弁護士法人 モノリス法律事務所03-6262-3248平日10:00-18:00(年末年始を除く)

法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

IT・ベンチャーの企業法務

ChatGPTの業務利用は可能か?メリットや注意点を解説

ChatGPTの業務利用は可能か?メリットや注意点を解説

近年、AI技術の進化は目覚ましいものがあり、その中でも自然言語処理(NLP)の領域は急速に発展しています。特に、高度な自然言語処理能力を持つ生成AI、「ChatGPT」の存在が注目を集めています。

企業の業務効率化やコスト削減に対する需要が高まる中、AIを業務に活用できないかという声が高まっています。その一方で、機密情報の漏洩や、著作権の問題などのリスクがあり、ChatGPTの利用を禁止している企業もあります。

この記事では、ChatGPTの業務への利用可能性や、そのメリットと注意点について詳しく解説していきます。

ChatGPTの業務利用は可能なのか?

ChatGPTの業務利用は可能なのか?

ChatGPTとは、OpenAIが開発した自然言語生成モデルで、ユーザーが入力した文章に対して、適切な返答を生成することができます。このモデルは、OpenAIの大型言語モデル(LLM)であるGPT-4およびその前身に基づいて構築されたチャットボットです。ChatGPTは、2022年11月30日に初期デモがリリースされ、すぐにソーシャルメディアで話題となりました。

GPTは、Generative Pre-Trained Transformerの略で、2018年に初版がリリースされました。このモデルは、ニューラルネットワークの新しい技術であるTransformer技術に基づいています。その後、2019年には、より強力なGPT-2がリリースされました。このモデルは、約40GBのテキストからなる大規模なデータセットでトレーニングされ、15億のパラメーターを持っています。

ChatGPTは企業のさまざまな業務で利用することが可能です。例えば、顧客対応やFAQの自動応答、書類の作成など、さまざまなタスクに対応することができます。また、多言語対応も可能なため、国際的なビジネスにも対応できます。

しかし、現実にはまだChatGPTを業務に積極的に取り入れている企業は多くないのが現状です。その主な理由は、AIを業務に導入するには、適切なデータ整備やプロジェクト管理、更には利用法を理解し、潜在的なリスクを把握する必要があるからです。ChatGPTを業務に利用するためには適切な準備と理解が必要です。

ChatGPTを業務で利用している例

ChatGPTはさまざまな業界で業務に利用されるようになりました。例えば、カスタマーサポート、コンテンツ生成、自動翻訳などが挙げられます。本記事では、ChatGPTが業務利用されている具体的な例を紹介します。

お問い合わせ窓口の対応

ChatGPTは、お問い合せ窓口などのカスタマーサポートの分野で既に広く利用されています。ChatGPTは、自然言語処理技術を活用して、顧客からの問い合わせに自動で対応することができます。

ChatGPTは、複数の言語に対応したサポートを提供することができます。ChatGPTは、さまざまな言語に対応しており、メッセージをリアルタイムで翻訳することができます。これにより、企業はグローバルな顧客に対応することができるようになります¹。

また、ChatGPTは感情分析も行うことができます。感情分析は、顧客が不満や不満を持っている場合に、その問題を解決するための手段として使用されます。ChatGPTは、幸福、悲しみ、怒り、フラストレーションなどのさまざまな感情を認識するようにトレーニングされています。顧客がメッセージを送信すると、ChatGPTはそのメッセージを分析して感情を判断し、顧客の感情状態に合わせた返信を提供することも可能です。

文書や資料などのコンテンツ制作

ChatGPTは、大量のテキストデータを学習して構築された自然言語処理モデルであり、文章の理解や生成を高精度で行うことができます。これにより、ChatGPTは、自然な文章を生成したり、ユーザーの要求に応じて適切な文章を提供する能力を持っています。

  • ブログ記事やニュース記事の作成: ChatGPTは、ユーザーが入力したキーワードやトピックに基づいて、新しい文章を生成することができます。これにより、ユーザーは、短時間で高品質なブログ記事やニュース記事を作成することができます。
  • メールや手紙の作成: ChatGPTは、メールや手紙の文章を生成することができます。ユーザーは、送信先や目的などの情報を入力することで、適切な文章を提供してもらうことができます。

市場調査などのマーケティング業務

ChatGPTは、市場調査などのマーケティング業務にも活用することができます。例えば、以下のような方法が挙げられます。

  • データの分析と可視化: ChatGPTは、大量のデータを分析し、結果を可視化することができます。これにより、ユーザーは、市場調査の結果を簡単に理解することができます。
  • レポートやプレゼンテーションの作成: ChatGPTは、市場調査の結果を元に、レポートやプレゼンテーションの文章を生成することができます。これにより、ユーザーは、短時間で高品質なレポートやプレゼンテーションを作成することができます。
  • キーワードやトレンドの抽出: ChatGPTは、大量のデータからキーワードやトレンドを抽出することができます。これにより、ユーザーは、市場動向を簡単に把握することができます。

翻訳

ChatGPTを活用して、さまざまな言語に対応した多言語サポートを提供することができます。ChatGPTは、顧客がどの言語で対話を行っているかに関係なく、複数の言語を理解することができます。これは、特に多言語の顧客を持つビジネスにとって非常に有用であり、言語の障壁を取り除き、顧客とのコミュニケーションを容易にします。

しかし、翻訳のコンテキストやニュアンスを完全に理解するためには、人間の介入が必要な場合もあります。AIはリテラルな翻訳を生成することができますが、特定の表現やイディオムの深い理解には限界があります。そのため、ChatGPTが生成する翻訳は、人間が確認し、必要に応じて修正することが推奨されています。

文書の要約

ChatGPTは、長文のテキストの要約にも使用することができます。自然言語処理(NLP)の能力を持つこのAIは、テキストの主要な要点を抽出し、それらを簡潔にまとめることが可能です。

ChatGPTによる要約は、報告書、記事、書籍、研究論文など、さまざまな種類の長文テキストに対して有用です。しかし、要約が十分な品質と精度を持つためには、人間による確認と編集が必要な場合があります。AIは元のテキストの意図やニュアンスを完全に理解することができないため、要約の結果は、人間が確認し、必要に応じて修正することが推奨されています。

プログラミング言語の作成

ChatGPTはプログラミングの作成をサポートするためにも使用することができます。以下のような形での活用が想定されています。

  • コード生成:ChatGPTは、指定された要件に基づいてコードを生成することが可能です。たとえば、「Pythonでリスト内包表記を使って、1から100までの数の平方を計算するコードを生成してください」というような要求に対して、適切なコードスニペットを生成することができます。
  • コードの解説:ChatGPTは、特定のコードスニペットが何を行うのかを説明することもできます。これは、新しいプログラミング言語を学んでいるときや、複雑なコードベースを理解しようとしているときに特に役立ちます。
  • 問題解決のアシスト:ChatGPTは、コードに関する問題を解決するための提案も提供できます。たとえば、エラーメッセージについて説明したり、バグの可能性があるコードの部分を指摘したり、修正の提案をしたりすることができます。
  • コードレビュー:ChatGPTは、コードの品質を改善するための提案を行うことができます。これには、コードの可読性の向上、パフォーマンスの最適化、またはベストプラクティスの適用が含まれることがあります。

しかし、すべての状況で完全に正確な結果を提供するわけではないため、ChatGPTの出力はあくまで参考の一つとして考え、最終的なコードの品質と正確性については人間が確認と評価を行うべきでしょう。

ChatGPTを業務で利用するメリット

ChatGPTを業務で利用するメリット

ChatGPTの業務利用は、ビジネスプロセスを効率化し、生産性を向上させ、より多くの顧客ニーズに対応するための多大な機会を提供します。ここでは、ChatGPTを業務利用するメリットについて詳しく探っていきます。

業務の効率化

ChatGPTを業務に利用することで、さまざまな方法で効率化を実現することが可能です。以下に具体的な例を挙げてみます。

  • カスタマーサポートの自動化:ChatGPTは、カスタマーサポートの問い合わせに自動的に応答する能力を持っています。これにより、一部の基本的な問い合わせに対する対応時間を大幅に短縮し、カスタマーサポートチームの負荷を軽減することができます。
  • ドキュメンテーションと報告書の作成:ChatGPTは、テキスト生成の能力に優れています。この能力を利用して、定型的なドキュメントや報告書の作成を効率化することができます。
  • 内部コミュニケーションの改善:社内のチャットツールに組み込むことで、社員間のコミュニケーションを円滑化し、情報共有を助けることができます。
  • 教育とトレーニング:ChatGPTは、新たなスキルや知識を学ぶための教育ツールとして利用することも可能です。

ただし、実際の利用にあたっては、データのプライバシーやセキュリティ、そして法律的な規制等に注意することが重要です。

人件費の削減につながる

ChatGPTの導入は、人件費の大幅な削減につながる可能性があります。AIの使用により、従来は人手が必要だったタスクが自動化され、企業はそれまでの人員を他のより重要な業務に割り振ることが可能になります。

例えば、ChatGPTをカスタマーサポートのチャットボットとして使用すると、企業は24時間365日の対応を可能にするとともに、カスタマーサポートの人員を削減したり、人員を他の重要な業務に割り振ることができます。

また、市場調査や戦略立案、SNSマーケティングなどの業務において、ChatGPTは、分析、戦略の提案、コンテンツ作成などを支援します。これにより、マーケティングチームはより戦略的な業務に専念することが可能となり、人件費を削減しつつ、業務の品質を向上させることができます。

ビックデータを活用した情報の収集ができる

ビッグデータとは、従来のデータベースやソフトウェアツールでは処理が困難なほど巨大で複雑なデータの集合を指します。ビッグデータを活用することで、意思決定に必要な情報を引き出したり、高精度な予測を行ったりすることができます。

ChatGPTはOpenAIにより訓練された大規模な人工知能で、その訓練にはインターネット上の膨大なテキスト情報が使用されました。そのため、ChatGPTはさまざまなテーマについての情報を提供することができ、広範で詳細な情報源として機能します。

ChatGPTを使うと、特定の質問やトピックに対する情報を素早く検索し、その情報を要約し、ユーザーに提供することが可能になります。これによって、ユーザーが個々に膨大な量の情報を検索し、読み取り、理解するという時間と労力を大幅に削減することができます。

ChatGPTを業務で利用する際の注意点

ChatGPTの活用は業務効率の大幅な向上をもたらし、その可能性は広大です。しかし、業務でChatGPTを使うには、いくつかの重要な注意点を理解し、適切に利用する必要があります。

機密情報の漏洩の危険性

OpenAIのChatGPTは、ユーザーが入力した情報を永続的に記憶したり、他のユーザーと共有したりする機能を持っていません。これは、ユーザーのプライバシーを尊重し、データの安全性を確保するためです。

しかし、それでもなお、機密情報や個人を特定できる情報をAIに入力することは避けるべきです。AIが情報を一時的に保持する間に、その情報が他のユーザーに対して不適切な形で出力される可能性があります。また、システムがハッキングされる可能性もゼロではありません。

そうしたリスクを踏まえ、企業は機密情報の取り扱いについては十分な注意を払うべきです。具体的には、ChatGPTとの対話中に個人情報や企業の機密情報を明かさないようにする、または、AIとの対話を含むシステム全体を適切に保護する等の措置が考えられます。

関連記事:【速報】個人情報保護委員会がChatGPTの利用に関して注意喚起

参考:個人情報保護委員会|生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について

得られた情報が信憑性に欠ける場合がある

得られた情報が信憑性に欠ける場合がある

ChatGPTは人工知能であり、その出力は訓練データから学習したパターンに基づいて生成されます。そのため、その情報の信憑性は、訓練データの質に大きく依存しています。訓練データが不完全であったり、誤った情報を含んでいる場合、ChatGPTも誤った情報を出力する可能性があります。

さらに、ChatGPTは情報を「理解」するというよりは、人間の言葉のパターンを学習して再現するという性質を持っています。したがって、事実確認や情報の更新は自動的には行いません。例えば、ChatGPTが訓練データに基づいて古い情報を出力することもあります。

以上の理由から、ChatGPTから得られる情報は、その信憑性について慎重に評価する必要があります。特に重要な決定を下す際や、精度と信憑性が必要な場面では、人間が最終的な情報の確認と検証を行うべきです。これはAIを活用する際の基本的な注意点であり、ChatGPTを業務に活用する際には常に心に留めておくべきです。

タイムリーな情報が得られない可能性がある

ChatGPTは大量のテキストデータに基づいて訓練され、その知識は訓練データが集められた時点のものです。ChatGPTの最新モデルであっても(執筆時点ではGPT-4)、その訓練データは2021年9月までのものであり、それ以降の具体的な事象、出来事、情報については原則として知識がありません。したがって、ChatGPTが提供する情報は、2021年9月以前の情報に基づいています。

これは特に、変化が速い分野や最新の情報が重要となる分野においては注意が必要です。例えば、科学技術や政策、市場動向などは日々変化し、新たな発見や変更が頻繁に行われます。このような分野では、ChatGPTが提供する情報が最新の状況を反映していない可能性があります。

そのため、ChatGPTを活用する際には、その情報がタイムリーであるかどうかを確認し、最新の情報を必要とする状況では適切な情報源を併用することが重要です。ChatGPTはあくまでツールのひとつであり、その情報の活用は利用者自身の判断と責任において行われるべきです。

他者の著作権を侵害する場合がある

ChatGPTは大量のインターネット上のテキストを学習して生成されるため、出力された内容そのものには特定の著作物から直接コピーされた情報は含まれていません。そのため、原則としてChatGPTによって生成されたテキストに著作権侵害の問題が発生することはありません。

しかしながら、ChatGPTが生成するテキストが既存の著作物と非常に類似している場合、著作権侵害の問題が生じる可能性があります。例えば、特定の作品や著作物を強く意識した指示(プロンプト)をChatGPTに与えた場合、元の作品と酷似したコンテンツを生み出す可能性があります。他人の著作物を無断で複製、配布、公衆送信することは著作権侵害となります。そのため、ChatGPTを使用してコンテンツを生成する際には、その内容が他人の著作権を侵害しないよう注意が必要です。

法的な問題を回避するためにも、生成されたコンテンツが他人の著作物と類似していないか、または他人の著作権を侵害していないかを確認することが重要です。必要に応じて弁護士等の専門家に相談することをお勧めします。

ChatGPTの業務利用を禁止する会社

企業や自治体などでは、積極的にChatGPTを業務に利用することを表明しているところもあります。一方で、一部の企業や業種では、セキュリティ上の懸念や情報漏洩のリスクを理由に、ChatGPTをはじめとする外部のAIモデルの利用を全面的に禁止したり、利用方法を制限したりしています。

具体的な事例としては、金融機関や法律事務所などの業界が挙げられます。これらの業界では、個人情報や機密情報の保護が非常に重要視されており、外部のAIモデルやクラウドサービスを使用することに慎重なケースが多くあります。

まとめ:ChatGPTの業務利用にはさまざまなリスクがある

この記事では、ChatGPTを業務に利用することは可能かという点について、さまざまな活用方法を検討しながら解説しました。

ChatGPTを適切に活用することで業務効率の大幅な改善が期待できますが、個人情報を機密情報の漏洩、著作権の侵害などのリスクも存在します。ChatGPTを業務に利用する際には、これらのリスクを理解し、適切に利用する必要があります。特に、法的なリスクや、企業の危機管理体制に関しては、弁護士へ相談することをお勧めします。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

シェアする:

TOPへ戻る