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SNSでの投資情報発信の注意点とは?風説の流布や名誉毀損、相場操縦になる要件を解説

SNSでの投資情報発信の注意点とは?風説の流布や名誉毀損、相場操縦になる要件を解説

今や、SNSを通して、情報を発信・収集するのは当たり前になりました。特に投資分野ではSNSの即時性と相性がいいこともあり、頻繁に利用されています。SNSでは、誰もが気軽に情報発信をすることができますが、実は、投資情報を発信する場合には、その内容が風説の流布や名誉毀損、相場操縦などに該当しないように注意する必要があります。

そこで、本記事では、投資情報を発信する際に注意しなければならない法律上の問題点について詳しく説明します。

SNSで投資情報の発信をする際の法的問題点

SNS等で投資に関する情報を発信することは、さまざまな方面に影響を及ぼすことになります。

例えば、投資情報がSNSで共有されることで、個人投資家はその情報を基に投資判断を行います。誤った情報や風説が流れることで、投資家が損失を被る可能性があります。また、投資に関する情報がSNSで拡散されることで、企業の株価や評価に影響を与えることがあります。

そのため、投資情報の発信に関しては、刑法、金融商品取引法及び不正競争防止法の規制に違反しないように注意をする必要があります。特に、SNSを利用して投資情報を発信する際には、情報の発信の手軽さやSNSの拡散力から、瞬く間に多くの人に投資情報が広がってしまう可能性もありますので、注意が必要です。

SNSでの投資情報発信が名誉毀損・信用毀損になるケース

SNSで投資情報を発信した場合、投資情報の内容によっては、特定の企業の名誉を傷付けたり、評価を下げてしまうケースも考えられます。このようなケースでは、名誉毀損罪(刑法第230条第1項)信用毀損罪(刑法第233条)に該当する可能性があります。

関連記事:法人でも損害賠償請求は可能か?名誉毀損の判例を元に解説

名誉毀損と判断される要件

名誉毀損罪については、刑法第230条第1項で、以下のように規定されています。

(名誉毀き損)
第二百三十条 公然と事実を摘示し、人の名誉を毀き損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

e-GOV法令検索|刑法

つまり、名誉毀損罪の要件は、以下です。

  • 公然と
  • 事実を適示し
  • 人の名誉を毀損

ただ、刑法第230条の2第1項により、事実の内容に、公共性、公益目的及び真実性が認められるようなケースでは、違法性が阻却されることになります。

名誉毀損罪が成立する場合には、3年以下の懲役若しくは禁錮、又は、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

信用毀損と判断される要件

信用毀損罪については、刑法第233条で、以下のように規定されています。

(信用毀損及び業務妨害)
第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

e-GOV法令検索|刑法

つまり、信用毀損罪の要件は、以下です。

  • 虚偽の風説を流布又は偽計を用いて
  • 人の信用を毀損

信用毀損罪の「信用」とは、経済的側面における人の評価をいい、支払意思についての社会的信頼や人の支払能力だけではなく、商品の品質などに対する社会的信頼も含まれるものと解されています。

信用毀損罪が成立する場合には、3年以下の懲役、又は、50万円以下の罰金に処せられる可能性があります。

SNSでの投資情報発信が風説の流布になるケース

SNSでの投資情報発信が風説の流布になるケース

前述のように、虚偽の風説を流布し、人の信用を毀損する行為には、刑法上、信用毀損罪が成立することになりますが、金融商品取引法においても、風説の流布が規制されています。

風説の流布とは

金融商品取引法第158条では、以下のように規定されています。

(風説の流布、偽計、暴行又は脅迫の禁止)
第百五十八条 何人も、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくはデリバティブ取引等のため、又は有価証券等(有価証券若しくはオプション又はデリバティブ取引に係る金融商品(有価証券を除く。)若しくは金融指標をいう。第百六十八条第一項、第百七十三条第一項及び第百九十七条第二項第一号において同じ。)の相場の変動を図る目的をもつて、風説を流布し、偽計を用い、又は暴行若しくは脅迫をしてはならない。

e-GOV法令検索|金融商品引法

有価証券の募集、売買等のため、もしくは相場の変動を図る目的をもって、風説(うわさ、合理的な根拠のない風評等)を流布(不特定又は多数の者に伝達)することは、「風説の流布」として、金融商品取引法第158 条で禁止されます。

この規定が適用された事例としては以下のようなものがあります。

自ら保有する銘柄の株式を高値で売却するため、インターネット上の電子掲示板などに虚偽の情報を掲載し、不特定多数の者が閲覧できる状態に置き、それを見た投資家が同株式を買い付けることにより株価が上昇したところで、同株式を売却して不当な利益を得る、などが該当します。

このケースではインターネット上の電子掲示板などでの情報発信ですが、SNSで投資情報を発信するケースでも、同様に「風説の流布」に該当するものと考えられます。例えば、SNSで、噂レベルの根拠に基づき、「○○株式会社は粉飾決算をしてるらしい……。そろそろ売り時かな」と投稿することなどが考えられます。

また、有価証券の募集、売買等のため、もしくは相場の変動を図る目的をもって、他人に錯誤を生じさせる詐欺的ないし不公正な策略、手段を用いることは、「偽計」として、金融商品取引法第158 条で禁止されます。

この規定が適用された事例としては、自らが支配するファンドが引き受ける新株を高値で売却するため、上場会社に、当該ファンドを引受先として第三者割当増資を行わせるとともに、当該増資により払い込まれた株式払込金を直ちに社外に流出させたにもかかわらず、当該上場会社に資本増強が図られたとの虚偽の公表を行わせ、株価を上昇させた上で、取得した株式を売却して利益を得たという事例がありました。

風説の流布と判断された場合の罰則

SNSでの情報発信が、風説の流布と判断された場合には、以下の罰則があります。

まず、刑事罰として、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科される可能性があります(金融商品取引法第197 条第1項第5号)。

次に、課徴金の支払いを命じられる可能性があります。

違反行為に対する課徴金額は、違反行為による利益相当額を基準とします(他の違反類型でも同様)。風説の流布に該当するケースでは、違反行為終了時点で自己の計算において生じている売り(買い)ポジションについて、当該ポジションに係る売付け等(買付け等)の価額と当該ポジションを違反行為後1か月間の最安値(最高値)で評価した価額との差額等が課徴金相当額と判断されることが考えられます(金融商品取引法第173 条)。

SNSでの投資情報発信が風説の流布になるケース

SNSでの投資情報発信が風説の流布になるケース

相場操縦とは、市場において相場を人為的に変動させるにもかかわらず、その相場があたかも自然の需給によって形成されたものであるかのように他人を誤解させるなどによって自己の利益を図ろうとする行為のことをいいます。

このような行為は、公正な価格形成を阻害し、投資者に不測の損害を与えることとなるため、金融商品取引法において禁止されています。

相場操縦と判断される要件

相場操縦については、以下の金融商品取引法第159条で規定されています。

(相場操縦行為等の禁止)
第百五十九条 何人も、有価証券の売買(金融商品取引所が上場する有価証券、店頭売買有価証券又は取扱有価証券の売買に限る。以下この条において同じ。)、市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引(金融商品取引所が上場する金融商品、店頭売買有価証券、取扱有価証券(これらの価格又は利率等に基づき算出される金融指標を含む。)又は金融商品取引所が上場する金融指標に係るものに限る。以下この条において同じ。)のうちいずれかの取引が繁盛に行われていると他人に誤解させる目的その他のこれらの取引の状況に関し他人に誤解を生じさせる目的をもつて、次に掲げる行為をしてはならない。
一~九 (略)
2 何人も、有価証券の売買、市場デリバティブ取引又は店頭デリバティブ取引(以下この条において「有価証券売買等」という。)のうちいずれかの取引を誘引する目的をもつて、次に掲げる行為をしてはならない。
一 (略)
二 取引所金融商品市場における上場金融商品等又は店頭売買有価証券市場における店頭売買有価証券の相場が自己又は他人の操作によつて変動するべき旨を流布すること。
三 有価証券売買等を行うにつき、重要な事項について虚偽であり、又は誤解を生じさせるべき表示を故意にすること。
3 (略)

金融商品取引法 | e-Gov法令検索

この規定が適用された事例としては、自ら保有する銘柄の株式の売買に誘引する目的で、複数の証券会社を介して連続した高指値注文を行って株価を引き上げるとともに、下値に買い注文を大量に入れるなどの方法により、同株式の売買が繁盛であると誤解させ、これによって誘引された投資家が同株式を買い付けることにより株価がさらに上昇したところで、同株式を売却して不当な利益を得たという事例がありました。

なお、以下のような行為は、株価に影轡を与え、変動操作取引とみなされるおそれがあることから、注意が必要です。

  • 買い上がり買付け:例えば、場に発注された売り注文に対して、高値の買い注文を連続して発注し、それら売り注文をすべて約定させながら、株価を引き上げる行為
  • 下値支え:例えば、現在値より下値に比較的数量の多い買い注文を発注したり、実際に買い付けたりすることにより、株価が下落しないようにする行為
  • 終値関与:例えば取引終了時刻の直前に、高値で買い注文(または、安値で売り注文)を発注して約定させ、終値の形成に関与する行為
  • 見せ玉(みせぎょく) :例えば板情報画面に表示される価格帯に、約定させる意図のない、優先順位が低い買い注文をまとまった数量で発注する行為

例えば、SNSで、「○○株式会社の株式を○○ さんが売るから株価暴落確定」と投稿することなどが考えられます。

相場操縦と判断された場合の罰則

まず、刑事罰として、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金に処され、又はこれを併科される可能性があります(金融商品取引法第197 条第1項第5号)。次に、財産上の利益を得る目的を持って、相場操縦によって、有価証券等の相場を変動又は固定させた場合、10年以下の懲役及び3000万円以下の罰金に処せられる可能性があります(金融商品取引法第197条第2項)。

また、法人の場合には、相場操縦を行った法人関係者(代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者)個人だけでなく、その法人に対して7億円以下の罰金刑が科せられる可能性があります(金融商品取引法第207条第1項第1号)。

名誉毀損・風説の流布・相場操縦の要件を比較

ここまで解説した、SNSでの投資情報発信が名誉毀損・風説の流布・相場操縦となる要件をまとめると、以下の表のように整理することができます。

名誉毀損風説の流布相場操縦
主体要件なしなしなし
公然性必要必要(=流布)必要(=流布)
事実の摘示必要不要(噂でもよい)不要(噂でもよい)
社会的評価の低下必要不要不要
投稿内容が虚偽であること不要(前段の社会的評価の低下があればよい)合理的な根拠を欠く程度には必要合理的な根拠を欠く程度、他人を誤解させる程度には必要
投稿の目的原則不要(ただし、公益目的が認められる+摘示事実が真実と信じるに当たり相当な理由がある場合のみ違法性が阻却される)必要有価証券の募集、売買等のため、もしくは相場の変動を図る目的必要他人を有価証券の売買に誘引する目的
民事上の損害賠償請求されうるされないされない
刑事罰のおそれありありあり

まとめ:投資情報発信には弁護士のリーガルチェックを

ここでは、SNSを利用した投資に関する情報の発信の注意点について説明をしました。SNSでは、投資に関する情報を簡単に発信することができますが、簡単に発信できるがゆえに、刑法や金融商品取引法などの法律に違反してしまうケースもあります。投資情報を発信する際には、名誉毀損や風評の流布、相場操縦などに該当しないように慎重に行う必要があります。

SNS等を利用した投資情報の発信についてのトラブルは、弁護士に相談をすることをおすすめします。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所です。近年、SNSを通じた誹謗中傷は大きな問題となっており、リーガルチェックの必要性はますます増加しています。特に投資情報の発信については注意が必要です。当事務所は様々な法律の規制を踏まえた上で、現に開始したビジネス、開始しようとしたビジネスに関する法的リスクを分析し、可能な限りビジネスを止めることなく適法化を図ります。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:IT・ベンチャーの企業法務

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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