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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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ノルウェー王国の法律の全体像とその概要を弁護士が解説

ノルウェー王国は、北欧に位置する豊かな自然と高い生活水準を誇る国であり、その経済は石油・ガス、水力発電といったエネルギー産業を基盤としつつ、近年では製造業やAI分野への投資も活発化しています。国際通貨基金(IMF)のデータによると、ノルウェーは2025年に約89,690米ドルのGDP per capitaを予測されており、これは世界でも有数の高所得国となります。また、国際エネルギー機関(IEA)の報告によれば、水力発電の豊富な供給がエネルギー集約型産業の発展を支え、高い電化率と低い温室効果ガス排出を実現しています。AI準備度指数(AI Preparedness Index)でも0.71と高い評価を受けており、技術革新への意欲が伺えます。

法制度の面では、ノルウェーは大陸法系の法制度を採用しており、成文法が主要な法源です。しかし、その解釈においては、法律の準備作業や最高裁判所の判例が重く考慮されるという特徴があります。これは、法律がより一般的な用語で起草され、詳細な規定が行政規則や裁判所の判断に委ねられるという立法慣行に起因しています。また、ノルウェーは欧州経済領域(EEA)の加盟国であり、EEA協定を通じてEU法との広範な調和が義務付けられています。これにより、EUの単一市場へのアクセスが確保され、人、モノ、サービス、資本の自由な移動の恩恵を受けています。人権法も国内法として組み込まれており、欧州人権条約などが国内法に優先する効力を持ちます。

本記事では、ノルウェーの法律の全体像とその概要について弁護士が詳しく解説します。

ノルウェーの法制度の基礎と裁判所の構造

ノルウェー王国の法制度は、大陸法系に属し、成文法が主要な法源とされています。この点は日本の法制度と共通する部分が多いものの、法解釈においては、法律の準備作業(立法資料)や最高裁判所の判例が非常に重視されるという特徴があります。これは、法律が一般的な用語で起草される傾向があるため、具体的な適用においては判例や行政規則による補完が非常に重要となっていることが理由です。

国際法の重要性も増しており、特にノルウェーは欧州経済領域(EEA)の加盟国であるため、EEA協定によりEU法との広範な法制度の調和が求められています。この国際的な義務は、ノルウェーの国内法に優先する効力を持ちます。

ノルウェーの裁判所制度は、日本と同様に三審制を採用しており、第一審は地方裁判所(tingrettene)、第二審は控訴裁判所(lagmannsrettene)、そして第三審は最高裁判所(Høyesterett)で構成されています。さらに、ノルウェーには特定の専門分野に特化した特別裁判所も存在します。例えば、財産権に関する事件を扱う土地整理裁判所(jordskiftedomstolene)、団体労働協約に関する紛争を審理する労働裁判所(Arbeidsretten)、フィンマルク地域の土地と水に関する権利紛争を審理するフィンマルク土地審判所(Utmarksdomstolen for Finnmark)、社会保障と年金に関する紛争を審理する国民保険裁判所(Trygderetten)などが挙げられます。これらの特別裁判所の決定の一部は、地方裁判所を迂回して直接控訴裁判所や最高裁判所に上訴できる場合があります。

ノルウェーにおける企業設立とコーポレートガバナンス

企業設立とコーポレートガバナンス

ノルウェーで事業を行う際、最も一般的な法人形態の一つが非公開有限会社(Aksjeselskap、略称AS)です。ASの設立は比較的容易であり、最低資本金は30,000ノルウェークローネと低く設定されています。しかし、会社設立にはノルウェー国内の物理的な事業所住所が必要であり、私書箱は認められません。

設立手続きは、創業者や役員がノルウェーの国民ID番号またはD-numberを持っているか否かによって異なりますが、電子的な登録プロセスが推奨されています。株式資本の払い込みは、銀行の確認のほか、監査役、弁護士、または公認会計士によっても確認可能です。ただし、現金以外の資産(現物出資)による払い込みの場合は、監査役のみが確認できます。外国企業がノルウェーに支店を設立する場合、ノルウェー登録外国事業体(NUF)として登録することが可能ですが、この場合は紙のフォームでの申請が必要となり、原産国での登録証明書、定款、ノルウェーでの事業設立決定の記録などの提出が求められます。

コーポレートガバナンスに関しては、ノルウェーの公開有限会社は、公開会社法(Public Companies Act)のほか、証券取引法、証券取引所法、会計法などの強制法によって規律されます。オスロ証券取引所に上場する企業は、同取引所が定める継続的義務にも従う必要があります。

特筆すべきは、ノルウェー企業統治規範(Norwegian Code of Practice for Corporate Governance: NCCG)の存在です。これは直接的な法的拘束力を持つものではありませんが、会計法により、上場企業は年次取締役会報告書において、企業統治の原則と実践について「遵守または説明(comply or explain)」の原則に基づいて報告することが義務付けられています。これにより、NCCGは実質的な指針として機能しています。

ノルウェーの会社法には、日本と比較して特徴的な規定がいくつか見られます。まず、従業員代表制が挙げられます。従業員が30人を超える企業では、従業員が取締役会に代表者を置く権利を有し、特に200人を超える企業で企業総会(corporate assembly)を設置しない場合は、従業員が取締役会に代表者を置くことが義務付けられています。企業総会が設置される場合でも、そのメンバーの3分の1は従業員によって選出され、企業総会が取締役を選任する仕組みです。次に、取締役会の男女比率に関する規定があり、取締役会には男女双方が代表されなければなりません。さらに、企業の最高経営責任者(CEO)は取締役会のメンバーになることができません。最後に、取締役の居住要件として、取締役会の半数以上およびCEOは、EEA加盟国、英国、またはスイスの居住者でなければならないと定められています。

これらの規定は、株主だけでなく、従業員や社会全体といった多様なステークホルダーの利益を重視するノルウェーの企業文化を反映しています。特に、従業員代表制は、労使関係や意思決定プロセスに大きな影響を与える可能性があり、トップダウン型のアプローチとは異なる、より参加型のマネジメントスタイルが求められるでしょう。

ノルウェーの契約法と不動産法

ノルウェーの契約書は、他の国と比較して短い傾向にあります。これは、当事者間で明示的に規制されていない条項については、「背景法」(background law)が契約を補完するためです。背景法は、不動産の直接販売に関する1992年ノルウェー譲渡法(Norwegian Alienation Act of 1992)や、賃貸借契約に関する1999年ノルウェー賃貸借法(Norwegian Tenancy Act of 1999)などを含みます。商取引においては、背景法からの逸脱が広く認められているため、当事者が適用法からどのように逸脱したいかを契約で明記することが一般的です。契約書が短いからといって内容が単純であるわけではなく、背景法がどのような規定を補完するのかを事前に理解しておくことが、予期せぬリスクを回避するために不可欠です。

不動産取引においては、ノルウェーの土地登記簿への登録が法的保護を得るために重要です。登録は所有権の法的証拠を確立し、売主の債権者や権利の消滅から保護します。土地登記簿は公開記録であり、不動産の所有権は公開されます。登録は義務ではありませんが、登録が行われない場合、買主の不動産に対する請求を確立する公的記録がないため、リスクが生じる可能性があります。

登録時には、不動産の市場価値の2.5%の印紙税がかかり、これは通常、買主が支払います。この印紙税は資産取引にのみ関連し、不動産を保有する会社の株式を取引する株式取引では不要です。ノルウェーでは税務上の考慮事項などから、不動産関連の取引のほとんどが株式取引として行われる傾向にあります。日本企業がノルウェーで不動産を取得する場合、資産そのものを購入するよりも、不動産を保有する会社を買収する株式取引を選択することが、コスト面で有利になる可能性が高いです。

業界標準契約書も広く利用されており、ノルウェー不動産仲介業者協会が発行するものが一般的です。これらの標準には「現状有姿(as is)」条項が含まれることが多いですが、売主は不正確な情報や既知の瑕疵を隠蔽した場合に責任を負う可能性があります。

ノルウェーにおける外国資本からの投資規制

ノルウェーは一般的に外国投資家や投資に対して開かれており、他のヨーロッパ諸国と比較して外国直接投資(FDI)規制が限定的です。ノルウェーはEUの加盟国ではありませんが、EEA協定の締約国であるため、EU単一市場とその商品、サービス、人、資本の自由な移動という基本原則にアクセスできます。このため、1995年のEEA自由貿易規則発効以来、ノルウェーの規制はこれらの原則に合わせるように調整されてきました。EEA域外の投資家に対しては、二国間および国際貿易協定、ならびに相互主義の原則によってFDI枠組みが管理されます。

しかし、ノルウェー政府は、FDI規制を他のヨーロッパの規制とより一致させる可能性を検討するプロセスを開始しており、この問題に関する公式報告書(NOU 2023: 28)も発表されています。まだ具体的な提案は提示されていませんが、今後の動向を注視する必要があります。特に、国家安全保障関連のスクリーニングメカニズムの拡大や、特定産業への規制強化が起こる可能性があり、投資判断に影響を与える可能性があります。

FDIに対する一般的な制限はないものの、特定のセクターは特定の制限または許認可要件の対象となります。例えば、国家安全保障と重要インフラの分野では、ノルウェーは国家安全保障法(National Security Act: NSA)に基づき、特定の国家FDIスクリーニングメカニズムを導入しています。このメカニズムは、防衛、電気通信、エネルギー、運輸などのセクター、あるいは不動産内にある企業に適用され、これらのセクターにおける適格な過半数株式を伴う投資は、強制的な通知要件の対象となります。ただし、国家安全保障体制の対象となった企業の公開リストや記録は存在しないため、投資家にとって不確実性を生む可能性があります。

水力発電分野では、ノルウェーの水力発電資源は公共資産と見なされており、主要な水力発電所(10メガワット以上)は、少なくとも3分の2が公的所有である必要があります。小規模な発電所は許認可要件の対象となります。石油とガス部門はノルウェー経済の要であり、石油ライセンスへの参加権の取得には政府の承認が必要ですが、これらの要件は外国投資家を特にターゲットにしたものではありません。農業分野では、3.5ヘクタールを超える農地の購入は、購入者が現在の所有者の家族でない場合、許認可が必要です。地方自治体は、購入者に対して居住要件を課すことがよくあります。

水力発電や石油・ガスといった基幹産業における公的所有権や政府承認の必要性は、これらのセクターへの外国投資に固有の障壁となります。したがって、エネルギー分野への投資は、単なる商業的判断だけでなく、ノルウェーの国家戦略や資源管理の哲学を理解することが成功の鍵となります。

ノルウェーの資金決済法と金融サービス規制

資金決済法と金融サービス規制

ノルウェーの資金決済システムには、デジタル化が進む一方で、国民の利便性と社会の緊急時対応能力を維持するための独自の規制動向が見られます。その一つとして、現金支払い義務の導入が挙げられます。2024年10月1日から、20,000ノルウェークローネ(約1,670ユーロ)までの支払いについて、現金支払いオプションを提供することが企業に対して義務付けられます。これは中央銀行法の改正によるもので、政府がデジタル化の進展の中でも非デジタル利用者の存在を重視し、現金の重要性を再認識しているためであり、違反企業には罰金が科される可能性があります。

また、電子インボイスおよびデジタル会計の義務化も進められています。ノルウェーは2028年1月までに電子インボイスを義務化し、2030年1月までにすべての会計義務のある企業にデジタル会計システムを義務化する計画です。現在、B2B取引における電子インボイスは任意ですが、公共部門では以前から義務化されており、EU標準(EN 16931やPEPPOL BIS 3.0)に準拠しています。この変更により、企業は年間最大50億ノルウェークローネの節約が見込まれています。

ノルウェーの個人情報保護法とGDPR

ノルウェーの個人情報保護法は、EUの一般データ保護規則(GDPR)を2018年7月20日から参照条項として組み込んでおり、GDPRがノルウェーにおいて直接適用される法律となっています。したがって、日本企業がノルウェーで事業を行う上では、日本の個人情報保護法(PIPA)とは異なる、より厳格なGDPRの要件を遵守する必要があります。

ノルウェーの薬機法および医療広告ガイドライン

ノルウェーにおける医薬品および医療機器の規制は、主にノルウェー医療製品庁(Norwegian Medical Products Agency: DMP)が管轄しています。DMPは、医薬品と医療機器の迅速かつ公平なアクセスを確保し、安全性監視、適切な使用の促進、研究・イノベーションへの貢献、そして医療製品の国家供給保障と準備態勢を担っています。

医薬品のプロモーションと広告は、医薬品法(Medicines Act)およびヒト用医薬品に関する規制(Regulation on Pharmaceuticals)によって厳しく規制されています。加えて、マーケティング規制法も一般原則として適用されます。日本の薬機法および医療広告ガイドラインに相当する規制が存在し、特に以下の点が重要です。

まず、処方薬の一般市民へのマーケティングは禁止されており、一般用医薬品(OTC医薬品)の広告は許可されているものの、控えめで真実である必要があり、医師や歯科医による診察や治療を必要としない疾患や症状に推奨されるものに限られます。特に、結核、癌、性感染症、糖尿病などの重篤な疾患を広告で言及することは明示的に禁止されており、医薬品の景品提供も違法です。

広告は、それが広告であり、宣伝されている製品が医薬品であることを明確に示すように設計されなければなりません。また、医薬品の効果が保証されている、副作用がない、他の治療法や医薬品よりも優れている、または同等に効果的であると示唆してはなりません。ノルウェーで販売承認を得ている医薬品のみが広告を許可されており、承認された製品特性要約(SmPC)に含まれる情報に準拠する必要があるため、適応外情報は広告できません。

医療専門家への贈答品、金銭的利益、または現物給付の提供は、ごくわずかな価値で業務に関連する場合を除き、禁止されています。接待は合理的なレベルに保ち、会議の主要な目的に厳密に従属させる必要があります。医薬品サンプルは、処方資格のある医療専門家に対してのみ、書面による要求、最小包装の年間1つまで、SmPC添付、発売後2年以内といった特定の条件下で提供が可能です。製薬会社から医療専門家へのすべての価値移転は、ノルウェー製薬産業協会(LMI)とノルウェー医師会(NMA)との間の合意により、会社によって公開されなければならず、これは欧州製薬団体連合会(EFPIA)の規則に基づいています。

医療機器のプロモーションと広告も、医療機器法、医療機器規制、そしてEUの医療機器規則(MDR)および体外診断用医療機器規則(IVDR)のノルウェー法への組み込みによって規律されます。医療機器の一般市民への広告は許可されていますが、マーケティング規制法の一般原則を遵守する必要があります。これらの法律に違反した場合、民事または刑事制裁が科される可能性があり、ノルウェー医療製品庁は個人に対して最大2G(約23万ノルウェークローネ)、企業に対して最大15G(約177万ノルウェークローネ)の罰金を科すことができ、消費者庁もマーケティング規制法違反に対して罰金を科すことができます。

ノルウェーの医薬品規制は、当初から「不必要な医薬品消費」を抑制する目的で設計されており、特に重篤な疾患の広告禁止や景品提供の違法性など、日本と比較してより厳格な広告規制が存在します。また、医療専門家への価値移転の透明性報告義務は、業界の倫理性を高めるための重要なメカニズムです。

ノルウェーの税法

ノルウェーの税法は、居住納税者と非居住納税者で異なる納税義務を定めています。居住者は全世界所得に対して所得税を課され、非居住納税者はノルウェー源泉の特定の種類の所得に対してのみ所得税を課されます。

ノルウェーの個人所得税制度は、「一般所得」と「個人所得」という二元的な税基盤に基づいています。一般所得税は、雇用、事業、資本からの所得を含むすべての課税所得カテゴリーが対象となり、22%の均一税率で課税され、税控除、費用、および特定の損失は控除可能です。一方、個人所得に対するブラケット税は、主に雇用からの所得(現物給付を含む)、年金、自営業からの所得が対象となり、所得額に応じて1.7%から17.7%までの累進税率が適用されます。

さらに、2019年1月1日からは、ノルウェーでの一時的な雇用における報告とコンプライアンスを簡素化するため、PAYE(Pay-As-You-Earn)制度が導入されています。この制度は、特定の所得水準(2024年で最大670,000ノルウェークローネ)未満の給与を持つ非居住労働者に適用され、25%の均一税率(社会保障費を含む)が課され、控除は適用されません。この制度が適用される場合、労働者は個人の確定申告を行う必要がありません。

法人税については、ノルウェーの法人所得税率は一般的に22%です。ただし、金融セクター内の特定の企業には25%の税率が適用されます 。法人所得税申告書の提出期限は会計年度の翌年の5月末です。

ノルウェーの労働法

ノルウェーの労働法は、主に2005年の労働環境法(Working Environment Act)によって規定されており、従業員の権利と雇用主の義務に関する強力な枠組みを提供しています。この法律は、指導的立場にある者や常務取締役を含むすべての従業員、さらにはノルウェーで働く外国企業の従業員にも普遍的に適用されます。

特徴的なのは、従業員代表と安全代表者の制度です。すべてのノルウェー企業は従業員によって選出された独自の安全代表者(verneombud)を置くことが義務付けられています。安全代表者は、雇用主が従業員の安全、健康、福祉に関する義務を果たすことを確認する役割を担い、従業員は職場での危険な状況を雇用主や安全代表者に報告する義務があります。5人以上の従業員がいる企業には少なくとも1人の安全代表者が必要であり、彼らは職場のHSE(健康、安全、環境)活動に積極的に参加し、危険な作業を停止する権限を持つ場合もあります。また、労働協約に拘束される企業の場合、労働時間の延長などにおいて従業員代表者との書面による合意が必要となることがあり、解雇決定前には従業員代表者との協議が求められます。

ノルウェーで許認可が必要なビジネスと各許認可の概要

許認可が必要なビジネスと各許認可の概要

ノルウェーで特定のビジネスを展開する際には、事業の種類に応じて様々な許認可が必要となります。これは、日本と同様に、特定の公共性の高い分野やリスクを伴う分野において、政府による監督が不可欠であるためです。

例えば、金融サービス分野では、銀行免許、代替投資ファンドマネージャー(AIFM)免許、投資会社免許、ファンド運用会社免許、監査業務認可、外部会計事務所認可、UCITS運用会社免許など、多岐にわたる許認可が金融監督庁(Finanstilsynet)によって求められます。この分野では、PSD2指令やアンチマネーロンダリング(AML)規制など、EU法との広範な調和が特徴です。

エネルギー分野、特に石油・ガス生産においては、生産許可や注入・フレアリング・コールドベンティング許可がエネルギー省およびノルウェーオフショア総局によって必要とされます。石油法に基づく厳格な生産量規制があり、毎年申請義務が課せられています。

通信分野では、公共電子通信ネットワーク・サービス登録や周波数ライセンスがノルウェー通信庁(Nkom)およびデジタル化・公共ガバナンス省の管轄となります。この分野では免許は不要ですが、活動開始前または開始と同時に登録が必須であり、周波数使用にはライセンスが必要です。

ギャンブル事業は、ノルウェー賭博局(Lotteritilsynet)の監督下にあり、Norsk TippingとNorsk Rikstotoという国家独占企業によって運営されています。ほとんどのオンラインギャンブルは違法とされており、外国企業のマーケティングは禁止されています。2025年1月1日以降、ライセンスを受けていないギャンブルサイトに対するDNSブロッキング権限が強化されています。

環境関連では、汚染リスクのあるすべての産業企業は、ノルウェー環境庁(Norwegian Environment Agency)または郡知事から排出許可を申請する必要があります。これは汚染管理法に基づいており、環境保護のための重要な規制です。

まとめ

ノルウェーは、安定した経済と高いデジタル化率を誇り、日本企業にとって魅力的な市場である一方、その法制度には日本とは異なる独自の特性が数多く存在します。特に、EEA協定を通じたEU法との広範な調和、特定産業における国家の強い関与やAI規制の先行的な取り組みは、日本企業がノルウェーでのビジネス展開を成功させる上で深く理解すべき重要な相違点です。

また、従業員代表制や取締役会の男女比率の義務化など、コーポレートガバナンスにおけるステークホルダー重視の姿勢は、日本企業が慣れている経営スタイルからの転換が必要となる要素だと言えるでしょう。

関連取扱分野:国際法務・海外事業

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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