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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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八百長、替え玉、チート… 海外でのeスポーツ関連の問題行為と訴訟事例を解説

八百長、替え玉、チート… 海外でのeスポーツ関連の問題行為と訴訟事例を解説

今や子供の憧れの職業にランクインするほど、プロゲーマーは人気です。特に海外では、比較的早い時期から、eスポーツは人気でした。近年では、日本でも数多くの大会が開催されるなど、eスポーツの人気は高まりを見せています。

eスポーツの人気の高まりに伴い、賞金額が高額な大会が開催されるケースも増えてきました。

一方で、競技人口が増えてくるにつれ、問題行為が行われるケースも増えてきました。また、ケースによっては、訴訟に発展するケースもみられます。

eスポーツ関連の問題行為や訴訟事例については、海外でのケースが多いですが、今後日本でも起こる可能性があるため、eスポーツに関わっている企業の方や選手の方を対象に、海外ではどのような問題行為や訴訟事例が発生しているかを紹介します。

eスポーツ関連での海外での問題行為・訴訟事例

では実際の事例を解説しましょう。

2012年に発生した談合問題

2012年の夏にアメリカで開催されたMLG Summer Championshipにおいて、決勝戦で対戦をしたCurse NAとTeam Dignitasとの間で、談合が行われていたということが発覚し、問題となりました。

談合内容としては、両チームのどちらが勝った場合でも、両チームの獲得賞金を合計し、両チームで均等に山分けするという内容だったようです。

両チームは、談合を行ったことから、大会規程にしたがい、失格となりました。賞金についてはどちらのチームにも付与されませんでした。

2012年に発生した不正行為問題

2012年に行われたリーグ・オブ・レジェンド(LoL)の大会で不正行為が発生しました。

Azubu FrostとTSMの試合中、Azubu FrostのWoong選手が、会場に設置された巨大モニターをのぞき見て、相手チームの情報を把握する不正行為を行いました。

Woong選手の不正行為により、Azubu Frostには、3万ドルの罰金が課せられました。

2015年に発生した韓国での八百長問題

eスポーツでは、ゲームの勝敗が重要であるため、裏で金銭のやり取りが行われ、選手が、わざと負けたりするなどの八百長行為が行われるケースがあります。

大きな問題となったのは、韓国で2015年に発生した「スタークラフト2」というゲームでの八百長です。

韓国では、eスポーツのトップ選手が、八百長に加担していることが発覚し、関与した十数人の関係者が逮捕されるという事態にまで発展しました。

2015年に発生した韓国での八百長問題

2018年に発生した不正ツール使用問題

2018年10月19日に開催されたZOWIE eXTREMESLAND CS:GO ASIA 2018では、不正ツール使用問題が発生しました。

不正ツールの使用は、OpTic IndiaとRevolutionの試合中に行われました。

大会主催者が導入していた不正ツールを検知する機能が作動し、OpTic Indiaのforsaken選手のPCから、何らかの不正が行われていることが検知されました。

そこで、大会の関係者が、forsaken選手のPCの確認を行おうとしたところ、forsaken選手は、確認を拒否するような態度を見せ、確認を拒否している間に、自分のPC内の不正ツールを削除しました。

結果的に、大会関係者が、削除された不正ツールの復元を行い、不正ツールが使用されていたことを確認しました。

forsaken選手は、ZOWIE eXTREMESLAND CS:GO ASIA 2018では、失格となり、今後5年間の出場禁止処分となりました。

forsaken選手の不正ツールの使用の発覚により、OpTic Indiaの活動は困難となり、OpTic Indiaは解散を余儀なくされました

2019年にオーストラリアで発生した八百長問題

前述の韓国に続き、2019年にオーストラリアでも八百長問題が発生しました。

オーストラリアでは、FPSの中で特に人気のあるeスポーツタイトルであるCounter-Strike: Global Offensive(CSGO)における八百長問題が発生しました。

なお、FPSとは、ファーストパーソンシューティングゲーム(First-person shooter)の略で、キャラクターの視点で、プレイヤーがゲーム内を移動し、道具や武器等を用いて、プレイヤー同士が戦うゲームのジャンルをいいます。

この事件では、関係者6人が関与していたとされており、6人は、事前に勝敗について示し合わせを行い、ゲームをプレイしていました。

2019年にオーストラリアで発生した八百長問題

選手の労働条件に関して発生した訴訟事例

人気ゲームタイトルであるFORTNITEなどの選手として知られているTurner Tenney選手(Tfue)は、所属チームのFaZe Clanに対して、訴訟を提起しました。

Turner Tenney選手は、Turner Tenney選手がFaZe Clanと締結している契約が、カリフォルニア州のTalent Agency Actに反する違法な契約であることを主張して、FaZe Clanに対し、締結している契約の破棄、正当な報酬の支払い、損害賠償金の支払いなどを求めました。

訴訟の中で、Turner Tenney選手は、Twitch、YouTube、ソーシャルメディアなどで公開された映像によって得られた収益のうち、20%がTurner Tenney選手の取り分で、80%がFaZe Clanの取り分となっていた、また、ツアーやイベントなどの出演料についても、50%がTurner Tenney選手の取り分で、50%がFaZe Clanの取り分となっていたと主張し、FaZe Clanの取り分が大きすぎる点を指摘しています。

さらに、Turner Tenney選手が、FaZe Clanと締結している契約の中には、競業を禁止する旨の条項が含まれており、Turner Tenney選手が、個人として直接仕事の依頼を受けることができないことも指摘されています。

Turner Tenney選手は、eスポーツ業界で、多くの人に知られる存在であり、本訴訟がどのような結果となるか注目されていましたが、その後、Turner Tenney選手とFaZe Clanの間で和解が成立し、本訴訟は解決されたようです。

2020年に発生した選手の替え玉問題

問題が発生したのは、電気自動車レースであるフォーミュラEが開催したフォーミュラEレース・アット・ホーム・チャレンジです。

本来は、プロドライバーは電気自動車に乗って実際にレースを行うことを想定していましたが、新型コロナウイルスの関係で、電気自動車に乗ってのレースの実施が困難となり、プロドライバーが、自宅からシミュレーターを用いてバーチャルレースを実施しました。

問題となったプロドライバーは、ダニエル・アプト選手であり、ダニエル・アプト選手は、他の者を替え玉としてバーチャルレースに参加させており、自らは参加していませんでした

この替え玉問題により、ダニエル・アプト選手は、問題となったレースの失格、これまで獲得したフォーミュラEレース・アット・ホーム・チャレンジのポイントの剥奪、慈善団体への1万ユーロの寄付が命じられました。

さらに、アウディは、ダニエル・アプト選手に対し、フォーミュラEのドライバーとしての資格を剥奪するという厳しい処分を行い、ダニエル・アプト選手は、アウディのシートを失う結果となってしまいました。

日本でもeスポーツ関連のトラブルが発生

日本でもeスポーツ関連のトラブルが発生

日本でも、eスポーツに関するトラブルが発生しました。

問題が起こったのは、野良連合というチームです。

野良連合については、給与の未払いの疑惑やオーナーのプライベートな問題等が関係者に暴露され、SNSでいわゆる炎上状態となりました。

疑惑の一部について、オーナーは否定する旨のツイートを行いましたが、結局、オーナーは辞任することとなりました。

また、所属していた選手の脱退等も相次ぎました。

まとめ

以上、eスポーツに関して、海外ではどのような問題行為や訴訟事例が存在しているかを紹介しました。

eスポーツは、近年発達してきた分野であり、必ずしも盤石な仕組みづくりが出来ているわけではなく、不正が行われてしまうケースもあります。

eスポーツは、当然のことながら、不正が行われてしまうと成り立たなくなってしまうものですので、適正を確保するために、不正に対する処分を重くすることもやむを得ない側面があります。

日本では、今後ますますeスポーツが発展することが予想されますので、eスポーツに関わっている企業の方や選手の方は、早い段階で、専門的知識を有する弁護士に相談をすることをおすすめします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。

近年、企業がスポンサーに入ったeスポーツ大会も多く開催されるようになりました。ですが、まだ日本では法整備が整っていないこともあり、多くの気をつけるべきポイントがあるのが現状です。

当事務所ではベンチャーやIT企業の企業法務に関するソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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