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YouTuber・VTuber法務

YouTubeでの商品紹介はどこまでできる?著作権法との関係を解説

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YouTubeでの商品紹介はどこまでできる?著作権法との関係を解説

近年、YouTubeやTiktokなどの動画プラットフォームにおいて、商品に関する使用感をレビューする動画が人気があります。特に、視聴者が高額商品を購入する場合、失敗したくないと考え、実際に使用している人の評判を調べる傾向にあります。また、現物を見ずにインターネットで購入する人が増えていることも、商品紹介動画が人気となる一つの理由といえます。

動画で特定の商品を批評する場合、法的に問題が生じることはあるのでしょうか。そこで本記事では、商品紹介動画を制作し、投稿する場合の注意点を解説します。

YouTubeの商品紹介動画とは

YouTubeの商品紹介動画とは

一般的に、商品紹介動画とは、特定の商品を使用している様子や感想などをまとめた動画のことをいいます。このような動画は閲覧プレビュー数も稼ぎやすく、多くのYouTuberが商品紹介動画を投稿しています。

企業からの広告やプロモーションの一環として制作・配信されている「商品の良さ」を伝える内容のものが多くありますが、なかには「商品を使用した際の不満」など、ネガティブな感想を率直に動画にしているものもあります。

消費者からすれば、失敗しないために商品の良くない点も知りたいと考えます。このため、ネガティブな商品紹介動画にも一定の需要があります。

商品の紹介やレビューに関しては、ブログ記事やAmazonなどの商品レビュー機能があるサイトにおいても投稿されることがありますが、動画だとより伝わりやすく、信憑性が増すのが特徴です

特に、BGM、効果音や動画編集など様々な工夫がされている動画は、文字だけよりも非常に見やすく面白いため人気があります。

YouTubeの商品紹介動画は法的に問題があるか

YouTubeの商品紹介動画は法的に問題があるか

YouTubeでの商品紹介動画は、制作時に複数の法律との観点で注意しなければなりません。

本記事では、主に「著作権法」について解説します。

著作権法とは

著作権法は、小説や映画、絵画等の著作物を保護し、創作へのインセンティブを付与することで、「文化の発展」に寄与することを目的とした法律です。

また、著作権法の特徴として、特許法などとは異なり、国に登録等をすることなく、著作物を創作した時点で当然に権利が発生するという点が挙げられます。

そして、商品紹介動画でよく使用される、他人が撮影した「商品写真」や広告宣伝のための「WebサイトのUI」「ネットショッピングの販売画面」「BGM」等は、著作物に該当する可能性があります。(著作権法第10条1項)。

第十条(著作物の例示)
 この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二 音楽の著作物
三 (略)
四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五 (略)
六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七 (略)
八 写真の著作物
九 (略)

著作権法第10条1項

著作権法上の問題点

したがって、「商品写真」等を商品紹介動画に使用する場合には、著作権を侵害しないように注意する必要があります。

これらすべてが著作権法により必ず保護されるとは限りませんが、商品の配置や角度などに工夫を凝らした写真や個性の表れているWebサイト等には、原則、著作物性が認められます

利用する商品写真等が著作物に該当する場合、フリー素材など例外的な場合をのぞいて、権利者に無断で利用すると違法となる可能性があります。

YouTubeの商品紹介動画で著作権侵害を回避する方法

著作権侵害を回避する方法

著作権の侵害を事前に防止するには、おおむね次の2つの方法が考えられます。

  • 著作権者に許諾を得る
  • 正しい方法で引用する

著作権者に許諾を得る

まずは、著作権者に許諾を得られるかどうかを確認することが大切です。

その際、許諾を得られたらどのような態様で利用してもいいということはありません。著作権者に、「こんな利用方法であれば許諾しなかった」とトラブルになることも少なくありません。

そのため、許諾を得る際は、利用方法等の許諾の範囲を明確にすることがポイントです。動画制作において、商品や著作権者へのリスペクトは忘れないようにしましょう。

正しい方法で引用する

著作権者が不明な場合や許諾を得られなかった場合、他人の著作物を一切使用できなくなってしまうのかというと、そうではありません。

著作権法32条では、一定の要件を満たした引用であれば、著作権者からの許諾がなくても著作物の利用が可能とされています。

第三十二条(引用)
 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

著作権法第32条1項

引用の要件については、下記記事で詳細な説明をしているため、動画を制作される方は是非こちらの記事もご覧ください。

関連記事:著作権法の引用とは?適法に行うための4要件を解説

商品紹介動画が権利侵害となってしまう場合

商品紹介動画が権利侵害となってしまう場合

商品紹介の動画が違法となってしまうケースを、3点解説します。

商品紹介動画に映画の映像等を利用した場合

商品紹介動画において、映画やテレビ番組の映像・静止画を著作者に無断で使用することは著作権侵害に該当します。

映像を録画・キャプチャして動画に組み込む行為は複製権(著作権法21条)の侵害となります。また、動画をYouTubeにアップロードすることは公衆送信権(著作権法23条)の侵害です。

さらに、映像の出典や著作者名を表示しない場合は氏名表示権(著作権法19条)の侵害、映像を切り取り、加工、編集する場合は同一性保持権(著作権法20条)の侵害となる可能性があります。

特に商品紹介という商業目的での使用は、営利目的の著作権侵害として、より重い法的責任を問われる可能性があります。営利目的での著作権侵害は、悪質性が高いと判断されやすく、損害額も大きくなる傾向にあるため、民事的な責任においてより高額な賠償を求められる可能性があります。映画などの映像を利用する際は必ず著作権者から許諾を得なければなりません。

商品紹介動画に他人の音源を無断で利用した場合

商品紹介動画のBGMとして市販のCDやダウンロード配信用音源を無断で使用することは、著作隣接権の侵害に該当します。

YouTubeはJASRACと包括的な利用許諾契約を締結しているため、JASRAC管理楽曲の著作権については一定の条件下で処理されます。しかし、音源そのものには音楽制作者やアーティストに著作隣接権が認められており、これら権利者から個別の許諾を得なければなりません。

無断利用が発覚した場合、レコード製作者の複製権(著作権法96条)および送信可能化権(著作権法96条の2)、実演家の録音権・録画権(著作権法91条)および送信可能化権(著作権法92条の2)などに抵触するリスクがあります。

JASRACとの包括契約や著作権と著作隣接権についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:「歌ってみた」のYouTube投稿が著作権侵害になるケースを解説

商品紹介という商業目的での無断利用は、より重大な権利侵害と判断される可能性が高いです。サイト運営事業者がレコード会社等から許可を得ている音源を使用するか、権利者から個別に許諾を得る必要があります。

著作者の名誉声望を害する利用行為

名誉声望を害する利用行為となる場合には、前述の方法によっても違法となる可能性があるため、注意が必要です。

第百十三条(侵害とみなす行為)

11 著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。

著作権法第113条11項

すなわち、許諾を受け、もしくは適切に引用し、またはその他いかなる方法で著作物を利用する場合であっても、著作者の名誉毀損にあたるような利用方法は著作者人格権という権利の侵害とみなされる、ということになります。

なお、名誉毀損の成立要件については下記記事で解説しています。

関連記事:名誉毀損で訴える条件とは?認められる要件と慰謝料の相場を解説

著作権以外の権利侵害にも要注意

本記事では、商品紹介動画と著作権法の関係について解説してきました。

しかし、商品紹介動画内で問題となるのは著作権法のみではありません。

特に、商品紹介動画内でネガティブな発言をする際には、商標権侵害不正競争防止法違反にも十分注意して動画を制作する必要があります。

なお、商標権侵害については、下記記事で解説しています。

関連記事:商標権侵害とは?違法性判断の枠組みを解説

不正競争防止法に関しても、下記記事で解説しています。

関連記事:不正競争防止法を解説 信用毀損行為の損害賠償の要件と判例

まとめ:YouTubeの商品紹介動画を制作する際は著作権に気をつけよう

まとめ:YouTubeの商品紹介動画を制作する際は著作権に気をつけよう

商品紹介動画は、ブログ等での商品レビューと比較すると情報量も多いため、著作権に気を付ける必要性があるといえます。

特に、商品を批判する動画で、著作者の名誉を傷つける動画を投稿することは当然ながら許されません。また、商品の権利者からクレームを受けた場合には、違法とならないとしても慎重に対応する必要があります。

万が一トラブルに巻き込まれた際は、事態を深刻化させないためにも早急に弁護士に相談した方が安心です。

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弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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