薬機法における医薬部外品の定義は?広告で表現できる効能効果について
医薬部外品を取り扱っている製造会社やドラッグストアなどの販売店において、薬機法チェックは、日常的に行われるリスク管理の業務です。しかし、薬機法において許容される広告表示の基準は曖昧なためその判断が難しく、意図せず違反してしまうケースも見受けられます。
本記事では、意図しない薬機法違反を防ぐために、医薬部外品に関する申請や広告の段階で求められる効能効果の適切な表現について弁護士が解説します。
この記事の目次
薬機法における医薬部外品とは
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)第2条第2項は、「医薬部外品」を次のように定義しています。
この法律で「医薬部外品」とは、次に掲げる物であつて人体に対する作用が緩和なものをいう。
一 次のイからハまでに掲げる目的のために使用される物(これらの使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
イ 吐きけその他の不快感又は口臭若しくは体臭の防止
ロ あせも、ただれ等の防止
ハ 脱毛の防止、育毛又は除毛
二 人又は動物の保健のためにするねずみ、はえ、蚊、のみその他これらに類する生物の防除の目的のために使用される物(この使用目的のほかに、併せて前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物を除く。)であつて機械器具等でないもの
三 前項第二号又は第三号に規定する目的のために使用される物(前二号に掲げる物を除く。)のうち、厚生労働大臣が指定するもの
つまり、「医薬部外品」とは、人体に対する作用の強さが「医薬品」と「化粧品」の間に位置し、「医薬品」と比べて人体に対する作用が緩和なものを指します。例えば、薬用化粧品・栄養ドリンク・染毛剤・薬用歯磨剤・制汗スプレー・ 育毛剤 ・ 殺虫剤などが「医薬部外品」に該当します。
なお、平成11年(1999年)の「薬事法施行令」改正によって、「医薬品」から新たに「医薬部外品」に移行されたものは「新指定医薬部外品」、平成16年(2008年)の改正によって移行されたものは「新範囲医薬部外品」と呼ばれており、これらは上記の薬機法第2条第2項第3号が規定する「指定医薬部外品」に該当します。
「医薬部外品」は、厚生労働省が指定・承認した効能効果に対して有効な成分を、一定の濃度で含んでおり、疾病等の「治療」というよりは、主に「防止」を目的として作られています。また、「薬用」という表示は、医薬品よりも作用が緩和な「医薬部外品」のみで認められているため、「薬用=医薬部外品」となります。
独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、「医薬部外品」の定義・特徴を以下のように説明しています。
1. 人体に対する作用が緩和である。(薬機法第2条第2項)
2. 医薬品ではない。(薬機法第2条第1項及び第2項、昭和37年9月6日薬発第464号局長通知等)
① 成分及び分量又は本質が医薬部外品としての範囲を超えているものについては、その効能又は効果の如何にかかわらず、医薬品として取扱う。
② 成分及び分量又は本質が医薬部外品として認められる範囲内のものであっても、効能若しくは効果又は用法及び用量が医薬部外品としての範囲を逸脱しているものは医薬品として取扱う。
3. 当該品目が次に掲げるものでないこと。(昭和37年9月6日薬発第464号局長通知)
a. 毒薬又は劇薬に相当するもの
b. 純品
4. 主な使用目的は“防止”である。(昭和37年9月6日薬発第464号局長通知等)
※新指定医薬部外品及び新範囲医薬部外品については、当該関連通知等を参照。
5. 日常的に継続使用が想定される製品である。
6. 原則、医師や薬剤師といった医療関係者の管理下で使うことを前提としているものではない。
「医薬部外品を承認申請する際の基本的留意事項について(令和3年度版)」
薬機法における医薬品等の分類基準については、下記記事にて詳しく解説しています。
参考記事:「薬機法(旧薬事法)とは?目的や規制対象、広告規制を解説」
一般化粧品と医薬部外品の違い
「化粧品」は、薬機法上、「一般化粧品」と「薬用化粧品」(医薬部外品の一種)に分類されます。
「化粧品」については、薬機法第2条第3項において、次のように定義されています。
この法律で「化粧品」とは、人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう。ただし、これらの使用目的のほかに、第一項第二号又は第三号に規定する用途に使用されることも併せて目的とされている物及び医薬部外品を除く。
すなわち「化粧品(一般化粧品)」とは、「医薬品」や「医薬部外品」と比較して効能効果が緩和で、身体を清潔にする・美化する・魅力を増す・皮膚や毛髪を健やかに保つなどの目的で使用される製品のことを指します。
「一般化粧品」の場合、厚労省によって、「肌荒れを防ぐ」や「口中を浄化する」など、製品のパッケージに表示可能な56個の効能が決められているため、その範囲を逸脱した広告を行うと薬機法違反になります。
一方、「薬用化粧品」には、肌あれ・にきびなどの肌のトラブルの防止や美白・デオドラントなどの効果をもつ「有効成分」が配合されており、それぞれの有効成分がもつ効能効果を標榜することができます。厚労省は、有効成分を指定したうえで、薬用化粧品を製品の種類ごとに8個の項目に大別し、各製品群が謳うことのできる効能の範囲を規定しています。詳しくは次章で解説します。
なお、「薬用化粧品」の場合、製品のパッケージ上に「医薬部外品」と表示とすることが必要です。また、「一般化粧品」が、薬機法によって全成分表示が義務づけられている一方で、「医薬部外品」は、薬機法上は、「表示指定成分」のみ表示すれば足り、日本化粧品工業連合会の自主基準で全成分表示をしているという違いがあります。
「薬機法」は大きく分けて、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の5つのカテゴリーを規制対象としています。このうち、医薬部外品と混同しやすい医薬品・一般化粧品の定義及びそれぞれのカテゴリー内での分類を以下の表にまとめました。
【薬機法上の分類】
医薬品 | 医薬部外品 | 化粧品 | |
定義 | 1.日本薬局方に収められているもの。 2.人や動物の疾病の診断・治療・予防に対する使用が目的のもの。 3.病気の診断・予防・治療に使われ、身体の構造や機能に影響を及ぼすことが目的のもの。 (薬機法2条1項) | 1.体臭・あせも・脱毛の防止等を目的とし、人体への作用が緩和なもの。 2.人又は動物の保健のために、生物の防除を目的として使用されるもの。 3.医薬品と同様の目的で使用され、厚生労働大臣により指定されたもの。 (薬機法2条2項) | 人体に対する作用が緩和で、口中・皮膚・髪・爪の手入れや保護・着色・賦香を目的とするもの。 (薬機法2条3項) |
カテゴリー内の分類 | 1.医療用医薬品 (処方箋医薬品) 2.要指導医薬品 3.一般用医薬品 (OTC医薬品) | 1.一般の医薬部外品 (薬用化粧品など) 2.指定医薬部外品 | 一般化粧品 |
製造販売の承認 | 厚生労働大臣等からの承認が必要 | 厚生労働大臣等からの承認が必要 | 承認は原則不要 |
医薬部外品で表現できる効能効果について
「医薬部外品」の場合は、厚労省によって、医薬部外品の種類に応じて表示可能な効能効果の範囲が決められており、その範囲を逸脱した広告を行うと薬機法違反になります。
一般化粧品と薬用化粧品で異なる効能効果の表現
先ほども述べた通り、医薬部外品である薬用化粧品は、指定された有効成分がもつ効能効果に加えて、一般化粧品において表示可能な56個の効能効果も標榜することができるため、一般化粧品よりも訴求力の高い宣伝広告を行うことができます。
【一般化粧品と医薬部外品の相違点】
一般化粧品 | 薬用化粧品 | |
効能効果の範囲 | 厚労省指定の56の効能 | 承認された効能+一般化粧品の効能 |
有効成分の配合 | なし | あり |
薬用化粧品が、一般化粧品と同様の効能効果(厚生労働省指定の56個の効能効果)を標榜する際に留意すべきことは以下の3つです。
- 医薬部外品本来の目的が隠蔽されて化粧品であるかのような誤解を与えないこと。
- 化粧品的な使用目的、用法で使用された場合に保健衛生上問題となるおそれのあるもの(殺菌剤配合のシャンプー又は薬用石けんなど)ではないこと。
- 当該効能効果が医薬部外品の効能効果として承認を受けたものであるかのような誤認を与えないこと。
薬用化粧品を含む医薬部外品の広告上の効能効果や表現が、薬機法違反となるか否かの詳しい判断基準については、厚生労働省の「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」や、日本化粧品工業連合会の「化粧品等の適正広告ガイドライン」をご参照ください。
薬機法違反となる表現の例
薬機法及び医療広告に関する規制に違反する可能性のあるキーワードとして、「アンチエイジング」という表現がよく知られています。
アンチエイジング(英:Anti-Aging)とは、「加齢に伴う症状の予防と治癒・老化防止・抗加齢・抗老化」を意味する言葉です。
厚労省は、「医療広告ガイドライン」(平成30年(2018年)5月8日公布)において、「アンチエイジング」という表現に関して以下のような見解を示しています。
アンチエイジングクリニック又は(単に)アンチエイジングは、診療科名として認められておらず、また、公的医療保険の対象や医薬品医療機器等法上の承認を得た医薬品等による診療の内容ではなく、広告としては認められない。
また、平成30年12月に行われた「第4回医療・介護ワーキング・グループ議事概要」には、以下のような記述があります(一部、内容に合わせて原文から表現を変更しています)。
「厚生労働省も一律にアンチエイジングという表現について、全て駄目と言っているわけではなく、単にアンチエイジングだということで誘引をするようなものは、なかなか認めることができない。しっかりと、条件を満たすものについては、『広告可能な事項』以外のものについても情報として提供していいという取扱いにしている。」
以上を踏まえると、医療広告における「アンチエイジング」という表現の使用は、基本的にNGですが、医療広告ガイドライン上の限定解除要件を満たしたうえで、医療行為の内容説明を目的とする場合には、例外的に認められ得るということになります。また、「アンチエイジング」は、医薬品的な効能効果を謳う表現であるため、医薬部外品の広告において用いることはできません。
一方で、似たような言葉に「エイジングケア」や「エイジング対策」がありますが、これらは「アンチエイジング」と異なり、医療行為及び医薬品的な効能効果を表す表現ではありません。そのため、承認を受けた効能効果の範囲内であれば、医薬部外品にも掲載可能な場合があります。
「エイジングケア」とは、年齢に応じた化粧品等によるケアのことを指します。医薬部外品の広告においては、医薬品的な効能効果に分類される疾病の「治療」「改善」などを謳うことを目的として、「エイジングケア」という表現を用いることはできません。前後の文脈を考慮して、「化粧品等の効能効果として認められる年齢に応じた肌状態のケア」を意味していると解釈できる場合のみ、使用が許されます。
このように、「アンチエイジング」が、医療行為及び医薬品的な効能効果を意味する表現であるのに対して、「エイジングケア」は、あくまで「現在の状態に合わせたケア」を意味する表現であるため、化粧品や医薬部外品との親和性が高いと言えます。
また、「美白」「ホワイトニング」という表現も、しばり表現やメーキャップ効果と同時に使うなど一定のルールに従っていれば、使用可能な場合があります。
薬機法の規制上、許される各表現の具体的な使用例については、「化粧品等の適正広告ガイドライン」をご参照ください。
参考記事:化粧品や健康食品の広告表現に関する注意点
医薬部外品の製造・販売の際の留意点
医薬部外品を製造・販売する場合には、厚生労働大臣や各都道府県知事の許可・承認が必要です。ここでは、医薬部外品の流通過程において必要な許可等を得る際の基本的な留意事項について解説します。
まず、医薬部外品の製造及び製造販売(出荷)を行うためには、各都道府県知事による製造業許可及び製造販売業許可を得る必要があります(薬機法第12条・第13条、薬機法施行令第80条第2項)。なお、海外で医薬部外品を製造するためには厚生労働大臣による外国製造業者認定の取得が必要です(薬機法第13条の3)。
また、実際に医薬部外品を製造販売する際には、品目ごとに、規制当局(厚生労働大臣または各都道府県知事)に対して製造販売承認申請書を提出し、安全性・有効性・品質に関する承認を得なければなりません(薬機法第14条)。
上で紹介したような各種の許可申請は、製造所や製造販売事務所の所在地の都道府県知事に対して行います。一方で、品目ごとの承認申請は、厚生労働大臣に対して行うケースと、都道府県知事に対して行うケースがあります(薬用化粧品以外の医薬部外品については、承認権限の一部が各都道府県知事に委任されています)。
「医薬部外品」の申請区分は、配合される成分・分量・効能・効果等に応じて11個に分けられており、必要とされる添付資料の種類も異なってきますので注意が必要です。
詳しくは、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)公表の「医薬部外品の製造販売手順について」をご参照ください。
それぞれの許可・承認申請のフローについては、以下の図をご確認ください。
「医薬部外品を承認申請する際の基本的留意事項について(令和3年度版)」
なお、「薬用化粧品」「医薬部外品」に配合可能な有効成分については、厚生労働省公表の「いわゆる薬用化粧品中の有効成分リストについて」をご参照ください。
また、「医薬部外品」に義務付けられている表示指定成分(告示成分)には140種類の化学物質が選ばれています。詳しくは、「厚生労働大臣の指定する医薬部外品及び化粧品の成分」をご覧ください。
まとめ:薬機法のリーガルチェックは弁護士へ
令和元年(2019年)の薬機法の改正により、医薬品等の広告規制として、行政罰の課徴金制度が創設され、薬機法の広告規制違反が厳罰化されることになりました。医薬品等の広告ガイドラインは、年々改定されており、医薬品等の広告の運用や検討をしている事業者・広告代理店などの関係者は、慎重な対応が求められます。
薬機法の解釈や広告における表現が適切かどうかは自己判断が難しい面もあるため、不安がある場合には、薬機法のリーガルチェックに詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
薬機法等のリーガルチェックや書き換え表現の提案は、非常に専門性の高い領域です。モノリス法律事務所は、薬機法法務チームを組成し、サプリメントから医薬品まで、様々な商材の記事チェックに対応しています。
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