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台湾の不動産法を弁護士が解説

台湾の不動産法を弁護士が解説

日本の経営者や法務部員にとって、海外でのビジネス展開は大きな挑戦であり、その成功を左右する重要な要素の一つが現地での不動産確保です。中華民国(以下、台湾)は日本と地理的にも経済的にも極めて密接な関係にあり、多くの日本企業が製造拠点、営業所、あるいは駐在員のための住宅として現地の不動産を利用しています。台湾の法制度は、歴史的な背景から日本の法制度を基盤として発展してきたという経緯があります。そのため、会社法などの基本的な体系においては日本法と共通する部分が多く、日本の法務担当者にとって比較的理解しやすい側面があることは事実です。

しかしながら、こと不動産法や税法に関しては、国土の狭さや国家安全保障上の要請、さらには独自の不動産市場の形成過程を背景として、日本とは大きく異なる極めて独自の厳格な規制が色濃く反映されています。このため、日本の不動産取引における常識や実務感覚をそのまま台湾での取引に当てはめようとすると、予期せぬ重大な法的リスクに直面することになりかねません。本記事では、台湾の不動産法に関する重要事項について、日本の法律との異同を交えながら詳細に解説します。記事全体の要点は以下のとおりです。

第一に台湾の不動産法制では「登記発効主義」が採用されており、日本のように当事者間の合意(意思表示)のみでは不動産の物権変動は生じず、行政機関における登記手続きの完了が権利移転の絶対的要件となります。

第二に、外国人および外国法人による不動産取得は、相互主義に基づき原則として認められているものの、土地法により取得可能な土地の種類や用途が厳格に制限されており、事前の入念な調査と政府機関への承認手続きが不可欠です。

第三に、不動産賃貸借市場においては日本の「借地借家法」に相当するような強力な借主保護法制が存在せず、原則として契約自由の原則が貫かれるため、契約期間満了による更新拒絶や賃料の引き上げが極めて容易に行われる「貸主優位」の環境となっています。

第四に、取引の安全性を確保するために「不動産経紀業管理条例」に基づく不動産取引主任者の関与や、事故物件(凶宅)等の詳細な開示を義務付ける不動産現況説明書の制度が厳格に運用されています。

台湾の物権変動における絶対的な登記発効主義

日本の民法では、第176条において意思主義を採用し、物権の設定および移転は当事者の意思表示のみによって効力を生じると規定しています。そして、登記はあくまで第三者に対する対抗要件として位置づけられています。しかし、台湾の法制はこれとは全く異なる法体系を採用しています。中華民国民法(以下、「台湾民法」)第758条第1項は、「不動産の物権を、法律行為によって取得、設定、喪失および変更する場合は、登記を経ない場合、その効力を生じない」と明記しています。さらに同条第2項で、これらの不動産に関する物権変動の行為は書面をもって行うべきことが義務付けられています。

つまり、当事者間で不動産の売買契約が成立し、代金が全額支払われ、鍵の引き渡しが行われたとしても、地政事務所(日本の法務局に相当する行政機関)での所有権移転の登記手続きが完了しなければ、買主は法的な意味での所有権を取得したことにはなりません。日本法では当事者間においては契約の合意のみで所有権が移転しますが、台湾では当事者間であっても登記がなければ物権変動の効力そのものが生じないのです。この絶対的な登記発効主義は、台湾の不動産法制を理解する上で最も重要な大原則です。

また、台湾民法第759条の1の第1項において「不動産の物権が登記された場合、登記上の権利者が適法にその権利を有すると推定される」と規定され、同条第2項で「不動産登記を信頼した善意の第三者が、法律行為により物権変動の登記を行った場合、その変動の効力は、登記されている物権が不実であったことをもって影響を受けない」と定められています。これは登記の公信力を認める規定であり、真実の権利関係と登記記録が異なっていた場合でも、登記記録を信頼して取引を行った善意の第三者を強力に保護する仕組みです。日本の不動産登記には公信力が認められていないため、真の所有者ではない偽の所有者から不動産を購入してしまった場合、たとえ登記簿を信じて過失がなかったとしても所有権を取得できないリスクがありますが、台湾ではこの点において取引の安全性がより強く図られているということが言えるでしょう。

この絶対的な登記発効主義の原則を裏付ける極めて重要な判例として、司法院大法官の釈字第107号(1965年6月16日宣告)が存在します。この解釈において司法院大法官(違憲審査や法令の統一解釈を行う最高機関)は、適法に登記された不動産の所有権に基づく回復請求権については、台湾民法第125条に規定される消滅時効の適用はないと判断しました。その理由として、もし登記された所有権に基づく請求権が長期間の経過による時効によって消滅してしまうとすれば、絶対的効力を持つ不動産登記制度の根幹を揺るがし、登記システム自体を無意味なものにしてしまうからであると説示しています。

また、登記名義人は法的に固定資産税などの税負担を負い続ける義務があるにもかかわらず、時効によって権利を喪失するのは著しく不当であるという点も考慮されました。土地法第43条において「本法による登記は絶対的な効力を有する」と規定されていることからも、登記名義人の権利は時効によって消滅するものではないという強固な保護が与えられているのです。この司法院大法官の解釈に関する公式な英文資料は、司法院憲法法庭の公式ウェブサイトで確認することができます。

参考:司法院憲法法庭の公式ウェブサイト

一方で、現実の不動産市場においては、登記発効主義の原則と実社会の実態が衝突する場面も生じています。その典型例が、建築許可を得ていないために公式の不動産登記簿に登録することができない違法建築物(違章建築)の取引です。これらは未登記であるため、台湾民法第758条の厳格な規定に従えば、法的な所有権の移転は一切不可能です。しかし台湾の最高法院は一連の判例において、このような違法建築物の買主は法律上の所有権こそ取得できないものの、「事実上の処分権」を取得するという独自の法理を打ち立てました。裁判所が民法の明文規定に存在しない権利を解釈によって創設した背景には、実際の建物の占有状態を鍵の引き渡し等で容易に確認できることや、税務当局による固定資産税の課税台帳が事実上の不動産登記簿としての役割を果たしており、情報コストが極めて低く抑えられているという実務上の強い要請があったからに他なりません。

また、かつての台湾実務においては、夫婦共有財産制の適用を受ける夫婦間で、妻の固有財産として妻名義で登記された不動産であっても、妻が自らの特有財産であることを証明できない限り、最高法院の判例によって夫の財産であると推定されるという運用がなされていました。このような判例は、登記上の権利者を適法な権利者と推定する台湾民法第758条および公信の原則を根底から覆すものであり、多くの女性の財産権を不当に侵害しているとして社会的批判を浴びました。この問題は、その後の数度にわたる民法親属編(家族法)の改正によって是正され、現在では登記制度と夫婦財産制の整合性が図られていますが、不動産登記の効力が他の法領域の解釈とどのように調和するかという点で、台湾の法制史において非常に示唆に富む事例となっています。

これらの判例法理に関する学術的な分析は、以下のアイオワ大学法学部の論文で確認することができます。

参考:アイオワ大学法学部論文

外国人および外国法人による台湾の不動産取得規制と相互主義

外国人および外国法人による台湾の不動産取得規制と相互主義

台湾に進出する日本企業が直面するもう一つの重要な法制が、外国人および外国法人による不動産取得の制限です。台湾の土地法は、外国人による不動産の取得について、厳格な平等互恵の原則(相互主義)を採用しています。土地法第18条により、自国民が不動産を取得することを認めている国の国民に対してのみ、例外的に台湾での不動産取得を認めるという制度設計になっています。日本は国内法において台湾人の不動産取得を制限していないため、日本国民および日本法人は、原則として台湾の不動産を取得することが可能です。外国人による土地取得規制の公式な指針については、内政部の公式ウェブサイトで確認することができます。

参考:内政部の公式ウェブサイト

しかしながら、資金さえあればどのような不動産でも無制限に取得できるわけではありません。国家の安全保障、国防、および自然環境の保護を目的として、土地法第17条により外国人が所有権の取得、賃借権の取得、および抵当権の設定をすることが全面的に禁止されている土地の種類が明確に列挙されています。以下の表は、外国人が取得できない主な土地の種類とその規制の背景を示したものです。

取得が禁止されている土地の種類規制の主な目的や背景
林地(森林)国土保全および自然環境・生態系の保護
漁地(養殖場など)水産資源の保護と国内の伝統的産業の維持
狩猟地野生動物の保護と原住民族の権利保全
塩地伝統的な塩業資源の国家管理と独占
鉱泉地および水源地希少な地下資源と国家の生命線である水資源の確保
要塞軍備区域国家の軍事的な安全保障および国防上の機密保持
国境境界地国境警備、密輸防止、および領土の保全

これらの土地については、外国人がいかなる名目であっても権利を取得することは法的に許されていません。したがって、製造業の工場建設や大規模なリゾート開発などのために郊外の土地を購入する際には、対象の土地がこれらの禁止区域に該当していないかを事前に厳密に調査する必要があります。

さらに、取得が許可される土地であっても、その用途には厳しい制限が課されています。土地法第19条等の関連法規に基づき、外国人が不動産を取得する目的は、自己の居住用住宅、営業所、事務所、店舗、工場、教会、病院、外国人子弟のための学校、大使館・領事館、公益団体の事務所、墓地などに限定されています。これは、外国資本による不動産の投機的な買い占めを防止し、健全な不動産市場を維持するための強力な措置です。大規模な不動産開発や投資目的で土地を取得する場合には、その投資が台湾国内の重大なインフラ整備、経済全体、あるいは農林牧畜業の発展に大きく寄与するものであるという明確な理由に基づき、地方政府および中央の主務官庁(内政部等)から事前の特別な承認を得る必要があります。

また、日本法人が台湾の不動産を取得しようとする場合、外国法人として現地の法律に基づいて正式に認可を受けている必要がある点にも細心の注意が必要です。民法総則施行法第11条および第12条、ならびに外国人の土地権利取得に関する関連規定に基づき、外国法人が台湾において権利主体となるためには、法令の定める認許手続きを経なければなりません。この認許を得て初めて、台湾の国内法人と同等の権利能力を行使することが可能となります。したがって、不動産購入の計画を立てる際には、まず台湾における法人格の承認手続き(支店登記や現地法人の設立など)を先行して完了させなければ、売買契約を締結しても地政事務所での登記手続を進めることができず、結果として契約が暗礁に乗り上げる危険性があります。

これに加えて、不動産の所有権移転に伴う税制面の特徴も理解しておく必要があります。台湾では、土地の売買に伴い「土地増値税」という特有の税金が課されます。これは当該用地の購入時と売却時の公示価格の差額に対して課税されるものであり、土地の増値額が原地価の100%以下の部分については20%、100%から200%の部分については30%、さらに200%以上の部分については40%という累進税率が適用されます。この土地増値税の納付が完了して初めて、地政事務所における売主から買主への所有権移転登記手続きを進めることができる仕組みとなっています。日本における不動産譲渡所得税とは課税のメカニズムやタイミングが異なるため、資金計画を立てる際には税理士等の専門家を交えた綿密なシミュレーションが欠かせません。

台湾における借地借家法の不在と貸主優位の不動産賃貸市場

自社ビルを購入するのではなく、オフィスや店舗、駐在員用の住宅を賃借する場合にも、台湾特有の法規制を深く理解しておく必要があります。日本と台湾の不動産賃貸市場における法的枠組みを比較した際、最も顕著であり、かつ日本企業が戸惑うことが多い違いは、台湾には日本の「借地借家法」に相当するような、借主を強力に保護するための特別法が存在しないという点です。

日本では、借地借家法の規定により、賃貸借契約の期間が満了しても、貸主側に立退きを求める「正当事由」が認められなければ、契約の更新の拒絶や解約を行うことが極めて困難に設計されています。この正当事由の判断には貸主と借主の建物の使用を必要とする事情に加え、立退料の提供などが総合的に考慮されるため、長年にわたって借主の生活基盤や営業基盤が手厚く保護されています。しかし台湾では、一般的な商用の不動産賃貸借契約は原則として台湾民法の契約自由の原則に従い、当事者間で合意した内容がそのまま効力を持ちます。契約期間が満了すれば契約は自動的に終了することが原則であり、貸主は正当事由などの特段の事情がなくとも、次回の更新を拒絶することや、大幅な賃料の引き上げを要求することが法的に可能です。そのため、台湾の不動産賃貸市場は貸主の権限が著しく強い「貸主天国」であると評されることも少なくありません。

日本の感覚で「長く借りていれば既得権益として守られる」「多額の内装工事費をかけたのだから、簡単には立ち退かされないだろう」と誤認していると、契約期間満了時に突然の立ち退き要求を受け、事業の継続に深刻な支障をきたすことになります。したがって、オフィスや店舗を賃借する際には、初期の契約交渉の段階で可能な限り長期の契約期間を設定することや、借主側に選択権のある更新オプション条項を契約書に盛り込むなどの防衛策を講じることが極めて重要となります。

さらに実務において注目すべきは、公証制度を利用した賃貸借契約の締結手続きです。台湾の法律上、不動産の賃貸借契約は不要式行為とされており、必ずしも書面による詳細な契約書を作成しなくても、極端に言えば当事者間の口頭の合意のみで法的に成立します。しかし実際のビジネス環境では、家賃の額、税負担の所在、賃貸借期間、保証金の有無といった詳細な条件を明確にし、後々のトラブルを防ぐために、契約書を書面で作成することが一般的です。そして特筆すべきは、貸主側が自らの権利を確実にするため、公証人役場での公正証書の作成を借主に強く求めることが実務上非常に多いという事実です。

この公正証書には通常、強制執行認諾文言が付与されます。もし借主が長期間にわたって賃料を滞納したり、契約期間が終了したにもかかわらず物件から退去しなかったりした場合、日本の通常の法的手続きであれば、弁護士を代理人として裁判所に建物の明け渡しや未払い賃料の支払いを求める民事訴訟を提起し、数ヶ月から年単位の審理を経て勝訴判決を得るという長い時間と多大な費用を要するプロセスを経なければなりません。しかし、台湾で強制執行認諾文言のある公正証書を作成して契約を結んでいれば、貸主は訴訟という煩雑な手続きを完全に省略し、公正証書を債務名義として直接裁判所に強制執行を申し立てることが可能となります。このような仕組みは貸主にとって極めて迅速かつ強力な武器となるため、契約締結時には公正証書の作成手数料の負担割合や、途中解約に関するペナルティ条項が自社にとって著しく不利になっていないかを慎重に検討し、専門家を交えて粘り強く交渉することが求められます。

台湾の賃貸借実務における公正証書の活用に関する詳細は、以下の法律相談解説記事で確認することができます。

参考:不動産賃貸借契約における公正証書に関する実務解説

台湾の不動産取引における情報開示と不動産経紀業管理条例

台湾の不動産取引における情報開示と不動産経紀業管理条例

不動産の実体的な権利関係や賃貸借のルールの違いに加えて、取引過程における安全性を確保し、当事者間の情報の非対称性を解消するための制度も、台湾では厳格に整備されています。その中核を担うのが、「不動産経紀業管理条例」に基づく取引規制です。

台湾では不動産仲介業や販売代理業を営む場合、国家資格を有する「不動産取引主任者(不動産経紀人)」を営業所に配置することが義務付けられています。不動産取引主任者となるには、考試院考選部が実施する厳格な国家試験に合格しなければなりません。試験科目は民法、不動産鑑定評価、土地法および土地関連税法、不動産取引業関連法などの専門科目に及び、高い専門知識が要求されます。そして不動産経紀業管理条例第22条により、不動産の賃貸、売買に関する委託契約書、買付証明に相当する要約書、手付金の領収書、広告の原稿、さらには不動産現況説明書や最終的な売買契約書には、必ずこの不動産取引主任者が署名または捺印を行うことが法的に義務付けられています。これにより、取引内容に対する専門家としての責任の所在が明確にされ、消費者の保護が図られています。

日本企業が不動産を購入あるいは賃借する際に特に注意を払うべきなのが、「不動産現況説明書(不動産説明書)」の記載内容です。これは日本の宅地建物取引業法における重要事項説明書に相当するものであり、取引対象となる不動産の物理的・法的な状況を網羅した法定の書面です。不動産現況説明書は、物件の種別によって記載すべき事項が法令で細かく定められています。以下の表は、物件種別ごとの主な必須記載事項を示したものです。

物件の種別主な法定記載事項確認すべき重点リスク
土地位置・面積、権利帰属、使用現況、法規制、周辺環境都市計画法等に基づく開発制限の有無、土壌汚染の懸念
成屋(中古住宅・既存建物)位置・面積、権利帰属、使用現況、管理規約、法規制、周辺環境権利関係の制限(抵当権等)、違法建築部分の有無、管理費の滞納
預售屋(プレビルド・未完成物件)建築許可内容、建材仕様、工程進捗、支払い条件建設会社の倒産リスク、設計図書と実際の仕様の乖離

この説明書は仲介業者が作成し、不動産取引主任者の署名を経て買主に提示・説明されるものであり、買主が購入の意思決定をする上で極めて重要な判断材料となります。内政部の通達により、買主が購入の意思決定をする前の段階で、十分な情報提供を行うことが義務付けられています。

近年の法改正により、この不動産現況説明書において開示すべき事項はさらに厳格化されています。過去の内政部の統計による不動産取引における紛争事案を見ると、雨漏りや水漏れに関する建物の瑕疵、および重要事項の隠蔽に関するトラブルが非常に高い割合を占めていました。これを受けて政府は記載事項を改訂し、対象物件が工業用住宅(工業用地に違法に建てられた住宅)に該当しないかどうかの明記や、周辺に存在する嫌悪施設(ごみ処理場や高圧線など)の詳細なリストアップ、さらには「凶宅(事故物件)」に該当するかどうかの告知義務を明文化しました。

台湾の法律実務における「凶宅」の定義は、日本の実務慣行と比較しても非常に具体的かつ厳格に規定されています。一般に以下の3つの要件をすべて満たすものが法的な意味での凶宅とみなされます。第一に、事件が建物の「専有部分(建物の主たる部分およびバルコニーやテラスなどの付属建物を含む)」で発生したこと。第二に、死亡原因が殺人や自殺、一酸化炭素中毒などの「非自然死亡」であること(高齢による自然死や通常の病死は含まれません)。第三に、その事件が「現在の売主が不動産の産権(所有権)を保有している期間中」に発生したこと、です。もし売主や仲介業者がこれらの事実を認識していながら故意に隠蔽して売買契約を締結した場合、買主は重大な瑕疵を理由として契約の解除や損害賠償を求めることができるほか、悪質な場合には刑法上の詐欺罪に問われる可能性もあります。したがって、買主の立場としては、不動産現況説明書にこれらのネガティブな情報が正しく記載されているか、あるいは意図的な空欄や曖昧な記載がないかなどを、自国の感覚に頼ることなく現地の専門家の目を通じて精査することが不可欠です。

不動産説明書における凶宅の定義や告知義務に関する実務的な解説は、現地の不動産法務情報サイトで確認することができます。

参考:凶宅の法的定義と開示義務に関する解説

まとめ

本記事を通じて詳述してきたように、台湾の不動産法制は、歴史的な基盤として日本の法制度と共通する要素を持ちながらも、物権変動の厳格化、取引の安全確保、および国土保全の観点から独自の厳格な規制を多岐にわたって発展させてきました。台湾民法第758条に基づく絶対的な登記発効主義により、当事者間の合意のみでは所有権が移転せず、地政事務所での登記完了が不可欠であること。土地法により、相互主義を前提としつつも、外国人や外国法人が取得可能な不動産の種類や用途が厳密に制限されていること。さらには、日本の借地借家法のような手厚い借主保護規定が存在せず、契約の終了や賃料の引き上げが容易な貸主優位の賃貸借市場が形成されていること。そして、不動産経紀業管理条例による専門家の関与と、事故物件等に関する厳密な情報開示義務が課されていることなど、日本国内における不動産取引の感覚をそのまま適用することがいかに危険であるかをご理解いただけたかと思います。

台湾へのビジネス展開を成功に導くためには、物件の立地や賃料、利回りといった経済的な条件を比較検討するだけでなく、その背後に潜む法的な構造や潜在的なリスクを取引の初期段階から的確に把握し、予防策を講じることが必要不可欠です。事前の法務調査や法令要件の確認を怠り、不完全な契約を締結してしまえば、多額の投資が回収不能となるばかりか、事業計画そのものが頓挫し、長期にわたる法的紛争に巻き込まれる重大なリスクを抱え込むことになります。そこから、台湾での不動産取引のあらゆるフェーズにおいて、現地の実務慣行と法令の双方に精通した専門家によるレビューが必須であるということが言えるでしょう。

台湾での不動産取引には、登録済みの専門家によるサポートと、関連法令を遵守した確実な登記手続きが不可欠です。法令の文面だけでなく、最高法院の判例動向や行政機関の解釈指針などを総合的に考慮した上で、自社のビジネスモデルに合致した最適な不動産戦略を構築する必要があります。モノリス法律事務所では、海外への進出や事業拠点の設立を検討される法人の皆様に対し、現地の法規制に関する詳細な調査から、売買・賃貸借契約書のリーガルチェック、さらには万が一のトラブル発生時における法的な対応に至るまで、皆様のビジネスを法務面からサポートいたします。ビジネスの新たなステージへ踏み出す第一歩として、現地の不動産法務におけるリスクマネジメントを万全なものにされることを強くお勧めいたします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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