Twitterの歌ってみた動画は著作権法に違反しないのか
2006年に産声を上げたSNS・Twitterは短文・リアルタイムでのコミュニケーション特徴です。動画のアップロードも可能で、その長さは最大140秒で、ツイートの文字数制限には含まれません。
140秒という時間制限が、むしろ気軽に楽しむという魅力ともなり、Twitterに歌ってみた動画をアップする人が増加しています。ではTwitterでの歌ってみた動画は著作権法に違反しないのでしょうか。
この記事の目次
動画投稿と著作権法
動画を投稿する場合、著作権法との関係では、JASRACのような著作権管理団体と契約を締結しているか否かがポイントとなります。
JASRACとは
JASRACの正式名称は、「一般社団法人日本音楽著作権協会」です。英語表記「Japanese Society for Rights of Authors, Composers and Publishers」にあるように、国内の作詞者(Author)、作曲者(Composer)、音楽出版者(Publisher)等の権利者から著作権の管理委託を受け、海外の著作権管理団体とレパートリーを管理し合う契約を結んでいる団体です。
このJASRACが、膨大な数の管理楽曲をデータベース化し、演奏、放送、録音、ネット配信などの形で利用される音楽につき、利用者が著作権の手続きができる窓口となっており、使用料を、権利を委託した作詞者・作曲者・音楽出版者などに定期的に分配しています。
YouTubeとJASRAC
YouTubeは、JASRACと包括契約を締結しているので、YouTubeに投稿する場合、JASRACが管理している楽曲や歌詞であれば、原則として、著作権法に抵触することなく使用することができます。本来であれば個々の利用者がJASRACに支払わなければならない楽曲使用料を、YouTubeが肩代わりしてくれているからです。
管理する楽曲であるどうかは、「JASRAC作品データベース検索サービス」で検索することができます。
ただし、管理されているのは一般的に楽曲や歌詞の著作権のみであり、JASRACは著作隣接権の管理を行っていません。だから、レコード製作者などの別途権利者の許諾を得る必要があります。この問題については後述します。
そこで、著作隣接権に関しては、個別に交渉し、許可を得なければならないということになるのですが、実際には難しいので、YouTubeに歌ってみた動画を投稿する際には、オフボーカル音源や利用許諾がされている二次創作オフボーカル音源を探したり、自ら音源を作成したりする方がいいということになります。
TwitterとJASRAC
Twitterのタイムライン上に流れる、歌ってみた動画は、主に次のいずれかの方法によるものです。
- YouTubeに投稿された、歌ってみた動画のURLをTwitterに貼る
- Twitterの動画投稿機能を用いて、歌ってみた動画をアップロードする
1の方法の場合には、著作権法違反とはなりません。YouTubeがJASRACと包括契約を結んでいるからです。
2の方法の場合には、JASRACが管理する楽曲を演奏する場合、著作権法違反となります。TwitterはJASRACと包括契約を結んでいないからです。
JASRACには、
JASRACと利用許諾契約を締結している以下のサービスでは、一般ユーザーの皆さまが個別にJASRACへ利用許諾手続きを行なわなくともJASRAC管理楽曲を利用したUGC(動画・歌詞)をアップロードすることが可能です。
「利用許諾契約を締結しているUGCサービスの一覧」
とあり、「JASRAC管理楽曲を含む動画をアップロード可能なサービス」のリストにはYouTube以外にも、Instagram、Twitch、TikTok、LineLiveなどの多くのサービス名がありますが、Twitterはありません。
よって、通常は、「YouTubeに投稿された、歌ってみた動画のURLをTwitterに貼る」という方法をとるべきです。
JASRACとの個人契約
Twitterの動画投稿機能を用いて歌ってみた動画をアップロードすると、著作権法違反となるわけですが、どうやってもダメというわけではありません。個人でJASRACと契約すれば、権利侵害せずにJASRAC管理楽曲をTwitterにアップすることができます。
個人契約の手続き
個人がTwitterに動画を投稿する場合には、「インタラクティブ配信」に該当し、動画投稿で収益を得ることはないので「非商用」であり、「個人」となります。また、Twitterに投稿した画像はダウンロードできないので、「ストリーミング」となります。
JASRACの「非商用配信の場合で包括的利用許諾契約によるときの使用料早見表」によれば、上の場合、
1曲月額使用料150円・年額使用料1200円・9曲以上の年額使用料は一率10000円
となっています。
年額で一律10000円と個人で払えない額ではないので、YouTubeにリンクを貼るよりも、再生回数が伸びることを期待して、JASRACと個人契約を結ぶことを考えるのも、いいのではないでしょうか。
なお、インターネット上で配信することに係る手続き(インタラクティブ配信)は、アカウントごとに行いますが、手続きは、
- J-TAKT(オンラインライセンス窓口)で申込みを行う
- プリントアウトした基本契約書を郵送する
- サービス概要書(企画書等、サイトの内容および楽曲の利用方法の詳細が分かる資料)を提出する
- JASRACより、許諾通知メールが送信される
- 使用料計算や権利者への分配データ作成のため、利用開始後に利用曲目や収入報告を提出する
といったように、それほど面倒ではありません。
有名アーティストが、Twitterの動画機能を使ってカバー曲を演奏する例が見られますが、彼らは個人契約を結んでいるのです。
JASRACとの個人契約と著作隣接権
JASRACと個人契約を締結した場合にも、著作隣接権の問題は残ります。
市販のCDやダウンロードした音源を利用する場合、著作権とは別に、著作隣接権(音源製作者やアーティストの権利)の許諾を得る必要がありますが、先に述べたように、JASRACは著作隣接権の管理を行っていないので、別途権利者の許諾を得る必要があります。
念のために整理しておくと、「利用できる音源」は、
- 自身で演奏したもの
- 自身の演奏に合わせて歌唱したもの
- 自身で制作したMIDI
- サイト運営事業者がレコード会社等から許可を得ている音源
等であり、「レコード製作者等の許諾を得る必要がある音源」は、
- レコード会社等の許可を得ていないCD音源、ダウンロード音源
- カラオケ事業者の許可を得ていない伴奏音源
- アーティストのプロモーションビデオ、TV番組、映画
等です。
また、楽曲を編曲する(訳詞を付ける、替え歌にする)場合には、編曲(訳詞、替え歌)に関する許諾を得る必要がありますが、JASRACは編曲(訳詞、替え歌)に関する権利を管理していないので、利用する楽曲の権利者(作詞者、作曲者、音楽出版社等)の許可が必要となります。
まとめ
外部リンクを辿らずに、再生ボタンをクリックするだけで動画が視聴できるという手軽さからも、Twitterに歌ってみた動画を直接投稿することが人気ですが、自分が制作した楽曲や著作権が切れたクラシック以外の楽曲を用いる場合以外には、著作権侵害となります。
膨大なアカウントが存在するTwitterでは厳格な取り締まりをすることは事実上不可能に近いので、放置されているのですが、この状態がいつまでも続くという保証はどこにもありません。
YouTubeへリンクを貼るか、JASRACと個人契約をするのが、賢明といえます。
こちらの動画でも解説していますので、あわせてご覧ください。
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カテゴリー: YouTuber・VTuber法務
タグ: YouTuber:動画作成