ぐるなびにおける風評被害対策とは?
会食などで飲食店を探すとき、多くの人は口コミサイトを参考にします。飲食店の口コミサイトは数多くありますが、中でもぐるなびは「食べログ」と並んでアクセス数の多いサイトといえます。飲食店について検索するとぐるなびに掲載された情報が上位表示されることも多いため、ぐるなびの口コミは客がその店を利用するかの判断に大きな影響を与えるといえます。このため、ぐるなびに誹謗中傷の口コミが投稿された場合の風評被害は甚大といえ、すぐに対処する必要があります。風評被害対策と一言でいっても様々ありますが、今回は風評被害対策の一つである「口コミの削除方法」を中心にご説明していきます。
この記事の目次
ぐるなびの特徴と性質
ぐるなびは、株式会社ぐるなびが運営する飲食店の情報を集めたウェブサイトです。ぐるなびでは、飲食店の検索、お店の詳細な情報の閲覧、ネット予約、お店の評価(口コミ)、お店の情報の共有などが可能です。お店は広告費を払いぐるなびに店の情報を掲載してもらっています。また、お店のクーポンを掲載や特集を行っていたり、他のグルメサイトと連携したりしています。今やぐるなびは、「食べログ」、「Retty」、「ホットペッパー」と並ぶ代表的なグルメ検索サイトの一つで、知らない人はいないといっても過言ではありません。
ぐるなびで想定される風評被害とは
こうした影響力のあるぐるなびのサイトでプライバシー権や名誉権などを侵害する事実無根の悪質な内容の口コミを書かれると、客足が遠のき、結果、売り上げが減少するなどの大きな経済的損失を被るおそれがあります。飲食店における風評被害の例としては「食べ残しを提供している」「この店の店主は前科もちだ」「あの店の〇〇は食えたものではない。店に行く価値がなく、時間の無駄だ」等の悪評を書かれると予約や来客数の急減や売り上げが落ちたり、取引先・金融機関の信用や社会的信用が落ちたりします。社会的信用が落ちることにより従業員の確保が困難になる等の例があります。また、お客さんを取られた同業者が攻撃のために執拗に誹謗中傷口コミを繰り返しているケースもあります。さらに、風評被害によって従業員の働くモチベーションも低下しまい、店の離職率も高まるなどの例もあります。したがって、風評被害による影響は非常に大きいため、少しでも不自然だと感じたら削除や投稿者の開示を検討すべきです。
飲食店における名誉毀損の詳しい事例に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
ぐるなびの利用規約違反により削除請求する方法
誹謗中傷の口コミが書き込まれたら、その口コミを削除しなければなりません。口コミを削除する方法は、自力で削除する方法と弁護士に依頼する方法があります。まずは自力で削除する方法をご紹介します。
ぐるなび内の「お問い合わせ」から削除申請する
ぐるなび内で口コミを削除するには、ぐるなびのトップページなどから「お問い合わせ」に入り、「サービスのお問い合わせ」で削除理由や削除して欲しい内容などを記入して送信します。
どのような口コミ削除の対象となるのか?
ぐるなびの利用規約によると口コミが「利用規約に違反した場合」には、口コミが削除されます。ただし、削除するか否かはあくまでぐるなびの判断に委ねられます。ぐるなび利用規約では以下の行為を禁止事項としています。
上で例に挙げた「この店はお客の食べ残しを提供している」といった口コミについては、それが真実であるかの判断はぐるなび側には難しいものです。もっとも、食べ残しの提供があるとの口コミは、それが真実であろうとなかろうと店の評判を著しく低下させるものですので、禁止事項1)号に定める「第三者の…利益…を損ねること。」にあたるとの主張が可能です。
このほか、「この店の店主は前科もちだ」などといった口コミについては仮にそれが真実であったとしても、一般的に他人に知られたくない私的な情報であることから、禁止事項1)号の「他人のプライバシーを侵害…すること。」にあたるといえます。
また、「あの店の〇〇は食えたものではない。店に行く価値がなく、時間の無駄だ」という口コミについては、後で説明する名誉毀損といえるほどの具体性はないと判断されるかもしれませんが、少なくとも店の提供する食事について不当に貶めるものとはいえるため、禁止事項1)号の「他人を中傷すること。」にあたると主張することができます。
ぐるなびに違法だとして削除請求する場合の例
送信防止措置依頼とは?
ぐるなびに書き込まれた口コミが違法である場合、ぐるなび運営者に対してプロバイダ責任制限法上の送信防止措置を依頼することもできます。送信防止措置は、口コミの削除を希望する人からぐるなびへの申出によって、ぐるなびが口コミの書き込みをした人に対して情報の削除の可否について意見を求め、ぐるなびが削除すべきと判断した場合に、口コミを閲覧できない状態とするものです。送信防止措置を希望する場合はぐるなびに対して法定の事項を記載した「送信防止措置依頼書」を送ります。
どんな場合に削除依頼できる?
プロバイダ責任制限法によると、送信防止措置依頼ができるのは「権利を侵害されたとする場合」、すなわち口コミの投稿が違法行為にあたる場合です。「権利が侵害された」ではなく「権利が侵害されたとする」とされているのは、依頼時に侵害されたかどうか不明な場合でも依頼自体を可能とするためです。送信防止措置依頼の対象となる代表的な例は、プライバシー権や名誉権の侵害(名誉毀損)です。
このうち名誉毀損については、人の社会的評価を低下させる具体的事実が書き込まれた場合に成立します。ただし、投稿された事実が真実である場合または真実であると信じるべき正当な理由・根拠がある場合には名誉毀損は成立しません。名誉毀損の成立要件に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
例えば、上で例に挙げた「この店の店主は前科もちだ」との口コミについて、前科を有することは一般的に人の社会的評価を低下させる具体的事実といえますので、この口コミが全くの事実無根である場合には、名誉毀損が成立することになります。
仮処分による口コミの削除
これまでご紹介してきた内容は、口コミを削除するか否かについてぐるなびの裁量に委ねられる手段でした。ぐるなびに任意に口コミを削除してもらえない場合には仮処分の申立てをすることになります。仮処分とは、通常の裁判手続とは異なる仮の手続であり約1~2か月と比較的短期間に結論がでます。仮処分の申し立てを行った後は、裁判所に出廷して主張をしたり、主張を裏付ける資料を提出するなどしなければなりません。これらの手続きは法律の専門家である弁護士に依頼した方がよいでしょう。
なお、仮処分申立てが認められると、ぐるなびに仮処分命令が発せられます。仮処分命令は強制力を伴うものです。もし、ぐるなびが命令に従わない場合は、裁判所がぐるなびにお金を納付させるという方法で間接的に口コミの削除を促します。仮処分による投稿の削除については、下記記事にて詳細に解説しています。
発信者を特定するための方法
口コミの投稿者を特定する目的は、投稿者を名誉毀損罪で告訴すること、損害賠償請求訴訟を提起することにあります。投稿者を特定するための手続を発信者情報開示請求といいます。発信者情報開示請求をするには、プロバイダー責任法に基づき、ぐるなびに対しIPアドレスなどの発信者情報の開示を求めます。そして、IPアドレスから投稿に利用されたアクセスプロバイダーを特定し、今度はアクセスプロバイダーに対し、投稿者の氏名、住所等の発信者情報の開示を求めます。
ただし、発信者情報開示請求で開示の対象となるのは顧客の個人情報あり、プロバイダにとって秘匿性の高い情報といえます。このため、プロバイダが任意の開示に応じることは通常ありません。そこで、発信者情報の開示については、アクセスログの保存手続きのため仮処分申し立てを行うと同時に発信者情報の開示のための訴訟を提起することとなります。
発信者情報開示請求については、下記記事にて詳細に解説しています。
まとめ
以上、風評被害対策の一つである口コミの削除方法について簡単にご紹介しました。名誉権などを侵害する口コミが拡散すると思わぬ経済的損失を被りかねません。また、こうした口コミを削除するには一定期間を要しますから、発見された場合は早めに対策に向けて行動しましょう。