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法律記事MONOLITH LAW MAGAZINE

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台湾の会社法が定める会社の形態と会社設立

台湾の会社法が定める会社の形態と会社設立

台湾市場は、文化的な親和性や地理的近接性から、日本企業にとって事業展開の有力な選択肢となっています。しかし、ビジネスの成功には現地の法制度、特に会社法に関する深い理解が不可欠です。

本記事は、台湾の会社の形態と設立プロセスについて、日本の法制度との重要な異同点を中心に詳細に解説いたします。特に、外国企業の現地法人設立において最も一般的な「股份有限公司(日本の株式会社に相当)」に焦点を当て、2018年、2026年の会社法改正がもたらした機関設計の柔軟性という、日本法との決定的な違いについて深く掘り下げていきます。

なお、台湾の包括的な法制度の概要は下記記事にてまとめています。

台湾会社法の基本:4つの会社形態とその選択肢

台湾の会社法(公司法)は、事業運営を目的とする社団法人として、会社を以下の4種類に分類しています。これは、日本の会社法が定める「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」といった分類と類似しており、それぞれの形態が持つ法的性質と責任範囲によって区別されます。

無限公司(Unlimited Company)と両合公司(Unlimited Company with Limited Liability Shareholders)

無限公司は二人以上の株主が組織し、会社の債務に対し連帯して無限責任を負う形態です。同様に、両合公司も一人以上の無限責任株主と、一人以上の有限責任株主によって組織されます。無限責任とは、会社の債務が個人資産にまで及ぶことを意味します。これらの形態は、日本の合名会社や合資会社に相当すると言えますが、現代の実務においてはほとんど採用されることがありません。外国企業が現地法人を設立する最大の目的は、本国の親会社や投資家の責任を限定することにあります。無限責任を伴うこれらの会社形態は、その目的と根本的に矛盾するため、法律上は存在していても、外国企業が選択する実用的な選択肢とは言えないでしょう。

有限公司(Limited Company)

有限公司は、一人以上の株主によって組織される会社形態であり、株主はその出資額を限度として会社に対し責任を負う、有限責任の会社です。この形態は、特に中小企業において広く採用されています。経営機関としては、1名から3名の董事(取締役)を設置する必要があり、これらの董事は、原則として行為能力を有する株主の中から選任されます。有限公司には董事会(取締役会)は設置されず、董事が会社の業務執行および対外的な代表を担います。他方で、増資、減資、組織変更、計算書類の承認などの重要事項については、会社法に定める株主の議決権割合に基づく承認が必要となります。このように、出資者の人的関係を重視しつつ、比較的簡素な機関設計を採る点で、日本の合同会社に類似する側面があると言えるでしょう。

股份有限公司(Company Limited by Shares)

股份有限公司は、日本の「株式会社」に最も近い形態であり、その核心的な特徴は、資本が股份(株式)に分割され、株式を発行して資金を調達できる点にあります。株主の責任は、保有する株式の限度内に限定される有限責任であり、大規模な事業や将来的な株式公開(上場)を視野に入れた企業に適しています。この形態は、二人以上の株主、または政府や法人株主一人が組織することで設立できます。台湾会社法上、股份有限公司について一律の最低資本金額は定められていません。ただし、実際の設立・許認可・在留資格・銀行口座開設等の実務上、事業内容に応じた合理的な資本金額が求められる場合があります。

外国企業が現地法人を設立する際にこの形態が主流となるのは、日本の親会社が慣れ親しんだ統治構造(董事会や監察人)を導入しやすく、ガバナンスの体制を理解しやすいという利点があるからです。また、将来的に事業規模を拡大し、株式公開を通じて多額の資金を調達するといった柔軟な選択肢が確保されることも、戦略的な意思決定において重要な要素となります。

各会社形態の相違点

以下に、台湾の主要な会社形態を簡潔にまとめます。

股份有限公司有限公司無限公司両合公司
会社形態(日本法)株式会社合同会社合名会社合資会社
責任範囲有限責任有限責任無限責任一部無限、一部有限
設立に必要な株主/出資者数2名以上(法人株主1名でも可)1名以上2名以上無限責任株主1名以上、有限責任株主1名以上
最低資本金一律の基準なし一律の基準なしなしなし
主な用途大規模事業、株式公開中小企業小規模事業(実務上稀)少数経営者による運営(実務上稀)

台湾の股份有限公司の機関設計と日本法との比較

台湾の股份有限公司は、日本の株式会社と類似の形態である一方、2018年、2026年の会社法改正によって、日本にはない独自の柔軟な機関設計が導入されました。

2026年施行改正を踏まえた機関設計の柔軟性

台湾の股份有限公司については、近時の会社法改正により、機関設計の柔軟性がさらに高まっています。従来、2018年改正により、単一の政府または法人株主によって組織される股份有限公司については、定款に定めることで、董事会(取締役会)を設置せず、董事(取締役)を1名または2名のみ置くことが認められていました。また、この類型では、監察人(日本の監査役に相当)についても、定款に定めることで設置しないことが可能です。さらに、2026年6月26日施行の改正後会社法では、股份有限公司一般についても、定款により董事会を設置せず、董事1名または2名を置くことができる制度が整備されました。董事が1名の場合には、その董事が董事長となり、董事会の権限を行使します。もっとも、単一法人株主である親会社が当然に董事会の権限を行使するわけではなく、会社法上は、単一法人株主会社では株主会の権限を董事会が行使し、董事会を置かない場合には董事が董事会の権限を行使するという構造になります。この柔軟な設計は、日本企業の台湾子会社において、機関構成を簡素化し、事業運営を合理化する上で大きなメリットとなります。

日本法との比較

日本の会社法では、非公開会社(株式譲渡制限会社)であっても、取締役会を設置する場合は取締役3名、監査役1名が原則として必要となります。しかし、日本の実務においても、取締役会を設置しない会社形態を選択すれば、取締役1名で会社を設立することができ、この場合には監査役の設置義務もありません。

この事実を踏まえると、台湾法と日本法の真の違いは、「株式会社に相当する形態」という枠組みの中で、取締役会や監査役を置かないことを明示的に認めている点にあると言えます。日本の制度では、この柔軟性は「取締役会を設置しない」という選択肢に付随するものですが、台湾法は、より日本の親会社が慣れ親しんだガバナンスの枠組みを維持しながらも、組織を簡素化し、意思決定の迅速化を図ることを可能にしているのです。これは、統治構造に慣れ親しんだ日本企業にとって、ガバナンスの合理化を可能にする重要なメリットとなり得ます。

閉鎖性股份有限公司(Closely Held Corporation)

台湾の会社法は、さらに先進的な会社形態として、2015年に閉鎖性股份有限公司を導入しました。これは株主数が50人以下の非公開会社を対象とした、極めて柔軟な制度です。

この形態の主な特徴としては、まず出資方法の多様化が挙げられます。現金だけでなく、技術、役務、または会社に対する金銭債権等による出資も認められており、スタートアップ企業にとって資金調達の柔軟性が大幅に向上します。また、一般の股份有限公司にも認められる無額面株式制度に加え、複数議決権株式や特定事項に対する拒否権付株式など、より柔軟な種類株式設計が可能です。

この制度が示唆することは、創業者や特定の株主が、出資比率を下げても経営に対する支配権を維持できるということです。この先進的な仕組みは、創業者と外部投資家、特にベンチャーキャピタルとの間の利害調整を容易にし、円滑な資金調達を促進します。これは、日本のスタートアップ界隈で近年議論されているテーマでもあり、台湾法が世界のベンチャー法制を強く意識していることを物語っています。日本の経営者やVC関係者にとって、この制度は台湾への事業進出を検討する上での新たなインセンティブとなり得る、重要な制度的優位性であると言えるでしょう。

外国人による台湾法人設立手続

外国人による台湾法人設立手続

外国企業が台湾で現地法人を設立する場合、経済部投資審議司が所管する特別な手続き、すなわち「外国人投資許可申請(FIA)」が必須となります。このプロセスは、複数の政府機関をまたぎ、段階的に進められます。

設立プロセスの詳細(現地法人:股份有限公司・有限公司の場合)

  1. 会社名称と営業項目の事前審査:最初に、希望する会社名と事業内容について、経済部商業発展署の制度に基づき、会社名称および所営事業の予備審査を受けます。台湾では、会社設立登記に先立ち、会社名と営業項目について事前の確認・予約を行う必要があります。希望する名称が既存会社名と抵触する可能性もあるため、複数の候補名を準備しておくことが推奨されます。
  2. 外国人投資許可申請(FIA):会社名称等の予備審査後、経済部投資審議司に対して外国人投資許可申請を行います。この際、申請書、投資者の資格証明書、委任状、法人投資者の登記資料、定款案その他の関連書類が必要となります。日本法人が投資者となる場合、書類の種類や提出方法によっては、日本の公証人認証や台北駐日経済文化代表処での認証手続が求められる場合があります。
  3. 資本金の送金と投資額の査定:経済部投資審議司から外国人投資許可を受けた後、台湾の銀行に設立準備口座を開設し、資本金を送金します。その後、送金証憑、外貨売買証明書、預金通帳の写し等を添付して、経済部投資審議司に投資額の査定・承認を申請します。また、会社設立登記に際しては、台湾会社法上、資本額について公認会計士による監査証明が必要となります。
  4. 設立登記:投資額の査定・承認および資本額監査の手続を経た後、経済部商業発展署に会社設立登記を申請します。この登記が完了すると、会社に固有の8桁の番号である「統一編号」が付与され、台湾法上の会社として成立します。なお、事業内容によっては、会社登記の前後に、所管官庁の許認可や登録が別途必要となる場合があります。
  5. 務登録とその他の手続:会社設立登記後、所轄の国税局において税籍登録を行います。これにより、事業税、営利事業所得税等の税務上の管理対象となり、必要に応じて統一発票(台湾の税務上の統一インボイス・領収証に相当する証憑)の使用・発行手続を行います。これらの手続を経て、会社は営業活動を開始するための実務上の体制を整えることになります。

以下に、外国人による台湾法人設立プロセスの各ステップと目安となる所要期間をまとめます。

ステップ所管機関目安所要期間目安所要期間
会社名・営業項目予備審査経済部商業発展署原則1日候補名の重複確認、事業内容の審査
外国人投資許可申請(FIA)経済部投資審議会約10日間必要書類の作成・提出、投資審査
資本金送金用口座開設銀行1日〜2日間資本金振込用の一時口座開設
資本金送金銀行1日〜2日間日本から台湾への資本金振込
出資金査定会計士、投資審議会約10日間資本金払い込みの監査、証明
会社設立登記経済部商業発展署原則1日会社設立登記の申請、統一編号の取得
税務登録国税局1日間営業開始のための税籍登録
上記の期間は、公的な標準処理期間ではなく、書類準備、認証、銀行対応、補正対応等を含めた実務上の目安です。個別案件の内容により大きく変動します。

その他の進出形態

現地法人設立以外にも、台湾への進出形態として支店や駐在員事務所という選択肢があります。支店は親会社の延長として位置づけられ、独立した法人格を持ちません。このため、支店の債務はすべて支店の事業に関する債務については、外国会社本体が責任主体となります。ただし、支店設立の場合、投資審議会の許可が不要となることがあります。一方、駐在員事務所は、営業活動は行えず、市場調査や連絡業務のみを目的としており、設立手続きは最も簡素です。

これらの手続きは、言語の壁や必要書類の認証手続きなど、外国企業が独力で進めるには多くの課題を伴います。このため、台湾での会社設立を円滑に進めるためには、現地の法務や会計に精通した専門家のサポートが不可欠となります。

まとめ

台湾会社法が提供する柔軟な制度は、日本の企業にとって事業展開の大きな利点となる一方、それに伴う法務上の複雑さも存在します。特に、複数の行政機関をまたがる外国人投資許可申請(FIA)の手続きは、多くの時間と専門知識を要し、設立プロセスにおける大きなリスクとなり得ます。

弁護士 河瀬 季

モノリス法律事務所 代表弁護士。元ITエンジニア。IT企業経営の経験を経て、東証プライム上場企業からシードステージのベンチャーまで、100社以上の顧問弁護士、監査役等を務め、IT・ベンチャー・インターネット・YouTube法務などを中心に手がける。

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