Googleマップへ悪質な口コミを投稿する個人を特定する方法
Googleマップは、Google LLCが運営する地図検索サービスです。Googleマップには口コミを投稿する機能があり、ユーザーは店舗や病院など施設に関する評価・口コミを自由に投稿することができます。
しかし誹謗中傷が口コミとして投稿されると、ネガティブな印象を与えることになり、結果的に集客に影響が出ると考えられるので、早急に投稿者を特定した上で、書き込みの削除が必要です。
本記事では、Googleマップの悪質な口コミ投稿者を特定する方法について説明します。
この記事の目次
Googleマップの口コミとは
Googleで施設やサービス名などを検索すると、ユーザーが投稿した口コミ評価が表示されます。
例えば「モノリス法律事務所」の検索結果画面は以下のように表示され、赤枠内が口コミ評価となります。
悪質な口コミの例
以下は、Googleマップに投稿される悪質な口コミの例です。
- この病院のAって看護師の態度悪すぎ。精神病だよ
- このレストランのスタッフB、すごいブスで清潔感なくて最悪でした
このような口コミについては、運営側へ報告して禁止コンテンツに該当していると判断されれば、削除してもらえる可能性があります。Googleの「マップユーザーの投稿コンテンツに関するポリシー」によると、「禁止および制限されているコンテンツ」には10項目があげられています。
画像出展:Google.llc「禁止および制限されているコンテンツ」
上記の口コミ例は「危険なコンテンツおよび中傷的なコンテンツ」にあたるとして削除される可能性があります。
ただ、違反報告をしても必ず口コミが削除されるわけではありません。口コミが削除されない場合や、悪質な口コミが多数投稿されている場合は、投稿者特定手続を検討しましょう。
Googleの口コミ投稿者特定手続の流れ
Googleマップの口コミ投稿者の特定手続は、以下の流れで行われます。
- IPアドレスの開示請求
- ログの削除禁止命令または通知
- 住所氏名の開示請求
それぞれの手順について、詳しく解説します。
1.IPアドレスの開示請求
IPアドレスとは
IPアドレスとは、ネットワーク上にある機器に割り当てられたナンバーです。Googleマップに口コミを投稿するためには、Googleアカウントが必要ですが、アカウントの作成にあたって実名を登録する必要はないため、Googleはユーザーの個人情報を把握していません。口コミの投稿者を特定するためには、IPアドレスの開示が必要です。
IPアドレスの開示請求の手続き
IPアドレスの開示請求は、正式な裁判ではなく、仮処分によって行うことができます。裁判は判決が出るまでに1年以上かかることも多いのですが、仮処分は、約1~2ヶ月で決定が出るためとてもスピーディです。その場合の弁護士費用の相場例としては
着手金が30万円程度、成果報酬金が30万円程度
参考:https://monolith.law/reputation/reputation-lawyers-fee
です。この手続では、IPアドレスの開示と削除を同時に求めることが可能です。上記は両方を行うための費用となります。もっとも、対象とする投稿の内容や量によって当然費用は変わってきます。
なお、Googleマップの運営法人であるGoogle LLCは、アメリカに本社を置く企業のため、手続の相手方は海外法人となります。そのため、必要書面や証拠等を英訳したり、米国法人の登記を取得する必要があり、通常の弁護士費用に加えてこの実費が約20万円程かかります。
口コミ削除の方法については、下記記事にて詳しく解説しています。
投稿の違法性を立証する
Googleが悪質な口コミを「禁止および制限されているコンテンツ」に該当すると判断した場合は、その口コミに違法性がなかったとしても削除されます。
他方、IPアドレスの開示命令には、その口コミの違法性を示す法的な主張とその証拠が必要です。
2.ログの削除禁止命令または通知
IPアドレスの開示請求が認められれば、そのIPアドレスから口コミの投稿者が使用していたプロバイダを特定できます。プロバイダは、IPアドレス使用者のログをしばらく保存しています。ログとは、コンピュータの利用状況の記録ですので、ログを確認すればデータの内容や送受信された日時などが判明します。
ただし、ログは一定期間が経過すると削除されてしまいます。そのため、プロバイダに対して、ログの削除禁止命令を出してもらう必要があります。
この禁止命令を出してもらうためには、新たな裁判手続が必要です。「口コミ投稿者の住所氏名開示請求手続を行うので、開示請求命令が出るまでログを保存しておいてほしい」という通知を出せば、ログを削除しないでおいてもらえることもあります。
まずは裁判を起こすのではなく、通知を検討しましょう。この通知の作成にも専門知識が必要ですので、こうした手続に詳しい弁護士へ依頼しましょう。
3.住所氏名の開示請求
ログの保存依頼通知を出したら、口コミ投稿者の住所氏名開示請求手続を行います。住所氏名開示請求は、仮処分では行うことができません。正式な裁判手続を経る必要があります。
たとえGoogleマップに批判的な口コミが投稿されていたとしても、その口コミが嫌がらせを目的としたものではなく、またその事実を公開することが公益に合致する場合は、投稿者の住所氏名が開示されるべきではありません。
裁判所は正式な裁判手続を通して慎重に検討し、その投稿の違法性を認めた場合にのみ、住所氏名の開示命令を出すことになります。
Googleの口コミ投稿者特定後にできること
Googleマップに寄せられた口コミの投稿者を特定した後、損害賠償請求や刑事告訴が行えます。
損害賠償請求
住所氏名開示命令が出されると、投稿者が使用していたインターネット回線の契約者の住所氏名が開示されます。住所氏名がわかれば、弁護士費用や慰謝料などを請求することができます。
ただ、投稿者の特定ができない可能性や、投稿者の特定に成功しても、弁護士費用が損害賠償金より高くついてしまう可能性もあります。この点については、下記記事で詳しく解説しています。
刑事告訴
告訴とは、犯罪行為の被害者が、捜査機関に対して加害者による犯罪事実を申告し、その処罰を求めることです。告訴が受理されると、警察が告訴事実について捜査を行います。その結果、必要があると認められれば、加害者は逮捕ないし起訴されます。起訴の結果、刑事裁判で有罪判決となると、加害者には刑事罰が科されます。
名誉毀損(刑法230条):「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」]
信用毀損及び業務妨害(刑法233条)「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」
威力業務妨害(刑法234条)「威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。」
電子計算機損壊等業務妨害(刑法234条の2)「人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、…業務を妨害した者は、五年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=140AC0000000045
まとめ:Google口コミの個人特定は弁護士に相談を
Googleマップはとても便利な地図検索サービスですが、中には悪質な口コミが投稿されてしまうこともあります。
投稿者の特定ができれば、損害賠償請求が可能になりますが、賠償を受けても弁護士費用を賄えない可能性もあります。
投稿者特定手続は簡単な手続ではありません。Googleマップの悪質な口コミにお悩みの場合は、ネット上の誹謗中傷に詳しいプロの弁護士へ相談するのがおすすめです。
カテゴリー: 風評被害対策