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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

美容クリニックへの口コミを削除する方法とは?削除仮処分を解説

風評被害対策

美容クリニックや美容整形外科を利用しようとする患者は、来院前にインターネットで口コミを調べる傾向にあります。

一般的に美容整形に関しては、友人や知人に相談しにくいことがインターネットで情報を収集しようとする一つの動機になっていると思われます。

また、美容クリニックの場合、施術の結果、どのような効果を得られるのかが重要視されます。

このため、できるだけ口コミの評価のいい美容クリニックを選びたいという心情もあるでしょう。

したがって、美容クリニック側からすると医院の口コミは非常に重要です。万が一、誹謗中傷の口コミが投稿されると来院する患者が大きく減少する可能性があるためです。

そこで、誹謗中傷を受けた美容クリニック向けに、美容クリニックへの口コミを削除する方法について解説します。

なお、美容クリニックの口コミサイトである「美容医療の口コミ広場」における誹謗中傷に関しては、以下の記事で詳細に解説しています。

また、Google マップ(マイビジネス)の口コミ削除に関しては、以下にて詳細に解説しています。

美容クリニックへの誹謗中傷が認められた事例

実際に美容クリニックに対してインターネット上の巨大掲示板に書き込まれた口コミに関する裁判例を取りあげます。

事案の概要

美容クリニックを開設する医療法人Xは、クリニックに通院していた患者Yが誹謗中傷の口コミを巨大掲示板2ちゃんねるに書き込んだことが、Xの名誉を棄損するとして383万4600円の慰謝料を請求しました。

患者Yが書き込んだとされる口コミは大きくわけて2種類です。

口コミ1:施術歴の漏洩に関する口コミ

まず1つ目が、患者Yの美容整形の施術歴について、クリニック内で他の患者などがいる前で大きな声で話されたというものです。これを「口コミ1」とします。

この点に関する口コミは、具体的には次のような内容でした。

  • 施術した経歴を隣に人がたくさんいる前で大声で話された
  • その上なぜか俺の医院だからと言い悪口まで言われた
  • 施術した経歴を人がたくさんいる受付の目の前で大声で2度も話された

口コミ2:待合室の壁越しの暴行に関する口コミ

もう一つは、患者Yが待合室の壁越しに、クリニックの職員から壁を叩いたり蹴ったりなどされたという口コミです。これを「口コミ2」とします。

口コミ2の具体的な内容は次のとおりです。

  • 気に入らない患者がいる部屋の待合室には、隣の部屋から壁を越え叩いたり蹴ったりしてくる
  • 嫌いな患者がいる待合室を何度もバシバシ叩く

なお、この裁判は口コミの削除ではなく美容クリニックが投稿者に対して名誉毀損に基づく慰謝料請求をした事案ですが、口コミの削除を仮処分で争う場合にも争点は基本的に同様になると考えられます。

裁判所の判断

本事案について、裁判所は次のとおり判断しました。なお、名誉毀損の成立要件に関しては、以下の記事で詳細に解説しています。

口コミ1についての判断

まず、患者Yの施術歴を近くに人がいるにもかかわらず大声で話されたという口コミに関しては、医療法人Yの社会的評価を低下させるものであり名誉毀損の成立要件のうち社会的評価の低下の要件を満たすと判断しました。

一般読者をして、原告医療法人では、その場に第三者がいるにもかかわらず、当該患者にその施術歴を口頭で伝えて、当該第三者にも聞こえ、施術歴を知られることとなり、原告医療法人が個人のプライバシーへの配慮を欠いているとの印象を抱かせるものであって、原告の社会的評価を低下させるものということができる。

東京地方裁判所令和2年6月24日判決

ただし、後者の患者Yの施術歴を近くに人がいるにもかかわらず大声で話されたという口コミに関しては、裁判所は情報を漏洩したこと自体は真実であることを前提として、次のとおり公共性を認めました。

本件各投稿は、医療機関の適性を話題としており、社会的関心の対象とされる事柄であるから、本件各投稿が摘示し又は意見論評の基礎としている事実は、いずれも公共の利害に関するものということができる。

東京地方裁判所令和2年6月24日判決

結論として、施術歴の漏洩についての口コミ1は名誉毀損の要件を満たすものの、違法性が阻却されるとして、投稿した患者Yは損害賠償責任を問われませんでした。

名誉毀損の成立と口コミの公益性に関しては、以下の記事で詳細に解説しています。

口コミ2についての判断

これに対し、気に入らない患者がいる部屋の待合室を隣の部屋から壁を越え叩いたり蹴ったりしてくるとの口コミ2に関しては、次のとおり医療法人Yの社会的評価を低下させるものであり名誉毀損の要件を満たすと判断されました。

一般読者をして、原告医療法人では、スタッフは気に入らない患者がいると、当該患者が在室する待合室を壁越しに叩いたり蹴ったりして、露骨に悪意を表示するとの印象を抱かせ、原告医療法人の社会的評価を低下させるものということができる。

東京地方裁判所令和2年6月24日判決

また、この口コミ2の内容については真実であるとは認定されなかったため、口コミ1とは異なり違法性は阻却されませんでした。この結果、口コミ2に関しては医療法人Xに対する名誉毀損にあたると判断されています。

もっとも、この口コミ2についての慰謝料としては10万円のみが認められるにとどまりました(原告である医療法人Xの負担した弁護士費用・調査費用とあわせて合計13万円の損害賠償を認定)。

美容クリニックの口コミ削除の方法

美容クリニックがインターネット上に誹謗中傷の口コミを書き込まれた場合、まず行うべきことは口コミを削除することです。

口コミの削除については、投稿されたサイトの管理者等に連絡を取り、削除を求める方法もあります。もっとも、サイトの管理者が必ず口コミの削除に応じてくれるとは限りません。

そこで、サイトの管理者が任意に口コミの削除に応じない場合には、削除を求める仮処分を裁判所に求めることになります。これを、削除仮処分などといいます。

削除仮処分とは

口コミの削除仮処分は、通常の民事訴訟を簡略化した裁判手続きであり通常であれば1〜2ヶ月程度という比較的短期間に結論が出る点に特徴があります。

インターネット上の口コミは投稿から時間が経てば経つほど、SNSや巨大掲示板等に書き込みが拡散される性質があります。したがって、早く結論の出る仮処分手続を利用する必要があります。

口コミの削除仮処分の手続に関しては、以下の記事で詳細に解説しています。

美容クリニックの削除仮処分のポイント

口コミが拡散されて美容クリニックのイメージが大きく低下することとなれば、クリニックの経営において死活問題となるばかりか、既存の患者を不安にさせることにもつながります。

このため、美容クリニックに対する誹謗中傷の口コミを発見したら、早い段階で削除仮処分を申し立てることをおすすめします。

なお、削除仮処分は簡易な裁判手続きであるとはいえ、書類の作成にあたっては専門的な法律知識が必須です。このため、口コミの削除の可能性を高めるためにも、弁護士に依頼したほうが良いでしょう。

まとめ

美容クリニックは、口コミを投稿されることが多い業種です。また、美容クリニックの利用は患者によってはセンシティブなものであることから、批判的な口コミも投稿されがちです。

中には、美容クリニック自体に非があることもあるでしょう。

一方で、口コミの中には明らかに虚偽に基づくネガティブな口コミや、過度に攻撃的な口コミがあります。このような口コミをそのままにしておくと、美容クリニックにとっては大きなダメージとなります。 

口コミの削除を求めるためには仮処分を含めた裁判手続を要することが多いため、できるだけ早い段階でインターネット上の誹謗中傷問題に詳しい弁護士に解決方法を相談しておくと安心です。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。

近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は深刻な被害をもたらしています。美容クリニックの場合、口コミは来客に直結することもあり、放置しておくと、クリニックの死活問題になる可能性もあります

当事務所では、こうした被害に対するソリューションとして、投稿者の特定なども行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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