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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

YouTuber・VTuber法務

他人のYouTube動画に付けられたコメントの削除申請方法

YouTuber・VTuber法務

YouTubeは世界最大級の動画共有サイトです。最近では、YouTubeで有名になったYouTuberが芸能界に進出するなどして、以前からの閲覧者だけでなく広く一般の人からの注目も集めています。

YouTube上の動画には閲覧者が自由にコメントを書き込める機能が付いています。コメント欄は誰でも閲覧することができるため、誹謗中傷が書き込まれた場合には大きな被害を受けることがあります。

ここでは、他人のYouTube動画にコメントが付けられた場合の対処方法について解説します。

YouTubeに関する解説

YouTubeは、アメリカ合衆国カリフォルニア州に本社のあるYouTube,LLCが運営する動画共有サイトです。2005年に設立された後、2006年にGoogle社に買収されており、現在はGoogle社の子会社です。 YouTubeではアカウント登録さえすれば、だれでも無料で動画をアップロードすることができるため、一般の人から芸能人まで全世界で多くの人が利用しています。実際に、自身の音楽や芸術、政治的言論から商品の紹介まで幅広い目的の動画がアップロードされています。また、アップロードされた動画はアカウント登録がなくても無料で閲覧することができます。この気軽さもあり、2016年12月時点でYouTubeは世界第2位の訪問者数を誇ったとの調査結果もあります。

YouTubeのコメントによる風評被害

YouTubeでコメントが削除されるケース

YouTubeの動画には、Googleアカウントを持っている人であればだれでも気軽にコメントを書き込める機能が付いています。このコメントに対しても、自由に閲覧者が返信をする機能があります。このため、動画や動画の出演者に対する誹謗中傷コメントが書き込まれることはもとより、他人の動画についてコメントをした場合に他の閲覧者から返信機能を用いて誹謗中傷のコメントを付けられることもあります。YouTubeは誰でも自由に閲覧することができますが、コメント欄も例外ではありません。

このため、YouTubeのコメント欄に誹謗中傷が書き込まれた場合、これにより被害者が受ける精神的苦痛は非常に大きいといえます。また、YouTubeのコメントは特別な設定をしない限りGoogleアカウントの登録名で投稿されます。Googleアカウントの登録名は多くの場合に本名となっているため、自分が軽い気持ちで本名により投稿したコメントに対して第三者から中傷コメントが付くこととなれば、本人と中傷内容が容易に結び付けられることになります。YouTubeのコメント欄は動画が削除されない限り残り続けます。このため、例えば、就職活動の際に会社がたまたまコメントを発見した結果、本人にとって選考上不利に働く可能性も否定できないのです。

YouTubeの利用規約違反によるコメント削除

YouTubeに誹謗中傷のコメントが書き込まれた場合に、まず取り得る手段はYouTubeに対して直接コメントの削除を要求する方法です。そのためには、問題となるコメントがYouTubeの利用規約上削除されるべきものとして定められているかを確認する必要があります。YouTubeが削除要求に基づいてコメントを削除するか否かは、あくまでも利用規約に基づいて判断されるためです。YouTubeのコミュニティガイドラインにおいては、以下に該当するコメントが削除の対象として定められています。

・ヌードや性的なコンテンツ
・有害で危険なコンテンツ
・不快なコンテンツ
・暴力的で生々しいコンテンツ
・嫌がらせやネットいじめ
・スパム、誤解を招くメタデータ、詐欺
・脅迫
・著作権侵害
・プライバシー侵害
・なりすまし
・子供の安全を脅かすもの

https://www.youtube.com/intl/ja/about/policies/#community-guidelines

誹謗中傷のコメントについて問題となりやすいのは、上記のうち「不快なコンテンツ」、「嫌がらせやネットいじめ」です。「不快なコンテンツ」について、YouTubeのコミュニティガイドラインは以下のように説明しています。

人種、民族、宗教、障がい、性別、年齢、国籍、従軍経験、社会階級、性的指向、性同一性に基づく個人または集団に対する暴力行為を助長または許容するコンテンツ、またはこうした特性に基づく差別を扇動するコンテンツ

https://www.youtube.com/intl/ja/about/policies/#community-guidelines

例えば、「〇〇人は出ていけ!」などというコメントは、人種差別を助長するコメントといえ、「不快なコンテンツ」に該当することになり削除を求めることができます。また、「嫌がらせやネットいじめ」について、YouTubeのコミュニティガイドラインでは以下のように説明されています。

嫌がらせ的な動画やコメントを YouTube に投稿することは許可されません。嫌がらせ行為が悪意のある攻撃にまで発展した場合は、ご報告いただければ削除することができます。それ以外は、多少の不愉快さを感じる程度であれば、無視してやりすごしてください。

https://www.youtube.com/intl/ja/about/policies/#community-guidelines

したがって、「このコメントした人は何もわかっていない」などという程度の批判的コメントだけであれば削除の対象となる可能性は低いのですが、「このコメントをした人は頭が悪すぎる!今度見つけたら徹底的に潰す」などという攻撃性の強いコメントが何度も執拗になされているようなケースでは「嫌がらせやネットいじめ」に該当するとして削除が認められる可能性があります。

YouTubeでコメント削除を求める方法

YouTubeで誹謗中傷のコメントをされた場合に、YouTube側に削除を求める一番簡単な方法として各コメントの報告機能を利用するやり方があります。手順は以下のとおりです。

・問題となるコメントにカーソルを置いて右上に三つの点が並んだマークを表示させる。
・右上のマークをクリックして表示される「報告」をクリックする。

・削除を求める理由をYouTubeのコミュニティガイドラインに照らし合わせて選択して「報告」をクリックする。

ただし、複数の動画にまたがって多くの誹謗中傷コメントがされている場合などは、すべてについてコメントから報告することは煩雑です。このような場合には、YouTube内の「報告ツール」を使用してガイドライン違反のコメントについて報告する方がよいでしょう。ただし、報告ツールを利用するためにはチャンネル登録が必要となります。

YouTube動画への誹謗中傷コメントの削除申請方法とは?弁護士が解説

また、誹謗中傷のコメントが後で説明する名誉毀損やプライバシー侵害にまで及んでいる場合には、「法的問題のウェブフォーム」から削除要請を行うことができます。このフォームをクリックすると、申請理由を選択する画面が現れますので該当するものを選択します。なお、「不当な扱い/嫌がらせ行為」を選択するとコメントの報告機能を利用するように誘導されて次に進めませんのでご注意ください。

申請理由を選択して「次へ」をクリックすると、それぞれの理由ごとに異なった詳細内容を記入するページが表示されます。ここで、問題となる動画URLやコメントを特定して削除を要請することになります。

YouTube動画への誹謗中傷コメントを利用規約違反に基づき削除請求する方法に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:YouTube動画への誹謗中傷コメントの削除申請方法とは?弁護士が解説

違法であるとしてコメント削除請求をする場合の例

誹謗中傷のコメントに対しては、単に利用規約違反となるだけではなく違法であるケースもあります。違法となる例としてよくあるのは名誉毀損です。YouTubeに投稿されたコメントが名誉毀損となるのは、そのコメントの内容が人の社会的評価を低下させる事実といえる場合です。ただし、投稿された事実が真実である場合または真実であると信じるべき正当な理由・根拠がある場合には名誉毀損は成立しません。 名誉毀損の成立要件に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:名誉毀損で訴える条件とは?認められる要件と慰謝料の相場を解説

例えば、芸能人Aが配信する動画のコメント欄にGoogleのアカウント名である本名で書き込んだコメントに対し、「このコメント主は芸能人Aと不倫しているOL」などという返信コメントが付いたとします。不倫をしていることは一般的に人の社会的評価を低下させる事実といえますので、事実無根である場合には名誉毀損が成立する可能性があります。コメントが違法となる場合、プロバイダ責任制限法に基づきサイト運営者であるYouTubeに対して送信防止措置依頼を行うこともできます。これによって、コメントが削除された場合と同じ結果を得ることもできます。ただし、あくまでもYouTube側の判断によって行うものであるため必ずしも削除されるとは限らない点には注意が必要です。

仮処分手続を利用したコメント削除

YouTube側に直接コメントの削除依頼をしたのに対応してもらえない場合、裁判所を通じた仮処分申立てをする必要があります。仮処分は簡略な裁判手続であり通常約1~2か月程度で結論が出るものです。仮処分によって削除すべきとの結論が出れば、YouTubeはこれにしたがってコメントを削除することになります。投稿の削除を求める仮処分に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:誹謗中傷対策において重要な「削除仮処分」とは

仮処分による投稿者特定

誹謗中傷のコメントによって精神的苦痛を受けたり実害が発生したりしているような場合には、コメントをした投稿者を特定して損害賠償請求などを行うことも選択肢となります。投稿者の特定のための手続を、発信者情報開示請求といいます。発信者情報開示請求に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:発信者情報開示請求とは?やり方と注意点を弁護士が解説

国際裁判管轄

YouTubeを運営するYouTube,LLCは、アメリカ合衆国に本社のある外国法人です。このため、日本の裁判所においてYouTubeに対する訴訟手続を行うことができるのかが一応問題となります。ただ、YouTubeの場合は少なくとも日本在住者向けのサイトが存在していますので、民事訴訟法が日本の裁判所に訴訟提起ができると定めるケースの一つである「日本において事業を行う者」に該当します。したがって、日本の裁判所においてYouTubeに対するコメント削除を求める仮処分申立てや発信者情報開示請求を行うことは可能です。国際裁判管轄に関しては、下記記事にて詳細に解説しています。

関連記事:FacebookやAmazon等の海外サイトと国際裁判管轄

まとめ:ネットの誹謗中傷でお悩みなら弁護士へ相談を

YouTubeは閲覧者数が非常に多い動画共有サイトであるため、誹謗中傷のコメントがされた場合に被害者が受ける精神的苦痛や実害は大きなものになりがちです。WEB上の誹謗中傷は拡散しやすく、また削除しない限り残り続ける性質がありますので、被害を受けたら早急に弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報は「デジタルタトゥー」として深刻な被害をもたらしています。当事務所では「デジタルタトゥー」対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。

モノリス法律事務所の取扱分野:デジタルタトゥー

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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