e戸建ての掲示板投稿の削除依頼の方法とは
最近はマンション人気が高まっているとはいえ、結婚や出産を機に新築一戸建てに住みたいと考える人達はまだまだたくさんいます。戸建て住宅は多くの人にとって数十年にわたる住宅ローンを組んで購入する高額の買い物です。このため、購入検討者はハウスメーカーの口コミ情報を仕入れて慎重に検討しようと考えます。このようなニーズに応えるサイトとしてe戸建てという匿名掲示板があります。もっとも、e戸建てに寄せられるのは良い情報ばかりではありません。時には同業者などによって悪意のある誹謗中傷が投稿されることもあります。そこで、e戸建てに誹謗中傷を書き込まれた場合の対処方法について説明します。
この記事の目次
e戸建てに関する解説
e戸建ては、「一戸建て購入検討者を応援する口コミ掲示板サイト」と称してミクル株式会社が運営する匿名掲示板です。主にハウスメーカーについて住宅の施工品質や担当者の対応などについての口コミが多く寄せられています。
戸建て住宅は、建売住宅と注文住宅に大きく分けられます。建売住宅とは、ハウスメーカーが自ら設計し完成させた住宅を土地とセットで販売するものです。これに対し、注文住宅とは、施主の希望に沿ってハウスメーカーが住宅の設計や建築を行うものです。注文住宅は依頼してみないと自分のイメージ通りの住宅を建築してもらえるかがわからないため、検討者はハウスメーカーの選定にあたって信頼できる会社であるか慎重に情報収集しようと考える傾向にあります。一方、建売住宅においては建物完成後に現物を見て購入することが原則となるためイメージの齟齬は生じにくいといえます。もっとも、最近は購入後に生じた不具合について無償または安価で補修する独自のアフターサービスを付けている会社が増えているため、注文住宅同様に建物品質やアフターサービス対応について事前に情報収集したいというニーズはあります。
e戸建てでは、建売住宅と注文住宅のいずれについてもハウスメーカーごとにスレッドが立てられており、購入検討者としては網羅的かつ豊富な情報が入手できるメリットがあります。e戸建ては購入検討者に人気のサイトであるが故に、ひとたび誹謗中傷の書き込みがされるとハウスメーカーへの風評被害は計り知れません。
e戸建てではどのような風評被害があるのか
e戸建てにおいては、ハウスメーカーの同業他社によって誹謗中傷が書き込まれることがあります。例えば、「A社の使用している建築資材は粗悪な品であるがリコール隠しをしている」というような建物の品質についての悪評です。建物の品質は、検討者にとって最も気になる点ですので、このような誹謗中傷は直ちにハウスメーカーの売上の減少につながるといえます。また、その会社に恨みをもって辞めた元社員による誹謗中傷もあり得ます。例えば、「B社はノルマがきつく営業がしつこいから問合せしない方がいい」などといった会社のイメージを損ねる悪評が書き込まれることがあります。このような誹謗中傷が書き込まれた場合、これから問合せをしようと考えていた検討者としては、無理やり契約させられるのではないかと不安を感じ、問合せをやめてしまう可能性があります。これによって、ハウスメーカーは貴重な見込み客を失うといった被害を受けることになります。
利用規約違反で削除請求する方法
e戸建てに誹謗中傷が書き込まれた場合、各スレッド内にある削除依頼フォームから削除請求をする方法があります。削除依頼フォームを表示するには、各スレッドまたは各コメントにある「削除依頼」ボタンをクリックします。
表示される削除依頼フォームは次のとおりです。
削除依頼フォームには、①氏名、②削除を求める理由、③立場、④削除依頼の詳細をそれぞれ入力して送信します。②削除を求める理由および③立場は、プルダウンから近いものを選択します。削除依頼において最も重要となるのは、④削除依頼の詳細です。この項目は自由記載となっていますので、削除を求める投稿のレス番号を漏れなく記入した上で、その投稿が利用規約における投稿削除基準のいずれに抵触しているのか等について具体的に説明する必要があります。
e戸建ての利用規約は、同じ会社が運営する匿名掲示板であるマンションコミュニティと同一となっています。利用規約では投稿削除基準として、以下に該当する投稿について運営者が削除することが定められています。
e戸建てに対する削除請求が認められた場合、削除された投稿には以下のような表示がされます。
e戸建ては比較的対応が早く、問題のある投稿については削除依頼から1週間程度で削除されます。したがって、1週間から10日程度経過しても対象の投稿が削除されない場合には削除が認められなかったと判断されます。
建物の品質に関する誹謗中傷が書き込まれた場合
「A社の使用している建築資材は粗悪な品であるがリコール隠しをしている」といった建物の品質に関する誹謗中傷については、まったくの事実無根であれば名誉毀損となり得ます。もっとも、利用規約違反に基づいて運営者に直接削除依頼をする場面において名誉毀損の主張をするだけでは削除が受け入れられにくい点には注意が必要です。なぜなら、名誉毀損が成立するには書き込まれた内容が事実と異なることが必要ですが、運営者にはA社がリコール隠しをしているか否かに関して事実関係を調査する手段がないためです。
そこで、施工品質に関する誹謗中傷が書き込まれた場合には、投稿削除基準のうち「当サイト及び他の企業もしくは第三者に不利益を及ぼすもの」に該当すると主張することが考えられます。建築資材に関するリコール隠しをしているという内容は極めて重大な内容であることから、それが真実であってもなくてもそのような評判が立つこと自体、A社に大きな不利益を及ぼすものといえるためです。
会社のイメージを損ねる誹謗中傷が書き込まれた場合
「B社はノルマがきつく営業がしつこいから問合せしない方がいい」といった会社のイメージを損ねる誹謗中傷については、投稿削除基準のうち「物件購入の意志を妨げようとする悪意あるもの」に該当するとの主張が考えられます。一般的に、不動産営業については一度問合せをすると何度も連絡が来て対応に困るというイメージが根強くあります。このため、営業がしつこいという口コミがあると、問合せを躊躇するようになる人は多いはずです。そうだとすれば、「営業がしつこいから問合せしない方がいい」という誹謗中傷はそのハウスメーカーからの物件購入を阻止しようとする悪意のある投稿といえます。
違法だとして削除請求する場合の例
誹謗中傷の書き込みが違法になる場合で典型的なのは名誉毀損です。名誉毀損は、原則として人の社会的評価を低下させる事実が書き込まれた場合に成立します。ただし、投稿された事実が真実である場合または真実であると信じるべき正当な理由・根拠がある場合には名誉毀損は成立しません。名誉毀損の成立要件に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
上で例に挙げた「A社の使用している建築資材は粗悪な品であるがリコール隠しをしている」という誹謗中傷は、場合によってはA社の法令違反ともなりかねない内容です。したがって、A社の社会的評価を低下させる事実といえ、名誉毀損が成立する可能性があります。誹謗中傷が違法行為となる場合には、削除依頼フォームからの削除請求だけでなくプロバイダ責任制限法に基づくサイト管理者またはホスティングプロバイダに対しての送信防止措置依頼を行う方法もあります。送信防止措置は削除と同じ効果をもたらします。もっとも、送信防止措置を行うかの判断は依頼を受けたサイト管理者等の裁量に任されているため、直接サイトの削除依頼フォームから削除を求める場合と大きく結果が変わらないことも多いといえます。
仮処分による削除
以上みてきたような運営者に直接削除依頼をする方法は迅速な解決が可能である一方で、運営者の判断次第では削除されないこともあります。このような場合に強制的に削除を求める方法として、裁判所を通した仮処分の手続を利用するものがあります。仮処分は正式な裁判手続とは異なる仮の手続であり、通常であれば1~2か月程度と比較的早く結論が出ます。投稿の削除を求める仮処分に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
仮処分による投稿者特定
誹謗中傷の書き込みを削除するだけでなく発信者情報開示請求によって投稿者を特定することもできます。例えば、投稿者に対して風評被害についての損害賠償(慰謝料)を請求したい場合や二度と同じことをしない旨の誓約を取りたい場合、また悪質なケースについて刑事告訴をする場合などに、投稿者を特定することが必要となります。発信者情報開示請求に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。
発信者情報開示請求では、投稿者のIPアドレス等から投稿者が契約しているインターネットサービスプロバイダを割り出し、そのプロバイダから投稿者の個人情報の開示を受けることになります。ただ、個人情報は秘匿性の高い情報であるため、仮処分手続によらない限りプロバイダは発信者情報の開示に応じないことが一般的です。したがって、投稿の削除だけでなく投稿者の特定も行う場合には最初から仮処分手続を利用することが得策です。
まとめ
e戸建ては閲覧する購入検討者が多いため、悪質な誹謗中傷が書き込まれればハウスメーカーが被る風評被害は非常に大きなものとなります。特に建売住宅においては完成から売却までを短期間で完了させることによって経営が成り立っていることが通常であるため、誹謗中傷が書き込まれた場合には損害を最小限にとどめるため早期に対処する必要があります。仮処分による投稿の削除請求をする場合や投稿者を特定するため発信者情報開示請求を行う場合には裁判所を通じた手続となることから、弁護士へ依頼をしないと対応が難しいといえます。そして、ネット上の誹謗中傷や風評被害への対策はITに関する専門的な知識が必要となるため、この分野について経験豊富な弁護士に相談することが重要です。
カテゴリー: 風評被害対策