フェアユースとは?米アーティストがAI企業を著作権侵害で集団提訴
近年の生成AI技術の発展には目覚ましいものがあります。その一方で、AIの著作権侵害に関する訴訟は、AIの開発が進むにつれてますます頻発する可能性があります。米国では、AIによって生成された画像の著作権侵害を訴えたアーティストの訴訟が起こりましたが、この訴訟は、AIの著作権侵害に関する重要な判例となる可能性があります。
同じような訴訟は日本でも起こりうるのでしょうか。
ここでは、米国における最近のAI著作権侵害訴訟を紹介し、日米での著作権法の違いについて解説します。
この記事の目次
米国におけるAI著作権侵害訴訟
2023年1月、Stability AI、Midjourney、DeviantArtの3社は、アーティストたちから、Webからスクレイピングされた彼らの作品を無許可でコピーして機械学習に利用したことは彼らの著作権を侵害しているとして訴えられました。
同年4月、同社は、サンフランシスコの連邦裁判所に対してアーティストの訴訟を却下するよう求めました。同社は著作物を使用して機械学習することはフェアユース原則によってカバーされていると主張しています。今後、裁判所は、両者の主張を検討した上で、AIによって生成された画像の著作権侵害訴訟を却下するかどうかを判断することになります。
参考:REUTERS|AI companies ask U.S. court to dismiss artists’ copyright lawsuit
フェアユースとは
フェアユースとは、アメリカ合衆国の著作権法において、著作権侵害の主張に対する抗弁事由の一つです。米国の著作権法第107条によれば、著作権者の許諾なく著作物を利用しても、その利用が4つの判断基準のもとで公正な利用(フェアユース)に該当するものと評価されれば、その利用行為は著作権の侵害にあたらないとされています。
フェアユースが認められるか否かは、以下の4つの判断基準に基づいて決定されます。
- 利用の目的と性格
- 著作権のある著作物の性質
- 著作物全体との関係における利用された部分の量及び重要性
- 著作権のある著作物の潜在的市場または価値に対する使用の影響
フェアユースは、具体的な事例ごとに判断されています。
日本におけるAIと著作権の関係
AIと著作権の考え方については、文化庁が開催した令和5年度著作権セミナーにおいて、「AI開発・学習段階」と「生成・利用段階」では、関係する著作権法の条文が異なるため、分けて考えるべきであるという見解が示されました。
引用元:文化庁|令和5年度著作権セミナー「AIと著作権」の講演映像及び講演資料を公開しました。
上記の米国の訴訟では、この2つの段階のうち「AI開発・学習段階」に関わる問題です。日本の著作権法では、第30条の4で、著作物を機械学習に利用することが明文的に認められています。
著作権法第30条の4で明文的に認められている利用法とは
一方、日本では、著作権法により機械学習に著作物を利用することが明文的に認められています。これは、著作権法第30条の4に規定されており、著作物の利用者が、著作権者の許諾を得ることなく、著作物を機械学習に利用することができることを定めています。
この規定は、AIの開発を促進するために設けられたものです。AIの開発には、大量のデータを必要としますが、すべてのデータについて著作権者の許諾を得ることは困難です。この規定により、AI開発者は、著作権者の許諾を得ることなく、著作物を機械学習に利用することができ、AIの開発をより容易に行うことができます。著作権法第30条の4で認められている利用法については、以下の記事で解説しています。
関連記事:ネット上の画像のクローリングは著作権法違反?機械学習の法的問題を解説
まとめ:AIと著作権については弁護士に相談を
AIの著作権侵害訴訟は、AIの今後の開発に大きな影響を与える可能性があります。AIの開発を促進しつつ、著作権者の権利を保護するために、各国においてAIの著作権侵害に関する法律の整備が急務となっています。
AIと著作権の関係についての法的な問題を取り扱うには、法律の知識だけではなく、AIや機械学習の仕組みに関する知識も必要になります。経験と実績のある弁護士に相談することをお勧めいたします。
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