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風評被害対策

Yelp(イェルプ)の風評被害につながる口コミの削除方法は?

風評被害対策

Yelp(イェルプ)の風評被害につながる口コミの削除方法は?

Yelp(イェルプ)はグローバル規模の総合的な口コミプラットフォームです。発祥の地アメリカでは多くの人に使われる国民的ツールとなっています。日本でもサービスを展開するようになり、その独自性から注目を集めています。ただ、口コミの量が膨大で利用者も世界中に及ぶため、風評被害が生じる危険性も大きいサイトです。本記事ではYelpで誹謗中傷の被害者となった場合どうすれば良いかを解説していきます。

Yelpとはどんな口コミサイトなのか?

Yelpのメイン画面より

YelpはアメリカのYelp, Incが運営するグローバル規模のローカルビジネス口コミサイトです。Yelpがサービスを展開するのは世界30ヵ国以上にも及び、日本では2014年にサービスが開始されました。日本では食べログと比較されることが多いですが、Yelpは、レストランだけでなく歯医者や美容院、病院、フィットネスジムなど様々なローカルビジネスに対応しています。

また、アカウントを登録する際に実名・顔出しを推奨しているのも特徴です。同じく実名での利用を推奨するFacebookとアカウントを連携させて利用する人が多く、誰が口コミを投稿したか特定されるため、口コミの信頼性が担保されています。(実名登録は強制ではありません)さらに、Yelpでは推薦ソフトというものを導入し、口コミの信頼性をより確実にするよう、努めています。推薦ソフトにより、投稿内容や投稿者に関する情報を精査し、おすすめできるレビューとそうでないレビューに区別しているのです。おすすめされていないレビューと見なされてしまうと、閲覧は可能ですがクリックしないと見ることができず、総合評価の対象からは外されてしまいます。全体の平均では、口コミ全体に対するおすすめレビューの割合は75%程度だそうです。

また、Yelpは検索機能が充実していることでも有名です。現在営業中のお店や距離で「〇km圏内のお店」を検索できるため、旅先など初めて行く土地でも、目的に即したお店を見つけられます。「モノクル」というカメラ機能も備え、街中でスマホをかざせばその方角にある近くのお店の情報が表示されるのです。さらに、イベントを告知できたりユーザー同士でトークできたりと、SNS的な要素も備えています。日本ではまだ利用者が少なく口コミも外国のユーザーによるものが中心ですが、今後見込まれる外国人観光客の増加に伴い、日本でも普及が拡大すると期待されています。

Yelpで考えられる風評被害の内容

yelpで生じやすい風評被害に繋がる口コミについて解説していきます。

まず、Yelpでは良いことだけでなくネガティブな内容の投稿も可能としています。どんな内容であれ詳細な事実を提供することが、ユーザーにとって有益な情報となると考えているからです。そのため、以下のような誹謗中傷の口コミが発生する危険はあります。

サービスのクオリティの低さを指摘する口コミ

例えば、美容院であれば「乱暴なカットで、希望とは全く違う髪型にされてしまった」、パン屋であれば「揚げパンがべとべとしていて、とても美味しいとは言えなかった」、病院であれば「看護師の注射が下手で何度も針を抜き差しされた」等の内容が考えられます。専門的なサービスを提供するお店では技術力が大きなアピールポイントです。クオリティの低さを指摘する口コミが公開されると、お客さんが減り、売上低下につながる可能性が高いです。

店員の接客態度の悪さを指摘する内容

「店員の愛想が悪く不快に感じた」「医師が終始薄ら笑いを浮かべていて、馬鹿にされているように感じた」「美容師に嫌味を言われた」など接客態度の悪さを指摘する内容も考えられます。接客態度が悪い店には行きたくないと感じる人は多いですから、サービス業においては、致命的ともいえる内容です。

Yelpの口コミをサイト側に依頼して削除するには?

Yelpでは、コンテンツガイドラインやサービス利用規約に違反するレビューは削除することができるとしています。

Yelpのレビューの削除基準

レビュー専用のガイドラインでは、以下の3つのポイントを意識して口コミを投稿してほしいと、ユーザー側に求めています。

  • 個人的な経験:人から聞いた話や一般論、噂はNG
  • 正確性:誇張したり事実を捻じ曲げたりするのはNG
  • レビューの更新:以前投稿した内容を繰り返し投稿するのはNG

以上の3つのポイントに抵触する内容は、サイト側で削除対応してもらえる可能性も考えられます。ただ、上述の通り、Yelpに投稿された口コミは自動ツールを使って、おすすめレビューとそれ以外に分けられます。おすすめされなかったレビューはサイトのあまり目立たないところに表示されますが、削除されることはありません。つまり、こちら側から削除依頼しなければ、ガイドライン違反の口コミでも公開されたままの状態で存知することは十分考えられます。

また、利用規約には以下の通り、禁止事項が定められています。こちらも削除基準として利用できるでしょう。

Ⅱ虚偽または中傷的なレビューを投稿する、他者とレビューを交換する、またはレビューの投稿、投稿の取りやめ、レビューの削除と引き換えに他者に報酬を支払ったり報酬を受けたりする
Ⅲ信用、著作権、商標、特許、企業秘密、著作者人格権、プライバシーの権利、肖像権または他の知的財産権または所有権の侵害を含め、第三者の権利を侵害する
Ⅳ他者を脅迫する、ストーカー行為をする、害を与える、嫌がらせをする、または偏見や差別を助長する

Yelpサービス利用規約

上記禁止事項やガイドライン違反に該当すると証明できれば、削除が成功する可能性も十分考えられます。禁止事項Ⅱに関してですが、Yelpでは、ユーザーがレビューを書く代わりに、対象のお店から何かを無料で提供してもらう見返り行為を禁止しています。この行為は、ポジティブな内容の口コミを促すことに他ならず、正確性・公平性の観点から適していないためです。

Yelpのレビューを削除する方法

Yelpに悪質なレビューを投稿された場合に手順について説明していきます。
Yelpお問い合わせフォーム画面より

サイトの問い合わせフォームを利用し、問い合わせてみましょう。トピックを選択するチェックボックスで「疑いのあるコンテンツ」を選び、「コンテンツがあなたの法的権利を侵害すると判断された場合は、このオプションを選択して下さい (例 著作権侵害、プライバシーの侵害 など)」を選択します。そして、名前やアドレス、違反の詳細など求められる内容を入力していきます。ただ、文言にもありますから、削除が認められるには名誉毀損や著作権侵害など、あなたの法的な権利が侵害されていることを証明しなければ削除が成功しない確率は高いです。このため、削除成功の難易度は高いといえるでしょう。

投稿者と直接やり取りし投稿を取り下げてもらうのも一つの手

Yelpでは自分のお店に対する口コミに対して、返信のメッセージを送ることが可能です。適切な対応を取り投稿者の不満を和らげれば、投稿者が自らネガティブな投稿を削除してくれる可能性もあるのです。誠意が伝わる謝罪や改善に努める旨を伝えれば、投稿者も人間ですから、やりすぎたかなと感じ撤回してくれるかもしれません。注意していただきたいのは、反論は絶対にしてはいけないということです。反論すると火に油を注ぎ、誹謗中傷の投稿がエスカレートすることが考えられます。メッセージのやり取りはYelpユーザーならみな閲覧できます。クレームに対するあなたの反論を見て、お店に来たことがない人からも反感を買う可能性もあるのです。

違法を主張してYelpの口コミを削除請求する方法

サイト側に削除請求しても狙い通りの結果が得られないなら、裁判所を頼る必要があるでしょう。違法を主張する場合、名誉毀損を主張するのが一般的です。名誉毀損は「公然と事実を適示し、人の名誉を毀損する」と認められた場合に成立します。ここでいう事実とは、本当のことという意味ではなく、具体的な事柄という意味です。つまり、具体的な事柄を適示した結果、それにより他人の社会的評価を下落させたと判断できる場合、名誉毀損が成立するのです。

また、この事実とは真実ではなく虚偽の事柄である必要があります。例えば、「このお店は従業員にサービス残業を強いるブラック企業である」と書き込まれたとしましょう。しかし、ある企業がブラック企業であるかどうかはブラック企業の明確な基準が存在しないため、事実に該当するかは議論を要するところです。この場合、従業員にサービス残業を強いるのが本当だったとしても、事実とは捉えられず、名誉毀損が成立しない可能性は十分考えられます。

仮処分により、Yelpの口コミを削除請求する方法

Yelpの場合、口コミを投稿した人は誰か分かるため投稿者特定の手続きは必要ないケースが多いでしょう。

裁判所に対して申し出するというと、裁判提起をイメージする方もいるでしょう。しかし、口コミ削除の場合、命令が出るまで時間を要してしまうため、裁判を提起するケースは少ないです。この場合、裁判より迅速な手続きである仮処分の手続きを行うのが一般的です。仮処分とは、裁判を行う前に、要求が認められた状態を実現させる手続きのことです。だいたい1~2か月程度で仮処分命令が出されます。仮の命令といえども、裁判所から出されたものなので、サイト側は削除請求に応じるでしょう。仮処分では裁判で審理は行いませんが、それでも法的な議論を行う必要はあります。どういった法的な権利が侵害されているか、なぜ侵害されているか明確に述べなくてはいけません。こうした主張は素人だけでは難しいため、ネット上の誹謗中傷に強い弁護士へ依頼するのをおすすめします。

仮処分により、Yelpの口コミの投稿者を特定する方法

仮処分では削除請求だけでなく、投稿者を特定することが可能です。ただ、Yelpの場合、その他多くの口コミサイトと異なり、口コミを投稿した人は誰か分かります。このため、投稿者特定の手続きは必要ないケースがほとんどでしょう。念のため、仮処分による投稿者特定の手続きの流れを説明します。まず、サイト側に対し、投稿者のIPアドレスの開示請求を行います。請求が認められIPアドレスを入手できたら、次は投稿を行ったインターネット接続環境を提供するプロバイダに対し、投稿者の個人情報の開示を求めます。つまり、2段階の手続きが必要となるのです。面倒だと感じるかもしれませんが、損害賠償請求したいなら、投稿者の特定は不可欠な手続きです。

まとめ

Yelpに寄せられた口コミによる誹謗中傷・風評被害の対策法に関して解説してきました。Yelpでは、ネガティブな内容も投稿OKなので、誹謗中傷の口コミが投稿される危険性も少なくありません。まず、サイト上の問い合わせフォームを利用し、削除請求を行いましょう。サイト側で対応してもらえないのなら、名誉毀損を主張し、削除請求や投稿者特定の手続きを開始しましょう。法的な主張が求められるため、ネット上の誹謗中傷に強い弁護士への依頼がおすすめです。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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