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風評被害対策

人の写真を勝手に載せると罪になる?取りうる法的措置も解説

風評被害対策

最近では、誰もが気軽に写真や動画をSNSに投稿できるようになりました。しかし、その手軽さゆえに、他人の写真を無断でアップロードしてしまうケースも少なくありません。

知らないうちに自分の写真がSNSにアップロードされていたとしても、泣き寝入りする必要はありません。

本記事では、他人の写真を勝手にSNSに載せる行為は、「肖像権侵害」に該当する違法行為となる根拠を解説します。加えて、「肖像権」「プライバシー権」「パブリシティ権」について詳しく説明し、写真が無断で使用された場合に対応可能な法的措置を、具体的な事例や判例を交えながら紹介します。

SNSに人の写真を勝手に載せると罪になるのか

SNSに人の写真を勝手に載せると罪になるのか

まず結論からいうと、人の写真を勝手にSNSに載せるだけでは、肖像権侵害には問われません。肖像権は、個人が自分の肖像をコントロールする権利ですが、肖像権侵害は刑法上の犯罪には該当しないからです。

そのため、他人の写真を無断でSNSに投稿したとしても、それだけで逮捕されたり罰金を科せられたりすることはありません。ただし、写真の投稿に加えて、以下のような行為があった場合は、罪に問われる可能性があります。

  • 名誉毀損罪:写真に写っている人物の社会的評価を低下させるような虚偽の情報を書き添えた場合
  • 侮辱罪:写真に写っている人物の尊厳を傷つけるような侮辱的な言葉を書き添えた場合

これらの罪に問われた場合、刑事罰として懲役や罰金が科せられるだけでなく、民事訴訟で損害賠償を請求される可能性もあります。

人の写真を勝手に載せた場合に関わる3つの権利

SNSでの写真投稿が日常化した現代において、他人の写真を無断でアップロードする行為は、思わぬトラブルに発展する可能性があります。

特に、肖像権、プライバシー権、パブリシティ権の3つの権利を侵害する恐れがあり、法的責任を問われるケースも少なくありません。これらの権利について詳しく解説します。

肖像権

肖像権とは、自分の肖像(容姿)を、他人から勝手に撮影、使用、公開されない権利をいいます。プライバシー権の一部として保護されることもあります。

肖像権は憲法で保障された「幸福追求権」や「人格権」の一部として解釈されており、法律で明文化はされていませんが、判例を通じて法的に保護されるべきと認められている権利です。

肖像権は、個人の尊厳やプライバシーを守る上で重要な権利であり、無断で他人の写真を撮影したり、SNSなどに投稿したりする行為は、肖像権侵害にあたる可能性があります。肖像権への配慮は、円滑な人間関係を築く上でも欠かせない要素です。

プライバシー権

プライバシー権とは、私的な事柄を他人に勝手に公開されない権利、そして自己に関する情報を自分で管理・コントロールする権利です。

具体的には、以下のような権利が含まれます。

  • 私生活の秘密を守る権利:個人の私生活に関する情報(氏名、住所、家族構成、交友関係、病歴など)を、本人の同意なしに公開されない権利
  • 自己情報をコントロールする権利:自分の個人情報がどのように収集、利用、開示されるかを自分で決定する権利
  • 孤独や静寂を保つ権利:他人から干渉されずに、一人で過ごす時間や空間を確保する権利

プライバシー権は、個人の尊厳や人格を守る上で欠かせない権利であり、憲法で保障された「幸福追求権」の一部として解釈されています。

現代社会では、インターネットやSNSの普及により、個人情報の取り扱いがますます重要になっています。プライバシー権を尊重し、適切な情報管理を行うことは、個人だけでなく社会全体にとっても重要な課題です。

パブリシティ権

パブリシティ権とは、著名人や芸能人、スポーツ選手など、その容姿や名前が持つ知名度や人気を利用して経済的な利益を得る権利です。具体的には、以下のような権利が含まれます。

  • 肖像の商業利用をコントロールする権利:自分の写真や名前が商品や広告に使われる場合、その利用方法や範囲を自分で決定する権利
  • 肖像の不正利用を防ぐ権利:自分の写真や名前が、許可なく商業的に利用されるのを防ぐ権利
  • 肖像の価値を守る権利:自分の写真や名前の持つ商業的価値を保護する権利

パブリシティ権は、主に著名人や芸能人など、その肖像に経済的な価値がある人に認められる権利です。一般の方の場合、基本的にパブリシティ権は認められず、写真の無断使用の問題は肖像権とプライバシー権が中心となります。

例えば、有名人の来店を無断で宣伝に利用したり、芸能人の写真を勝手に商品のパッケージに利用したりする行為は、パブリシティ権侵害にあたる可能性があります。

パブリシティ権は、著名人の経済活動を保護する上で重要な役割を果たしています。パブリシティ権については、以下のページでも詳しく解説しています。

関連記事:パブリシティ権とは?肖像権との違いや権利侵害になる場面を解説

写真の無断使用が権利侵害になる4つの基準

写真の無断使用が権利侵害になる4つの基準

肖像権は法律で明文化されていないため、明確な判断基準がありません。

しかし、過去の判例などから、主に次の4つが基準とされるケースが多くなっています。

撮影した写真から個人の特定ができるかどうか

撮影した写真や動画を公開する際、写っている人物が特定できるかどうかは、肖像権侵害の判断基準の一つとなります。顔にピントが合っていてはっきりと認識できる、写真や動画のメインの被写体として大きく写っているなど、誰であるか特定できる場合は肖像権侵害となる可能性があります。

たとえモザイクなどの加工がされていても、個人が特定できる状態で撮影されている場合には肖像権侵害となる可能性があります。

一方、写り込みが小さく、ピントがぼけている、または大勢の中に紛れていて個人が特定できない場合は、肖像権侵害とはなりません。メインの被写体とは別に、偶然写り込んでしまい個人が特定できない場合も同様です。

公開された先の拡散性が高いかどうか

写真や動画が公開された場所の拡散性も、肖像権侵害の判断基準の一つとなります。

X(旧Twitter)やInstagramなどのSNS、またはインターネット掲示板など、不特定多数が閲覧できる場所に無断で投稿された場合は、拡散性が高いと判断され、肖像権侵害と認められる可能性が高くなります。

一方、スマートフォン内の写真や動画を友人に見せる、家族や親しい友人など少人数に見せる場合は、拡散性が低いと判断され肖像権侵害とは認められません。誰もが閲覧できるSNSでの公開は、拡散性が非常に高いため、肖像権侵害が成立しやすくなります。

撮影した場所が公共の場かどうか

撮影された場所が公共の場か私的な領域かも、肖像権等の侵害の判断において重要な要素です。

自宅、ホテルの個室、病室、葬儀場など、他人が通常立ち入らない私的な領域で撮影された場合は、肖像権等の侵害と認められる可能性が高くなります。これらの場所は、個人のプライバシーが強く保護されるべき空間であり、無断での撮影は、個人の尊厳を傷つける行為とみなされるからです。

一方、道路、公園、イベント会場など、不特定多数の人が自由に出入りできる公共の場で撮影された場合は、肖像権等の侵害が認められない可能性が高くなります。これらの場所は、そもそも人の目に触れる可能性が高い空間であると考えられるからです。

撮影場所が公衆の場か私的な領域かは、権利侵害の判断において重要な要素となりますが、それだけで判断が確定するわけではありません。撮影された状況や写真の公開方法など、総合的な状況を考慮して判断されます。

無断での撮影・公開であるかどうか

肖像権は、自分の肖像を無断で撮影されたり、公開されたりする行為を防ぐ権利です。そのため、撮影された本人の許可なく写真や動画を公開した場合は、肖像権侵害となる可能性があります。一方で、事前に本人から撮影と公開の許可を得ている場合は、肖像権侵害にはなりません。

撮影と公開は別々の行為であり、それぞれについて許可を得るのが重要です。

例えば、撮影については許可したものの、公開については許可していない場合、公開した時点で肖像権侵害となる可能性があります。

「撮影は許可したけど、公開されるとは思っていなかった」、そんなケースも肖像権侵害にあたります。撮影の許可と公開の許可は別物であり、たとえ撮影時に公開の意図がなかったとしても、後から公開する場合は改めて許可を得なければなりません。

ただし、スポーツ大会などの撮影が想定される状況で、本人が撮影に協力したり、撮影を拒否しなかったりした場合、黙示的に撮影を承諾したと解釈される場合があります。このような場合は、肖像権侵害とはみなされない可能性があります。

肖像権侵害となってしまうのを避けるためには、撮影と公開の両方について、事前に本人の承諾を取っておくことが必要です。

写真が勝手に公開された事例・判例

近年、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSで、写真や動画の無断使用によるトラブルが急増しています。実際に裁判で原告の主張が認められた事例・判例を紹介します。

X(旧Twitter)で損害賠償が認められた例

X(旧Twitter)上で、プライベートで撮影された緊縛状態の写真が無断で複製され、本人の許可なく投稿された事件がありました。

この事件で原告は、自身の著作権、肖像権、プライバシー権が侵害されたと主張しました。裁判所は、被害者の主張を認め、プライバシー権などの侵害であるとして、加害者に対して合計47万1,500円の損害賠償を命じています(東京地裁平成30年9月27日判決)。

この判決は、X(旧Twitter)のようなSNSでの写真や動画の無断使用が、肖像権やプライバシー権の侵害として法的責任を問われる可能性を示しています。

X(旧Twitter)で情報開示請求が認められた例

新潟地裁で、X(旧Twitter)における情報開示請求に関する興味深い判決が下されています(新潟地裁平成28年9月30日判決)。

この事件では、原告夫婦の子どもの写真が、虚偽の内容とともに無断でX(旧Twitter)に投稿されました。原告夫婦はX(旧Twitter)社から投稿者のIPアドレスを開示してもらい、それを元にプロバイダに対して投稿者の情報開示を求めたのです。

裁判所は、「肖像権が侵害されていることは明らか」として、プロバイダに投稿者の情報開示を命じました。この判決は、X(旧Twitter)のようなSNSでの肖像権侵害に対して、法的措置を取る際の重要な判断材料となります。

Instagram・YouTube等での肖像権侵害

肖像権侵害はその他にもさまざまな媒体で発生する可能性があります。

Instagramでは、顔写真が無断で投稿されるケースが後を絶ちません。特に、本人が公開している写真を無断転載されるケースも多く見られます。自身の顔写真が勝手に使用されるのを防ぐためには、Instagramのプライバシー設定を見直すなど、適切な対策を講じておきましょう。

同様に、YouTubeやブログ・掲示板などでも、個人の顔がはっきりとわかる動画が無断でアップロードされるケースがあります。個人の顔や姿は、通常、不特定多数に見られたくないプライベートな情報であるため、無断で公開する行為は肖像権侵害にあたります。

人の写真を勝手に載せた場合の法的責任

勝手に写真を公開された場合、投稿者に対して法的責任を追及することが可能です。ここでは、SNS等での写真無断掲載に対する法的措置について詳しく解説します。

仮処分命令の申立て

許可なく撮影された写真がネット上に公開された場合、早急に対処する必要があります。このような場合、仮処分命令の申立てによる法的手続を利用できます。仮処分とは、本訴訟(損害賠償請求訴訟など)の前に、緊急を要する場合について一時的に権利関係を定める裁判所の決定です。

肖像権侵害の場合、写真がネット上に公開されることで取り返しのつかないダメージを受ける可能性があります。そこで、仮処分命令の申立てを行うことで、本訴の判決が出る前に裁判所に写真公開の差し止めを命じてもらうことが可能です。

民事責任上の賠償金・慰謝料の請求

写真をネット上に掲載されることにより肖像権侵害を受けた場合、投稿者に対して民事上の責任を追求し、慰謝料などを含む損害賠償を請求できます。

肖像権侵害による損害は、主に精神的な苦痛に対する「慰謝料」として請求されます。慰謝料の金額は、侵害の程度や精神的苦痛の大きさなどによって異なりますが、一般的には数万円から数十万円程度が相場です。写真の公開だけではなく誹謗中傷や侮辱的な内容が含まれている場合は、慰謝料の金額がさらに高額になる可能性があります。

誹謗中傷を伴う場合は刑事責任の追求も可能

SNSでの写真無断掲載は、肖像権侵害における民事上の問題にとどまらず、場合によっては刑事責任も問われる可能性があります。写真や投稿内容に誹謗中傷や侮辱的な内容が含まれている場合、侮辱罪や名誉毀損罪に該当する可能性があります。

侮辱罪は、公然と人を侮辱した場合に成立する犯罪です。周囲からの評価を下げたり、公然と侮辱したりすると、侮辱罪に該当する可能性があります。

名誉毀損罪は、公然と事実を摘示し、人の社会的評価を低下させた場合に成立する犯罪です。例えば、虚偽の内容を写真に添えて投稿し、その人の評判を落とす行為は、多くの場合、名誉毀損罪に該当します。刑事責任を追求する場合、被害者は警察に被害届や告訴状の提出が必要です。

警察は捜査を行い、証拠が十分であれば検察に事件を送致します。検察は、起訴するかどうかを判断し、起訴された場合は裁判が行われます。裁判により、刑事罰が科せられる場合があります。

写真を勝手に載せられた場合の対処法

もし自分や身近な人たちが無断で公開される被害に遭ったら、適切に対処することが重要です。ここでは「警察への相談」「写真の削除依頼を請求する」「弁護士へ相談する」の3つの対処法について詳しく説明します。

警察への相談

肖像権侵害は、プライバシー権の問題であり、基本的に犯罪ではありません。そのため、肖像権侵害のみを理由に警察に相談しても、対応してもらえない可能性が高いのが現状です。しかし、脅迫や名誉毀損にあたるメッセージが添えられていたり、盗撮やストーカー、わいせつ物頒布、リベンジポルノなどの犯罪行為が伴っている場合、警察が対応してくれる可能性は高まります。

例えば以下の場合です。

  • 写真とともに「殺す」「家に火をつける」など、脅迫的なメッセージが送られてきた場合
  • 写真とともに「泥棒」「詐欺師」など、虚偽の事実を拡散された場合
  • 盗撮された写真や動画が公開された場合
  • わいせつな画像が同意なく公開された場合

これらの犯罪行為が疑われる場合は、ためらわずに警察に相談してください。

警察は被害状況を聞き取り、証拠となる資料があれば確認し、捜査を開始するかどうかを判断します。

写真の削除依頼を請求する

肖像権侵害を受けた場合、まず試みるべきは、写真が掲載された媒体の運営会社に削除依頼の請求を行うことです。X(旧Twitter)、Instagram、FacebookなどのSNSやインターネット掲示板の多くは、肖像権侵害に関する削除依頼を申請できる専用のフォームが設けられています。これらのフォームを利用して、速やかに削除を依頼してください。

削除依頼を出す際は、以下の点に注意してください。

  • 具体的な写真や動画のURLを記載する
  • 肖像権侵害の事実を具体的に説明する
  • 身分証明書などの提出

しかし、残念ながら、専用フォームからの削除申請だけでは、必ずしも写真や動画が削除されるとは限りません。運営会社によっては、対応が遅かったり、削除に応じてもらえなかったりするケースもあります。そのような場合は、法的措置の検討が必要です。

具体的には、裁判所を通じて発信者情報開示請求を行い、投稿者の情報を入手した上で、投稿者に対して直接削除を要求したり、損害賠償請求訴訟を提起したりする方法があります。以下の記事でも詳しく解説しています。

関連記事:書き込みした犯人を特定する「発信者情報開示請求」とは?

弁護士へ相談する

法的措置を検討する際に、実際に公開された写真が権利の侵害に該当するかどうか、まずは弁護士へ相談することをおすすめします。

  • 実際に公開された写真が権利侵害に該当するのか
  • 削除依頼や損害賠償請求を行うべきか
  • 仮処分などの法的手続きが必要か

これらの判断は、法律の専門知識が必要となるため、弁護士に相談することで適切なアドバイスやサポートを受けられます。

また、弁護士に依頼すれば、相手方との交渉をスムーズに進められます。弁護士が間に入ると、相手方もより真剣に対応してくれる可能性が高まります。費用はかかるものの、弁護士を頼るメリットは多いため、ぜひ検討してみてください。

まとめ:写真の無断掲載は犯罪ではないが民事責任の追求が可能

SNSでの写真無断掲載は、肖像権、プライバシー権などの人格権を侵害する違法行為です。

原則として、刑事罰の対象にはなりませんが、場合によっては侮辱罪や名誉毀損罪が成立し、刑事責任を問われる可能性もあります。また、民事上では、損害賠償請求や不当な行為を止める「差止請求」といった法的措置の行使も可能です。

写真が無断で公開された場合は、まず以下の対処が重要です。

  • 掲載された媒体の運営会社に削除を依頼する
  • 弁護士に相談し、法的措置を検討する

特に弁護士への相談は、適切な対応策を判断し、自分や身近な人たちの権利を守るために不可欠です。泣き寝入りせず、専門家の力を借りて、毅然とした態度で対応しましょう。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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