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令和8年(2026年)5月の薬機法改正で何が変わる?市販薬の規制強化について解説

令和8年(2026年)5月の薬機法改正で何が変わる?市販薬の規制強化について解説

令和8年(2026年)5月に施行される薬機法改正では、市販薬の販売ルールが大きく見直され、ドラッグストアや薬局の現場対応がこれまで以上に厳格化されます。

現行の「濫用等のおそれのある医薬品」が「指定濫用防止医薬品」として規制強化されるほか、要指導医薬品のオンライン販売解禁など、日々の販売上の判断一つひとつが法令遵守に直結する改正内容となっています。そのため、登録販売者には改正内容の正確な理解と事前準備が欠かせません。

本記事では、登録販売者が現場で何を確認し、どう記録し、どこに注意すべきかという実務視点から、令和8年(2026年)薬機法改正のポイントと対応策を弁護士の立場でわかりやすく解説します。

令和8年(2026年)薬機法改正の概要

令和8年(2026年)薬機法改正の概要

令和7年(2025年)5月、医薬品の品質確保や安定供給、創薬環境の整備を目的として、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)」の一部改正法が公布されました。

本改正法は、令和7年(2025年)から段階的に施行されていますが、販売実務に大きな影響を与える濫用防止策に関する規定は、令和8年(2026年)5月1日から施行されます。

今回の改正の背景には、医薬品の供給不安や創薬を取り巻く環境変化に加え、若年層を中心とした市販薬の濫用が顕著となってきている社会問題があります。

これらを受け、医薬品を取り扱う事業者や販売現場において、より実効性のある制度整備が求められるようになりました。

改正内容は、大きく次の4つの柱で構成されています。

  1. 医薬品等の品質及び安全性の確保の強化
  2. 医療用医薬品等の安定供給体制の強化等
  3. より活発な創薬が行われる環境の整備
  4. 国民への医薬品の適正な提供のための薬局機能の強化等

詳しくは、以下の記事をご参照ください。

この改正のうち、市販薬の販売実務に直接的な影響を与えるのが、4の国民への医薬品の適正な提供のための薬局機能の強化等です。薬剤師や登録販売者が医薬品の適正使用や濫用防止に積極的に関与する役割が、これまで以上に重視されます。

以下では、これらの改正を踏まえ、販売現場で具体的に何が変わるのか、実務上のポイントを詳しく見ていきます。

令和8年(2026年)薬機法改正のポイント

今回の改正の核心は、従来は実務上の遵守事項にとどまっていた内容が法的義務として明確化され、規制の実効性が大幅に高められた点にあります。

とりわけ、濫用防止を目的とした規制強化とデジタル技術の活用による利便性向上が進められることが大きな特徴です。変更点は、指定濫用防止医薬品の販売規制の強化と、要指導医薬品におけるオンライン服薬指導の導入の2点です。

指定濫用防止医薬品の販売規制の強化

改正により、従来「濫用等のおそれのある医薬品」とされていた区分は、法律上の名称として「指定濫用防止医薬品」に改められました。

対象となる成分は、以下の6つです。

  • エフェドリン
  • コデイン
  • ジヒドロコデイン
  • ブロモバレリル尿素
  • プソイドエフェドリン
  • メチルエフェドリン

出典:厚生労働省|医薬品を安全に使うために

ただし、規制の対象は内用剤(飲み薬)に限定されており、現時点で濫用の実態が確認されていない軟膏や貼付剤などの外用剤は対象外となる方針です。

販売時の確認義務

18歳未満の若年者に対しては氏名および年齢の確認が必須となり、18歳以上であっても若年者でないことが確実に判断できない場合などには同様の確認が必要です。

さらに、他店での購入状況や、複数個・大容量製品を購入する理由の確認も法律上の義務となります。また、販売方法についても、以下のとおり制限が課されます。

若年者に対して、大容量製品や複数個の販売は禁止されます。小容量(1個)の販売であっても、対面またはオンライン(ビデオ通話など、映像と音声によるリアルタイムでの双方向通信)での確認が義務付けられます。

若年者以外に大容量や複数個を販売する場合には、対面またはオンラインでの対応が必要です。一方で、小容量1個の購入に限り、通常のインターネット販売もできます。

小容量の定義は、原則として5日分以下の用法・用量を含む1包装単位を指しますが、かぜ薬・解熱鎮痛薬・鼻炎内服薬に限り7日分以下とされる点に注意が必要です。

陳列方法の制限

実効性のある濫用防止対策として、店舗での陳列場所についても以下のいずれかの方法をとることが義務付けられます。

  • 購入者の手が届かない場所への陳列
  • 専門家が継続的に配置され、購入者の状況を適切に確認できる体制が整っている場合には、その専門家から目の届く範囲(販売または情報提供場所から7メートル以内)への陳列

購入者が、専門家の関与なしに製品を自由に入手できない環境を整備し、販売時の確実な確認へとつなげる狙いがあります。

要指導医薬品におけるオンライン服薬指導の追加

これまで、要指導医薬品は店舗での対面販売が原則であり、インターネット販売は認められていませんでした。今回の改正により、薬剤師が適切と判断した場合には、オンライン服薬指導を通じたインターネット販売が可能となります。

映像と音声によるリアルタイムの通信を用いて、薬剤師が適切に情報提供や使用状況の確認を行うことで、利用者は店舗に出向くことなく要指導医薬品の購入が可能です。

ただし、すべての要指導医薬品が対象になるわけではなく、安全性の観点から対面での確認が不可欠と判断される特定の品目については、引き続き店舗での対面販売が維持されます。

登録販売者が知っておくべき薬機法改正ポイント

登録販売者が知っておくべき薬機法改正ポイント

令和8年(2026年)5月に施行される薬機法改正は、登録販売者の現場対応を努力義務から法的義務へと明確に引き上げる重要な転換点です。

改正後は、これまで行政指導の対象にとどまっていた対応不備も、法律違反として店舗や事業者が直接的な罰則を受ける可能性があります。

そのため、販売方法や確認手順を現場判断に委ねるのではなく、法令に基づいた統一ルールとして徹底することが不可欠です。以下では、登録販売者が特に注意すべき現場運用上の新ルールを具体的に解説します。

陳列方法の規制強化

今回の改正における現場オペレーションの大きな変更点は、これまで省令に基づく努力義務的な側面が強かった陳列基準が、罰則を伴う法律上の義務へと格上げされることです。

改正後のルールでは、店舗は以下のいずれかの陳列方法を選択することが義務付けられます。

  • 購入者の手の届かない場所への陳列
  • 専門家の配置場所から7メートル以内で、かつ専門家が購入者の状況を適切に確認できる体制を整えた場所への陳列

具体的に現場で取れる対応は、主に以下の2パターンが考えられます。

  • 鍵のかかるショーケースや毒薬・劇薬庫のような設備に保管し、販売のたびに資格者が開錠する方法
  • カウンターの内側など、購入希望者が直接触れられない場所に配置する方法

実際の販売現場では、既存の棚を活用しながら空箱陳列を採用し、現品はレジ内で管理するという運用が主流になると想定されます。注意すべきは、このルールが店舗従業員全員に周知徹底されていなければならない点です。オーバードーズ(OD)対策と万引防止の観点から、陳列場所の再設計とスタッフ教育を早急に進める必要があります。

指定濫用防止医薬品の記録義務

名称が「濫用等のおそれのある医薬品」から「指定濫用防止医薬品」へと変更されることに伴い、販売時の確認と記録の重要性がこれまで以上に高まります。

改正法では、薬剤師や登録販売者が購入者に対して法令で定められた事項を確実に確認し、記録・管理する体制が求められます。

確認すべき事項は、以下のとおりです。

  • 氏名
  • 年齢(若年者および必要な場合)
  • 他店での購入状況
  • 適正な使用量を超えて購入しようとする場合の理由

特に重要なのは、改正により頻回購入対策を整理した手順書の整備が求められる点です。これは、その場限りの口頭確認ではなく、組織的に濫用防止に取り組んでいる証拠を記録として残さなければならないことを意味します。

現場では、接客の流れの中で詳細な確認に対する不満が生じる可能性があります。しかし、これらの手続きは法令遵守のために不可欠です。

さらに、トラブルが発生した場合には、適正な販売を行ったことを証明する根拠となり、登録販売者自身を守る役割も果たします。

新しいマニュアルや手順書を現場のルーチンワークに落とし込み、知らなかったやうっかりしていたという言い訳が通用しない環境を作ることが急務です。

そのためにも、記録の電子化やレジ端末でのアラート機能の活用など、人的ミスを防ぐ仕組みづくりの検討も求められます。

18歳未満への確認義務

若年層の間で深刻化しているオーバードーズ問題を受け、18歳未満の若年者に対する販売規制が大幅に強化されます。これまでは口頭での年齢確認が一般的でしたが、販売現場では身分証明書などによる確実な年齢・氏名の確認が必要になると考えられます。

若年者が大容量製品や複数製品を求めた場合は、理由の有無を問わず販売できません。この規制は、登録販売者が地域社会におけるゲートキーパーとしての役割を果たすことを強く期待されている表れでもあります。

ゲートキーパーとは、悩んでいる人に気づいて声をかけ、話を聞き、必要な支援につなげて見守る存在を指します。接客時には、「法律で決まりましたので」と明確に説明したうえで対応することが重要です。

単に販売を断るのではなく、不自然な頻回購入が見られる場合には相談窓口が記載されたリーフレットを渡すなど、専門家として適切につなぐ姿勢を現場に浸透させることが求められます。

まとめ:薬機法改正への対応は弁護士に相談を

まとめ:薬機法改正の対応は弁護士に相談を

令和8年(2026年)5月施行の薬機法改正により、これまで現場の裁量や努力義務であった事項の多くが、厳格な法的義務へと変わります。

特に指定濫用防止医薬品への対応は、陳列方法の見直しからスタッフ教育、詳細な記録管理までドラッグストアの現場運営を改めて見直す必要があります。

早い段階から新しい運用ルールをマニュアル化し、現場に浸透させて改正に適切に対応する必要があります。社内体制の構築や法令対応でお困りの際は、薬機法に詳しい弁護士への相談もご検討ください。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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