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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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ECサイトのLP等での化粧品広告の表現規制

ECサイトのLP等での化粧品広告の表現規制

化粧品販売をする場合、より多くのお客様にたくさんの商品を購入してもらうためには、その化粧品のイメージ、成分、効能などの商品情報のよいところを広く知ってもらう必要があります。ECサイトのランディングページ(LP)等には、なるべくその商品を買いたくなるような表現を記載したくなるでしょう。

もっとも、インターネット、チラシなどを媒体とする商品広告は、専門知識のない不特定多数を相手に行われることがほとんどであるため、化粧品のような直接、身体につけるような性質の商品は、書きたい放題というわけにはいきません。

そこで、広告には、法に基づく一定のルールが定められています。このルールを規定しているのが、正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号)」、いわゆる薬機法、改正前の旧・薬事法です。

薬機法による広告規制の規定

薬機法の定める「一定のルール」ですが、例えば下記のように規定されています。

(誇大広告等)
薬機法 第66条

何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2.医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3.何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

いわゆる薬機法(旧・薬事法)は、上記のように、「虚偽又は誇大な記事」の「広告」などを禁止しているのです。そして、後述するように、ECサイトのLP等も、商品販売に繋げる目的が明確である以上、「広告」に含まれることになります。

ただ、「虚偽又は誇大な記事」と言われても、非常に抽象的で、具体的に何がセーフで何がアウトかよく分かりません。

この具体的な基準に関して、厚労省は、「医薬品等適正広告基準について」(平成29年9月29日付け厚生労働省医薬・生活衛生局長通知。以下「通知」と言います。)を用意しており、実務上、この通知が「ルール」として機能しています。

この通知には、ある程度具体的な「ルール」が規定されています。例えば、病気を治す効果などを謳ってはならない「化粧品」(詳細は後述します。)の場合、「爪を保護する」「爪をすこやかに保つ」「爪にうるおいを与える」といった表現はOKですが、「割れた爪を修復する」といった表現はNG、といった具合です。上記の薬機法の規定に比べると、かなり具体的だと言えるでしょう。

厚労省は、この通知を基準として具体的な広告等の適法性を判断しており、都道府県などを中心に、違反に該当する広告を行ったものに対し、記載内容の違反、不適正な字句や表現がないか等ホームページにおいてメールによる通報の呼びかけを行う等の監視や、指導などを行っています。

化粧品という商品の位置付け

日本では、化粧品について、保健衛生の向上を図るため、規制を行う対象として医薬品及び医薬部外品などともに、薬機法にその内容を規定しています。

薬機法第2条第3項
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌(ぼう)を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。

この規定によると、「化粧品」とは、女性の顔に限らず、人の身体を美しく、魅力的にし、外見を変えるだけではなく、清潔にし、皮膚、髪の毛の健康を保つために、身体に擦り込む、スプレーなどで振りかけるといった方法で使われることを目的とされている物であり、人の体に対するその物本来の目的の働きが、直ちに現れず徐々に進行する美容を目的として開発された商品を言います。

一方、今回は触れませんが、医薬品、医薬部外品と言った、人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされているようなものは含まれません。

「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の区別に関しましては、当サイト別記事をご参照下さい。

これらの定義に基づき、具体的には、シャンプー、リンスなどが化粧品に含まれます。その他の商品等については、東京都健康安全研究センターHP化粧品の効果に書いてある通りなので、そちらを参照してください。

そして、化粧品広告にするにあたり、医薬品等と比して特徴的なのは、有効成分という記載ができないという点です。有効成分とは、医薬品などの目的である効果を表す成分のことです。化粧品の場合は、含まれている成分全体で使用感や効果を発揮するため、有効成分と言う言葉は使うことができません。

「化粧品」の広告表現規制

(誇大広告等)
薬機法第66条 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、明示的であると暗示的であるとを問わず、虚偽又は誇大な記事を広告し、記述し、又は流布してはならない。
2 医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の効能、効果又は性能について、医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告し、記述し、又は流布することは、前項に該当するものとする。
3 何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品に関して堕胎を暗示し、又はわいせつにわたる文書又は図画を用いてはならない。

この条文は、医薬品等に関する虚偽又は誇大な広告を禁止しています。

「広告」の定義は広い

「広告」とは

  1. 顧客を誘引する(顧客の購買意欲を昂進させる)意図が明確であること
  2. 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  3. 一般人が認知できる状態であること

この1から3までのすべて要件を満たす場合であると平成10年9月29日医薬監第148号厚生省医薬安全局監視指導課長通知に定められています。

したがって、ある特定の商品名をわかるようにして、販売したいというはっきりとした目的の下、広く一般の人に知らせるための方法をとった場合、それは広告という行為をしたと言えます。

たとえば、インターネットにおける、LP、バナー、アフィリエイト、メールマガジン、メールなどで、単体の場合のみならず、リンク先の表示を加えた場合、リンク先の表示を含め、特定の商品名を明示し、顧客の購買意欲を昂進させる意図明確に一般人に認知できる状態であれば、広告に該当します。また個人のブログであっても同様です。

「広告」を規制される主体は誰なのか

薬機法第66条第1項及び第3項の対象である「何人」とは、製造販売業者、製造業者、又は販売業者などをはじめ、すべての者を言います。また、これらの者から単に依頼を受けて、テレビ、新聞、雑誌、インターネットなどの媒体を通して広告を行った場合、それらの媒体などはこのこれらの規定に違反したことになります。

例えば、化粧品を作り売っている化粧品ブランド企業はもちろんのこと、その企業から依頼を受けて、ある新聞に誇大広告を掲載した場合、その新聞社はこれらの規定に違反したことになります。

そして、薬機法第66条第2項の対象である「その他の者」のうち、化粧品については、理容師及び美容師なども含まれています。

つまり、医薬品などの広告の中で、化粧品についてのみ、理容師及び美容師がする広告について保証禁止事項が規定されているという特徴があります。

通知10 医薬関係者等の推せん
医薬関係者、理容師、美容師、病院、診療所、薬局、その他医薬品等の効能効果等に関し、世人の認識に相当の影響を与える公務所、学校又は学会を含む団体が指定し、公認し、推せんし、指導し、又は専用しているなどの広告を行ってはならない。
 ただし、公衆衛生の維持増進のため公務所又はこれに準ずるものが指定等をしている事実を広告することが必要な場合等特別の場合はこの限りでない。

どういう表現が「誇大」なのか

虚偽又は誇大であるかどうかの判断は、通知を判断、指導の基準として行います。この基準は、薬機法第66条をより具体化するべく「広告の内容が、虚偽誇大にならないようにするとともに、不適正な広告をなくし、一般市消費者等が医薬品等に対し、誤った認識を持つことがないよう、広告の適正化を図る」という目的の下、作られたものです。

厚生労働省のHP「医薬品等の広告規制について」のリンク〔解説〕には、「具体的判断は個々の事例について行われます。」と書いてありますが、それは、通知にあるような「医薬品等の広告をめぐる環境の変化」により、例えば、媒体の性質、工夫などで様々な効果が表れる可能性があることから、同じ文言でも一律に「違反にあたらない。」とは判断しないことを意味しています。

どういった行為が規制対象なのか

「記述し又は流布してはならない」については、記述や流布に限らず、およそ一般の人に広く知らせるための方法のすべてが禁止の対象になると理解されています。

例えば、ECサイトのLPに記載して見せるという方法は、明らかに「記述」に該当しますし、セールストークマニュアル等で、販売員が情報共有し、一般人に口頭で説明するような場合も含まれるのです。

化粧品広告だけは美容師も効果保証禁止

第66条第2項の規定は、化粧品の効能、効果又は性能に関し、医師等がこれを保証したと誤解されるおそれがある記事を広告等することは禁止しています。

そして、「その他の者」には、歯科医師や薬剤師をはじめ、効能、効果又は性能に関し、人々の認識に相当の影響を与える者がこれに該当します。ここで、化粧品についてのみ、理容師及び美容師などが含まれると解釈されています。

このように、化粧品広告についての保証にのみ理容師及び美容師を含め、解釈することについて、「理容師及び美容師」と言う職名が、厚生労働大臣の指定する各養成施設を終了し、理容、美容及び衛生に関する内容の試験に合格して得られることから、それらの促進を目的とする「化粧品」について、専門性が認められており、「効能、効果又は性能に関し、人々の認識に相当の影響を与える者」と当たることが理由として考えられます。

したがって、理容師及び美容師の化粧品広告は、原則的に広告行為を行うことそれ自体が第2項にいう「保証したと誤解されるおそれ」が高くなることから、誇大広告等といえるものとされ、認められないと考えるのが一般的でしょう。

もっとも、

  • 商品製造会社の歴史や由来について紹介すること
  • 髪を洗う
  • セットの後に首筋に塗るなどの行為によって、一般人が心地よく感じるという結果が生じること

などは「保証した」にはあたらないでしょう。

ビジネスを始めるとき、また、新しい分野へと発展させたいとき、自分の手でビジネスを作り上げてきた経験を持つ弁護士に依頼すると、高く見える壁の前でも、突破口を見つけるべく、臨機応変にさまざまな視点から、対策を練ることができます。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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