YouTubeで未成年が収益化した場合、保護者が知っておくべきリスクとは?
いまや、手軽にYouTuberになれる時代になり、未成年がYouTuberとして活躍する事例も増えています。
しかし、未成年がYouTuberになる場合、未成年に特有の問題があることも理解しておくべきです。
そこで、本記事では、未成年の子供がYouTubeを収益化する場合に、保護者が知っておくべきリスクについて解説します。
この記事の目次
未成年の子供がYouTubeを収益化するには
まず、YouTubeに動画を投稿するには、YouTubeアカウントを作成する必要があります。もっとも、アカウント作成には年齢制限があります。
YouTubeアカウント作成は13歳以上
YouTubeのアカウントはGoogleアカウントと紐づいているため、Youtubeアカウント=Googleアカウントとなります。そして、YouTubeのガイドラインによると、アカウントを作成できるのは13歳以上です。
したがって、未成年であってもアカウントの作成は可能です。
なお、アカウント設定時に生年月日を入力する必要があり、18歳未満では年齢制限によって見られないコンテンツも一部存在しますが、アカウントを作成すれば、動画やコメント投稿もできるようになります。
最近では、ファミリーチャンネルとして兄弟姉妹で出演したり、小学生YouTuberが活躍したりすることも珍しくありません。この場合、子供は出演しているだけで、アカウントは親が作成したもの、というのが実情です。
したがって、13歳未満の子供が親の知らないうちに勝手にYouTubeで動画を投稿するということは、基本的には起こりにくいといえます。
逆に言えば、子供が13歳以上の場合には、親が知らないうちに子供が自分のアカウントを作成し、動画を投稿することが可能になってしまうのです。
したがって、13歳以上の子供の親としては、自分の子供がYouTubeに動画を投稿しているかどうか確認しておくべきでしょう。
YouTubeの収益化は18歳以上
YouTubeへの動画投稿を個人的な趣味として行うだけなら13歳以上の未成年でれば十分可能です。しかし、YouTubeで収益化するには、YouTubeパートナープログラムへの参加を申請し、承認されることが必要です。
上の表は収益化機能を有効にするための最小限の資格要件ですが、登録者数がいくら多くても18歳以上でないと広告収入を得ることはできないとされています。
広告収入の仕組み
ここで、YouTubeからの主な収益源である広告収入について少し解説します。
動画の収益化を有効にした場合、動画に表示される広告にはいくつかの種類があり、基本的にはテレビのコマーシャルとよく似ています。
具体的には、Googleには広告主から広告料が支払われており、YouTubeに広告を付けた動画を投稿することで、動画投稿者がGoogleから上記広告料の一部を得られる仕組みです。
Google AdSenseアカウントは18歳以上でないと作成できない
YouTubeの動画投稿による広告収入は、AdSense経由で支払われるため、Google AdSenseのアカウントを作成する必要があります。
しかし、Google AdSenseのアカウントは18歳以上ででないと作成できないことから、18歳未満は、YouTubeを収益化することはできないのです。
したがって、18歳未満がYouTube動画を収益化しようと考える場合には、親がGoogle AdSenseのアカウントを作成し、管理する必要があります。
保護者の知らない間に子供がYouTubeで収益を上げていたということは起こりにくいのですが、子供が親のアカウントを無断で使用するケースもあるため、注意が必要です。
YouTubeの収益化は保護者の税金に影響
未成年の子供にとって、YouTube動画の収益化は、お小遣い稼ぎのような軽い気持ちで行われるでしょうが、収益の額や家庭状況によっては、親の納税額に影響を及ぼすことがあります。
子供が16歳以上23歳未満の場合、一定の要件のもと保護者の所得から一定の金額が控除される「扶養控除」という制度があります。
しかし、子供の収入が一定額を超えると、親は扶養控除を受けられなくなり、結果として納税額が増えてしまうのです。
2021年12月時点において、扶養控除の対象となる子供の年齢と控除額は以下のとおりです。なお、16歳未満の子供には児童手当が支払われるため、扶養控除の対象とはなりません。
※税制は頻繁に改正されるので、必ず最新の情報をご確認ください。
その年12月31日現在の子供の年齢が
- 16歳以上19歳未満の場合、子供一人につき38万円
- 19歳以上23歳未満の場合、子供一人につき63万円
保護者の所得から上記金額が控除されることになります。この結果、保護者の課税所得が少なくなり、納税額もそれに伴って減額されるという仕組みです。
また、保護者が扶養控除を受けるための要件として、扶養されている子供の所得額に制限があります。
2021年12月時点の税制においては、子供の合計所得金額が103万円(勤労学生控除も受ける場合には130万円)以下であることが保護者が扶養控除を受けるための要件です。
この合計所得金額とは、収入から経費を差し引いた金額です。
例えば、子供がYouTube動画の投稿によって50万円の収益を得ており、経費( 機材費、交通費、衣装費など )が5万円であるという場合には、子供の合計所得金額は45万円(50万円−5万円)となります。
この場合、扶養控除の要件を満たすため、保護者の納税に影響はありません。
ただし、子供がYouTubeで収益を得るほかにアルバイトもしている場合、アルバイトについての給与所得(給与収入から給与所得控除を差し引いた金額)を合算して判定するので注意が必要です。
子供がYouTubeでトラブルに巻き込まれたら
YouTubeは、世界中の人々が日々利用しており、動画を投稿して情報を積極的に発信する立場になる場合は特に、トラブルに発展しやすいため注意が必要です。
保護者が知っておくべきリスク
インターネットで発生するトラブルは多岐にわたり、もちろんYouTubeも例外ではありません。例えば、本名や住所など個人情報が流出するリスクとは常に隣り合わせです。
また、YouTube動画は拡散力は高いので、一度炎上してしまうと、YouTube内だけでなく様々なSNSでの誹謗中傷に発展するリスクが高いことも理解しておく必要があります。
特に高校生などの学生がYouTubeに動画を投稿する場合には、インターネット上のトラブルが学校など現実世界でのいじめにつながるリスクもあるでしょう。
当然、自分が加害者になるリスクもあります。
したがって、保護者も動画等の配信内容を把握しておくとともに、トラブルに巻き込まれないためにはどのような内容であればよいかを子供と一緒に考えることが何よりも大切です。
保護者は対処法も知っておくべき
しかし、事前にどれだけ対策していても、トラブルに巻き込まれる可能性はゼロではないということを理解しましょう。
だからこそ、保護者は、トラブルに巻き込まれた場合の対処法についても知っておくべきです。
例えば、インターネット上で悪質な誹謗中傷を受けた場合には、誹謗中傷コメントを削除したり、投稿者を特定して慰謝料を請求することが可能な場合があります。
このような被害を受けた場合には、初動の速さが重要です。できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。
以下の記事では、YouTubeのコメントを削除する方法やコメント投稿者を特定する方法について詳しく解説しています。
また、自分が加害者になった場合(または加害者にならないため)の対処法についても以下の記事で解説してますので、ぜひご覧ください。
YouTubeの子供向け動画で収益減少?
小学生以下がYouTubeの動画に出演している場合、同年代に人気のゲームやおもちゃに関するものなど子供向けの内容になっていることが多く見られます。
ここで、YouTubeで子供向けの動画を投稿する場合に知っておくべき法律があります。
それは、児童オンラインプライバシー保護法(Children Online Privacy Protection Act 、以下「COPPA」といいます) です。
この法律は、YouTubeの子供向けアプリ「Youtube Kids」と非常に深い関係があります。
児童オンラインプライバシー保護法(COPPA)とは
COPPAは、1998年10月に制定されたアメリカの法律で、13歳未満の児童から個人情報を収集、利用、開示するウェブサイト事業者やオンラインサービス事業者に対して、児童の親への通知や同意を義務付けるものです。
これがなぜYouTubeと関係があるかというと、2019年9月、Googleは、保護者の同意を得ずに子供の利用者の個人情報を取得していたために、連邦取引委員会(FTC)から訴訟を起こされ、最大で1.7億ドルの和解金を支払うこととなりました。
この和解を受けて、YouTube上の子供向け動画やチャンネルにおいては、視聴者の属性などの情報に合わせて広告を表示するパーソナライズド広告などの一部機能が制限されているのです。
このことから、YouTubeの動画が子供向けであると判断された場合、動画に広告をつけることができず、広告収入が大きく減少する可能性があります。
YouTube で子供向け動画と判断される基準
では、どのような動画が子供向け動画と判断されるのでしょうか。
YouTubeのガイドラインにおいて、チャンネルや動画が子供向けであるかを判断するための要素が明示されているので見てみましょう。
・動画のテーマ(例: 未就学児向けの教育コンテンツ)
・子どもの視聴者を想定して作られた動画であるか(動画のメタデータとして示されているかなど)、また実際に子どもが視聴しているか
・動画に子役や子どものモデルが含まれているか
・アニメや漫画の登場人物など、子供の興味を引くキャラクター、有名人、おもちゃが動画に含まれているか
・動画で使われている言葉や表現は、子供が理解できることを想定しているか
・ごっこ遊び、簡単な曲やゲーム、早期教育など、子どもの興味を引くアクティビティが動画に含まれているか
・子ども向けの曲、物語、詩が動画に含まれているか
・動画の視聴者に関する経験的証拠など、動画の視聴者を特定する際に役立つその他の情報
・コンテンツが子どもを対象にアピールするものであるか
YouTubeヘルプ「コンテンツが「子ども向け」かどうかを判断する 」
上記要素を一つでも含むと自動的に子供向けと判断されるわけではないようですが、動画全体から判断して「主な視聴者として子どもを対象としている場合」には、子供向け動画と判断されてしまいます。
特に、動画に子供が出演している場合、それだけで子供向けの動画であると判断される可能性が高いので注意しましょう。
まとめ:未成年がYouTubeを収益化する場合、保護者は配信内容を把握しておこう
いまやYouTuberは、子供にとって憧れの職業になるほど人気です。確かに、自分の好きな事や共有したいことを発信し、さらに収益も得ることのできるYouTuberは魅力的に見えるかもしれません。
しかし、未成年を保護する観点から、未成年者がYouTube動画を投稿する場合、様々なリスクや制約があることを、未成年自身、そして保護者が十分に理解しておかなければなりません。
また、YouTubeでトラブルが発生した場合には、早期に対処することが何よりも重要です。
早期に対処するためには、保護者が日頃から配信内容をきちんと把握しておくとともに、トラブルが発生した場合の対処法を知っておく必要があります。
そして、実際に子供が誹謗中傷等のトラブルに巻き込まれた場合には、インターネットの問題に詳しい弁護士に速やかに相談しましょう。
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