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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

風評被害対策

noteの悪質なコメントや記事の削除を依頼する方法

風評被害対策

「自分自身の経験やノウハウを手軽に共有できるサービス」として、note社が運営するメディアプラットフォーム「note」は、2020年5月にアクティブユーザー数(MAU)6300万を超え、会員登録者数も260万人になりました。

特に新型コロナウイルスによる外出自粛を受けてMAUが急増し、医療従事者や感染者などの投稿をはじめ、影響を受けたビジネス当事者や、新しい日常を工夫して過ごす人の投稿が多くなったと言われており、投稿数は1日に平均2万6000件になったそうです。

noteでは、無料で記事を公開できるだけでなく、有料販売もできます。「テキスト」「画像」「映像」「音声」「つぶやき」を投稿でき、コンテンツの有料販売、有料マガジンの発行、クリエイターをサポートする「投げ銭」機能等により収益化が狙えますが、人気を得て収益を増やすため、他人を誹謗中傷したり、プライバシーを侵害したりする事例も多くみられるようになってきました。

ここでは、noteの悪質なコメントや記事を削除する方法について解説します。

https://monolith.law/reputation/legal-action-slanderin

noteの特徴

noteでは、コンテンツを有料で公開することが可能です。公開時に有料を選択して販売価格などいくつかの項目を設定するだけなので、誰でも簡単に有料化が可能であり、このため、有料販売がnoteの最大の特徴になっています。記事をマガジンにまとめ、マガジン単位で有料設定して、有料マガジンを発行することもできます。

また、クリエイターをサポートする「投げ銭」といわれる機能もあり、一定の金額を選択して送金し、応援の気持ちを伝えることができます。

気になる相手をフォローして更新通知を受け取ったり、ユーザー同士でフォローし合って交流したりすることもできます。その結果、フォロワーが増えれば、記事を読んでもらえる機会が増えることとなります。

noteの最大の特徴として、基本的には広告の掲載ができないということがあげられます。ブログの収益化には、記事への広告掲載が有力な手段で、その広告が表示されたり、クリックされたりすることで、広告収入が発生します。一方、noteで収入を得たいのであれば、有料コンテンツが中心となります。

したがって、収入を増やすためには、フォロワーを増やし、販売数を増やすことが重要となりますが、価値ある情報が増えると同時に、他人を誹謗中傷したり、プライバシーを侵害したりする事例も多くみられるようになってきました。

しかも、noteにおける権利侵害は、例えば漫画の連載のような形で、繰り返し行われる可能性が高いので、速やかな対応が必要なケースが多くあります。

noteの利用規約

「note総則規約」という、一般利用規約に「11. 禁⽌事項」があり、一部を引用すると、

(5) 法令や公序良俗に違反する⾏為を⾏うこと

(6) 他の利⽤者を不快にさせる⾏為を⾏うこと

https://note.com/terms#general_terms

があります。名誉毀損、侮辱罪、プライバシー権の侵害はこれらにあたり、一般利用規約ですから、コメントなどの場合にも該当することとなります。

また、クリエイターに対する「noteクリエイター規約」に「9. 禁⽌事項」があり、

以下に該当するデジタルコンテンツの掲載、サークルにおける投稿その他本サービスにおける情報の送信は禁⽌します。

(1) 盗作、剽窃など、他者の著作権等を侵害しているもの。

(2)上記のほか、他者の財産権、著作権・商標権等の知的財産権、肖像権、名誉・プライバシー等を侵害するもの。

(3) 詐欺やそのおそれがあるもの。

(4) アダルト、性的、わいせつ的、暴⼒的な表現⾏為、その他過度の不快感を及ぼすおそれのあるもの、およびそれらのサイトへのリンクがあるもの。

(5) 差別につながる⺠族・宗教・⼈種・性別・年齢等に関するもの。

(6) ⾃殺、集団⾃殺、⾃傷、違法薬物使⽤、脱法薬物使⽤等を勧誘・誘発・助⻑するおそれのあるもの。

(7) ~(18) (省略)

https://note.com/terms#creator_terms

とあり、盗作、剽窃など、他者の著作権等侵害だけでなく、「他者の財産権、著作権・商標権等の知的財産権、肖像権、名誉・プライバシー等を侵害するもの」は、禁止となっています。

削除依頼の手順

コンテンツの削除依頼は、自分で行うか弁護士に依頼して行ってもらうこととなります。

自分で削除を依頼する

noteの運営であるnote社に、メールで申請すればいいでしょう。

  • 名前(法人や団体は担当者名)
  • メールアドレス
  • 法人名/団体名
  • 削除対象アドレス(依頼対象のURL)
  • 削除理由

を書きますが、削除理由には、「この記事には私の氏名と電話番号が記載されており、プライバシー侵害にあたるので、削除をお願いします」や「私の氏名をあげて、盗作を行っていると誹謗中傷しています。名誉毀損に該当しますから、記事の削除をお願いします」というように、どのような内容の書き込みにより、どういう権利が侵害されているかを具体的に、かつ簡潔に書くとよいでしょう。

削除はあくまでも、運営が善意で行ってくれることなのですから、申請は、丁寧な言葉遣いで、お願いするという姿勢で、行いましょう。

弁護士に削除依頼してもらう

自分で削除依頼しても削除してもらえない場合には、弁護士に削除依頼してもらうという方法もあります。

弁護士に依頼すると、運営側は大事だと思って削除してくれる可能性が高くなることがあります。まず自分でやってみて削除されなかった場合にも、弁護士からの依頼であるなら認めてくれる場合もあるので、ネット問題の経験が豊富な弁護士に相談してみましょう。

記事削除の仮処分申請

削除依頼しても削除してもらえない場合には、法的手段をとる必要が生じますが、記事の削除を請求する場合、「裁判(訴訟)」ではなく「仮処分」という、正式裁判の前に裁判に勝訴したときと同様の状態を確保することができる、裁判よりも短期間で終わる手続きを用います。

誹謗中傷対策における記事削除の仮処分の場合、「その記事が違法かどうかは本訴訟で決めるとして、訴訟を行っている間に被害が拡大すると困るので、とりあえず記事が違法だと判断して、削除する」という手続きになります。

仮処分が認められると、該当する記事は削除されます。そして、この後、本訴訟を行う必要があり、もし本訴訟に負けて「記事は違法ではなかった」という場合や、訴訟を提起しなかった場合には、その記事を復活されることもあり得ます。しかし、仮処分で「違法」と判断されるような記事は、訴訟でも「違法」と判断される可能性が高いので、命令を受けた相手方は通常、「仮処分で違法となった時点で記事を削除し、その後に訴訟が提起されなくても復活させない」という運用をしています。だから訴訟という手段を用いる必要は特にないことになるのです。

削除仮処分が認められる要件

削除仮処分が認められるためには、「保全すべき権利」と「保全の必要性」が明らかにされなければなりません

「保全すべき権利」とは、仮処分命令の発令などを通して守るべき権利のことをいい、noteの場合、「名誉権」「プライバシー権」「著作権」等の権利がありえます。つまり、「その記事のせいで私は迷惑している」と主張するだけでは足りず、例えば「その記事は、私の名誉権を侵害している」と主張する必要があるのです。

「保全の必要性」とは、その問題を裁判ではなく仮処分手続きによって解決すべき理由のことです。仮処分は、裁判に比べると迅速な手続きですから、相手方からすると、「裁判で争えば勝てたかもしれないのに、迅速な手続きであったがために、不必要に記事を削除してしまった」となる可能性があるので、「たとえその可能性があるとしても、速やかに仮処分によって誹謗中傷記事を削除すべき理由」という保全の必要性が存在しなければなりません。

ただ、例えば誹謗中傷記事の場合、その記事によって、被害者は社会的な不利益を受けたり、プライバシー情報を公開され続けて精神的損害を受け続けたりすることになります。またネットというのは公開された情報が拡散されやすく、被害者側から見れば緊急性の高いケースが多いことになります。だから、ネット上の誹謗中傷記事の削除を申請する場合には、保全の必要性はあまり問題にはなりません。これは、著作権侵害や肖像権侵害の場合も同様です。

削除仮処分の流れ

削除仮処分の流れを解説します。

仮処分の申し立て

仮処分手続きによる誹謗中傷記事の削除は、裁判所に「記事削除の仮処分命令の申し立て」をすることで開始されます。

被害者は、保全すべき権利の内容・権利侵害の事実・保全の必要性を明らかにした申立書を提出します。

審尋

裁判所に対して仮処分の申立を行うと、「審尋」という裁判における口頭弁論のような手続きが行われます。

審尋期日は、複数回開催されるときでも、1週間から2週間の間隔で指定され、不当に手続きが遅延することのないように、なるべく早期に終結することとなっています。

担保金の納付

審尋の結果、権利侵害が認められ、記事を削除するという「決定」 (裁判ではないので「判決」ではありません) が出たら、「担保決定」となります。

通常、仮処分で勝った場合には、一定の金額を「担保金」として預けなければなりません。仮処分は迅速な手続きなので、相手側からすれば、「普通に裁判をしたら勝てたかもしれないのに、迅速さを優先した手続きだったので負けてしまった」ともいえます。

ネット上の記事削除請求も、もし後で正式の本裁判となり、そこで「この記事には違法性はなかった」ということになった場合には「記事を削除させてしまったこと」について、損害賠償を支払わなければならなくなる可能性があります。その損害賠償の引き当て金となる「担保金」を裁判所に預けておく必要があるのですが、記事削除の場合、30万円~50万円となっており、通常、一定の手続きの後で還付されることになっています。

仮処分命令の発令

担保金が預けられると、裁判所は投稿記事削除の仮処分命令を発令します。削除仮処分命令が発令されると、相手方は、正式の裁判を経なくても削除に応じることがほとんどなので、結果的に投稿記事を削除させるという目的は達成されることとなります。

執行

仮処分命令を受けた相手方が削除に応じない場合には、仮差押えの執行又は強制執行という手続きを取ることができます。また、執行の申立てをすると、相手方が削除するまで、裁判所が命じた金額を相手方に支払わせることもできます。

なお、記事削除についての経費は、着手金が20万円程度、成果報酬金が15万円程度というのが、「相場」とされています。

また、投稿者の特定についてはこちらの記事で解説しております。

まとめ

noteは、ブログ以上に簡単に情報発信が始められるサービスとして便利であり、ブログやSNSと組み合わせることもできるので効果的な情報発信が可能ですが、それゆえに、悪質なコメントや記事が拡散しやすいと言えます。

noteに悪質なコメントや記事を投稿されて権利を侵害されたら、広く拡散する前に、経験豊かな弁護士にご相談ください。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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