにくくなります。悪い口コミの印象を薄めるために、高評価の口コミを増やすよう努力しましょう。高評価の口コミを増やせば、総合評価を上げることも可能です。
ただし、高評価を増やすためにスタッフに口コミを書かせたり、良い口コミをするよう他人に依頼したりすることはやめましょう。自作自演行為が発覚した場合、店舗や企業の検索順位が下がるといったペナルティを受ける恐れがあります。
あくまでも地道に、質の高いサービスを提供できるよう、努力することが大切です。
Google(グーグル)ビジネスのプロフィールを作り込む
Googleビジネスプロフィールを見直す・充実させることも一つの方法です。例えば、定休日や営業時間が違っているなど、ビジネスプロフィールの内容と実際が異なっている場合、クレームにつながることがあります。
実際の情報と間違いがないように見直し、変更がある場合は、プロフィールも書き換えましょう。また、情報の不足により期待値のミスマッチが生じると、ネガティブな口コミをされてしまう恐れがあります。そのようなことが起こらないよう、内容を充実させることも大切です。
Google(グーグル)口コミ削除に関する法的措置
悪質な口コミがあった場合、以下3つの法的措置を取ることもできます。
- Google(グーグル)に対しての仮処分を求める
- 刑事告訴
- 民事訴訟を起こす
Googleに悪質な口コミが投稿され、削除する場合には、前提として発信者情報開示請求にて個人の特定をする必要があります。発信者情報開示請求については、以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:Googleマップへ悪質な口コミを投稿する個人を特定する方法
Google(グーグル)に対しての仮処分を求める
Googleに対して削除仮仮処分を求めることにより、口コミを削除できる可能性があります。仮処分とは、訴訟の最終的な判決が出る前に、権利や利益が損なわれないように暫定的に取られる法的な措置のことです。仮処分の流れは、以下の通りです。
- 裁判所に申し立て
- 書類審査
- 面接・審尋(当事者・利害関係者に陳述の機会を与えること)
- 担保決定・立担保(主張が認めらた場合、裁判所が決定した担保金を供託所に納める)
- 仮処分命令
- 削除
申し立てる相手は米国のGoole LLCとなるため、提出する書類は英訳しなければなりません。削除仮処分の仮担保金は、30~50万円程度です。
仮処分命令が出てGoogleが応じれば、1~2週間程度で口コミが削除されます。口コミを削除したあとに仮処分の申し立てを取り下げ、担保金を返してもらいましょう。
投稿者に対して刑事告訴をする
口コミが名誉毀損や偽計業務妨害罪・信用毀損罪のような罪に当たる場合、刑事告訴により処罰を求められます。投稿者を告訴する場合、発信者情報開示請求により加害者を特定する必要があります。
刑事告訴の流れは、以下の通りです。
- Googleに発信者情報開示請求をする
- Googleから開示されたIPアドレスより、加害者のプロバイダ(インターネットにつなげるサービスを提供する事業者)を特定
- プロバイダに発信者情報開示請求をする
- 告訴状を作成する
- 警察署に告訴状を提出する
告訴の期限は犯人を知った日から6ヵ月と決まっています(刑事訴訟法235条1項)。期限を過ぎると告訴できなくなるため、加害者が特定できたら、6ヵ月以内に告訴状を提出しましょう。
投稿者に対して民事訴訟を起こす
名誉毀損・偽計業務妨害罪・信用毀損罪・侮辱罪に当たる場合、投稿者の不法行為として民事訴訟を起こし、損害賠償請求をすることも可能です。民法第790条では、以下のように規定されています。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
引用:e-GOV法令検索|民法
損害賠償請求を行う場合も、発信者情報開示請求により加害者を特定する必要があります。損害賠償請求と聞くと、すぐに訴訟となるイメージを持たれている方もいるでしょう。
しかし、訴訟を起こさずとも、当事者同士での話し合い(示談)で解決できれば訴訟の必要はありません。当事者だけで話し合いが進まない・加害者が面談を拒む場合は、裁判所に調停を申し立て、調停委員を介した話し合いを実施することもできます。
それでも加害者が賠償金の支払いに応じない場合、訴訟により裁判による請求を行います。
まとめ:Google(グーグル)の口コミ削除は弁護士に相談を
Googleに悪質な口コミが書かれてしまった場合、ネガティブなイメージがついてしまい、集客に悪影響を及ぼす恐れがあります。Googleへの削除請求なら個人でも行えますが、仮処分や訴訟を起こすとなると法的な知識も欠かせません。
弁護士に相談すれば、適切なアドバイスをしてくれるのはもちろん、書類の作成や口コミ削除のサポートをしてくれるため、問題のスムーズな解決が可能です。
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