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医療広告ガイドラインで禁止される体験談とは?口コミ・ビフォーアフター写真のNG事例と例外を弁護士が解説

医療広告ガイドラインで禁止される体験談とは?口コミ・ビフォーアフター写真のNG事例と例外を弁護士が解説

患者からもらった感謝の手紙、口コミサイトの高評価、治療前と治療後を並べた写真。医療広告ガイドラインはこの3つを広告に使用することを正面から規制しています。

体験談の禁止は医療法施行規則に明文があり、載せてよい場所と載せてはいけない場所の線引きは主に、医療機関が受診を誘う目的で載せたか(誘引性)という物差しで決まります。この物差しを押さえれば、口コミサイトやSNS、Googleマップの返信まで同じ基準で判断できます。令和8年3月30日改正後の医療広告等ガイドラインに沿って整理します。

医療広告ガイドラインで体験談が禁止される理由と法的根拠

医療広告ガイドラインで体験談が禁止される理由と法的根拠

医療広告ガイドラインで禁止される体験談とは、患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談を、医療機関への誘引を目的として広告することをいいます。根拠は医療法6条の5第2項4号と、その委任を受けた医療法施行規則1条の9第1号です。

禁止の対象になるかどうかは、まず次の表の3つの要素で体験談に当たるかを見て、次にその掲載が広告に当たるか(誘引性と特定性。次の章で扱います)を見る、2段階で判断します。

▼ 医療広告ガイドラインが禁止する体験談の3要素

要素条文・指針の文言当てはまる例
主観又は伝聞に基づく患者その他の者の主観又は伝聞に基づく患者本人の感想、家族から聞いた話、スタッフが患者から聞き取った話
治療等の内容又は効果に関する治療等の内容又は効果に関する体験談痛みがなくなった、仕上がりに満足した、先生の説明が分かりやすく治療が早く終わった
医療機関への誘引を目的とする当該医療機関への誘引を目的として紹介する自院のウェブサイトやSNS、院外で配るパンフレットに載せる。口コミサイトへの投稿を依頼する

禁止される理由は、治療の感想が個々の患者の状態によって当然に異なり、読み手に誤認を与えるおそれがあるからです。医療広告等ガイドラインは、体験談の記述内容が広告可能な範囲に収まっていても広告は認められないと念を押しています。控えめな表現に直しても、体験談である限り載せられません。

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

医療法6条の5と施行規則1条の9の条文

医療法6条の5第2項は、他院より優れていると示す広告(比較優良広告)、事実を大げさに示す広告(誇大広告)、公序良俗に反する広告を禁じ、4号で細かな基準を厚生労働省令に委ねています。この委任を受けた医療法施行規則1条の9が、1号で患者等の主観又は伝聞に基づく治療等の内容又は効果に関する体験談の広告を、2号で治療等の内容又は効果について患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告を禁じています。体験談とビフォーアフター写真は同じ条の1号と2号に並ぶ、対になった禁止事項です。

参考:e-Gov法令検索 医療法(昭和23年法律第205号)(令和8年法律第31号による改正まで反映・2026年6月5日施行)

参考:e-Gov法令検索 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)(2026年9月23日時点の現行)

令和8年3月30日改正で加わったオンライン診療受診施設の広告

令和8年3月30日の改正で、指針にオンライン診療受診施設の広告を扱う第4部が加わりました。

体験談とビフォーアフター写真の禁止そのものは変わっていません。あわせて、厚生労働省の医療広告等ガイドラインに関するQ&A(以下、Q&Aと表記)が令和8年3月に改定され、違反事例を集めた事例解説書もSNSと動画の事例を増やした第6版になりました。引用は改正後のものを使う必要があります。旧版のPDFは厚生労働省のサイトから削除され、リンクが切れています。

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

参考:厚生労働省 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)

参考:厚生労働省 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)(令和8年3月)

体験談が広告に当たるかは誘引性と特定性で決まる

体験談が医療広告として規制されるのは、その体験談が広告に当たる場合です。医療広告等ガイドラインは、患者の受診等を誘引する意図があること、医業等を提供する者や病院・診療所の名称が特定できること、医業等に関する内容であることの3つを満たすものを医療広告と定義し、前の2つをそれぞれ誘引性、特定性と呼んでいます。

特定性は、名称が明記されていなくても、読み手がどの医療機関かを特定できれば満たされると解されます。

誘引性は、紹介されている医療機関の利益を期待して誘引しているかで判断します。患者が自分の体験に基づいてA病院を推薦する手記を出版しても、患者がA病院を推薦したにすぎないので誘引性はありません。ところが、A病院からの依頼に基づく手記であったり、A病院から謝礼を受けている、あるいはその約束がある場合は、誘引性があるものとして扱われます。投稿者がA病院の経営に関与する者の家族などで、病院の利益のためと認められる場合も同じです。モニター価格で施術する代わりに感想やレビューの投稿を求める場合も、依頼と謝礼に当たり得ます。医療機関が自らのサイトに載せる体験談は、この判断を待たずに広告に該当します。

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

広告規制の対象は医療機関だけではない

医療法6条の5第1項の主語は何人もです。医師や病院だけでなく、マスコミ、広告代理店、アフィリエイター、患者や一般の人も規制の対象です。Q&Aは、ポータルサイトの運営会社や広告を作成した代理店にも是正命令や罰則があり得ると答えています。ウェブ制作会社や口コミ運用の受託事業者にとって、医療機関から依頼された内容だからという理由は免責になりません。

参考:厚生労働省 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)

院内掲示や院内配布のパンフレットは広告に当たらない

患者からもらった感謝の手紙を院内に掲示することは、医療広告に当たりません。院内の掲示や院内で配布するパンフレットは、受け手がすでに受診している患者に限られるため誘引性を満たさない、と医療広告等ガイドラインが明記しています。受け手が受診中の患者に限られることが前提なので、パンフレットを院外で配る、PDFをサイトに置く、掲示を撮影してSNSに載せるといった形にすれば、体験談の広告になり得ます。

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

医療広告ガイドラインで禁止される体験談の6つの具体例

厚生労働省の事例解説書は、体験談として禁止される掲載の仕方を6つの個別事例で示しています。

▼ 事例解説書第6版が示す体験談の違反事例

事例番号違反の形根拠
(16)治療内容や効果に関する患者の体験談をウェブサイトに掲載施行規則1条の9第1号
(17)口コミサイトから体験談を転載、有利な口コミだけを抜粋施行規則1条の9第1号、抜粋は法6条の5第2項2号の誇大広告にも該当
(18)医療機関のスタッフが自分の体験談や患者の体験談を記載施行規則1条の9第1号
(19)医療機関の検索が可能なサイトに載った体験談を医療機関の依頼で編集・削除施行規則1条の9第1号、Q&A Q1-18
(20)患者直筆のアンケートを画像トリミングやPDF化で加工・転載施行規則1条の9第1号
(21)症例紹介の中で患者の主訴として体験談を記載施行規則1条の9第1号

参考:厚生労働省 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)(令和8年3月)

医療広告ガイドラインで禁止される体験談の6つの具体例

治療内容や効果に関する患者の体験談

「先生のおかげで痛みが消えました」という患者の声を自院のウェブサイトに載せる形が、もっとも基本的な違反です。患者本人が書いたか、家族から聞いた話を医療機関が書き起こしたかを問いません。待ち時間が短かった、院内が清潔だった、といった施設や接遇についての感想は、条文が対象とする治療等の内容又は効果に関する体験談には当たらないと解されます。ただし、これらの感想も医療法6条の5第3項が規定する広告可能事項ではないため、載せられるのは限定解除(後述)の要件を満たすウェブサイトなどに限られます。治療に触れる記述が一部でも混ざれば、体験談としての扱いになる点にも注意が必要です。他院より優れているという趣旨を含めば比較優良広告、有利な感想だけを選んで載せれば誇大広告と評価される可能性もあります。

口コミサイトからの転載や有利な口コミの抜粋

口コミサイトに投稿された自院の評価を自院のウェブサイトに転載すると、元の投稿が患者の自発的なものであっても、医療機関が載せた時点で医療機関の広告になり、体験談として禁止されます。全件を転載しても同じです。Q&Aは、医療機関に便益を与える感想を取捨選択して強調することは虚偽・誇大に当たるため広告できないと答え、事例解説書も有利な口コミの抜粋は誇大広告に該当すると解説しています。

参考:厚生労働省 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)

医療機関のスタッフが書いた体験談

スタッフが自院の治療を受けた感想を書くケースと、スタッフが患者から聞いた話を代筆するケースの両方が禁止されます。書き手が患者でなくても、感想が個々の患者の状態で異なり誤認を与えるという理屈は変わりません。院長ブログで「理想の体型になれたとおっしゃっていました」と患者の言葉を紹介する形は、書き手が医療機関側であるぶん誘引性はむしろ明確です。

口コミサイトへの編集や削除の依頼

自院のサイトに何も載せていなくても違反になる形があります。口コミサイトに載った体験談について、医療機関が運営者に頼んで内容を改編させたり、否定的な体験談を削除させたり、肯定的な体験談を上に表示させたりすると、残った体験談に誘引性が生じ、体験談の広告として禁止されます。

Q&Aは、医療機関の依頼による編集でなくても、有利に編集されたサイトの運営費を事後的に負担すれば誘引性が生じ得る、とも答えています。掲載料を払っているポータルサイトで口コミの表示や並び順を調整できる場合は、この観点から見直す必要があります。一方で、名誉毀損などの権利侵害に当たる投稿について法的根拠を示して削除を求めることは、Q&Aも医療機関に有利な編集から除いています。ただし権利侵害に当たるかの判断は難しく、低評価の投稿をまとめて削除依頼すれば誘引性を問われるおそれがあるため、依頼の前に弁護士に確認してください。

参考:厚生労働省 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)

患者直筆アンケートの加工や転載

患者が手書きで答えたアンケート用紙をスキャンし、画像を切り出したりPDFにしたりしてウェブサイトに載せる形です。内容が治療の感想や症状の変化である以上、体験談の広告に当たり、事例解説書も画像トリミングやPDF化等の手法で加工・転載された体験談を規制の対象と明記しています。アンケートを集めること自体は問題なく、問題は回答を誘引の目的で院外に出すことです。

症例紹介の中で患者の主訴として書かれた体験談

症例紹介は治療の内容を客観的に説明する形をとりますが、その中で患者の言葉を引くと体験談の広告になります。主訴とは患者が医師に申し立てる症状のうち主要なもののことです。その欄に「治療後に痛みが和らいだとおっしゃった」と経過を書き込むと、形式は症例紹介でも実質は患者の感想の紹介で、事例解説書はこれを独立した違反事例として挙げています。症例紹介で書けるのは、医師が客観的に確認した所見と経過です。患者の発言をかぎ括弧で示した部分を削っても症例紹介として成立するかを確認すると判断しやすくなります。

口コミや患者の声はどこまで載せられるか

口コミや患者の声を載せられるかどうかは、掲載する場所と、医療機関がその掲載にどう関わったかの2つで決まります。医療機関が自ら載せれば禁止、第三者が自発的に載せれば規制外、第三者の掲載でも、依頼や掲載に結びつく費用負担で関わっていれば禁止、というのが基本の整理です。

▼ 口コミ・患者の声の掲載場所と医療法上の評価

掲載場所医療機関の関与なし医療機関からの依頼あり(有償・無償を問わない)有利な掲載に結びつく費用負担あり
自院のウェブサイト・院外配布のパンフレット✕ 掲載行為自体が広告に当たるため掲載不可。――
自院の公式SNSアカウント✕ 投稿・リポスト・引用は医療機関の表示であり、広告に当たるため掲載不可。――
第三者が運営する口コミサイト〇 広告に当たらない。掲載可能。✕ 誘引性が生じるため掲載不可。✕ 誘引性が生じるため掲載不可。
患者個人のSNS・ブログ〇 広告に当たらない。掲載可能。✕ 誘引性が生じるため掲載不可。✕ 誘引性が生じるため掲載不可。
口コミランキングサイト△ サイトの作りによる。特定の医療機関を強調していれば比較優良広告の問題が生じるおそれあり。✕ 誘引性が生じるほか、比較優良広告の問題が生じるおそれあり。掲載不可。✕ 誘引性が生じるほか、比較優良広告の問題が生じるおそれあり。掲載不可。
口コミや患者の声はどこまで載せられるか

依頼も費用負担もない第三者サイトや患者のSNSの口コミは広告に当たらないこと

個人が運営するウェブサイト、SNSの個人のページ、第三者が運営する口コミサイトに患者が体験談を書くことは、医療機関が費用負担などの便宜を図って掲載を依頼しているといった誘引性が認められない限り、広告に該当しません。境目は依頼です。良い口コミを書いてほしいと患者に頼めば、有償か無償かを問わず、その体験談に誘引性が生じます。会計時にレビュー投稿をお願いするカードを渡す、投稿した患者に割引や物品を渡す、といった運用は、依頼や謝礼に当たり、投稿された口コミが医療機関の広告と評価される可能性があります。割引などの見返りを付けた口コミ依頼は、景品表示法のステルスマーケティング規制の対象にもなります。

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

参考:厚生労働省 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)

口コミランキングサイトは比較優良広告に当たり得ること

口コミの件数や評価点で医療機関を順位付けするランキングサイトは、口コミの掲載場所であると同時に比較の表示でもあります。Q&Aは、ランキングサイトを装って口コミに基づき順位を付け、特定の医療機関を強調している場合は比較優良広告に該当する可能性があると答えています。掲載料などの費用負担が口コミの掲載依頼や有利な編集と結びついていれば誘引性が生じ、順位の表示には比較優良広告の問題が重なります。

参考:厚生労働省 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)

口コミへの返信で治療効果に触れると広告に当たり得ること

地図サービスや口コミサイトで、医療機関が自院の口コミに返信する運用が広がっています。返信は医療機関の名義で公開される表示で特定性があり、読んだ人の受診につなげる意図があれば誘引性も認められるため、返信の文面は医療広告として評価される可能性があると解されます。

患者の口コミを引用し「当院の施術で効果を実感いただけて嬉しいです」と返せば、医療機関自身が治療の効果に関する体験談を自らの表示として掲載したことになり、広告可能事項以外を書くための限定解除の要件(後述)を満たしても載せられません。口コミを引用せず返信のみする場合、治療の効果に触れるには限定解除が要りますが、返信欄がその要件を満たすかどうかはその媒体によります。返信で書けるのは来院への礼、一般的な診療案内、問い合わせ先までであり、治療の効果や患者の感想を引用した部分は書かないのが安全です。生成AIで返信を量産する運用では、テンプレートの段階で法務が確認しておく必要があります。

参考:厚生労働省 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)

インフルエンサーや紹介動画に依頼した体験談は広告に当たること

インフルエンサーや動画配信者に治療を受けてもらい、その感想をSNSや動画で発信してもらう形は、依頼と利益供与があるため誘引性を満たし、投稿者が個人アカウントであっても医療広告に当たります。事例解説書第6版は、プロフィール、投稿、返信、ハッシュタグのいずれに体験談が含まれていても違反になり、個人アカウントでも特定性と誘引性を有する場合は医療広告に相当すると示しています。動画で語られた感想も同じです。施術費用の割引や無償提供も利益供与です。令和5年10月1日以降は、広告であることを隠す第三者への依頼表示が景品表示法のステルスマーケティング規制にも触れ、医療法と景品表示法の二重の規制を受けます。PR表記を付けても、医療法上の体験談の禁止は解消しません。

参考:厚生労働省 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)(令和8年3月)

参考:消費者庁 令和5年10月1日からステルスマーケティングは景品表示法違反となります(令和5年10月1日施行)

ビフォーアフター写真の禁止と掲載が認められる条件

ビフォーアフター写真は、体験談と違って、条件を満たせば載せられます。医療法施行規則1条の9第2号が禁じるのは、治療等の内容又は効果について患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告です。医療広告等ガイドラインは、通常必要とされる治療内容、費用等や、主なリスク、副作用等の詳細な説明を付した場合はこれに当たらないとしています。この説明は2号の例外の条件なので、保険診療の症例でも必要です。前提として治療効果は広告可能事項ではないため、限定解除(後述)の要件を満たすウェブサイトであることも必要です。手術前のみ、後のみの写真も、Q&Aは広告できないとしています。

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

参考:厚生労働省 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)

掲載できる条件は治療内容と費用とリスクを写真の近くに書くこと

▼ ビフォーアフター写真に併記する事項と掲載の形

確認項目求められる内容違反になる形
治療内容写真の症例で行った治療の名称と内容写真だけを示し説明が無い、または不十分
費用通常必要とされる費用。標準的な費用が示せないなら最低額から最高額の範囲料金一覧ページへのリンクだけで済ませる
期間・回数治療期間と回数記載なし
主なリスク・副作用その治療の主なリスクと副作用利点だけを大きく書き、リスクは極端に小さな文字
掲載場所写真の近く。患者にとって分かりやすい位置リンクを張った先のページにのみ掲載
写真そのもの加工・修正をしていない術前術後の写真効果があるように見せる加工・修正は虚偽広告

ガイドラインは、詳細な説明をリンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所と比べて極端に小さな文字で掲載したりする形式を採用してはならないと定めています。料金表のページを見てくださいという導線は、自社サイト内でも認められません。写真と同じ画面で、写真と同じくらい読みやすい大きさで、治療内容と費用とリスクが読めることが条件です。これに加え、肖像権及び個人情報保護の観点からも、写っている患者から掲載する範囲を示した書面の同意を得ておくことも必要です。

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

SNSではプロフィールと投稿と返信で一体的に説明すること

ここでいうSNSは自院のアカウントでの通常の投稿です。費用を払って配信するSNS広告は限定解除(後述)の対象外と考えられ、説明を添えても載せられません。事例解説書第6版は、プロフィール、投稿、返信、またはこれらの組み合わせによって、画像の付近に治療等の内容と費用、主なリスク・副作用の情報提供が一体的かつ一覧性をもってなされていなければ違反になると整理しました。認められるのは、プロフィール欄や1つの投稿で説明を完結させる形、説明を載せた投稿を固定してその場所を明示する形、写真の近傍の返信で一体的に説明する形です。「詳細はホームページで」と返信するだけの形や、費用はこのSNS、リスクは別のSNSと情報を分散させる形は認められません。投稿を見た人が、その画面から離れずに治療内容と費用とリスクを確認できるかが判断の目安です。

参考:厚生労働省 医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)(令和8年3月)

加工や修正をした術前術後の写真は虚偽広告として直罰の対象になること

説明を付けた写真でも、写真そのものに手を加えていれば別の問題になります。あたかも効果があるかのように見せるため加工・修正した術前術後の写真等は、医療広告等ガイドラインが虚偽広告の具体例として挙げているものです。虚偽広告は医療法6条の5第1項が直接禁じており、行政の命令を経ずに87条1号の罰則の対象になる、いわゆる直罰の規定です。明るさや角度をそろえる調整と効果を強調する修正の境目は判断が分かれ得ます。撮影条件を統一し、加工を一切しないのが最も安全な運用です。

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

体験談やビフォーアフターの違反で受ける行政指導と罰則

実際の患者の体験談やビフォーアフター写真の違反は、載せた時点で刑罰が科されるものではなく、通常はまず都道府県知事等による調査と行政指導から始まります。従わない場合に医療法6条の8第2項の中止命令や是正命令が出され、その命令に違反したときに、87条3号により六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金が科される、という流れです。中止命令や是正命令は行政指導を経ずに出されることもありますが、罰則は命令違反に対して働く二段構えです。

これに対し、医療法6条の5第1項の禁止する虚偽広告は直罰の対象です(87条1号)。架空の患者の声やサクラ投稿のように内容が虚偽の体験談のほか、加工した術前術後の写真や、根拠を示さない満足度の数値は虚偽広告に当たる可能性があります。

なお、刑名は令和7年6月1日施行の刑法改正で拘禁刑に変わっています。

参考:e-Gov法令検索 医療法(昭和23年法律第205号)(令和8年法律第31号による改正まで反映・2026年6月5日施行)

体験談やビフォーアフターの違反で受ける行政指導と罰則

命令を受けた後の医療機関名の公表と開設許可の取消し

▼ 医療広告の違反に対する措置と罰則

段階根拠内容
報告命令・立入検査医療法6条の8第1項広告を行った者に必要な報告を命じ、事務所に立ち入って広告に関する文書等を検査できる
報告を怠る・虚偽報告・検査拒否医療法89条2号二十万円以下の罰金
中止命令・是正命令医療法6条の8第2項期限を定めて広告の中止または内容の是正を命じる
命令違反医療法87条3号六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金
虚偽広告医療法6条の5第1項、87条1号命令を経ずに六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金
公表医療広告等ガイドライン第5の4(4)命令や刑事告発を実施した際は原則として事例を公表し、患者等に注意喚起する

命令が出た後の重さは罰金額だけではありません。ガイドラインは、命令や刑事告発等を実施した際には原則として事例を公表するとしており、医療機関名の公表の影響は罰金より大きい場合が多いでしょう。実施手順書は、悪質な違反広告については医療法28条の管理者変更命令や29条1項5号の開設許可の取消し、閉鎖命令も検討し得るとしています。

参考:e-Gov法令検索 医療法(昭和23年法律第205号)(令和8年法律第31号による改正まで反映・2026年6月5日施行)

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

行政指導から是正命令までの標準的な期限

厚生労働省は令和6年8月、指導が1年以上続いても改善されない事例をなくすため、自治体が指導・措置の手順書を作るときのひな型を示しました。期限は自治体が個別に設定しますが、ひな型の目安は残された時間を読むうえで参考になります。

ひな型では、行政が違反を把握してから(覚知)2〜3週間以内を目途に任意の調査で違反かどうかを確認し、口頭または書面で改善を依頼します。改善依頼から2か月以内を目途に改善報告を求め、行政指導による改善は覚知から2〜3か月以内に完了させることが目安です。是正されなければ、2週間程度の弁明の機会を与えたうえで、覚知から6か月以内を目途に是正命令に移ります。それでも従わなければ告発を検討し、全体を1年以内に終えるのが望ましいとされています。ひな型は自治体側の全体の目安で、個別の期限は依頼文書に書かれた日付が優先します。届いたらその日のうちに該当の掲載を止め、共通サイトや他院の同種掲載も見直し、期限内に報告できるよう動いてください。

参考:厚生労働省医政局総務課 医療広告ガイドラインに基づく標準的な対応期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型(令和6年8月23日公表)

参考:厚生労働省 医療機関ネットパトロール

広告可能事項と限定解除の4要件

医療法6条の5第3項は、広告できる事項を法律と告示に列挙されたものに限定しています。治療の効果は含まれないため、ビフォーアフター写真や、広告可能事項にない自由診療の説明をウェブサイトに載せるには、医療法施行規則1条の9の2の4要件を満たして限定を解除する必要があります。次の表の要件3と要件4は自由診療の場合に限って求められますが、写真への治療内容・費用・リスクの併記は1条の9第2号の例外の条件なので、保険診療でも省けません。

▼ 広告可能事項の限定解除の4要件

要件内容満たさない例
1患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であることバナー広告、検索連動型の表示
2問い合わせ先の記載など、患者等が容易に照会できるよう明示すること連絡先の記載が無い
3自由診療について、通常必要とされる治療内容、費用等を情報提供すること治療名と最低金額だけ
4自由診療について、主なリスク、副作用等を情報提供することリスクを書かない

限定解除の要件を満たしても体験談の禁止は解除されません。要件の細かな判断と記載不足の事例は次の記事で扱っています。

参考:e-Gov法令検索 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第50号)(2026年9月23日時点の現行)

医療広告ガイドラインの体験談に関するよくある質問

医療広告ガイドラインの体験談に関するよくある質問

患者が自分のSNSに書いた感想を医療機関の公式アカウントでリポストしてよいですか

避けるべきです。患者のアカウントにある限り広告ではありませんが、公式アカウントがリポストや引用で自らのタイムラインに載せると、医療機関の表示として特定性と誘引性を備え、体験談の広告に当たる可能性があると解されます。感想の本文を自院の発信に取り込まない運用が無難です。

アンケートで集めた満足度98パーセントのような数値は載せてよいですか

根拠と調査方法を示せない数値は載せられません。医療広告等ガイドラインは、根拠や調査方法の提示がない満足度の数値を虚偽広告として取り扱うとし、限られた患者を対象にした調査や謝金で誘導した調査の結果も公正なデータとはいえないとしています。根拠を示せる場合でも、満足度の調査結果それ自体は広告可能事項ではないため、載せられるのは限定解除の要件を満たすウェブサイトに限られ、誇大広告にならない表現にとどめる必要があります。

参考:厚生労働省 医療広告等ガイドラインに関するQ&A(令和8年3月改定)

医療機器やサプリメントの利用者の体験談も医療広告ガイドラインの対象ですか

対象になる法律が変わります。医療広告ガイドラインが規制するのは医業や病院・診療所に関する広告で、医療機器や医薬品そのものの広告は医薬品医療機器等法66条1項と68条、健康食品やサプリメントの広告は健康増進法や景品表示法の規制を受けます。サプリメントの体験談でも、病気の治療や予防への効果に触れれば未承認医薬品の広告として医薬品医療機器等法68条に触れ、医療機器・医薬品の広告は医薬品等適正広告基準で体験談の使い方が制限されています。

参考:厚生労働省 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)(令和8年3月30日最終改正)

保健所から体験談について改善依頼が届いたら、まず何をすべきですか

依頼文書に示された対応期限と指摘箇所を確認し、該当する掲載を先に止めることです。遅れると報告命令や立入検査、是正命令に進みます。制作を外部に委託していても、実施手順書は医療機関も広告の内容に責任を持つべきものとしており、制作会社に任せたままにはできません。指摘箇所以外に同じ形の掲載が無いかを同時に洗い出し、是正の範囲に迷う場合は期限内に専門家へ相談することをお勧めします。

参考:厚生労働省医政局総務課 医療広告ガイドラインに基づく標準的な対応期限も含めた指導・措置等の実施手順書のひな型(令和6年8月23日公表)

まとめ:体験談や口コミは載せる前に法務チェックを

患者の主観や伝聞に基づく治療の体験談は、控えめな表現に直しても、医療機関が誘引の目的で広告に載せる限り禁止されます。第三者の口コミサイトや患者個人のSNSは規制の外にありますが、依頼や謝礼、掲載に結びつく費用負担があれば医療機関の広告とされ、規制対象になります。ビフォーアフター写真は、限定解除の要件を満たすウェブサイトで、治療内容と費用とリスクを写真の近くに一体的に書き、写っている患者から掲載範囲を示した同意を得ていれば掲載できますが、加工した写真は虚偽広告として直罰の対象です。

当事務所は、社内で作った口コミ運用ルール案のレビュー、複数院・複数媒体にわたる既存掲載の一括点検、保健所から改善依頼や報告命令を受けた後の是正範囲の判断まで、病院・クリニックの広告に関する企業法務を扱っています。新しいページや投稿を出す前と、口コミ返信のテンプレートを作る段階でご相談ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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