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薬機法の広告規制とは?適法な表現で広告を作成するポイントを解説

テレビCMや新聞の広告、最近ではスマートフォンアプリに入る広告などでも、医薬品や医療機器などの広告を見ることが多くなりました。視聴者の購買意欲をかきたてるために、これらの広告では、医薬品などの効能や有用性が強く打ち出されています。

しかし、これらの広告は、その文言によっては、薬機法に反して違法となってしまうことがあります。

この記事では、薬機法上の広告規制の内容や、薬機法に違反しないための広告作成のポイントなどを解説します。

薬機法(旧薬事法)とは

薬機法(旧薬事法)

薬機法とは、保健衛生の向上を目的として、医薬品や医療機器などの品質、有効性、安全性を確保し、これらの使用に際して危害が発生しないように、医薬品や医療機器などの製造・販売・広告等に関する規制を定めた法律です。

正式名称を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」といい、平成25年の改正以前は「薬事法」と呼ばれていました。

なぜ広告を規制するのか

医薬品や医療機器などを販売する際には、買い手に対して広告を打ち出すことになります。医薬品や医療機器などは、個人の健康という重要な利益を左右するものですから、広告の内容に虚偽や誇張があった場合、保健衛生上、重大な危害を及ぼすおそれがあります。

また、医薬品等として認可を受けていないものや、医薬品等にあたらないものについて、医薬品のような効能があるなどと広告を出した場合にも、保健衛生上の危害のおそれがあります。

そこで、薬機法では、医薬品や医療機器などの虚偽・誇大広告の禁止(薬機法第66条)や、承認前の医薬品等について広告一般の禁止(薬機法第68条)を定めています。

これらの規定に反した場合、懲役や罰金などが科される可能性があるほか、令和元年の改正によって新たに導入された課徴金を支払うことになる可能性もあります。課徴金制度については、別記事もご参照ください。

関連記事:令和元年の薬機法改正の内容~薬局・薬剤師のあり方、課徴金制度~

関連記事:薬機法の課徴金制度とは?対象となる行為や減免されるケースを解説

また、薬機法第66条第1項は、「何人も、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器又は再生医療等製品の名称、製造方法、効能、効果又は性能に関して、(中略)虚偽又は誇大な記事を広告し(中略)てはならない。」と規定しており、医薬品の製造・販売をしていなくても、広告を出した主体が処罰対象となることが定められています。

したがって、医薬品等の製造・販売業者から委託を受けた広告業者も、広告規制に違反しないか注意する必要があります。

薬機法の広告規制と表現の判断基準

それでは、薬機法の規制を受ける広告とは、どのようなものなのでしょうか。

「広告」とは、

  1. 顧客を誘引する(顧客の購入意欲を昂進させる)意図が明確であること
  2. 特定医薬品等の商品名が明らかにされていること
  3. 一般人が認知できる状態であること

の3つの要件をみたすもの、とされています。

それでは、具体的な例を踏まえて解説します。

例1:化粧品

例1:化粧品

化粧品の定義について、薬機法では、「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」とされています(薬機法第2条第3項)。また、同条ただし書きで、医薬品や医薬部外品が除外されています。

化粧品は、人の身体に触れ、人体に作用する点で薬剤と類似することから、薬機法において医薬品と並列して規制がかけられています。

「薬用化粧品」は「化粧品」ではない?

「薬用化粧品」という言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが、「薬用化粧品」は、薬機法上では「化粧品」に含まれません。

薬用化粧品についての法律上の定義はありませんが、化粧品としての用途に加え、肌あれ防止や美白効果などの有効成分を含むものとされています。これらは、厚生労働大臣の指定を受けた「医薬部外品」にあたります(薬機法第2条第2項第3号)。

「医薬部外品」にあたるか、「化粧品」にあたるかの違いは、製造販売をするための規制等に影響しますが、広告規制においては、どちらも薬機法第66条の規制対象となっていることに変わりはありません。

化粧品の広告で認められている表現

化粧品の広告については、厚生労働省の通知である「医薬品等適正広告基準の改正について」、「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等について」に詳細が定められています。

その中でも、広告の表現そのものに直接かかわるものとして、化粧品の効能効果について、記載が許される範囲が明確に定められています。

具体的には、平成23年の厚生労働省の通知である「化粧品の効能の範囲の改正について」において定められた56の効能の範囲の中で、当該化粧品について該当する効能に限り、化粧品の広告において表現が許されています。

この他にも、化粧品に含まれる成分について、広告が可能なものとそうでないものが定められているなど、いくつかの規制があるため、化粧品の広告を作成する際には、これらの通知の内容を確認し、薬機法に違反しないかどうかに注意する必要があります。

具体的な表現については、日本化粧品工業連合会が出している「化粧品等の適正広告ガイドライン」に例が挙げられています。当事務所の別記事もあわせてご参照ください。

関連記事:化粧品や健康食品の広告表現に関する注意点

例2:健康食品

例2:健康食品

「健康食品」について、法律上の定義はありませんが、飲食物は、「食品」か「医薬品等」に分けられるとされています(食品衛生法第4条第1項)。

「医薬品等」にあたるかどうかの判断は、原則として、薬機法第2条第1項に定義にあてはまるかによって判断されます。

したがって、いわゆる「健康食品」と呼ばれるものは、「医薬品等」には該当しません。

しかし、「医薬品等」にあたらない食品であっても、「医薬品的な効能効果を標ぼうしているもの」などは医薬品とみなされ、医薬品としての承認や認可を受けていない以上、薬機法68条によって広告が禁止されてしまいます。

いわゆる「健康食品」のホームページ|厚生労働省

引用元:いわゆる「健康食品」のホームページ|厚生労働省

「保健機能食品」とは

しかし、一定の安全性や有効性を有している食品を販売する場合に、効能効果などの表記が許されないとすると、他の一般的な食品と差別化できず、売上げを伸ばすことができません。

このとき、国が定めた安全性や有効性に関する基準等を満たした「保健機能食品制度」を利用することで、成分の機能の表示が可能となります。「保健機能食品」には、①機能性表示食品、②栄養機能食品、③特定保健用食品があります。③の特定保健用食品は、「トクホ」の通称でなじみ深いのではないでしょうか。

このように、いわゆる「健康食品」と呼ばれるものであっても、保健機能食品制度を利用することで、成分の機能を表示する事が可能となります。

医薬品とみなされる表現の例

では、保健機能食品制度を利用しない場合、どのように広告をすればいいのでしょうか。

すでに述べたとおり、保健機能食品以外の「健康食品」、つまり、許可や届け出を受けていない一般の「食品」では、医薬品とみなされるような表示による広告をすることはできません。

具体的には、

  • 糖尿病予防
  • 疲労回復効果を高める
  • 老化防止
  • 不老不死
  • 成人1日3~6錠

などのように広告に表示することは禁止されています。

これらの表記は、医薬品と類似する効能・効果を有しているとの誤解を招くおそれや、医薬品のような用法用量の記載から医薬品であるとの誤解を招くおそれがあることから、医薬品の範囲に含まれるとして、薬機法で禁止されています。

その他の医薬品とみなされる表現や、医薬品とみなされるかどうかの判断基準については、厚生労働省の通知にも記載がありますので、ご参照ください。

参考:医薬品の範囲に関する基準の一部改正について(令和2年3月31日薬生発0331第33号)

医薬品にあたらない場合の注意

いわゆる健康食品の広告において、医薬品とみなされないためには、広告を見た人が医薬品と誤解しないような表現であることが必要となります。例えば、厚生労働省の通知によれば、「栄養補給」や、「健康維持」を目的とする趣旨の表現は、直ちに医薬品的な効能効果には該当しない、とされています。

もっとも、医薬品とみなされない場合には、「食品」に該当するため、景品表示法や健康増進法などの規制対象になります。これらの法律でも、広告規制が規定されているため、違反しないように注意が必要です。

また、保健機能食品制度を利用する場合には、国が定めた表現を逸脱すると食品表示法などに反するおそれがあるため、注意が必要です。

その他、承認又は認証を要する医薬品等の場合

上述の例は、製造販売の承認や認証を必要としないものを挙げていますが、もちろん承認等を受けた医薬品等であれば広告上でどのような表現を用いても許されるというわけではありません。

これらの医薬品等の場合には、承認や認証を受けた名称以外を用いてはいけませんし、効能効果についても、明示的であるか暗示的であるかにかかわらず、承認等を受けた範囲を超えた効能効果について表示しはなりません。

詳細な基準は、厚生労働省の通知「医薬品等適正広告基準の改正について」に記載されていますので、医薬品等の広告を作成する際には、ぜひ確認してください。

「個人の感想」の記載に注意

「個人の感想」の記載に注意

広告の表現において、「※個人の感想です。」などの表現をよく見かけます。このような表現は、「打消し表示」といい、効能効果などを強調する一方で、例外や体験談であることなどを示し、断定的な表現を避けることで誤解を防ぐための表示です。

しかし、打消し表示があれば、どのような効能効果であっても強調して表示していいというわけではありません。

強調された部分に対して、打消し表示が小さいなど一般消費者が打消し表示を読むことができない場合や、強調表示の例外であることを明確にしてしていない場合などは、強調表示の内容を一般消費者が誤認するものとして、有利誤認や優良誤認にあたり、景品表示法に反するおそれがあります。

後述するように、医薬品等の広告は、薬機法だけでなく、景品表示法の規制の対象でもあるため、これらの法律に反することがないようにも注意しなければなりません。

また、薬機法第66条第2項は医者や薬剤師、化粧品メーカーなどの専門家が効果効能を保証したと誤解されるおそれのある広告を禁止しています。

これは、薬機法66条1項の「虚偽又は誇大」な広告の解釈を明確にしたものですから、この規定にも違反しないようにしなければなりません。

薬機法と景品表示法

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景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、不当な景品類及び表示による顧客の誘因の防止し、一般消費者の自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれのある行為を制限、禁止することで一般消費者の利益を保護することを目的とする法律です(景品表示法1条)。

この目的からも分かるとおり、不当な表示によって顧客を誘引しようとする行為を規制するという点においては、薬機法の広告規制と景品表示法の広告規制は共通しています。

また、この2つの法律は、それぞれ広告規制に反した場合に課徴金制度を設けており、違法な広告によって得た不当な利益を回収する制度が用意されています。

課徴金制度については、以下の記事もご参照ください。

関連記事:薬機法の課徴金制度とは?対象となる行為や減免されるケースを解説

景品表示法の「景品類」には、医薬品等も含まれるため、医薬品等の広告は、薬機法だけでなく景品表示法の規制も受けます。したがって、それぞれの規定を確認したうえで広告を作成しなければなりません。

広告規制に違反しない表現をするためには

広告規制を受けない表現をするためには

ここまで説明してきたように、医薬品等についての広告規制は薬機法だけでなく、他の法律も含めてさまざまな規制が及んでいます。そこで、医薬品等の広告を作成する際には、個々の表現が法律に違反しないかに注意しなければなりません

法律違反の可能性を低くするためには、広告の表現のチェックツールを用いたり、断定的な表現を避けたりといった工夫があります。

しかし、これらはあくまでも工夫であり、「ツールを使ったから必ず適法である」、「断定表現を避けたから必ず大丈夫」ということはありませんので、まずは専門的な知識を有する弁護士にご相談ください。

どのような表現が法律に違反するのか、具体的な内容については別記事もご参照ください。

関連記事:商材の種類によって変わる?広告規制の違反表現の例を解説

まとめ:広告が薬機法に違反しているかどうか弁護士に確認しよう

医薬品や医療機器など、薬機法の対象であることが明らかなもののほか、「食品」などの広告であっても、広告の表示によっては薬機法違反となる可能性があります。

また、薬機法以外にも広告規制をおいている法律は多く、それらすべてに違反しているかを確認することは難しい場合があります。

広告の表現が薬機法やその他の法律に違反しているかどうかは、個人では判断が難しいので、経験豊富な弁護士にご相談ください。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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