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ドローンのレベル4飛行で活用範囲拡大 機体認証と技能証明の2つの制度を解説

ドローンレベル4飛行解禁、関連ベンチャーが理解すべき法律を解説

航空法の改正に伴い、ドローンの屋外飛行に新たな規制が加わりました。2022年6月20日より、100g以上のドローン等を対象に機体登録制度が施行され、2022年12月5日には、飛行レベル4(有人地帯での目視外自律飛行)が解禁されました。

この航空法の改正により、ドローンのビジネスでの活用範囲が拡大されることが期待されています。本記事では、ドローンにまつわる新制度について解説します。

ドローンのレベル4飛行とは

ドローンの飛行レベルは、人口密度やドローンの操作レベルを基準として、航空法によって下記の4段階に分類されています。

飛行レベル定義許可
承認
1無人地帯・目視内(操縦飛行):見える範囲で手動操作する一般的なドローン利用の形態農薬散布・映像コンテンツのための空撮・インフラ点検(橋梁・送電線)など一部
必要
2無人地帯・目視内(自律飛行):見える範囲で自動運転機能を活用した飛行空中写真測量・ソーラーパネルの設備点検など一部
必要
3無人地帯・目視外(自律飛行):住民や歩行者らがいないエリアにおいて目の届かない範囲まで飛行する形態離島や山間部への荷物配送・被災状況の調査・行方不明者の捜索・長大なインフラの点検・測量など必要
4有人地帯(第三者上空)・目視外(自律飛行):市街地などを含めたエリアにおいて目の届かない範囲まで飛行する形態都市の物流や警備・発災直後の救助・避難誘導・消火活動の支援・都市部におけるインフラ点検・測量など 必要
ライセンス 取得義務

新制度では、レベル4飛行が解禁されたことで、市街地などでも目の届かない範囲までドローンを飛ばせるようになり、ビジネスへの活用範囲が一気に拡大しました。ただし、レベル4飛行を行うには所定の手続を行う必要があります。

無人航空機を屋外で飛行させるために必要な続きの全体像は、以下のようになります。

ドローン機体登録制度

ドローンの規制については、2022年6月から既に「ドローン機体登録制度」が開始されました。機体登録制度と、その他のドローンに関連する法律については、以下の記事にて詳しく解説しています。

関連記事:ドローンレベル4飛行解禁、関連ベンチャーが理解すべき法律を解説

無人航空機の登録制度は、主に以下の3つの目的で始められました。

  • 事故発生時などにおける所有者の把握
  • 事故の原因究明
  • 安全上問題のある機体の飛行禁止

屋外飛行に当たって登録が義務化されるのは、遠隔操作・自動操縦により飛行させることができる無人航空機のうち、機体本体+バッテリーの重量が合計100g以上のものです(航空法第2条第22項、航空法施行規則第5条の2)。

登録制度では、機体の製造者や型式などの情報と、所有者・使用者情報を登録しなければなりません。また、登録記号を機体に表示することが義務化され、ドローンへのリモートID機器の搭載も義務付けられました。

リモートIDとは、自動車のナンバープレートのようなもので、リモートID機器から発信される電波で機体の識別信号を判別可能にします。

リモートID内蔵型でない場合は、外付型のリモートID機器を購入する必要がありますが、事前に「リモートID特定区域の届出」をすれば、リモートID機器がなくても飛行させることが可能です。

なお、無人航空機の登録申請は、オンラインか書類提出によって行います。申請方法については、国土交通省HPをご覧ください。

参考:国土交通省|ドローン情報基盤システム

この登録制度により、登録していないドローンは原則飛行が禁止されました。無登録で飛行させた場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。

ドローンの機体認証制度

機体認証制度とは、ドローンに対する安全基準への適合性の検査のことです。ドローンの機体認証には、メーカー等がドローンを設計・製造する量産機を対象とする「型式認証」と、ユーザーが行う「機体認証」があります。型式認証は、量産型ドローンの型に対する検査、機体認証は各ドローン機体に必要な検査です。

メーカーが行う「型式認証」

メーカー等がドローンを設計・製造する際、国土交通大臣の検査を経なければなりません。

従来、「ホームページ掲載無人航空機」は飛行申請時に提出する資料を一部省略することができましたが、この改正に伴い、ホームページへの新規の掲載が中止されました。改正後は、ドローン機体の型式が国土交通省の定める強度・構造・性能などの安全基準や均一性基準に適合すると判断されれば、「機体認証書」が交付されることになります。(航空法第132条の16第3項)

型式認証は、以下の区分に応じ、当該飛行に資することを目的とする無人航空機の型式について行います。(航空法第132条の16第2項)

区分飛行内容
第一種型式認証立入管理措置を講ずることなく行う特定飛行
第二種型式認証立入管理措置を講じた上で行う特定飛行

「立入管理措置」とは、ドローンの飛行経路下において、第三者(ドローンを飛行させる者およびこれを補助する者以外の者)の立入りを制限することをいいます。これは、国土交通省令で定める第三者の立入りを管理する措置であって、飛行マニュアルの作成等、無人航空機の飛行の安全を確保するために必要な措置を講じることを指します。(航空法第132条の85第1項)

「特定飛行」とは、国土交通大臣の許可・承認が必要な下記の飛行を25kg以上の機体で行う場合が対象となります。(航空法第132条86第2項)

飛行する空域(飛行許可申請が必要)

  • 150m以上の上空
  • 空港等の周辺
  • 人口集中地区の上空

飛行の方法(飛行承認申請が必要)

  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 人・物件との距離が30m未満の飛行
  • イベント上空飛行
  • 危険物輸送
  • 物件投下

これらの特定飛行を行うためには、「機体認証と技能証明による飛行」「国土交通大臣の許可・承認による飛行」「安全を確保することができる飛行」のいずれかの要件を満たす必要があります。

なお、緊急用務空域は、上記エリアの許可を受けたとしても、飛行が禁止されています。緊急用務空域とは、警察・消防活動等緊急用務を行うための航空機の飛行が想定される場合に、無人航空機の飛行を原則禁止する空域を指定し、国交省ホームページ・Twitteにて掲示されます。

ユーザーが行う「機体認証」

ユーザー側が行う「機体認証」は、レベル4飛行が可能な第一種認証と、それ以外の第二種認証の2つに区分されます。有効期限は第一種が1年・第二種が3年とされており、第一種は国が検査を行い、第二種は登録検査機関が行います。

ドローン操縦者の技能証明制度

ドローン操縦者の技能証明制度

無人航空機の操縦者技能証明制度(操縦ライセンス制度)とは、国土交通大臣が無人航空機を飛行させる者に対して、無人航空機を飛行させるのに必要な技能を有すると認める証明のことです。(航空法第132条の40)

無人航空機操縦士の国家資格制度では、資格を一等・二等と分別されています。レベル4飛行には、一等資格が必要となります。受験資格年齢は16歳以上で、学科試験・実地試験・身体検査の3つで構成されています。

無人航空機操縦士試験の詳細については、指定試験機関のサイトをご参照ください。

参考:指定試験機関ClassNK|無人航空機操縦士試験

ドローン運航の4つの規制とは

ドローン運航の4つの規制とは

ドローンを飛行させるには、以下の4つの運航に係るルールを遵守しなければなりません。

飛行計画の通報

必要に応じて飛行の許可・承認の申請手続きを行った後、飛行計画の通報を行って初めて飛行できます。ドローンを飛行させる前に、他の無人航空機の飛行計画や飛行禁止空域等の確認を行い、飛行計画を通報しなければなりません。

この制度は、ドローンを特定飛行させる者が、事前に当該飛行計画(飛行の日時・経路・高度等)を国土交通大臣に通報する制度です。

飛行計画が他と重複しないように注意する必要があります。他の飛行計画と重複している場合には、安全を保つため、必要に応じて重複している飛行計画の調整をしなければいけません。この飛行計画の通報をせずに特定飛行を行った場合、30万円以下の罰金が科せられます(航空法第157条の10)。

飛行日誌の記載

以下の飛行日誌を備え、必要な事項を記載します。

  • 飛行した内容を記録する「飛行記録」
  • 飛行前点検などの結果を記録する「日常点検記録」
  • 定期点検の結果や整備・改造内容を記録する「点検整備記録」

また、特定飛行を行う場合や無人航空機を整備・改造した場合も、遅滞なく飛行日誌への記載が必要です。

事故・重大インシデントの報告

事故・重大インシデントの報告

無人航空機に関する事故や重大インシデントに該当する事案が発生した場合、その日時・場所・事案の概要などの事故・重大インシデントの報告を、国土交通大臣に行わなければなりません。

事故については以下のような事案が想定されます。

  • 無人航空機による人の死傷(重傷以上の場合)
  • 第三者が所有する物件の損壊
  • 航空機との衝突・接触

重大インシデントについては以下のような事案が想定されます。

  • 航空機との衝突・接触のおそれがあったと認められるケース
  • 無人航空機による人の負傷(軽傷の場合)
  • 無人航空機の制御が不能となった事態
  • 無人航空機が発火した事態(飛行中に発生したものに限る)

事故発生時の救護義務

負傷者が発生した場合、ただちに無人航空機の飛行を停止し、事故等の状況に応じ危険や被害の拡大を防止するために必要な措置を講じなければなりません。

  • 負傷者の救護(救急車の要請含む)
  • 消防への連絡や消火活動
  • 警察への事故の概要の報告

まとめ:ドローン規制の新制度については専門家に相談を

ここでは、歴史的な航空法改正により2022年12月5日に施行された「ドローンのレベル4飛行にまつわる新制度」について、ポイントを解説しました。新制度によりビジネスにおけるドローンの活用範囲が拡大とが期待される反面、有人地帯での飛行に伴う人や財産への危険を考慮し、安全に飛行する必要があります。

事業者には、これらのドローン規制を遵守することが求められますが、新制度についてご不明な場合には、法規制に詳しい弁護士へ相談することをおすすめします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。昨今、航空法の改正に伴い、ドローンはビジネス領域で大きな注目を集めています。当社はドローンビジネスについて専門的な知見を有しています。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:IT・ベンチャーの企業法務

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務

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