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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

チケット以外の転売も違法?被害を防ぐ具体的な企業側の対策とは

2020年秋、ユニクロが、ジル・サンダーとコラボしたコレクション(+J)を発売しましたが、転売目的で多数購入され、メルカリなどのフリマアプリへ出品されました。

また、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、マスクやアルコール消毒液などが買い占められて転売されたことなどもあり、転売は社会問題になっています。

フリマアプリやネットオークションがますます普及する中、こうした転売行為にお悩みの事業者の方は多くいらっしゃることと思います。

今回は、そうした事業者の方に向けて、チケットや医薬部外品、中古品などのケース別に転売に適用される法律と具体的な転売対策を解説します。

転売は、違法?適法?

転売とは、買った商品を他人に売ることです。その商品が新品であっても、中古品であっても、購入した物を他人に売れば転売となります。フリマアプリやオークションサイトの利用者が増えている中、転売は今後も増えていくものと思われます。

また、いわゆる「転売ヤー」といって、品薄になりそうな商品を定価で大量に仕入れて高値で売るような人も現れており、問題となっています。

悪質な転売は、メーカーやアーティスト、チケット販売業者などさまざまな事業者へ損失をもたらします。

ただ、転売行為全てが違法となるわけではありません。転売の対象となる商品によって適用される法律が異なり、その法律に違反した場合に違法となるのです。

転売行為に適用される法律とは

チケットの転売は、違法のイメージが強いかもしれませんが、チケットの転売であっても違法にならないケースもあり、チケット以外のものを転売しても違法になるケースもあります。

ここでは、チケット、医薬部外品や中古品の転売について適用される法律をそれぞれ解説します。

チケットの転売

チケットの転売については、2019年に施行された「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(チケット不正転売禁止法)が適用されます。

ただ、チケットの転売全てが禁止されているわけではなく、

  • 業として、興行主や販売業者の事前の同意なく、販売価格を超える金額で転売すること
  • 不正転売をするために、譲り受けること

が禁止されています。

ここでポイントとなるのは、「業として」という点です。

「業として」とは、「利益を目的として、反復継続して行っている」といった意味です。

そのため、「行こうとしていたが、急病などの理由で行けなくなったコンサートのチケットを定価で転売する」場合は不正転売とされる可能性は少ないといえるでしょう。

チケット不正転売禁止法に違反した場合、

  • 1年以下の懲役
  • 100万円以下の罰金

のいずれか、またはその両方を科される可能性があります。

医薬部外品の転売

医薬品は、薬機法に基づき、医薬品販売業の許可なく販売することができませんが、医薬部外品については、転売そのものは違法ではありません。

ただし、医薬部外品を転売する際、以下の行為は禁止されています。

  • その製品に認められていない効果を記載して販売(誇大広告)
  • 法定表示(製造販売業者の氏名や製造番号等)を消した状態で販売

製品に認められていない効果を記載して販売するなどして誇大広告規定に違反した場合、

  • 2年以下の懲役
  • 200万円以下の罰金

のいずれか、またはその両方を科される可能性があります。

また、2021年8月1日からは、課徴金制度が導入され売上の4.5%が課徴金として徴収されます。

医薬部外品の誇大広告については、以下の記事で詳しく解説しています。

中古品の転売

転売するために中古品を繰り返し仕入れて、ビジネスとして転売を行う場合は、古物営業法上の古物商の許可が必要になります。無許可で営業した場合、

  • 3年以下の懲役
  • 100万円以下の罰金

のいずれか、またはその両方を科される可能性があります。

自分の家にある中古品をフリマアプリなどで販売する場合は、許可は不要です。

また、古物商は、物品を仕入れる場合に仕入先の本人確認をしなければならない旨が定められています

ただ、オークションサイトやフリマアプリで商品を仕入れる場合には、こうした本人確認を行うのは困難な場合もあります。そうしたケースでは、本人確認義務を怠ったものとして古物営業法違反となる可能性があります。

企業側が取れる転売対策とは

転売対策としては、以下のものが考えられます。

  • 不正検知システムの導入
  • 初回価格と通常価格の差を小さくする

特に悪質な転売ヤーは、自動プログラムを利用して大量に注文しているケースがあります。そうしたケースを防ぐために、正常なログイン以外をはじくようなシステムを採用するのは効果的といえるでしょう。

また、商品によっては、初回価格と通常価格の差が大きく、同じ人間が違う人になりすまして何度も購入し、転売して利益を得ているようなケースも考えられます。その場合は、初回価格をあまり安くしすぎないこともポイントになるでしょう。

ただ、完全に転売を防ぐことは難しいのが実情です。悪質な転売にお悩みの場合は、法律的な観点から転売を防ぐために弁護士へ相談するのがおすすめです。

まとめ

近年ますます盛んになっている転売ですが、転売の対象となる商品により、適用される法律は異なります。

フリマアプリやオークションサイトの利用者が増える中、転売対策の重要性は今後も上がっていくでしょう。転売対策をしっかり行いたい場合は、関連する法律に詳しい弁護士へ相談しましょう。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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