NFT取引に不可欠なスマートコントラクトとは?4つの特徴とデメリットを解説
近年、NFTが盛り上がりを見せ、NFTに関する取引を行う人が増えてきています。
NFTという言葉を聞いたことがある人は多くいると思いますが、NFTに欠かせないスマートコントラクトの仕組みについて理解をしている人は必ずしも多くないと思います。
そこで、本記事では、NFTに関する取引をお考えの事業者や投資家を対象に、NFTに関するスマートコントラクトの仕組みを説明します。
この記事の目次
NFTとは
NFTとは、Non-Fungible Tokenの頭文字をとった用語で、代替不可能なトークンのことをいいます。
トークンという単語は、多義的に用いられる単語で、日本語に訳すのがなかなか難しい単語ですが、代用通貨、引換券、商品券、記念品、証拠等と訳される単語です。
つまり、NFTとは、代替不可能な代用通貨、引換券、商品券、記念品、証拠等のことをいいます。
NFTについては、一般的に、以下の4つの特徴があげられます。
- 唯一性
- 取引可能性
- 相互運用性
- 付加機能追加性
関連記事:NFTにはどのような法律の規制があるのか弁護士が解説
唯一性とは
NFTは、前述のように、代替不可能なトークンですので、唯一無二の価値を持つことになります。
この唯一性が、NFTの特徴の1つといえます。
取引可能性とは
NFTが、唯一無二の価値を持つものでも、取引ができなければ、その価値を十分に発揮することが難しくなります。
そこで、取引可能性もNFTの特徴の1つといえます。
相互運用性とは
相互運用性もNFTの特徴としてあげられます。
例えば、暗号資産では、ERC-20という規格が多く採用され、異なる暗号資産でも、規格が同一であることにより、相互運用性が認められます。
NFTでは、ERC-721という規格が多く採用されており、同一規格のNFTでは、相互運用性が認められます。
付加機能追加性
NFTには、様々な機能をプログラムすることが可能です。
この付加機能追加性もNFTの特徴といえます。
スマートコントラクトとは
スマートコントラクトについては、多義的に用いられる用語であり、必ずしも決まった定義が存在しているわけではありません。
広義の定義としては、スマートコントラクトとは、契約や取引に関して特定の条件が満たされた場合に、決められた処理が自動で実行される仕組みという意味で用いられることがあります。
NFT取引に関しては、スマートコントラクトの仕組みが用いられます。
NFTは、一般的に、マーケットプレイス上で取引が行われますが、NFTの取引の際は、スマートコントラクトの機能により、NFTの受け渡しと同時に、自動でブロックチェーン上のNFTの権利者が書き換えられることになります。
スマートコントラクトのメリット
スマートコントラクトのメリットとしては、以下の3点が考えられます。
- 取引履歴の保存
- 取引にかかる時間の削減
- 取引にかかるコストの削減
取引履歴の保存について
スマートコントラクトの仕組みを使うことにより、ブロックチェーン上に、自動的に取引履歴がデータとして記録されることになります。
取引履歴がデータとして記録されることにより、後から取引履歴を確認することが可能となり、取引内容が不正に改ざんされることなどを防ぐことができます。
取引にかかる時間の削減について
スマートコントラクトの仕組みを使うことによって、取引が自動で行われることになり、取引にかかる時間の削減が可能となります。
例えば、取引に関し、第三者が介在するようなケースに比べ、第三者の介在がなく、自動で取引が完結するので、その分取引にかかる時間を削減することができます。
取引にかかるコストの削減について
スマートコントラクトの仕組みを使うと、第三者の介在が無くなる分、第三者に支払う手数料等を支払う必要がなくなり、取引にかかるコストの削減につながることが考えられます。
スマートコントラクトのデメリット
スマートコントラクトのデメリットとしては、以下の3点が考えられます。
- 柔軟な対応の困難性
- プログラムの安全性の不確実性
- プライバシー保護の問題
- 法整備に関する問題
柔軟な対応の困難性について
スマートコントラクトでは、あらかじめ構築されたプログラムに従って取引が行われるため、柔軟な対応が難しくなるという点が、デメリットとしてあげられます。
プログラムの安全性の不確実性について
スマートコントラクトのプログラムに問題や脆弱性が存在している場合には、その問題や脆弱性により、不正行為等が行われてしまう可能性があります。
そのため、構築されたプログラムの安全性が必ずしも確実とはいえないという点が、デメリットとしてあげられます。
プライバシー保護の問題について
スマートコントラクトについては、前述のように、ブロックチェーン上に取引履歴が自動保存されることがメリットとしてあげられますが、その反面、すべての取引履歴が保存されていることにより、その取引履歴から個人の特定が容易になるケースがあります。
その結果、個人のプライバシー保護との関係が問題となる可能性があるという点が、デメリットとしてあげられます。
法整備に関する問題について
スマートコントラクトは、近年、急速に発展してきた仕組みです。
そのため、普及が進むにつれて、さまざまな法律上の問題が発生する可能性があります。
ただ、我が国では、スマートコントラクトに対する法整備が充分とはいえない状況です。今後、法整備が不十分であることによる法的問題が顕在化する可能性はあります。
スマートコントラクトと従来の契約との違いと法律上の注意点
スマートコントラクトは、前述のように、取引が自動化されるという仕組みです。
通常の契約であれば、契約内容に間違いがあることが後から判明した場合には、訂正等を行うことが可能ですが、スマートコントラクトの場合には、取引履歴が自動保存されることから、後から訂正等を行うことが困難といえます。
また、スマートコントラクトをNFT取引に用いると、スマートコントラクトの機能により、NFTの受け渡しと同時に、自動でブロックチェーン上のNFTの権利者が書き換えられることになります。
スマートコントラクトについて、法整備が十分ではないため、契約内容に不適切な点があった場合でも、スマートコントラクトにより既に完結してしまったNFT取引については、法律上どのように救済が図られるのかという点が、従来の契約よりも不明確であるといえます。
日本における法律上の問題点
日本における法律上の問題点としては、まず、民法との関係が考えられます。
例えば、民法第95条では、意思表示に錯誤があった場合には、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができると規定されています。
NFT取引で錯誤の問題が生じた場合、スマートコントラクトの仕組みを使っていると、単純に、取引を取り消すということができず、新たに取引が取り消されたということを追記する必要性が生じる可能性があります。
また、個人情報保護法との関係が考えられます。
例えば、個人情報保護法第34条第1項では、本人は、本人が識別される保有個人データの内容が真実でないときは、個人情報取扱事業者に対し、当該保有個人データの削除を請求することができるケースがあります。
スマートコントラクトの仕組みが使われていると、保有個人データの内容の削除をすることができないという問題が生じる可能性があります。
さらに、ブロックチェーン上の個人情報が問題となるケースでは、個人情報取扱事業者の特定が難しい場合があり、実質的に見ると個人データの第三者提供(個人情報保護法第37条第1項)が行われているにもかかわらず、個人情報保護法の規制が及ばないという問題が生じる可能性もあります。
スマートコントラクトには、以上のような問題があるため、2020年10月20日に一般社団法人スマートコントラクト推進協会が設立され、スマートコントラクトに関する審査や基準の作成等が行われるという動きがあります。
参考記事:暗号資産に関する規制とは?資金決済法と金融商品取引法との関係を解説
まとめ:NFT 取引の際には弁護士に相談を
以上、NFTに関する取引をお考えの事業者や投資家を対象に、NFTに関するスマートコントラクトの仕組みを説明しました。
NFT取引に関するスマートコントラクトについては、従来の取引とは異なる法的な問題が生じる可能性があります。
そこで、NFT取引をお考えの事業者や投資家の方は、専門的知識を有する弁護士に相談を行うことをおすすめします。
当事務所による対策のご案内
モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。当事務所は暗号資産やブロックチェーンに関わるビジネスの全面的なサポートを行います。下記記事にて詳細を記載しております。
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務