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インドのBIS認証(強制認証制度):ISIマーク取得が必要な製品群

インドのBIS認証(強制認証制度):ISIマーク取得が必要な製品群

世界最大の人口を擁し、急速な経済成長を遂げるインドは、多くのグローバル企業にとって極めて重要な市場となっています。しかし、インド市場への参入や事業拡大を検討する上で最大の障壁の一つとなるのが、インド独自の複雑かつ厳格な技術規制と製品認証制度です。その中核を成すのが、インド規格局が管轄するBIS認証であり、特にISIマークの貼付を義務付ける強制認証制度は、対象となる製品群をインド国内で製造、輸入、販売するすべての企業にとって、避けては通れない法的要件となっています。

本記事では、インド市場でビジネスを展開する上で不可欠となるBIS認証の法的な全体像と、対象製品の最新動向や、外国企業に特有の認証取得手続きのフローについて包括的に解説します。さらに、現地法人が存在しない場合に必須となるインド国内認定代理人の重い法的責任や、製品の輸入没収リスクに関する実際の判例を交えながら、製品開発の初期段階からインドの技術基準を戦略的に組み込むことの重要性を紐解いていきます。

インドにおけるBIS認証の法的根拠と全体像

インドにおける製品の品質管理、標準化、および認証制度の根幹を成す法律が、2016年インド規格局法(Bureau of Indian Standards Act)です。この法律は、旧来の法制度を近代化し、対象範囲を物品だけでなくサービスやシステムにまで拡大するとともに、政府に対して、特定の製品に対する認証取得を法的に義務付ける強力な権限を付与しました。2016年インド規格局法の第16条に基づき、中央政府は、公共の利益、人類、動物または植物の健康保護、環境保護、不公正な取引慣行の防止、国家安全保障を目的として、特定の製品に対して強制的な認証を課す品質管理命令(Quality Control Orders)を発出することができます。この法的枠組みに関する公式な条文は、インド政府の公式ウェブサイトで確認することができます。

参考:インド規格局(BIS)公式ウェブサイト

BIS認証制度は、製品の性質やリスクレベルに応じて、複数のスキームに分類されています。最も代表的かつ厳格なのが、スキームIと呼ばれるISIマークスキームです。これは、対象製品の安全性と品質が、インド規格(IS)に適合していることを証明するものであり、製品へのISIマークの貼付が義務付けられます。スキームIでは、製造工場に対する厳格な実地監査と、独立した試験機関での製品テストの両方が要求されます。一方で、電子機器や情報技術機器を中心に適用されるスキームII(強制登録スキーム)では、指定試験所での製品テストと自己宣言に基づく登録が主となり、初期段階での工場監査は免除される傾向にあります。さらに、低圧開閉装置や特定の産業機械などには、スキームXと呼ばれる包括的な技術規制が適用されるなど、製品群ごとに適用される法的手続きが大きく異なります。

以下の表は、インドにおける主要なBIS認証スキームの法的要件と特徴を比較したものです。

認証スキーム適用対象となる主要な製品群実地工場監査の有無表示マーク適用される主な法的枠組み
スキームI(ISIマークスキーム)家電、セメント、鉄鋼、化学品、タイヤ、玩具、調理器具など必須(事前の厳しい監査が行われる)ISIマーク品質管理命令(QCO)による強制指定
スキームII(強制登録スキーム)スマートフォン、ノートパソコン、Bluetooth機器などのIT・電子機器免除(ただし試験所でのテストは必須)CRS登録マーク電子情報技術省(MeitY)による通知
スキームX低圧開閉装置、制御装置、産業用機械類必須(製品リスクに応じた厳密な監査)スキームX固有の認証表示包括的技術規制(Omnibus Technical Regulation)

自社の製品がどのスキームの適用対象となるかを正確に特定し、適用される品質管理命令の施行日を把握することが、インドにおけるコンプライアンスの第一歩となります。

インドの強制認証対象となる製品群と拡大する規制範囲

インドの強制認証対象となる製品群と拡大する規制範囲

BIS認証は、本来、任意の品質認証制度として機能していましたが、近年、インド政府は品質管理命令を矢継ぎ早に発出し、強制認証の対象となる製品群を急激に拡大させています。現在、スキームI(ISIマーク)の強制認証の対象となっている製品は数百品目に及び、その分野は多岐にわたります。代表的なものとして、各種セメント、鉄鋼製品、アルミニウムや銅などの金属材料、化学品や石油化学製品、家庭用電気製品、タイヤ、自動車部品、シリンダーやバルブ、玩具、履物などが挙げられます。

インド政府は、国内産業の保護育成と、不良品や安全基準を満たさない安価な輸入品の排除を目的としており、規制対象は消費者向け製品から産業用のB2B製品にまで及んでいます。近年では製品カテゴリーの細分化が進んでおり、従来は規制対象外であった部品や素材にまでBIS認証が求められるケースが急増しています。例えば、2026年には新たな品質管理命令が次々と発令されており、「Cookware, Utensils and Cans for Foods and Beverages (Quality Control) Order, 2026」(2026年1月15日発令)に基づき、アルミニウム製調理器具(IS 1660:2024)および飲料用アルミニウム缶(IS 14407:2023)については一般企業向けの強制認証施行日が2026年10月1日に設定されるなど、規制の網は常に広がり続けています。さらに、家庭用および商業用の電気機器に関しても新たな品質管理命令が発出され、マッサージ器や電池駆動のキッチン家電などが、2026年中に強制認証の対象となることが決定しています。これらの強制認証対象製品の公式なリスト、および各品質管理命令の施行日等の詳細は、インド規格局の公式ウェブサイト内の該当ページにて最新情報が公開されています。

参考:インド規格局公式ウェブサイト強制認証対象製品リスト

特定の製品が強制認証の対象となった場合、その製品は、指定された施行日以降、有効なBISライセンスを取得し、所定のISIマークを貼付していなければ、インド国内での製造、輸入、流通、販売が一切禁止されます。これは、単なる関税上の問題ではなく、完全な輸入禁止措置と同等の効力を持ちます。また、化学品のように物理的なマークの貼付が困難な製品であっても、梱包や関連書類への認証番号の明記が厳格に求められます。

日本の法律とインドBIS認証の決定的な違い

インドのBIS認証制度を深く理解するためには、日本の品質保証や安全認証制度との法的な構造の違いを認識しておくことが極めて重要です。日本の産業標準化法に基づくJIS(日本産業規格)は、基本的には国が定めた任意の標準規格であり、特定の法律で引用されない限り、JISマークの取得そのものが、すべての製品の輸入や販売における絶対的な法的義務となるわけではありません。これに対し、インドのBIS認証では、インド政府が発行する品質管理命令によって、特定のインド規格(IS)への適合が法律で直接的に強制される点に大きな違いがあります。

さらに、日本の電気用品安全法に基づくPSEマーク制度と比較した場合、さらに顕著な法的アプローチの違いが見られます。PSE制度では、製品のリスクに応じて「特定電気用品(ひし形PSE)」と「特定電気用品以外の電気用品(丸形PSE)」に分類されます。ひし形PSEでは、登録検査機関による適合性検査や工場検査が求められますが、丸形PSEに分類される多くの一般家電製品については、製造事業者または輸入事業者が、自らの責任で技術基準に適合していることを確認する自主検査と自己宣言で足ります。

しかし、インドのBIS認証におけるスキームI(ISIマーク)の対象製品においては、日本の丸形PSEのような自己宣言制度は一切認められていません。製品のリスクの高低にかかわらず、品質管理命令によって指定されたすべての製品について、事前の厳しい実地工場監査と、インド政府が認定した第三者試験機関による物理的なテストをクリアし、正式なライセンスの交付を受けることが絶対条件となります。

以下の表は、日本のPSEマーク制度とインドのBIS認証スキームIにおける法的手続きの違いを比較したものです。

比較項目日本のPSEマーク(丸形PSEの場合)インドのBIS認証(スキームI・ISIマーク)
コンプライアンスの主体主に輸入事業者または国内製造業者製造業者(外国製造業者の場合は代理人を通じた直接申請)
適合性の証明方法事業者による自主検査および自己宣言第三者機関による製品テストおよび厳格な工場監査による承認
工場監査の要否不要必須(インド規格局の担当官が現地へ赴き審査を実施)
社内試験設備の義務法令で定められた検査体制があれば可インド規格に完全に準拠した社内試験設備と有資格者の配置が必須要件
ライセンスの有効期間製品によるが基本的には恒久的初期は最長2年(最低1年以上)でその後定期的な監査と更新手続きが必要

日本の感覚で、「自社で安全性を確認できているから問題ないだろう」と見切り発車で輸出を行えば、インドの税関で直ちに差し止められ、深刻な法的トラブルに発展することになります。日本企業は、インド独自の法的要件を満たすために、製品開発の根幹からプロセスを見直す必要があります。

インドにおける外国製造業者向け認証制度の具体的な手続フロー

インドにおける外国製造業者向け認証制度の具体的な手続フロー

インド国外に製造拠点を有する企業がBIS認証(ISIマーク)を取得する場合、外国製造業者向け認証制度(Foreign Manufacturers Certification Scheme:FMCS)に基づく厳密な手続きに従う必要があります。この制度は、インド規格局法に基づくBIS(適合性評価)規則2018(Bureau of Indian Standards (Conformity Assessment) Regulations, 2018)のSchedule II Scheme Iに規定されており、外国で製造された製品であっても、インド国内で製造された製品と同等の品質および安全基準を満たしていることを担保するための仕組みです。公式の制度概要および手続きの詳細については、インド規格局の外国製造業者向け認証制度の公式ページに規定されています。

参考:インド規格局外国製造業者向け認証制度公式ウェブサイト

外国製造業者がBISライセンスを取得するまでの一般的な手続きフローは、非常に緻密かつ長期間に及びます。申請からライセンス取得までの期間は、平均して6ヶ月から9ヶ月程度とされており、書類の不備や工場監査の遅延があれば、さらに長引くことになります。

第一段階として、対象製品に適用される正確なインド規格(IS)コードを特定し、指定された申請フォームに必要事項を記入します。この際、関連する技術文書、品質管理マニュアル、工場のレイアウト図、製造工程図、使用する原材料のリストおよびテスト証明書、工場内に設置されている試験機器のリストとその校正証明書など、膨大な書類を準備する必要があります。これらの書類は、インド規格局の外国製造業者認証部門へ、オンラインおよびハードコピーの原本として提出されます。また、後述するインド国内認定代理人の選任にかかる法的書類も、この段階で完全に整えておく必要があります。

第二段階として、提出された書類の厳格な審査が行われます。書類に不備や矛盾が見つかった場合は即座に差し戻されるため、事前の正確な書類準備が極めて重要です。審査において特筆すべきは、2026年に更新されたガイドラインにより、年間最低マーキング料金(MMF)の支払い構造が明確化され、申請時に年間MMFの50パーセントを前払いし、ライセンス交付時に残額(1年超のライセンスの場合は50パーセントを超える場合がある)を支払うという、厳格な費用納付のプロセスが求められるようになった点です。各種申請費用や検査費用は、外貨または指定のルートを通じて正確に納付されなければなりません。

第三段階は、インド規格局の担当官による外国工場の実地監査です。担当官はインドから製造工場へ直接赴き、製造設備、品質管理プロセス、および工場内の自己試験設備が基準を満たしているかを詳細に確認します。この監査プロセスにおいて、担当官の旅費、宿泊費、ビザ取得費用などは、すべて申請者の負担となります。

第四段階として、工場監査の過程で担当官が製品サンプルを無作為に抽出し、封印を行います。このサンプルは、インド国内にあるインド規格局認定の独立した試験機関へ送付され、インド規格に基づいた厳格なテストが行われます。

最終段階として、工場監査のレポートと独立試験機関でのテスト結果の両方が基準を満たしていると評価された場合、製造業者はライセンス料と最低マーキング料金を支払い、正式なBISライセンスが交付されます。ライセンスの有効期間は最長2年から始まり、その後は定期的な更新と継続的なコンプライアンスの証明が必要となります。

現地工場監査における重要ポイントと社内試験設備の要件

外国製造業者向け認証制度の手続きにおいて、最大の難関であり、かつ申請が却下される最も一般的な理由となるのが、現地工場監査と社内試験設備に関する不備です。この監査は、単なる形式的な書類チェックではなく、製造ラインの物理的な確認と、品質保証体制の徹底的な検証を伴います。

多くの外国企業が陥りやすい落とし穴が、社内試験設備(In-house laboratory)に関する厳格な要件です。BIS認証では、製品の品質を継続的かつ自立的に担保できる能力が強く求められるため、認証の対象となるインド規格で要求されているテスト項目を、自社工場内の設備で実行できる体制が必須となります。テスト機器が揃っていない場合や、外部の試験機関に全面的に依存している体制では、監査で即座に不適合と判断されるリスクが極めて高くなります。

工場監査において、担当官は以下の項目を厳格にチェックします。第一に、工場内に該当するテスト機器が物理的に設置され、稼働可能であること。第二に、すべてのテスト機器に対して、インド規格局が認める基準に基づく、有効期限内の校正証明書(Calibration Certificate)が整備されていること。第三に、それらの機器を正しく操作し、インド規格に従ってテストを実施できる有資格の品質管理担当者(Quality Control Personnel)が、現場に配置されていることです。

監査中、担当官は品質管理担当者に対して実際にテスト機器を操作させ、その手順やデータの記録方法が適切であるかを実地で評価します。また、原材料の調達から最終製品の出荷に至るまでのトレーサビリティが確保されているか、不良品が発生した場合の隔離プロセスが機能しているかといった、品質管理の運用実態も厳しく問われます。したがって、監査当日までに、社内の品質管理体制をインド規格の要求事項に完全に適合させておくための綿密な予行演習と設備の拡充が不可欠です。

インド国内認定代理人(AIR)の法的要件と重い責任

外国製造業者がインドに現地法人や支店を持たない場合、BIS認証を取得する上で絶対的な法的要件となるのが、「インド国内認定代理人(Authorized Indian Representative:AIR)」の選任です。外国法人は、直接インドの行政機関と法的なやり取りを行うことが難しいため、インド規格局法および関連規則は、インド国内に居住する個人または法人を、公式な代理人として指名することを義務付けています。この代理人に関する厳格な規定は、インド規格局公式ウェブサイトの指定ページに詳細に明記されています。

参考:インド規格局代理人規定公式ウェブサイト

インド国内認定代理人は、単なる連絡窓口や郵便物の受領代行者ではありません。インド規格局に対する外国製造業者の法的な分身として機能し、極めて重い役割と法的責任を負うことになります。

代理人として選任されるための法的要件として、まず、インドの居住者であること、あるいはインドに登記された法人であることが求められます。また、利益相反を防ぐ観点から、1つの代理人は原則として1つの外国製造業者のみを代表することができ、他の競合する外国製造業者の代理人を兼任することは禁止されています。ただし、同一の企業グループ内である場合や、関連する輸入業者である場合など、一定の例外は認められています。さらに、第三者試験機関でのサンプルテストに関して不正行為を行わないことなど、極めて高い倫理基準が求められます。

インド国内認定代理人の実務的な役割は多岐にわたります。認証申請書の提出、書類の不備に対するインド規格局との折衝、工場監査のスケジュール調整、インド国内での製品テストの手配と進捗管理など、認証取得の全工程を現地で牽引します。さらに重要なのは、ライセンス取得後における継続的なコンプライアンスの維持です。市場から製品の抜き取り検査が行われる際の対応や、ライセンスの定期更新手続き、さらには消費者からのクレーム対応や製品リコールが発生した場合のインド国内における責任主体としての役割を全面的に担います。

法的な観点から最も留意すべきは、インド国内認定代理人が負う法的責任の重さです。2016年インド規格局法および2018年適合性評価規則に基づき、代理人は、外国製造業者が法令やライセンスの利用条件を遵守することに対して、法的な説明責任を負います。万が一、認証を受けた製品がインドの安全基準を満たしていないことが発覚した場合や、品質管理命令に違反して未認証の製品が市場に流通した場合、代理人はインド当局の直接的な取り調べの対象となります。非協力的な態度をとったり、不正行為に関与したりした場合、インド規格局は直ちに外国製造業者のライセンスを停止または取り消す権限を持っています。

したがって、代理人の選任にあたっては、単に手数料が安いといった理由で選ぶのではなく、インドの法律やBISの規制構造に精通し、トラブル発生時に確実な法務対応ができる専門性の高い個人や組織を、慎重に見極めて任命することがインドビジネスにおける最大のリスクマネジメントとなります。

インドでの認証未取得製品の輸入没収リスクと最新の裁判例

インドでの認証未取得製品の輸入没収リスクと最新の裁判例

インド市場においてBIS認証を軽視することは、ビジネスの根幹を揺るがす致命的な法的リスクを伴います。2016年インド規格局法の第17条は、標準マーク(ISIマーク)の使用が義務付けられている製品について、有効なライセンスなしに製造、輸入、流通、販売、貸与、保管することを明確に禁止しています。この規定は、インド国内の製造業者だけでなく、輸入業者や海外の製造業者にも厳格に適用されます。

この第17条の規定に違反した場合の罰則は、同法第29条に規定されています。違反者には初回違反の場合は最低20万ルピー、2回目以降の違反では最低50万ルピーの罰金が科せられ、違反した製品の価値の最大10倍に相当する罰金にまで増額される可能性があります。さらに、悪質な場合や重大な健康被害をもたらすおそれがある場合には、最長2年間の懲役刑が科せられることもあります。これらの罰則は企業だけでなく、違反行為を主導または黙認した組織内の個人に対しても、適用される余地があります。

以下の表は、2016年インド規格局法に基づく主要な罰則規定を整理したものです。

根拠条文違反行為の概要法定刑および罰金
第17条・第29条強制認証対象製品を無認証で製造・輸入・販売した行為最低20万ルピーから違反製品の価値の10倍までの罰金、または最長2年の懲役(あるいはその両方)
第15条(3)・第29条標準マーク(ISIマーク)の偽造や不正使用罰金および厳格な刑事追及の対象
第28条捜索および押収権限の行使インド規格局の権限による強制的な倉庫立ち入りおよび対象物品の即時押収

実際の取り締まりにおいて最も頻繁に発生し、かつ企業に直接的な大損害を与えるのが、税関での製品の差し止め、およびインド規格局による強制的な捜索・押収です。品質管理命令の対象製品はインドの税関システムと連動しており、有効なBISライセンス番号と正しいISIマークの表示がない限り、通関を通過することはできません。そればかりか、無認証での輸入が発覚した時点で、製品は不法な密輸品と同等に見なされ、押収、没収、あるいは自費での廃棄や積戻しを強制されます。

関連する判例:無認証製品の輸入と押収措置

インドにおけるBIS認証違反の厳しさと法的措置の実態を示す重要な判例として、ボンベイ高等裁判所における「Ador Welding Limited 対 インド連邦政府他」の裁判が挙げられます。この判例の公式な裁判記録は、インドの法律データベースであるIndian Kanoonで確認することができます。

参考:Ador Welding Limited vs The Union Of India And 2 Ors, WRIT PETITION (L) NO. 28446 OF 2022 (Bombay High Court, February 20, 2023)

本件の原告であるAdor Welding Limitedは、溶接機器や関連ソリューションを製造および輸入する企業でした。同社は特定のフラックス入りワイヤを海外から輸入し、自社の倉庫に保管していました。かつてはこの製品に対するBIS認証は必須ではありませんでしたが、インド政府が「Flux Cored (Tubular) Electrodes (Quality Control) Order 2021」(2021年3月12日発出、同年9月1日施行)を発行し、このワイヤに対してISIマークの取得を義務付けました。原告がBISライセンスを持たないまま当該製品を輸入・保管していたところ、インド規格局の当局者が倉庫に対して強制的な捜索を行い、ISIマークが付されていない約17,703箱もの製品を押収しました。

原告は、製品の没収を免れるために、BIS規則2018第50条第2項(Rule 50(2))に基づく違反のコンパウンド(和解)を申請し、インド国内市場ではなく国外へ再輸出することを求めましたが、インド規格局側は、この和解申請を十分な理由なく却下しました。これに対し、原告は高等裁判所へ不服申し立ての令状請求を行いました。

ボンベイ高等裁判所は、インド規格局側が和解申請を却下した理由が法的に不十分であり、行政手続きの不備があるとして却下決定を取り消しました。そして、押収された製品を、原告の費用負担でインド国外へ再輸出することを条件に、商品の解放を命じました。しかし、裁判所は判決の中で極めて重要な法的見解を示しています。それは、もし原告がこれらの製品をインド国内市場に流通させようとするのであれば、インド規格局法に基づくすべての要件を完全に遵守しなければならないことは言うまでもない、という点です。さらに、無認証製品を輸入・保管したことに関する刑事および行政上の訴追自体は、この再輸出の許可によって免責されるものではなく、本案として継続されるべきであると明言しました。

この判例が示す教訓は明白です。一度品質管理命令の対象となった製品は、いかなる理由があろうとも、ISIマークなしにインド国内市場で販売することは、司法の場においても絶対に認められません。押収された製品のインド国内での販売は不可能となり、多額の費用をかけた積戻しや全量廃棄に加え、莫大な罰金と刑事訴追のリスクに直面することになります。

また、デリーにおける別の事例(Cloudtail India Private Limited vs Central Consumer Protection Authority)では、BIS認証を持たない圧力鍋を販売したプラットフォーム事業者に対し、CCPA(中央消費者保護局)が消費者保護法第2条(10)およびBIS法第16条・第17条違反を理由に罰金(10万ルピー)を科しました(CCPA命令:2022年11月14日)。NCDRCが控訴を棄却し(2023年8月23日)、その後デリー高等裁判所(W.P.(C) 12521/2023)に令状請求が提起されるなど、BIS法第16条・第17条に基づく責任が製造業者にとどまらず無認証製品を販売・流通させた事業者にも及ぶことが、改めて明確に示されました。

さらに、インド規格局は電子商取引プラットフォームの監視も強化しています。2025年には、AmazonやFlipkartなどの大手ECサイトの倉庫に対して大規模な抜き打ち捜索が実施され、BIS認証を取得していない1万点超の玩具、ハンドブレンダー、ルームヒーター、電気温水器などが押収されました。これらの製品を供給していたTechvision International Pvt Ltdに対しては、第17条違反として裁判所に刑事告発が行われています。このように、インドの市場監視当局は常に最新の品質管理命令のリストに基づいて監視の目を光らせており、サプライチェーン全体のコンプライアンスが問われる事態となっています。

製品開発段階からの技術基準組み込みの重要性

日本企業がインド市場向けに製品を輸出する際、製造が完了してから、あるいは出荷の直前になってBIS認証の取得を検討し始めるというアプローチは、完全に失敗を意味します。インドの技術基準であるIS規格は、必ずしも国際規格(ISOやIEC)や日本のJIS規格と完全に一致しているわけではありません。インド独自の環境条件(電圧の変動、気候、インフラの状況など)を考慮した、独自のテスト項目や安全基準が組み込まれていることが多々あります。

もし、日本の国内仕様や他国向けの仕様で製品の設計および開発を完了し、金型を製造した後にBIS認証の審査に臨んだ場合、独立試験機関でのテストで不適合となる確率が非常に高くなります。不適合となった場合、設計の根幹から見直しを行い、部材を変更し、再度工場監査とテストをやり直すことになり、数千万単位の追加コストと年単位の市場投入の遅れが発生します。また、前述したように、自社工場内にIS規格に準拠した試験設備と人員を配置しておく必要もあるため、工場のオペレーション自体もインドの規制に合わせて事前にチューニングしておかなければなりません。

したがって、インド市場への参入を戦略的に進めるためには、製品の企画・開発の初期段階から、適用されるインド規格(IS)の要求事項を設計要件として組み込む、コンプライアンス・バイ・デザインの思想が不可欠です。規制の網羅的な調査を事前に行い、製品開発のロードマップとBIS認証取得のためのスケジュールを同期させ、工場設備の要件を満たすための投資を先行して行うことが、複雑なインドの法規制を乗り越え、巨大な市場で成功を収めるための唯一かつ確実な道筋となります。

まとめ

本記事では、インド市場でビジネスを展開する上で避けては通れないBIS認証の全体像、強制認証の対象となる製品群の広範な広がり、そして外国製造業者に求められる複雑な手続きと法的要件について詳述しました。インド政府は、自国産業の保護と消費者安全の観点から品質管理命令を次々と発出しており、その規制は日本の法制度とは比較にならないほどの強制力と厳格な罰則を伴っています。特に、自社工場に対する厳しい実地監査の要求や、全責任を負うインド国内認定代理人の選任は、極めて高いハードルとなります。実際の判例が示す通り、認証を取得せずに製品を輸入および流通させた場合、製品の全量没収や刑事罰といった、事業存続に関わる重大なリスクを負うことになります。だからこそ、インド市場への展開にあたっては、製品開発の初期段階から現地の最新法令と技術基準を正確に把握し、設計プロセスに組み込んでおく、戦略的なコンプライアンス体制の構築が不可欠です。

このように複雑かつ絶えず変化するインドの法規制や認証手続きに迅速に対応するためには、現地の法令に精通した専門家による強力なリーガルサポートが不可欠となります。モノリス法律事務所は、IT関連法務をはじめとする高度な専門性を有するだけでなく、インド現地の有力な法律事務所と緊密に提携しており、現地の最新動向を踏まえた確実な支援を提供しています。BIS認証の取得手続きに関する法的な助言から、適切なインド国内認定代理人の選任および契約サポート、現地での法令遵守体制の構築、万が一の法的トラブル発生時の対応に至るまで、日本企業のインド展開を網羅的かつ強力にサポートすることが可能です。確実な法令遵守を競争力に変え、安全かつ迅速なインド市場開拓を実現するための一助として、ぜひご活用ください。

モノリス法律事務所は、インド法務に関する調査および情報提供を目的として、現地法律事務所Quest IP Attorneysと非独占的な提携関係(Associate Firm / Correspondent Firm)にあります。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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