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風評被害対策

マンションコミュニティの書き込みを削除する方法

風評被害対策

マンションコミュニティの書き込みを削除する方法

分譲マンションは多くの人にとって一生に一度の高額な買い物であるため、購入検討者はできるだけ多くの情報を得たいと考えるものです。そのような期待に応えるものとしてマンションコミュニティというサイトがあります。もっとも、マンションコミュニティは5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)と類似した形式の匿名掲示板であり、マンションや不動産会社に対する根も葉もない誹謗中傷が書き込まれることも珍しくありません。そこで、マンションコミュニティにおける誹謗中傷に対してどのような対応が可能であるかを説明します。

マンションコミュニティとはどのようなサイトか

マンションコミュニティとは、「マンション購入検討者を応援する口コミ掲示板サイト」としてミクル株式会社により運営されている掲示板です。主に新築分譲マンションについて、購入者や購入検討者が実際の住み心地や販売の状況、マンション周辺情報などの情報を交換することを目的とした掲示板であり、この種の掲示板としては日本最大級の規模といえます。

マンションコミュニティでは多くの場合、個別のマンションごとにスレッドが立っています。そして、このスレッドの中にさらに購入検討者向けの「検討スレ」、契約者向けの「住民スレ」が設置されています。更に、個別のマンションごとのスレッド内には当該マンションの物件概要や地図なども掲載されています。このため、マンションの購入検討者にとっては数多くのマンション情報を一覧できる点で非常に有用です。

したがって、マンションの購入検討者であればマンションコミュニティの書き込みを閲覧する可能性が高いといえます。それ故、ひとたびマンションや不動産業者についての誹謗中傷が書き込まれれば、マンションの売れ行きや不動産業者の業績に大きな影響を与えることが懸念されます。

マンションコミュニティではどのような風評被害があるのか

マンションコミュニティでの口コミによる風評被害の具体例を挙げていきます。

マンションコミュニティは会員登録等を必要とせず誰でも匿名で書き込むことのできる掲示板です。このため、競合他社が悪意をもってマンションや不動産会社の悪評を書き込むことがあり得ます。マンションに対しては、例えば「Aマンションの建っている土地は地盤が弱いことで有名である。これにもかかわらず、Aマンションは十分な地盤補強工事を行っていないようだ」などの誹謗中傷が書き込まれる可能性があります。また、不動産会社に対しては、例えば「Aマンションの販売をしているX社の営業マンは、知識が足りず建物について誤った説明ばかりだ」などといった誹謗中傷を受けることがあり得ます。

利用規約違反で削除請求する方法

マンションコミュニティに誹謗中傷が書き込まれた場合にまず検討するのが、利用規約違反であるとして運営者に対し削除を求める方法です。利用規約違反に基づく削除依頼をする場合は、各スレッドを開くと最初に出てくる画面内の、タイトル右下にある「削除依頼」のボタンまたはスレッド内の各投稿の右下にある「削除依頼」のボタンのいずれかをクリックします。そうすると、削除依頼フォームが表示されます。

その後は、削除依頼フォームの記載内容に従って依頼者の名前を入力し、削除請求の理由・立場をプルダウンから選択します。そのうえで、削除を求める投稿やその理由について自由記載欄に詳しく記入します。

削除依頼フォームページより抜粋

いくら口コミの内容が真実であっても社会的評価を下げるような口コミである場合は名誉毀損罪となります。また、虚偽の口コミを書き社会的評価を下げた場合は信用毀損罪、口コミという公の場を使い罵倒した場合は侮辱罪となります。

削除請求が運営者に受け入れられると、該当する投稿のあった枠内に削除された旨が記載されます。

マンションコミュニティは、比較的削除依頼が受け入れられやすいサイトであり、対応も早いです。したがって、1週間から10日程度経過しても削除依頼した投稿が削除されていないようであれば、依頼が受け入れられなかったと判断することができます。この場合には、後述する裁判所を通じた仮処分の手続による削除請求を検討することとなります。

利用規約違反に基づいて削除依頼フォームから投稿の削除を求める場合、マンションコミュニティの利用規約に定める投稿削除基準に抵触していることの説明が必要です。投稿削除基準は、以下の通りです。

マンションコミュニティの利用規約より抜粋

マンションの耐震性に関する事実無根の書き込みがされた場合

例えば、あるマンションについて「Aマンションの建っている土地は地盤が弱いことで有名である。これにもかかわらず、Aマンションは十分な地盤補強を行っていないようだ」との書き込みがされた場合はどうでしょうか。まず、このような書き込みが事実無根である場合には投稿削除基準のうち「投稿の内容が、事実と著しく異なると判断できるもの」に該当するといえます。

もっとも、十分な地盤補強を行っているか否かについては外形から容易に判断できるものではなく専門家による技術的な検証が必要です。したがって、このような投稿についてはマンションコミュニティの運営側がその真偽を判定することが困難であるため、削除するとの判断はされにくいのが実情です。そこで、真偽の判定が難しい投稿に関しては、補助的に他の投稿削除基準への抵触についても説明することが望まれます。

一般的に、十分な地盤補強を行っていないということはマンションの安全性に大きな影響を与えることになります。閲覧者が当該マンションの安全性に疑義を抱くこととなれば、デベロッパーや施工会社を巻き込んだ大きな問題に発展する可能性があります。したがって、投稿削除基準のうち「当サイト及び他の企業もしくは第三者に不利益を及ぼすもの」に該当すると主張することも考えられます。

また、当該マンションの購入を見合わせるよう示唆する内容を執拗に書き込んでいるような場合には「物件購入の意志を妨げようとする悪意あるもの」に該当するとの主張もできるでしょう。

不動産会社営業マンの悪評が書き込まれた場合

次に「Aマンションの販売をしているX社の営業マンは、知識が足りず建物について誤った説明ばかりだ」といったような、不動産会社の営業マンの対応に対する悪評はどうでしょうか。この場合、誤った説明をしたとの事実が全くの虚偽であれば、投稿削除基準の「個人、又は団体の名誉を著しく毀損しているもの」および「投稿の内容が、事実と著しく異なると判断できるもの」に該当するということができます。

ただし、この場合においてもマンションコミュニティの運営側にとっては実際に現場でどのような説明がされたのかを検証することができないので、真偽の判定が困難といえます。したがって、投稿削除基準のうち「当サイト及び他の企業もしくは第三者に不利益を及ぼすもの」に該当するなどの主張を補助的に行うことが考えられます。建物について誤った説明をしているという点については、単に営業マンの能力不足というだけでなく、宅建業法が定める重要事項説明義務に違反する可能性があります。したがって、このような投稿はその営業マンの勤める不動産会社に不利益を及ぼすといえるでしょう。

ただし、マンションコミュニティの運営者は、サイト内の「当掲示板のスタンスや投稿掲載に関する関する考え方について」と題するページにおいて、事実無根の書き込みに関しては「企業様のご担当であることを名乗った上で、掲示板に直接フォロー・反論をされるのが最も良い対処方法でございます。名乗られたことでトラブルになることはございません。」と、削除依頼ではなく直接の対応を促しています。したがって、マンションコミュニティにおいては、事実無根の誹謗中傷について削除依頼フォームからの削除が認められにくいのが実情です。

違法だとして削除請求する場合の例

違法である口コミが投稿された場合の削除請求は受け入れられるのでしょうか。

違法であるとして削除請求する場合としては、名誉毀損に該当するケースが考えられます。名誉毀損は、ある人や企業の社会的評価を低下させる具体的事実が書き込まれ、かつ当該事実が虚偽である場合に成立する可能性があります。名誉毀損の成立要件に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

先ほど例に挙げた不動産会社の営業マンが顧客に誤った説明をしているとの投稿については、既に述べた通り不動産会社について宅建業法上の重要事項説明義務違反を疑われるおそれもあります。したがって、このような投稿は不動産会社の社会的評価を低下させる具体的事実ということができます。よって、顧客に誤った説明をしたとの事実が全くの虚偽であった場合には、名誉毀損が成立し得ます。このように投稿が違法となる場合には、利用規約に定める投稿削除基準のうち「個人、又は団体の名誉を著しく毀損しているもの」にあたるとして削除依頼をするだけでなく、プロバイダ責任法に基づき削除と同等の効果をもたらす送信防止措置依頼を出すことも可能です。

ただし、いずれにしても削除の可否を判断をするのはマンションコミュニティの運営者です。繰り返しになりますが、マンションコミュニティの運営側では投稿された事実が虚偽であるかの判断が困難であるため削除の判断は出にくいといえます。したがって、名誉毀損を理由として削除を求める場合には次に説明する仮処分による削除を視野に入れる必要があります。

仮処分による削除

仮処分というのは正式な裁判手続とは異なる仮の裁判手続であり、正式な裁判手続と比較すると早く結論が出る点が特徴です。投稿の削除請求であれば、通常1~2か月程度で削除すべきか否かの判断が出ます。削除すべきとの判断が出た場合には、マンションコミュニティ側はこれに従い投稿を削除することになります。投稿の削除を求める仮処分に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

仮処分による投稿者特定

投稿の削除だけでは問題が完全には解決しない場合もあります。例えば、何度削除しても同様の書き込みが執拗にされる場合や、既に風評被害によって売上げが減少するなどの実害を被っているような場合です。

このような場合には、誰が書き込みをしているかを特定するため発信者情報開示請求をする必要があります。発信者情報開示請求は秘匿性の高い個人情報に関するものであることから、マンションコミュニティ側は容易に開示に応じないことが通常です。このため、発信者情報開示請求については最初から裁判所を通じた手続である仮処分を利用することが得策といえます。発信者情報開示請求に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

発信者情報開示請求が認められ投稿者が特定できたら、今度は問題の投稿を書き込んだ者に対して、二度としないことを誓約させたり損害賠償請求や刑事告訴をすることになります。

まとめ

マンションコミュニティは、分譲マンションについて多くの情報を求める購入検討者にとって便利なサイトである半面、誹謗中傷を書き込まれた不動産会社にとっては売れ行きに直結するリスクがあります。新築分譲マンションは比較的短期間で一気に販売活動が行われることが多いため、万が一誹謗中傷が書き込まれた場合には迅速に手を打つ必要があります。特に仮処分による投稿の削除請求や発信者情報開示請求を行う場合には裁判所を通じた手続となることから、弁護士へ依頼をしないと対応が難しいといえます。ネット上の誹謗中傷や風評被害への対策はITに関する専門的な知識が必要となるため、この分野について経験豊富な弁護士に相談することが重要です。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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