風評被害とは?被害を受けた場合の対応策を分かりやすく解説
近年では、SNS等の普及によって風評被害という言葉を見聞きすることが増えました。しかし、実際に風評被害によってどのような影響が及ぶのかについてはあまり実感がないのではないかと思います。
ここでは風評被害について、ネット上のものを中心にどのようなものがあるのか、その影響や対策も含めてサイト別に詳しく解説していきます。
この記事の目次
風評被害とは
風評被害とは、辞書的な意味で捉えると、根拠のない噂のために受ける被害のことを指します(『大辞泉』より)。特に経済的・社会的被害の場合がこれに当たります。
現在は、根拠のない噂だけでなく、事実に起因した経済的被害についても風評被害にあたるとされ、何らかの事故あるいは事件が発生し、それに伴うメディアの報道、インターネット上の口コミ等による、商品やサービスの売上減少などの悪影響が問題となっています。
風評被害の種類
風評被害の中にも、その被害をもたらす原因である情報にいくつか種類があります。例えば、SNSやネット掲示板で個人のデマによって広がるものや、マスメディアによって報道されるものがあります。ここでは、大きく3つに分類して解説します。
インターネット上での悪評
インターネット上での悪評は、SNSやネット掲示板が代表格でしょう。いわゆる口コミとして会社や店の評価が下げられる根拠のない内容のコメントの投稿、会社を誹謗中傷する内容のネット記事が検索結果として表示されれば、多くの人の目に留まります。
会社や店などの団体だけでなく、著名人やインフルエンサーといった個人も、悪質な投稿による風評被害の被害者になってしまうことが多いと思われます。
ここでは、各種SNS、掲示板について解説します。
X(旧Twitter)
多くの方が利用しているXは140文字の短文で(有料アカウントではより長文の情報発信ができます)、リアルタイムにコミュニケーションを取ることができるSNSです。著名人や企業、飲食店といった多くの個人・団体がアカウントを所有しています。
X(旧Twitter)を起因とする風評被害が深刻化しやすい理由は、投稿の手軽さと、拡散性の高さです。例えば、他人の投稿を拡散する「リポスト(リツイート)」はボタン一つでできてしまいます。また、検索機能を使うことで、さまざまな情報を調べることも容易です。
関連記事:逮捕歴に関するTwitterの投稿はどんな場合に削除できるのか。注目の最高裁判例を解説
Instagramは写真や動画を投稿するSNSで、Xと同様に多くの方が利用しています。Instagramの特徴は、24時間で投稿が消える「ストーリー」機能と、文章を考える必要がないため容易に投稿できることです。ストーリーで投稿した内容が無断転載されて、24時間経過した後も、インターネット上にさらされ、風評被害の元になってしまうこともあり得ます。
関連記事:Instagramの企業アカウント炎上事例を解説!予防・対応策も
Facebookは実名登録が原則のSNSです。近況を友人や知り合いと共有することができ、個人ページだけでなくビジネスページを用いて企業の宣伝等に利用されています。しかし、なりすましアカウントや個人や企業に対するネガティブな投稿も少なくなく、また、その利用者数の多さゆえに、それによる風評被害も大きくなってしまいます。
関連記事:Facebookの悪質な記事やアカウントの削除方法と法的責任
YouTube
YouTubeは動画投稿サイトの代表格で、多くの人がチャンネルを開設し、アーティストのミュージックビデオ(MV)や、ゲーム実況、ルーティン動画など、さまざまなジャンルの動画が投稿されています。また、生配信を行うことができ、チャット等を通じて配信者と視聴者がリアルタイムで繋がることも可能です。
関連記事:Youtubeで他人や企業の誹謗中傷を行った場合の名誉毀損罪について
TikTok
TikTokも動画に特化したSNSで、若い世代を中心に人気を博しています。TikTokには動画用のテンプレートや短い尺の音楽が用意されているので、YouTubeよりも短い動画をより手軽に投稿することができます。しかし、TikTokには、保存機能があり、他のSNSにも気軽にシェアできるので、投稿者が意図しないサイトに転載されてしまう可能性があります。
関連記事:TikTokに潜む危険性とは?誹謗中傷されたときの対応もご紹介
5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)
5ちゃんねるは、匿名掲示板サイトです。便利な匿名掲示板ですが、悪口サイトと化してしまい、氏名・住所・電話番号・勤務先などの個人情報が晒されるケースが増えています。
関連記事:2ちゃんねるや5ちゃんねるに投稿された個人情報の検索方法と対処法
2ちゃんねると5ちゃんねるの違いについては、下記記事を参照ください。
関連記事:「2ちゃんねる」と「5ちゃんねる」の違いとは?現在の状況も解説(2024年最新版)
Clubhouse
Clubhouseは、完全招待制の音声SNSアプリです。コロナウィルスの感染拡大に伴い、直接会って雑談することが難しい中、家にいながら会話が楽しめるアプリとあって、一時ユーザーが急増しました。利用規約により録音やメモが禁止されているため、“その場限り”の会話が展開していく点がClubhouseの魅力の一つです。
ですが、その性質上、誹謗中傷にあたるきわどい発言が出てくるリスクもあります。
関連記事:Clubhouse(クラブハウス)での誹謗中傷、加害者特定と証拠の方法とは?
note
「自分自身の経験やノウハウを手軽に共有できるサービス」として、note株式会社が運営するメディアプラットフォーム「note」では、「テキスト」「画像」「映像」「音声」「つぶやき」が投稿できます。
しかし、有料コンテンツ等で収益化が狙える上、匿名投稿のため、差別化を図ろうと悪質な投稿をする人も多いのが現状です。
食べログ
食べログとは、「失敗しないお店選び」をコンセプトにした、日本最大級のグルメサイトです。飲食店への総口コミ数も4600万件を超えており(2022年3月時点)、規模が大きいサイトであると言えます。
口コミは、「料理・味」「サービス」「雰囲気」「CP(コストパフォーマンス)」「酒・ドリンク」の5つの項目で評価し、他の人の参考になるように文章を書くことが求められます。
食べログの口コミでは、お店にとって良い内容、悪い内容のどちらも記載を認めています。そのため、誹謗中傷が起こる可能性が高いとも言えます。
関連記事:食べログの口コミの投稿者を特定する方法と弁護士費用の相場
マスコミ・メディアによる過大な表現での発信
影響力の大きいマスコミやメディアから発信された情報に基づく風評被害も存在します。過大表現にもパターンがあり、事件や事故について憶測で記事を書くなど恣意的な切り口で報道されてしまうものと、誤った情報ではないものの、ユーザーがメディアの意図を誤解して受け取ってしまうものに分けることができるでしょう。ユーザーの誤解により報道で生じた風評被害を強められることもあります。
人から人へ伝わる噂話
身近な風評被害としては、人によって広まる噂話があります。例えば、地域社会などで、工場や会社の倒産などの根も葉もないことが広まってしまうことなどが挙げられます。
風評被害が及ぼす影響
では、風評被害が及ぼす影響とはいったいどんなものになるのでしょうか。個人が受けるものと、企業が受けるものに分けて解説していきます。
個人が受けるもの
個人の場合、精神面・経済面双方に影響を受ける可能性があります。どちらも程度によっては生活に支障が出ることがあり得ます。
経済面の具体的なものとしては、就職活動で不利になることや、勤務先で不利な扱いを受ける等が考えられ、勤務先では、社内における評価の低下やそれに伴う解雇や左遷の可能性も否定はできません。
企業が受けるもの
企業が受ける影響もさまざまですが、特に顕著な例としては、企業・ブランドイメージの低下、取引先等の顧客離れが挙げられるでしょう。また、企業内部にも影響を与える可能性があり、風評被害による嫌がらせの対応などの負担増加が続けば、従業員のモチベーションが低下するリスクもあります。
これらは経営にも関わってくる問題ですから、風評被害は企業にとって脅威であると言えるでしょう。
風評被害の事例
以下では、実際に風評被害を被ってしまった事例を解説します。
SNS投稿による「バイトテロ」
近年、アルバイト従業員による不祥事、いわゆる「バイトテロ」が社会問題として取り上げられることが増えています。投稿の内容は、顧客に販売する食品を食べたり、商品を補完している冷蔵庫に入ったりと、軽率な悪ふざけばかりです。SNSの普及に伴い、例え匿名で投稿された動画であっても投稿者やアルバイト店員とその店舗が特定されることは少なくありません。
バイトテロによって、その店舗は閉店に追い込まれたり、フランチャイズの場合には系列店の客足も減少するなど、被害はとても大きなものになってしまいます。企業側は、このような行為をした店員に対して、損害賠償を請求するなど、対応も厳しくなってきています。
関連記事:SNSでバイトテロを起こされた場合の対策は?解雇や損害賠償請求は可能か
単なるデマによる風評被害
上記実例は事実に基づく風評被害でしたが、デマによる風評被害の実例もあります。これは、あおり運転によって2人が亡くなった事故が発端となったもので、あおり運転が悪質であったことから、ネットでも話題になっていました。
この注目度の高さから、事故を引き起こした運転手の居住地や職場などの個人情報をSNS上で公開する人が多くなってしまったのですが、その際、運転手とは無関係のある建設会社が、被告と同じ苗字及び職種であったことから、「運転手の父親が経営し、運転手も勤務していた会社である」というデマが一気に広まりました。
このデマを信じた人によって、この会社には嫌がらせの電話等が殺到し、業務に支障をきたす程になったため、安全を考慮して休業が迫られる事態となりました。会社側は名誉を傷つけられたとして書き込みをした5人を訴え、合わせて231万円の賠償が命じられています。
風評被害を受けた場合の対策
では、実際に風評被害に遭ってしまった場合の対処方法及び対策について解説します。風評被害を解決するための対策は、全て連動しており、ワンストップで実施することで効果的かつ効率的な対策を行うことができます。
情報のモニタリング
事前の対策として、常日頃からどういった情報が出回っているのかについて知っておくことが大切です。定期的なネット監視を行うことで、風評被害に対するより良い戦略策定を行うことができます。
ガイドラインの整備
事後の対策として、風評被害にあった後の行動を定めたガイドラインを整備しておきましょう。予め策定しておくことで、もしものときに慌てずに被害を最小限にとどめることに繋がります。
リスティング汚染の削除対策
リスティング汚染とは、Google等の検索エンジンで自社名や自社商材名をキーワード検索した場合に、競合他社や、その商品・商材の広告が表示されてしまい、自社に興味を持っていたインターネットユーザーが、他社や他社商材に誘導されており、自社のビジネスに不利益が生じることを言います。
当該広告の出稿に関わるプレイヤーを特定するIT技術と、商標権侵害などに基づく法的な削除請求の組み合わせがリスティング汚染の対策になります。
詳しくは、下記記事をご参照ください。
関連記事:リスティング汚染の削除対策
事実無根の情報である声明文の公開
企業側の見解として、メディアによる誤報や事実無根の情報に対して、事実ではない旨の声明文を公表することも、被害を抑える方法の一つです。この際、声明文がデマだと捉えられないように、公式マークのついている企業アカウントや、ホームページのトップに掲載しましょう。
弁護士へ相談をする
もちろん、弁護士に相談して法的手段を検討することも可能です。弁護士であれば、ネットにある投稿の削除や発信者の情報開示の請求などさまざまな対応方法を検討することができます。また、被害の程度によっては、損害賠償請求や、信用毀損及び名誉毀損を訴えるという方法もありますので、これらを検討したい場合には弁護士へ相談しましょう。
関連記事:法人でも損害賠償請求は可能か?名誉毀損の判例を元に解説
関連記事:ネット上の誹謗中傷が信用毀損罪・業務妨害罪に該当するケースとは
上述のように、風評対策は、被害状況の分析に加え、法的な対策が必要であり、戦略策定には双方の専門知識が必要不可欠です。また、SNSや掲示板の特徴や悪影響の可能性についても、ネット社会に精通していることも重要になります。
まとめ:風評被害を受けた場合は早期に弁護士へ相談を
以上、風評被害について解説しました。企業・個人を問わず、風評被害によって生じる損害は大きいものです。被害を最小限に抑えるために、また、デマ等を拡散して被害を生まないように、きちんと対策することが大事です。
それでも被害を被ってしまった場合は、速やかに冷静な対処をすることが重要になります。特に、法的手続をとる場合には、早期の証拠保全が重要になります。早期に弁護士へ相談することをお勧めします。
当事務所による対策のご案内
モノリス法律事務所は、IT、特にインターネットと法律の両面で豊富な経験を有する法律事務所です。近年、ネット上に拡散された風評被害や誹謗中傷に関する情報を看過すると深刻な被害をもたらします。当事務所では風評被害や炎上対策を行うソリューション提供を行っております。下記記事にて詳細を記載しております。
モノリス法律事務所の取扱分野:上場企業等の風評被害対策
カテゴリー: IT・ベンチャーの企業法務