リスキリング助成金、178社19億円の不正一斉摘発事案における労働局の対処方針(1月13日最新情報)

日本の労働市場で注目されている「リスキリング(職業能力の再開発)」を支援するための公的助成金が、特定の訓練機関の関与によって大規模に不正受給されていた問題が、深刻な局面を迎えています。
2025年12月19日、東京労働局をはじめとする各都道府県労働局は、特定の訓練機関が関わった案件のうち、全国178社に対して、総額約19億4,000万円の返還命令を下しました。
本記事は、当該の「特定の訓練機関」が2026年1月13日に実施した最新の報告会での内容を踏まえ、労働局の最新の対処方針や、事業主が直面している法的リスクについて詳述するものです。今回の報告会によれば、今回の摘発は、2023年から2024年にかけて申請を行った企業が主な対象となっており、そして、1月19日までに全額の納付を行わないと原則的に社名が公表されるという状況であり、事態は極めて差し迫っていると言えます。
この記事の目次
労働局による返還期限と「社名公表」の厳格な運用
1月19日に設定された納付期限
報告会での最新情報によれば、不正受給認定を受けた大半の事業主に対して、各都道府県労働局は「2026年1月19日」を納付期限として設定しています。一部の通知書には1月5日や7日といった日付が記載されているケースもありますが、これらは主に延滞金の利息発生日であり、社名公表を回避するための最終的なデッドラインは1月19日であると認識されています。もっとも、これはあくまで当該訓練機関の報告会における報告に基づくものであり、これ以外の対応を受けている企業がないとは言えません。以後も同様です。
分割納付(分納)と社名公表のリスク
多くの事業主が懸念している分割納付の可否について、各労働局への確認の結果、ほぼ全ての労働局で分割納付の相談自体は受け付けるという回答が得られています。しかし、ここで非常に重要な注意点があります。
大半の労働局は、「原則として分割納付が完了するまでは、社名を公表し続ける」という方針を示しています。一部の労働局で「分納中であれば公表しない」という情報もありますが、これはあくまで例外的な見解であり、多くの場合は全額を納付しない限り、ウェブサイト等で不正受給企業として社名が公開されてしまうリスクがあります。言い換えると、社名公表というペナルティを受けないためには、1月19日までの全額の納付を行う必要があるということです。
不正受給認定によるペナルティ

助成金の不正受給と認定された場合、事業主は単に受給した金額を返すだけでは済みません。極めて重い金銭的・行政的制裁が科されます。
返還請求金の具体的な内訳
事業主が返還すべき総額は、以下の三つの要素を合計したものとなります。まず、実際に受領した「助成金の元本」です。次に、その元本の2割に相当する「追徴金(違約金)」が加算されます。さらに、助成金を受領した日の翌日から、実際に全額を納付する日までの期間に対し、年率3%程度の「延滞金」が日割りで計算されます。
これらの合計額を一括で支払うことが原則として求められており、経営にとって甚大な負担となります。
5年間の助成金申請停止
金銭的な負担に加え、不正受給が確定した事業主は、認定日から5年間、厚生労働省管轄のあらゆる雇用関係助成金の受給ができなくなります。これは当該のリスキリング助成金だけでなく、雇用調整助成金やキャリアアップ助成金なども含まれるため、企業の福利厚生や採用計画に長期的な悪影響を及ぼします。
社名の公表
これに加えて、前述の社名公表が問題となります。本件の場合、「特定の訓練機関」は既に社名が公表されていますが、事業主側の社名はまだ公表されておらず、ただ前述のとおり、1月19日までの全額納付を行わないと原則的に公表が行われる模様です。
特定訓練機関の対応と弁護士選任における注意点
訓練機関側の主張と限界
特定の訓練機関は報告会において、今回の労働局の認定そのものが不当であるとして、弁護士を立てて争う姿勢を見せています。また、追徴金の一部(25%〜50%程度)を彼らや代理店が負担する案も提示していますが、助成金の元本そのものや延滞金を含めた全額を補償するものではありません。
「利益相反」と独立した弁護士の必要性
事業主の皆様が検討すべきは、訓練機関が依頼している弁護士に自社の代理も任せてよいのか、という点です。ここには深刻な「利益相反」の問題が潜んでいます。
訓練機関は「自分たちのスキームは適法であり、不正ではない」という立場を取っています。もし事業主側が「訓練機関の行為は違法だったかもしれないが、自社はそれを信じただけで悪質性は低いため、社名公表や不支給処分を免れたい」と主張したい場合、訓練機関の弁護士に依頼することはできません。なぜなら、その弁護士は訓練機関の利益を守るために、「スキームは適法だ」という立場を取る必要があるからです。
訓練機関に対する損害賠償請求の検討
今回の事案で被害を受けた事業主様にとって、もう一つの重要な選択肢は、訓練機関とは別の「独立した弁護士」に依頼し、当該訓練機関に対して損害賠償請求を行うことです。
訓練機関が「このスキームは適法であり、問題ない」と虚偽の説明をして勧誘していた場合、その説明を信じて不正受給の当事者となってしまった事業主様は、支払うことになった追徴金や延滞金、さらには社名公表による社会的信用の失墜について、訓練機関の法的責任を追及できる可能性があります。
訓練機関側の弁護士は、当然ながら訓練機関への損害賠償請求をサポートすることはありません。自社の権利を守り、被った損害を取り戻すためには、利害関係のない第三者の立場から助言を行える弁護士を確保することが不可欠です。
まとめ:助成金不正受給に関する対応は弁護士に相談を
1月19日という納付期限が迫る中、多くの事業主様が困難な判断を迫られています。「実質無料」という言葉を信じた結果が、多額の返還金と社名公表のリスクという形で跳ね返ってきているのが現状です。
まずは社名公表という最悪の事態を避けるために全額納付を検討しつつ、訓練機関とは独立した法的アドバイザーの確保を検討してください。自社の立場を正確に当局へ説明し、処分の軽減を求めると同時に、訓練機関に対する責任追及を含めた多角的な防衛策を講じることが、事業継続のためには極めて重要です。
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カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務
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