ネット上の商品はどこまでOK?景品表示法による規制を解説
ネット上で「ラクして痩せる」や「売上No1」などの宣伝文句を目にしたことがあるかもしれません。ですが、本当に「痩せる」のか、本当に「No1」なのかは不確かであることもありますし、そもそも虚偽であることもあります。こうしたネット上で商品を販売するのにあたってはどのような法的規制があるのでしょうか?今回はネット上の商品広告と景品表示法による規制を解説します。
景品表示法第2条第4項に規定する「表示」には、業者がウェブ上で行う、自己の供給する商品・サービスの内容又は取引条件についての表示も含まれます。
景品表示法(定義)第2条
4 この法律で「表示」とは、顧客を誘引するための手段として、事業者が自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について行う広告その他の表示であつて、内閣総理大臣が指定するものをいう。
では、どのような場合にウェブ上で行う広告において、商品・サービスの内容又は取引条件についての表示が、景品表示法の規制の対象となるのでしょうか。
この記事の目次
景品表示法と内容に係る表示
景品表示法は、商品・サービスの品質、内容、価格等を偽って表示を行うことを規制することなどにより、消費者がより良い商品・サービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守るための法律です。
品質や価格などは、消費者が商品・サービスを選ぶ重要な基準になるので、その表示は正しく、分かりやすいことが大前提であり、商品・サービスの品質や価格について実際よりも著しく優良又は有利と見せかけるような表示が行われると、消費者の適切な選択が妨げられます。このため、景品表示法では、一般消費者に商品・サービスの品質や価格について、実際のものより著しく優良又は有利であると誤認される表示(不当表示)を禁止しています。景品表示法に違反する不当表示については、事業者側に故意・過失がなかったとしても、景品表示法に基づく措置命令が行われます。
不当表示は大きく分けて、「優良誤認表示」「有利誤認表示」「その他の誤認されるおそれのある表示」の3つに分けられます。
優良誤認表示
商品やサービスの品質、規格などの内容につき、実際のものや事実に相違して競争する事業者のものより著しく優良であると一般消費者に誤認される表示は、優良誤認表示として禁止されます。例えば、コンピュータ・ウィルス駆除ソフトについて、実際には全てのウィルスに対応していないにもかかわらず、「全てのウィルスに対応」と表示する場合などがこれに当たります。
なお、消費者庁は、商品・サービスの効果や性能に優良誤認表示の疑いがある場合、その事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができ、当該資料が提出されない場合、当該表示は不当表示とみなされます。
例えば、ダイエット食品の痩身効果につき、「飲むだけでラクラク5~6kg減量!」などと、特段の運動や食事制限をすることなく容易に著しい痩身効果が得られるかのように表示していたが、実際には、当該表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料はなかったという場合などに規制されます。これを「不実証広告規制」といいます。
有利誤認表示
景品表示法では、価格を著しく安くみせかけるなど、取引条件を著しく有利にみせかける表示は、有利誤認表示として禁止されています。
例えば、他社製品と同程度の内容量なのに、「他社製品の2倍の内容量」と表示したりすることがこれに当たります。また、「通常価格48000円、特価25800円」などとして、「最近相当期間にわたって販売されていた価格」に該当しない価格や、実際には設定したことがない価格を並べて表示する不当な二重価格表示もこれに当たり、禁止されています。
その他の誤認されるおそれのある表示
景品表示法上、事業者は、優良誤認表示及び有利誤認表示以外にも、自己の供給する商品又はサービスの取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示を行ってはならないとされています。公正取引委員会は、「無果汁の清涼飲料水等についての表示」、「商品の原産国に関する不当な表示」、「消費者信用の融資費用に関する不当な表示」、「不動産のおとり広告に関する表示」、「おとり広告に関する表示」、「有料老人ホームに関する不当な表示」を行ってはならないと、6つの告示を定めています。
例えば、有料老人ホームの施設・設備、サービスについて、「入居後の居室の住み替えに関する条件等が明瞭に記載されていない表示」や「夜間における最小の介護職員や看護師の数など、介護職員等の数が明瞭に記載されていない表示」などは、「有料老人ホームに関する不当な表示」として、禁止されています。
景品表示法と表示方法
PCの普及やスマホの拡大によって、急速に増加しつつある消費者向け電子商取引(「BtoC取引」)では、以下のような特徴がある点にも注目です。
- ウェブページ上の指示に従ってクリックをしていけば契約が成立してしまう場合があるなど、契約の申込みが容易である
- 画面上の制約があるため、スクロールしなければ表示内容全体を見ることができない場合がある
- 技術的な特徴として、多くの情報を提供できるようにするため、ハイパーリンクなどの手法が用いられる場合が多い
その結果、BtoC取引では、商品選択や注文等における消費者の誤認を招き、消費者被害が拡大しやすい傾向があります。
また、BtoC取引においては、事業者は、商品・サービスの内容、取引条件等についてのウェブページ上の表示内容を簡単に変更することができるという特徴があります。
このため、公正取引委員会は、「消費者向け電子商取引における表示についての景品表示法上の問題点と留意事項」(2002年6月5日)において、BtoC取引においては表示方法についても留意するよう、注意を促しています。
ハイパーリンクを用いる場合
BtoC取引においては、表示内容がパソコン等のディスプレイ上に表示されることにより表示内容全体を見ることができない場合があり、このためスクロールやハイパーリンクなどの手法が用いられるという特徴があります。
特に、ハイパーリンクは、ディスプレイ上において、多くの情報を提供するための有効な手段です。ただし、ハイパーリンクを用いて、消費者がその時点で見ている画面ではなく、別のウェブページ等(「リンク先」)で商品・サービスの内容又は取引条件についての重要な情報を表示する場合には、消費者は、ウェブページ上に埋め込まれた色文字や下線付きの文字、色枠付き画像等といった「ハイパーリンクの文字列」をクリックして当該リンク先に移動しなければ、当該情報を得ることができません。このような場合、例えば、ハイパーリンクの文字列が重要な情報の所在であることを明瞭に表示していなければ、消費者はこれを見落とし、商品選択上の重要な情報を得ることができないという問題が生じてしまいます。その結果、実際のもの又は競争事業者のものよりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認される場合には、景品表示法上の不当表示として問題となります。
例えば、「1日3粒のダイエットサプリメント1か月で10kg 減」と強調表示した上で、「痩せるためには一定の運動療法と食事制限が必要」という痩せるための条件をリンク先に表示する場合などがこれに大灯します。ハイパーリンクの文字列を別のウェブページに配置したりすれば、消費者は、当該ハイパーリンクの文字列を見落として、これをクリックせず、当該リンク先に移動して痩せるための条件についての情報を得ることができません。その結果、あたかも、何ら条件がなく、飲むだけで痩せるかのように誤認してしまう可能性があります。
ハイパーリンクを用いてリンク先に、商品・サービスの内容又は取引条件についての重要な情報を表示する場合、ハイパーリンクの文字列については、「追加情報」などの抽象的な表現ではなく、リンク先に何が表示されているのかが明確に分かる「返品条件」などの具体的な表現を用いる必要があり、消費者が見落とさないようにするため、文字の大きさ、配色などに配慮し、明瞭に表示する必要があります。
情報更新日の表示
BtoC取引においては、ウェブページ上の表示内容を簡単に変更でき、商品・サービスの内容又は取引条件を簡単に変えることが可能であることから、情報の更新日が表示されていなければ、表示内容がいつの時点のものであるのかが分かりづらいという問題があります。
例えば、情報の更新日を表示せずに、「新製品」や「最上位機種」などと商品の新しさを強調表示している場合には、すでに「新製品」や「最上位機種」でなくなったものであっても、いまだ新しい商品であるかのように誤認される可能性があります。また、「昨年度ネット売上No.1」と強調表示を行った後、ネット売上No.1となった時期から数年経過した後にも当該表示を続けていると、ネット売上No.1となった時期が最近のものであるかのように消費者に誤認されることとなります。
情報の更新日については、表示内容を変更した時点で最新の更新日を記載し、変更箇所を正確かつ明瞭に表示する必要があり、すでに「新製品」でない商品等、表示内容が過去のものであって現在の事実と異なっているものについては、直ちにウェブページの内容を修正しないと、景品表示法上の不当表示として問題となります。
まとめ
商品選択や注文等における消費者の誤認を招きやすく、その結果、消費者被害が拡大しやすい傾向があるBtoC取引では、既存の店舗を中心とした取引以上に、商品・サービスの内容又は取引条件についての重要な情報が消費者に適切に提供される必要があります。
急速に拡大しつつあるBtoC取引の健全な発展と消費者取引の適正化が望まれます。
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カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務
タグ: ビジネスモデルの適法化