弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

APIを実装する提携契約の注意点は?条項ごとに解説

スマホの普及に伴って、アプリは今や必須のツールとなりました。

昨今では、単体のアプリだけで機能するものから、FacebookやInstagramのような、複数のアプリを連携・共有するAPIと呼ばれる仕組みが構築されることも増えてきました

そこで、本記事では、APIを実装することを考えている方を対象に、API実装の際に締結される提携契約のチェックポイントについて説明をします。 

APIとは何か

APIとは、Application Programming Interfaceの頭文字をとった言葉で、アプリケーションなどを外部に向けて公開し、他者が開発したアプリケーションなどと機能を連携・共有する仕組みのことをいいます。 

APIにより、アプリケーションとアプリケーションをつなげることができるため、相互の機能を利用することができ、有用性が増すこととなります。 

APIが利用される提携の具体例

APIの定義はわかったものの、具体例がないとイメージが湧かないという人もいると思います。 

APIには、例えば、前述のFacebookやInstagramのように、会員のデータを連携・共有するものや、他者が提供するネット決済の機能を、自分が運営するECサイトで利用するものなど様々なものが存在します

このように多くあるAPIの中で、本記事では、他者が提供する検索サービス機能を顧客に利用させるケースを例に、提携契約の要チェックポイントについて説明をします

検索サービスのAPIについて

例えば、甲さんが法律事務所の口コミサイトを運営していたとします。 

甲さんが運営するサイトは、利用者が口コミを投稿するという仕組みですが、利用者が増えるにつれ、口コミ数が増加し、利用者が目的の口コミを探すのに時間がかかるという問題点が発生しました。

そこで、甲さんは、サイト内の情報から目的の口コミを検索できる機能を実装したいと考え、検索サービスを開発している乙さんと、検索サービスの提携に関する契約を締結することとなりました。

上記のような事例で、甲さんと乙さんの間で締結される契約が、提携契約書になります

提携契約のチェックポイント

以下では、提携契約締結の際のチェックポイントについて、問題となることが想定される条項を示し、説明をします。 

APIの利用条件に関する条項

提携契約書において、APIの利用範囲に関する条項を定める必要があります

APIの利用範囲が明確に定まっていないと、APIの利用範囲を巡って、後々トラブルになる可能性があります。 

また、APIの利用が独占的なものなのか、非独占的なものなのかについて、規定をしておく必要があります。 

上記の例でいえば、甲さんとしては、乙さんが開発した検索サービスに魅力を感じていますので、独占的に利用したいと考えるはずです。

一方、乙さんとしては、自己が開発したサービスを多くの人の利用してもらいたいと考えることもありえ、その場合には、甲さんの利用を非独占的なものにしたいと考えるはずです。

そこで、APIの利用条件に関する条項としては、以下のような条項が考えられます。 

第●条(本APIの利用等)
1. 乙は、甲に対し、法律事務所口コミサイトの運営サービス(以下「本サービス」という。)を提供する目的の範囲内で、本APIの非独占的な利用を許諾する。
2. 甲は、本APIについて、本サービスを提供する目的の範囲内で、本サービスの利用のために、甲指定の方法により、会員登録を行った会員に対して、再利用許諾することができる。
3. 甲は、前項の場合、会員の行為についても本契約の定めによる責任を負担し、会員をして本契約の定めを遵守させるものとする。
4. 乙は、甲に対し、本契約に定める範囲での本APIの利用のみを許諾するものであり、甲は本API、その派生物及び本APIにより提供されるデータに係る著作権、特許権その他の知的財産権及び所有権その他の権利を取得するものではない。

API利用料に関する条項

金銭に関する条項は、トラブルが生じやすい条項になります

そのため、トラブルを防ぐためには、API利用料について、明確に定めておくことが重要になります。 

検索サービスのAPIについては、検索をする、検索結果一覧が表示される、検索結果の詳細を確認するというような段階がありますので、段階毎に利用料を規定することが考えられます。 

例えば、以下のような条項が考えられます。 

第●条(利用許諾料)
1. 乙は甲に対し、以下の各号に規定された利用許諾料にて本APIを提供する。
(1) 口コミ検索料
本APIを利用して会員が口コミを検索した場合、検索結果に表示された口コミ数にかかわらず、会員による1回の検索につき5円(税別)が発生するものとする。 
(2) 口コミ閲覧料
会員が、検索結果に表示された口コミ内容の詳細を閲覧した場合、1回の口コミ内容の閲覧につき50円(税別)が発生するものとする。
(3) 月間最低利用料
前各号により計算された月間利用許諾料が10,000円(税別)に満たない場合、本サービスの月間利用許諾料は10,000円(税別)とする。
2. 前項各号で規定された金額について、甲および乙は、相手方の合意を得て、変更することができるものとする。
3. 甲は、会員に対し、本APIを利用したサービスの対価を自由に設定できるものとする。

第●条(支払条件)
1. 利用許諾料は、毎月1日から起算し、同月末日を締日とする。
2. 乙は、月間利用許諾料を前項の集計期間で集計し、翌月5日までに甲に対して、月間利用許諾料の内訳を記載した請求書を発行する。
3. 甲は、前項の請求書の月間利用許諾料の内訳に異議のない場合、第1項に定めた締日の同月末日までに同請求書に記載された月間利用許諾料(税別)を乙の指定する金融機関の口座に振り込み支払うものとする。なお、振込手数料は甲の負担とする。
4. 甲は、第2項の請求書の月間利用許諾料の内訳に異議のある場合、請求書の受領後、5営業日以内にその旨を乙に通知するものとし、その後、甲乙間で協議の上、月間利用許諾料を決定するものとする。なお、甲が、請求書の受領後、5営業日以内に異議のある旨の通知をしない場合、甲は月間利用許諾料の内訳に異議のないものとみなす。

知的財産権に関する条項

API利用に関しては、APIの利用の過程で、著作物が生じる可能性もあります。 

そこで、知的財産に関する条項を規定する必要があります。 

知的財産権に関する条項については、以下のような規定が考えられます。 

第●条(知的財産権の帰属)
乙は、甲に対し、本契約に定める範囲での本APIの利用のみを許諾するものであり、甲は本API、その派生物及び本APIにより提供されるデータに係る著作権、特許権その他の知的財産権及び所有権その他の権利を取得するものではない。

禁止行為に関する条項

APIを利用させる場合、相手方にAPIに関する情報を取得されることを防ぐ必要があります。 

また、無断でAPIを第三者に利用させるという行為も禁止する必要があります。 

そこで、APIの利用に関しては、禁止行為を明確に規定しておくことが重要となります。 

具体的には、以下のような条項が考えられます。 

第●条(禁止行為)
甲は、以下の各号の行為を行ってはならないものとする。
(1) 本API又は本APIを経由してアクセスする乙のシステム又はプログラムの全部若しくは一部(以下、これらの内容に関する情報を含み、「乙のシステム等」という。)を、複製若しくは改変し、又は逆コンパイル、逆アセンブル等のリバースエンジニアリングすること
(2) 乙のシステム等を第三者に利用許諾、販売、貸与、譲渡、開示又はリースすること
(3) 乙のシステム等に付されている乙の著作権表示及びその他の権利表示を削除し、又は改変すること
(4)乙、乙の提携先、甲以外の本APIの利用許諾先その他の第三者の知的財産権を侵害し、これらの者の財産・信用・名誉等を毀損し、プライバシー権、肖像権その他の権利を侵害すること
(5) 動作確認、接続試験以外の目的で検証環境に接続すること
(6) 乙が必要と認めた検査に合格することなく、本API連携を実施すること
(7) 乙の事前の書面による同意を得ることなく乙の商標、社名及びロゴマーク等を利用する行為
(8) 本API及びその派生物を乙から許諾を受けた目的以外で利用する行為
(9) インターネットアクセスポイントを不明にする行為
(10) 各種法令、又は本サービス若しくは本API連携に関する諸規則に抵触する行為
(11) 乙のシステム等の負荷を著しく増加させる行為
(12) 本APIに対する乙から利用許諾を受けた第三者のアクセスを妨害する行為
(13) 公序良俗に反し、他人に著しい不快感を与え、又は乙の風評リスクを高めるおそれのある行為
(14) 乙の運営するサイト、サーバー、乙のシステム等に関し、コンピュータウィルスを感染させ、ハッキング、改ざん、若しくはその他の不正アクセスを行う等、乙のシステム等の安全性を低下させる行為
(15) 前各号に類する行為

まとめ

以上、API実装の際に締結される提携契約の要チェックポイントについて説明をしました。 

API提携については、今後も増えていくものと考えられます。そのため、契約書の要点をしっかりと把握しておく必要があります。 

また、相手方による権利侵害が行われないように、契約書の中で、禁止行為を明示しておくことが重要です。 

API実装の際に締結される提携契約の作成や修正については、専門的な知識が必要になりますので、専門の弁護士に相談することをおすすめします。 

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る