ChatGPTの利用規約を解説、商業利用上の注意点とは?
2022年11月にOpenAIが開発した自然言語処理モデルであるChatGPTがリリースされて以来、ChatGPTは、急速に進歩し続けています。2023年3月2日にはAPIの提供が開始され、同月14日に新バージョンであるGPT-4がリリースされ、既に多くの企業がChatGPTを業務に導入しています。
ChatGPTは、利用規約さえ遵守すればビジネスでの利用も可能です。ですが、その際には注意すべき点がいくつかあります。この記事では、ChatGPTを商用利用する際に注意すべき利用規約のポイントについて解説します。
この記事の目次
ChatGPTの概要
ChatGPTはOpenAIによって開発された、強力な自然言語処理のモデルです。大量のテキストデータから学習し、人間のような文章を生成することができます。会話形式でテキストベースのコミュニケーションができるチャットボットで、文章の要約、翻訳、質疑応答などに利用できます。
ChatGPTには、執筆時点(2023年8月)で無料で使えるGPT-3.5と有料プランへの登録が必要なGPT-4があります。GPT-4は、月額20ドルの有料プラン「ChatGPT plus」で利用でき、GPT-3.5と比較して精度も高く、長いチャットにも対応しています。
OpenAIの利用規約について
ChatGPTの利用にあたってはOpenAIの利用規約に規定されている事項を遵守しなければなりません。利用規約には、以下のような内容が規定されています(執筆時点)。
ChatGPTの商業利用は可能
ChatGPTは商用利用が可能です。日本でも既にChatGPTを導入している企業もあります。
ChatGPTを業務に導入することによって、例えば以下のような作業を自動化できるため、仕事の生産性が上がり、人件費が抑えられることが期待されています。
- 文章作成
- プレゼン資料の作成
- ソフトウエア開発
- SNS投稿
- メールマガジンの作成
- チャットボットの構築 など
ChatGPTは無料でも利用できますが、有料プランに登録すれば、より高度な機能も使えるようになります。
2023年3月からはGPT-3.5のAPIがリリースされ、さまざまなアプリケーション・サービス等に実装できるようになりました。また、同年7月にはGPT-4のAPIもリリースされています。
関連記事:ChatGPTの商用利用は可能?著作権問題についても弁護士が解説
入力データはAIの機械学習に利用される
ChatGPTを利用する際には、入力する内容に注意が必要です。ChatGPTに入力された情報は、AIの機械学習に利用される可能性があるからです。
ChatGPTを運営するOpen AIの利用規約には、ChatGPTに入力した情報はAIの機械学習に取り込まれ、OpenAIの社員の目にも触れる可能性がある旨が書かれています。社内でChatGPTを利用する際には、企業内の機密情報や顧客の個人情報を入力するのは避けるべきでしょう。
2023年4月25日からは、「Chat Histroy & Training」の設定をオフにすることで履歴の保存や学習データとしての利用をさせないようにできるようになりました。
ただし、後述のとおり、2023年3月の利用規約改定によって、API経由で入力したデータについては学習用に利用されないことが明記されています。
ChatGPTで生成したコンテンツの公開には注記が必要
ChatGPTで生成されたコンテンツをSNSやニュースサイト等で公開する際には、必ずChatGPTによって生成されたテキストであることを示さなければならないことが、利用規約には明記されています。
Please adhere to the following:
・Manually review each generation before sharing or while streaming.
・Attribute the content to your name or your company.
・Indicate that the content is AI-generated in a way no user could reasonably miss or misunderstand.
(参考訳)
以下をお守りください。
・共有前やストリーミング中に、生成されたコンテンツを手動で確認すること。
・コンテンツに自分の名前や会社の名前を付けること。
・コンテンツがAIによって生成されたものであることを、ユーザーが合理的に見落としたり誤解したりしないような方法で示すこと。
ChatGPTは優れた言語生成能力をもちますが、情報の信頼性や倫理的な判断はまだ完全とはいえません。読者が情報を精査するために、生身の人間ではなくAIによるコンテンツだと示す必要があるでしょう。
ChatGPTの利用規約は頻繁に改正されている
ChatGPTの利用規約は頻繁に改正されているため、利用する際には常に直近の利用規約を確認しておく必要があります。
例えば、2023年3月の改正では、今まで明確にされていなかった利用者の年齢制限を13歳以上と明記し、13歳以上18歳未満の場合は使用に保護者の許可を得る必要があると示されました。また、2023年3月よりGPTがAPI経由で利用可能になりましたが、API経由で入力したデータはAIの学習用データとして使わないことが明記されています。
なお、APIを経由せずにブラウザ上でChatGPTから入力したデータは、オプトアウトしない限り、学習用データとして活用される可能性があります。
ChatGPTの利用規約で禁止されている利用法
ChatGPTを利用して短時間でさまざまなコンテンツを作ることが可能です。しかし、利用規約においてコンテンツ生成が禁止されているものがあることに注意が必要です。
また、執筆時点では、ChatGPTは2021年時点のデータをもとに学習を行っているため、最新の情報については正確に答えることができません。
ChatGPTで生成が禁止されているコンテンツ
利用規約において、以下のコンテンツの生成が禁止されています。
- 児童虐待等に関するコンテンツ
- 差別的・暴力的なコンテンツ
- ハッキングを目的としたコンテンツ
- 身体的および経済的リスクの高いコンテンツ
- 詐欺等の不正行為を誘引するコンテンツ
- 性的なコンテンツ
- 政治的活動に関するコンテンツ
プライバシーの侵害となる情報収集や開示
他人のプライバシー侵害となるような情報収集や開示にChatGPTを利用することは禁止されています。
- 人の個人情報を収集しようとすること
- 企業の機密情報を開示すること
- 不正アクセスを試みようとすること
- 迷惑行為や嫌がらせをすること
- 性的に過激なコンテンツなどを生成すること
ChatGPTを利用してこのような行為をすることは、明確に禁止されています。他人のプライバシーや企業秘密などに抵触しない範囲で利用しなければなりません。
法的なアドバイスに関する情報の提供
法律の専門家のチェックを経ずに、ChatGPTで生成した法的アドバイスをそのまま情報として提供することは、利用規約によって禁止されています。
法律は改正されていきますが、ChatGPTの学習にはある時点までに収集されたデータをもとに行われるため、必ずしも最新の情報に基づいたアドバイスができるとは限りません。また事件の背景や相談者の年齢、立場などのさまざまな事情にによって提供すべきアドバイスは異なります。
また、法的アドバイスは相談者の人生に重大な影響を及ぼしかねません。そのため、ChatGPTが生成した法的なアドバイスを相談者に提供する際には、必ず専門家のチェックを経なければならないことが明記されています。
財政的なアドバイスに関する情報の提供
財政的なアドバイスに関する情報提供も、専門家のチェックなしに提供することが禁止されています。
投資や保険、住宅ローンなどの個人の財産にかかわる問題は、判断を誤れば相談者に大きな損失を与えかねません。財政的なアドバイスもまた、日々変化する株式市場や為替市場などの影響を受けており、ChatGPTではカバーできない最新の情報を考慮することが不可欠です。
財政的なアドバイスに関する情報を提供する際には、ChatGPTで生成した情報を必ず専門家がチェックしてから提供しなければなりません。
医療に関連する情報の提供
医療情報をChatGPTで生成し、専門家のチェックを経ずに患者や相談者に提供することは、その者の生死を左右する問題になりかねません。
利用者が回答を信じてアドバイスどおりに行動する可能性があるため、必ず医者などの専門家がチェックしたうえで、情報を提供する必要があります。
まとめ:ChatGPTのビジネス利用は利用規約の確認と法的なリスクの理解が必要
ChatGPTをうまく商用利用すれば、業務の生産性を上げ、人件費などのコスト削減にもつながるでしょう。
ただし、ChatGPTの利用規約は頻繁に改正されているため、ビジネスで利用する際にはその都度規約を確認する必要があるでしょう。
利用方法が禁止されている行為に当たらないか事前に確認するためにも、導入の前には専門家に相談することをおすすめします。
当事務所による対策のご案内
モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に豊富な経験を有する法律事務所です。AIビジネスには多くの法的リスクが伴い、AIに関する法的問題に精通した弁護士のサポートが必要不可欠です。
当事務所は、AIに精通した弁護士とエンジニア等のチームで、ChatGPTを含むAIビジネスに対して、契約書作成、ビジネスモデルの適法性検討、知的財産権の保護、プライバシー対応など、高度な法的サポートを提供しています。下記記事にて詳細を記載しております。
モノリス法律事務所の取扱分野:AI(ChatGPT等)法務
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務