はてなブログの誹謗中傷記事の削除方法とは
インターネット上には、個人の書いたものから芸能人のものまで様々なブログがあり、一度は読んだことがあるという方は多いと思います。また、Googleなどで検索した結果、誰かのブログがヒットすることもあります。はてなブログもブログサービスの1つであり、このサービスを利用して多くの人が記事を執筆し、また閲覧されています。自由に記事を書いて、それを誰でも発信できることがブログの魅力ですが、一方でブログによって誹謗中傷などが書かれてしまった場合、書かれてしまった人はどのような対処ができるのでしょうか。口ここでは、はてなブログに誹謗中傷が投稿された場合の風評被害対策について説明します。
この記事の目次
はてなブログに関する解説
はてなブログとは、株式会社がはてな運営するブログサービスの1つです。前身は、2019年春に終了したはてなダイアリーというサービスであり、そこから数えると2003年から存在する、比較的歴史の長いブログサービスです。
はてなブログでは、誰でも簡単にブログを作成できるほか、また有料プラン利用などでSEOや広告収入に強いブログを作成することができることが特徴の1つです。そのため商用利用のブログも多く、Googleなどの検索エンジンでワード検索をすると、上位にはてなブログが表示されることも多いでしょう。
一方で、はてなブログは無料で登録し誰でもブログを書くことができるので、不確かな情報や、誹謗中傷や名誉毀損の内容を含むブログ記事が公開されてしまう可能性が多分にあります。そして、SEOに強いブログですのでこのようなブログが検索上位に掲載されてしまうと、誹謗中傷や名誉毀損による損害が大きく広がりやすいともいえます。
はてなブログに投稿されるネガティブな口コミとは
はてなブログは誰でも開設することのできるブログサービスなので、好ましくない記述や表現が含まれる記事が存在します。ここでは想定されるネガティブな記事の一例を紹介します。
記事内で誹謗中傷がされている場合
例えば、「レストランAはまずいメニューばかり!美味しくない!」という旨の記事が複数公開されていたとしましょう。自身がレストランA側であったとしたら、営業妨害の書き込みに他なりません。誹謗中傷として、直ちに削除したい書き込みといえます。はてなブログでは、不法行為に該当するものはもちろん、利用規約に反するものも削除対象とされています。そして、利用規約には誹謗中傷行為も禁止事項に挙げられていますので、これがはてな側より誹謗中傷にあたると判断された場合、削除される可能性が高いと言えます。詳しくは後述をご確認ください。
本人特定が可能な個人情報が掲載されてしまっている場合
個人情報を含んだ記事は、その内容や本人の捉え方、社会的影響によっては好ましくない記事であるし、また住所や前科情報などの情報は他人に知られたくない情報そのものですので、プライバシー侵害にあたります。このような書き込みは、一度書き込まれてしまったらそのプライバシーを回復できない可能性があるので、直ちに削除されるべき内容といえます。
コメント欄に誹謗中傷やプライバシー侵害の内容が含まれる場合
例えば、グルメブロガーの記事に、「A洋菓子店」の訪問記が掲載されていたとします。その記事本文自体は肯定的な内容で、何ら問題がないとしても、コメント欄に、「ここのケーキは毒ですよ。賞味期限切れの食材を使っているとかっていう噂です。近所の人は誰も食べませんよ。」など、ネガティブなコメントが残されていたとします。このような場合でも、風評被害に繋がりますので、洋菓子店にとっては削除したい内容といえます。
利用規約違反で削除請求する方法
はてな利用規約
はてな利用規約第6条には、禁止事項が列挙されています。この各号に該当する事由が削除したい口コミにあれば、削除対象となりえます。
また、はてな情報削除ガイドラインにも、同様に削除対象となるものの内容が分類されています。ここでは、削除をしたい記事の内容、発信者、申立人によって、削除をするか否かの判断基準を細かく分類しています。例えば、児童ポルノ画像は発信者に勧告や意見照会を行うまでもなくはてな側で即時削除をするが、嫌悪感を与えるにとどまるポルノ情報は発信者に対して意見照会をしたり、自主的な削除を求める、といった分類などです。利用規約に該当する可能性があるものであっても、削除がされる可能性があるのか・削除が直ちにされるのか、と言った判断基準については、削除対象情報ガイドラインを参照してください。
削除依頼を行う方法
はてなでは、情報削除依頼のための専用フォームは置いていませんが、「はてな情報削除の流れ」というページで、削除依頼の申立方法について詳しく解説しています。まずはここから、削除依頼を行うとよいでしょう。この申立は送信防止措置として取り扱われるため、代理人に依頼するなら弁護士のみが行うことができます。代理人を立てず本人が行う場合は、この流れに沿って行うようにしましょう。
利用規約違反として削除依頼を行う時の例
上記のようにはてなブログでは、送信防止措置という、プロバイダ責任制限法に規定された方法によって削除依頼をすることになっています。
原則として、送信防止措置請求は個人の法律上の権利が侵害されている時に行うことができるものですが、はてなブログでは、利用規約違反による削除依頼であっても、同様の方法で申し立てることができるようです。
申立にあたっては、上記の各項目を記入していくことになります。この項目に従い、どのブログに関するものなのか具体的に示して、はてなブログ側が特定しやすいように配慮しましょう。名誉毀損やプライバシー侵害といった法律上の権利侵害ではなく、利用規約違反について主張していく場合では、・ 侵害されたとする権利の欄で、該当する利用規約を抜粋し、・ 権利が侵害されたとする理由の欄で、利用規約違反にあたる理由を記述するのがよいでしょう。
今回は、「レストランAでは〇〇人(外国人)の従業員ばかりで不快」という差別的表現を含む記事を削除したい場合を例にとります。各項目を記入した上で、理由欄にはこのように書くと良いでしょう。
お世話になります。レストランAの店長〇〇と申します。本記事の削除をお願い致します。このURLのブログ何行目では、「レストランAでは〇〇人(外国人)の従業員ばかりで不快」旨の記述がされています。これは、私が経営するレストランのことを指しているもの思います。そして、「〇〇人(外国人)の従業員ばかりで不快」というのは人種・民族・肌の色で侮辱をする差別的表現であり、利用規約第6条2.b「人種、民族、信条、性別、社会的身分、居住場所、身体的特徴、病歴、教育、財産及び収入等を根拠にする差別的表現行為」にあたります。このような書き込みがあると従業員の勤務に悪影響であり、許せないことですので、削除をお願いしたいです。よろしくお願い致します。
送信防止措置は法律で規定されている方法とはいえ、あくまで任意での削除を求めるものにとどまります。利用規約違反による削除がされなかった場合、違法であるとして、法律上の権利侵害を主張した送信防止措置請求や、訴訟提起などのより強力な法的措置を講ずることになります。
違法だとして削除請求する場合
法律上取りうる手段
権利侵害など、法律に抵触する内容であれば弁護士を通じて削除を裁判上で争うことができます。まず、インターネット上の風評被害対策に関連する法的にとりうる手段には、大きく分けて
- 送信防止措置請求による自主的削除の依頼
- 投稿記事削除請求・仮処分の申立て
- 発信者情報開示請求(IPアドレスの開示請求、住所氏名の開示請求)
- 損害賠償請求(投稿者を特定できた後の損害賠償請求)
などがあります。
法律上主張するべき内容
では、法律上で削除の請求をしていくには、まず考えられるのは「名誉毀損」の主張をすることです。名誉毀損は、
- 「公然と」
- 「事実を摘示し」
- 「人の名誉を毀損する」
の全てに該当する事実があるときに成立します。例として、「レストランAは賞味期限切れの食材を使っているので腐ったものばかりです」という真実でない内容に基づくコメントが掲載されていた場合、1から3の要件をみたすのか、具体的に見ていきましょう。まず、今回のようにはてなブログなどインターネット上における投稿は、インターネット上で不特定多数の人物が閲覧することが可能な状態に置かれているといえるので、「公然と」といえます。
次に、「事実の摘示」とは、人の社会的評価を低下させるに足りる具体的事実を告げることをいい、真実か虚偽であるかを問いません。今回、賞味期限切れの食材を使っているという情報は、食品衛生法違反の事実を示すコメントであり、社会的評価を低下させるに足りるといえます。
最後に、「毀損した」というためには、実際に社会的評価が害されていなくても、その危険性が抽象的に存在すれば足り、名誉が現実に侵害されている必要はありません。実際に問題となっている投稿がネットニュースやSNSで不特定多数の人に閲覧されレストランAに対し非難や抗議が殺到したことを証明する必要はありません。その危険性が客観的に存在することがいえればよいということになります。
名誉毀損の詳しい成立要件等は下記の記事にて詳細に説明していますので参考にしてください。
裁判所を通した方法(仮処分)による削除
名誉毀損など、上記のような法律違反の指摘をして削除を求めるには、まずは、送信防止措置請求の方法をとるのが通常です。しかし、先述の通り、送信防止措置請求は裁判所を通さない削除依頼の方法で、プロバイダ(はてなブログ)による自主的な削除を求めるものです。はてなブログでは、利用規約において、法律上削除されうる場合があるなどを明記していますので、この方法によって削除される可能性が高いといえます。もっとも任意手段なので、判断によっては、削除は行われないこともありえます。これに対し裁判所を通した手続きでは、裁判で削除が認められれば判決による拘束力が生じるので、プロバイダ(はてなブログ)は強制的に削除に応じることになります。
このため、送信防止措置が認められなければ、裁判手続に移行することが効果的です。なお仮処分とは、民事保全法に規定されている方法で、一刻も早い解決が求められる場合に、正式な訴訟によって確定判決を得る前に暫定的な処分を求めるものです。今回のような誹謗中傷の口コミなどは、一度拡散してしまうと回復困難な損害が生じるおそれが多分にあるので、仮処分の制度を利用して一刻も早い情報の削除を求めることが有効的です。仮処分命令が発令されると、裁判所が相手方に投稿を削除するように命令しますので、相手方は削除に応じることになります。仮処分の場合、風評被害対策にノウハウのある弁護士へ相談を行えば、依頼から削除まで、2-3ヶ月程度で実現できるケースが多く有効的な手段といえます。誹謗中傷や風評被害を受けた場合の当該記事の削除、仮処分の手続きに関しては下記の記事にて詳細に説明しています。
仮処分による投稿者特定
仮処分による投稿者特定について、弁護士に依頼を行えば、いわゆる発信者情報開示請求で投稿者のIPアドレスなどの情報を開示し、投稿者を特定することができる可能性があります。これをすると、特定された発信者に対して、誹謗中傷投稿により被った損害について損害賠償請求を求めることができるようになります。これらの手続の流れに関しては下記記事にて詳細に解説しています。
まとめ
はてなブログは、様々なカテゴリの記事やブログが存在します。しかし書き込みの自由度が高いことや、検索上位に表示されることが多いことを考えると、様々な風評被害や権利侵害が想定されます。記事でいくつか引用しましたが、はてなブログの削除ガイドラインや利用規約、削除依頼の方法ははとても細かく専門的な内容を含むため、個人で行うのは難しく、また法律行為になりますので、弁護士の力が必要になります。まずは、弁護士に相談して、当該口コミが権利侵害にあたるのか、法律に抵触しているかどうかを判断してもらいましょう。
カテゴリー: 風評被害対策