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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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リスティング広告における商標権侵害と削除請求の可否

リスティング広告における商標権侵害と対策

広告を掲載するキーワードを選び、サービスや商品に対する購入意欲の高いユーザーをピンポイントで集客することができることから、インターネット上の広告の定番ともなったリスティング広告。自社の社名やサービス、商品を商標登録している場合、その商標を自ら用いてリスティング広告を出稿するのが、普通の姿です。例えば、A社がBという風評被害監視サービスを提供していて、Aという社名やBというサービス名について商標登録を行っている場合に、「風評被害監視ならA社!」「風評被害監視ならB!」といった広告を出稿する、という形です。

しかしリスティング広告には、これらとは異質な文言の広告が出稿されてしまうケースもあります。例えば、A社と無関係なC社が、「風評被害監視ならA社よりC社!」「C社の風評監視サービスはBより安い!」といった広告を出稿する、という手法です。A社という社名やBというサービスが有名であれば、そうした名称で検索するユーザーも多いはず。そうしたユーザーをC社に取り込もうという意図の広告です。

上場企業など大手企業の方の場合、自社のサービスや商品について検索エンジンで検索したら、商標登録されている自社のブランドネーム(社名・商品名・サービス名等)を広告に用いた他社広告が表示されたというケースもあるのではないでしょうか。

そのような場合に、どういった対処法をとることができるのか、ご紹介していきます。

リスティング広告とは

リスティング広告とは、検索結果に連動して表示される広告を指します。ユーザーが該当のキーワードについて検索しているとき、すなわち、そのキーワードに対する関心が高いときに広告が表示されるため、高い効果を発揮する広告といえます。リスティング広告の代表としては、Google広告(旧Google AdWords)やYahoo!プロモーションが挙げられます。

リスティング広告は、ユーザーがどのような「キーワード」で検索エンジンでの検索を行ったときに、どのような「広告文」を表示させるか、という設定を行って出稿されます。例えば、「誹謗中傷」という「キーワード」で検索を行ったときに、「風評被害対策ならA社!」という「広告文」を出したい、というような設定です。

リスティング広告における商標トラブル

リスティング広告における商標トラブルとしては以下の二つが考えられます。

商標が「キーワード」として使われている

他社が、商標登録されているキーワードで入札・出稿を行ったために、そのキーワードで検索をした際、検索結果として他社の広告が表示されてしまうケースです。自社の社名や商品名で検索したにもかかわらず、自社の広告よりも上位に他社の広告が表示されてしまうこともあります。

商標が「広告文」で使われている

商標登録済みの自社の社名や商品名などが、広告文の中で表示されているケースです。例えば、A社が商標登録しているBという商品名を使い、競合他社であるC社が「C社の風評監視サービスはBより安い!」などとした広告本文を出稿する場合です。

これは、A社が商標権を有する「B」という文字列を、A社に許諾を得ることなくC社が用いていることになるため、A社は法的に違法だと主張できる可能性があります。 この場合には、Google広告(旧Google AdWords)であればGoogleに、Yahoo!プロモーションであればYahoo!JAPANに対して、商標権侵害の申し立てを行うことで、他社による広告内での商標登録キーワードの使用を制限することができます。

ただ注意しなければいけないのは、商標権者が請求できるのは、あくまで他人による「商標的使用」の禁止だけです。ある言葉について商標権を取得していても、その言葉を使うこと全般を禁止できる訳ではなく、禁止できる対象は、あくまで一定の態様の使用(「商標的使用」と呼ばれます。)だけです。

この判断はかなり専門的なので、知的財産権の専門家に相談することをお勧めします。

商標権侵害の申し立ての方法

Google広告(旧Google AdWords)の場合

Google広告(旧Google AdWords)に対して商標権侵害を申し立てる場合には、「Google の商標」から申請を行うことになります。

郵送での申請も可能ではありますが、カリフォルニアへの国際郵便となってしまうことから、手軽に行うことのできるフォーム申請がお勧めです。

  1. まず、氏名や会社名など、申立人の情報を入力します。
  2. 次に、申し立てを行いたい商標キーワード、対象国、商標の登録番号等、「商標の詳細」を入力します。このとき、商標名は半角・全角も正確に入力するようにしましょう。
  3. 「申し立ての対象となる広告主」について入力します。ここでは、二つの申請方法を選ぶことができます。

特定の広告主

特定の広告主についてだけ商標キーワードの使用を制限したい場合には、こちらを選択します。そして、該当の広告主についての情報を入力します。

すべての広告主

商標使用を許諾した広告主以外の、すべての広告主に対して、商標キーワードの使用を制限したい場合にはこちらを選択します。追加で「商標使用を許諾された広告主」の記載を求められるので、ここで自社のGoogle広告アカウント情報(該当する10桁のID又はURL)と、商標の使用を許諾した広告パートナー(ライセンシー、支店、ディーラー、正規再販売業者等)のアカウント情報を入力します。これを入力しないと、自社の広告や広告パートナーの広告まで商標の使用が制限される場合があります。

上記の申請を行ったあと、一週間ほどでGoogleから審査結果の連絡が届きます。審査に問題がなければ、申請した商標名を使用する広告で、かつ、商標使用を許諾されていないアカウントの広告が掲載停止となります。

なお、商標権者やその代理店だけでなく、弁護士も代理人としてこの申請を行うことができます。申請に不安のある方は、商標権について詳しい弁護士に依頼することも可能です。

Yahoo!プロモーションの場合

Yahoo!プロモーションに対して商標権侵害を申し立てる場合には、ネットから申請を行うことができるフォームがないため、必要な資料を揃えて郵送での申請を行うことになります。必要書類については、「登録商標について」に記載されています。

上記ページ内にて、必要書類は下記のように記載されています。

1.     申立て者の本人確認ができる資料(法人の従業員の場合は名刺で結構です)
2.     検索キーワードおよびリンク先URL(検索後の画面コピー)
3.     商標登録証明書
4.     当該広告主の如何なる行為が商標権侵害にあたるかの詳細な説明
5.  当該広告主との交信・交渉の状況の記録、説明

https://marketing.yahoo.co.jp/guidelines/trademarks.html

Yahoo!プロモーションの場合も、Google広告(旧Google AdWords)と同様、商標権者本人だけでなく、弁護士資格を有する代理人による申請を行うことができます。必要書類を揃えて郵送での申請を行わなくてはいけないということもあり、弁護士に相談して申請を依頼することをお勧めします。

商標権を侵害する広告を見つけたら

このように、商標登録した社名やサービス名、商品名といった自社ブランドが他社のリスティング広告で使用されている場合には、その使用を制限することができます。

しかし、Google広告(旧Google AdWords)にしてもYahoo!プロモ―ションにしても、商標権者からの申し立てがあれば調査・制限は行うものの、基本的には商標権者と広告主の間で直接解決してほしいというスタンスです。当該使用がなぜ違法と言えるのか、法的に精緻な主張を行わないと対応して貰えないケースもあります

商標権が侵害されているという主張が法的に妥当なものであるのかという点も含めて、まずは弁護士に相談することが望ましいでしょう。商標権侵害は、罰則も定められた行為です。自社の側に正当性があるのであれば、商標使用を停止させるべく、弁護士を通じるなどして請求を行うべきでしょう。

当事務所による対策のご案内

モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面に高い専門性を有する法律事務所として、こうした「リスティング汚染」とでも言うべき問題への対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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